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生活保護者の集いコミュの人に迷惑をかけたくない―― 生活保護申請中に「無縁死」した40代男性

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http://diamond.jp/articles/-/32947

 天涯孤独の状況にあった40歳代の無業者男性Aさんが、この3月の寒い早朝、自宅でひっそりと亡くなった。

 発見したのは、彼の支援者で、死後数時間が経っていた。死因は「心筋梗塞ではないか」とみられている。

 長年、どこにも相談することなく、医療にもつながらない。前回の連載でも、子どもの頃から、そんな家族のネグレクト(放棄)状態に置かれた末の悲劇を紹介した。

 しかし、Aさんの場合、家族とは音信不通で、頼る身寄りがなく、家も仕事もないまま、貧困にあえいでいた。そういう意味でAさんは、この社会からネグレクト状態にあったと言えるのかもしれない。

親の死去、家族との離別で
突然、ひとりになった

 Aさんが生まれたのは東京だった。

 家族は姉が1人。夫婦仲が悪かった両親は、Aさんが小学生のときに離婚し、Aさんは父親に、姉は母親にそれぞれ引き取られた。

 高校を卒業後、出版取次会社などに勤務した後、自営で働いていたものの、不況とともに仕事が減少。ここ数年は、仕事がなかったという。

 父親は再婚後、病気で倒れ、所在不明になった。やがて、母親や姉とも音信不通になり、住居を失った。

 前回も少し触れたが、家族は「家の恥だから」と、引きこもる本人の存在を長年にわたり隠し続けていることが多い。ところが、親の死去や家族離別といった様々な事情から、ある日、ひとりになって社会に放り出されたときに、自ら情報収集するか、誰ともつながることができなければ、本人には生活していくためのノウハウなどわからないことになる。

 しかも、そういうタイプの人たちほど「他の人に(社会に)迷惑をかけたくないから」という優しい心の持ち主である傾向が強い。その結果、彼らの多くは、社会に出る機会があっても、自ら摘んでしまっているのである。

 今回、たまたまAさんと出会い、亡くなるまでの20日間、彼の生活保護の申請にも付き添ったりしてきた兵庫県姫路市の自助グループ「NPO法人グローバル・シップスこうべ」代表の森下徹さんに、Aさんとの話をレポートしてもらった。

☆        ☆

生活保護申請をした直後
突然亡くなったAさん“最期の姿”

 <2月中旬のある雨の夜、西日本の地方都市にある駅の改札から出てきたAさんは、太った体で、とてもつらそうに見えました。私はこのとき、Aさんとは初対面。共通の知人から簡単な状況を聞かされていただけでした。

 Aさんの話す言葉は“ろれつ”が回らず、聞き取るのに苦労しました。私たちが彼のために用意した民間住居に移動しようと、軽ワゴン車の後部座席に乗ろうとしても、なかなか体が入らない。やっと腰をかけても、シートベルトが届かないという状況です。呼吸が荒く、鼻息とも息ともわからない音がしていました。

 翌日も、Aさんの手伝いに戻り、買い物などを手伝いました。Aさんは、つらそうでした。

 近くのファミリーレストランで夕食をとったとき、Aさんはこう話していました。

「東京に戻っても住むところがないので、こちらで生活保護を申請します。そして体調を整えたら、働きたい。しばらく、この(用意された)住居に住みたいと思います」

 その間、住居の家賃は、生活保護費で支払うことを約束してくれました。

 3日後、役所まで生活保護の相談に付き添いました。担当者は、生まれたときからの状況、家族との関係、仕事や資産などについて聞いていました。

 転入届などの書類は揃っていませんでしたが、Aさんの様子を見た窓口担当者の勧めで、当日の申請となったのです。

 担当者からは「住民登録や戸籍を過去にさかのぼって調べること。生活費は7万円、家賃は4万円まで支給する。住む場所がない場合は、公共の施設に入ってもらう。認定されお金が出るまで2〜3週間かかる」などの説明を受けました。

 Aさんは「施設での集団生活はできない」と答えていました。

泌尿器の異常を訴えていましたが、健康保険が切れていました。担当者から「検査なら無料で受けることができます」と聞き、午後から病院へ行きました。検査の結果「内科で診てもらうように」と言われました。

 行き帰りの車内で、Aさんは繰り返し、うとうとしたり起きたりしていました。

 引越しから1週間後、朝から役所の住民窓口で、転入の手続きをしようとしましたが、転出証明がなかったために、「証明を取り寄せるように」と言われました。しかし、Aさんはそれまで、知り合いの家やネットカフェを泊まり歩いていて、住居がなく、何年も前から転出転入の届けをしていなかったのです。

 こうした書類を提出した後、検査の手続きをして、午後から内科のある病院で検査してもらったところ、「循環器科で診てもらうように」と指示されました。

 8日後、また同じ病院で再検査してもらい、やっと原因が判明しました。結果は「甲状腺ホルモン分泌異常」でした。

 薬を処方してもらいましたが、Aさんはまだ生活保護の申請中。担当者から「薬代は生活保護が決まるまで立て替えになる」と聞かされていた私は、薬代が払えなかったらどうしようとドキドキしながら、近くの薬局に行きましたが、数千円の負担でホッとしました。

 2週間後、福祉担当者が、自宅を訪問しました。Aさんは、担当者の冷たい態度や対応にいらだっていました。

 知り合いの地方議会議員さんに話を聞いてもらいに行きました。議会の開催中でしたが、「状況を担当者に確認してくれる」とのことでした。

 自宅に戻ると、Aさんは長渕剛のCDアルバムを渡してくれました。移動の車内で、長渕剛の曲を聞いたので、私にもらってほしいとのことでした。

 17日後の朝、再びAさんの住居に向かっているとき、役所の生活保護担当者から、Aさんが亡くなったと電話がありました。

「自己責任」という言葉が
孤独死、無縁死を増やしている

 住居に着くと、駐車場に警察の車が止まっていました。住居は、しんと静まりかえっていました。

 検死の警官から、「遺体は警察がいったん引き取って、地方自治体に引き継ぐ。死因はおそらく心筋梗塞だろう」などと聞かされ、Aさんの財布(所持金千円ほど)と携帯電話を持って引き揚げて行きました。

 やっと昼過ぎに、Aさんの母親と電話がつながりました。母親は「(子どもの早い死が)残念です。こちらに伺いたいですが、移動できません」とのことでした。

 私の元には、AさんがくれたCDだけが残りました。

 思うように体が動かないのを「ぶざまで」と言い、手を貸すのを申し訳なさそうにしていたAさん。家族用の大きな冷蔵庫を「元気だったら階段でも持って上がれるのに」と言っていたAさんの姿が思い出されます。

「もっと強引にでも、入院してもらえばよかったかもしれない」

「こちらに来てもらうべきではなかったのかもしれない」

 そう思うたびに、自責と後悔の念が堪えません。

「Aさんの死を知ってもらいたい」

「浮かばれるなら…」

 と思い、私はレポートを書き始めました。

 しかし、それは、私の言い訳、自己満足かもしれません。

 Aさんが、なぜ東京で生活保護の申請をしなかったのか?なぜ入院や施設への入所を嫌がったのか?などの疑問は、いまとなってはわかりません。

 ただ、私を含めて、少なくとも私の周囲には、

「人に迷惑をかけたくない」

「負担になりたくない」

 と口にする人や、窓口での手続きに抵抗を感じる人、人付き合いが苦手で集団生活を避ける人がいます。Aさんも、そうだったのかもしれません。

今回、福祉などの行政によるセーフティネットは、ほとんど機能しませんでした。「パーソナル・サポートセンター」のような支援制度もここにはありません。行政や病院での冷たく心ない対応に、お金がなく底辺で生きるAさんは、傷つき、怯えていました。

 失業すると、人間関係が薄くなり、やがて孤立無縁に向かい、周囲から放置されます。そして、お金がなくなると、健康保険費用が払えなくなり、病院にかかるのが難しくなります。さらに情報が減り、移動が難しくなります。

 Aさんが社会から身を引く一方で、社会もAさんを放置しました。この状況を放置すれば、これから先、無縁死や孤独死はますます増えるのではないでしょうか。

 人々の心が壊れていっている感じがします。

 人を思いやる心が軽視され、「自己責任」という言葉の元で、心優しく、つつましく暮らしてきた人々が、切り捨てられています。

 関わっていただいた皆さまには、大変感謝しています。

 残念な結果になってしまいましたが、これからの私たちの活動について、再考したいと思っています。彼の死を無駄にしないためにも>

☆         ☆

どうすればAさんを
死なせずに済んだのか

 この男性の家庭内の事情も、他の悲劇のケースと同様によくわからない。ただ、レポートして頂いた森下さんは、こう問いかける。

「どうすれば、Aさんを死なせずに済むことができたのでしょうか?」

 その答えは、専門家にも行政の担当者にも支援者にも、もちろん私にも、いまは誰にもわからない。

 だから、本人や家族が勇気を出して声を上げたとき、周りの私たちは、彼らの声に耳を傾け、彼らに教えてもらいながら、みんなで答えを探していくしかない。

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