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生活保護者の集いコミュの日本の生活保護を海外と比較することは妥当か? 格差社会アメリカ・ボストン市で見た貧困層の実態

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http://diamond.jp/articles/-/32372 ダイアモンドオンライン 経済・時事>生活保護のリアル みわよしこ

日本の生活保護基準が「高すぎる」とされる時、比較の対象とされるのはOECD諸国の公的扶助水準である。なかでもアメリカは、日本では、公的扶助水準が低い国として知られている。

今回は、アメリカ・ボストン市で見た、困窮者の生活とその周辺の断片のいくつかを紹介する。そこには、日本とは異なる公的扶助・支援の諸相がある。

各国ごとに異なる公的扶助は、単純に比較できるものであろうか?

日本の生活保護基準は
「米国並みに下げる」べきか?


ボストン市中心街を大きなカートを押しながら進む、50代と思われるホームレス女性。女性のホームレスが厳冬期の夜を安全に過ごせる場所は数少ないという
 日本の生活保護基準は、金額を国際的に比較した時には、決して世界的に低い水準にはない。日本よりも高い国を探す方が大変なほどである。このことを根拠に、

「日本の生活保護基準は高すぎるから、引き下げて先進諸国並みにすべき」

 という意見が数多く見られる。この時、金額以外の要因が考慮されることは少ない。

 また、日本の捕捉率(注)は、決して高くない。このこともまた、

「一人あたりの生活保護水準を引き下げれば、必要な人が全員、生活保護を利用できるようになる」

 という主張の根拠とされる。たとえば日本の捕捉率が20%であるとすれば、生活保護費の総額を変えずに貧困状態にある国民全員に扶助を行うためには、生活保護費を現在の20%まで引き下げればよい計算になる。

 このとき、引き下げてよい根拠としてしばしば引用されるのは、アメリカの制度である。

 本稿を執筆している2013年2月19日現在、筆者は学会への参加・取材のために、アメリカ・ボストン市(マサチューセッツ州)に滞在している。ボストンは、2月上旬のブリザードで積もった雪が未だ充分に除雪されておらず、学会会場と宿舎との往復にも難儀する状況ではある。しかし駆け足ながら、現地の貧困事情も見聞している。

 今回は予定を変更し、ボストン市の困窮者をめぐる事情のいくつかについてレポートする。

(注)公的扶助を利用している人数を、貧困状態にある人数で除したもの。日本では、20%前後と推定されることが多い。

公的扶助の国際比較は困難
単純に「低福祉」とはいえないアメリカ

 たとえば、「アメリカの公的扶助では現金給付はなく現物給付が主である」と言われる。確かに、アメリカの制度を見てみると、一般には「フードスタンプ」と呼ばれる「SNAP(補助的栄養支援プログラム)」をはじめとして、購入可能な品目を限定したICカード・食事そのものの無料提供・家賃補助・医療保険など、現物支給と考えても支障なさそうな扶助メニューが目に付く。下記の表は、ニュースサイト「The Capital Tribune Japan」の記事「米国は本当に低福祉の国なのか?」より引用したものである。


出所:The Capital Tribune Japan「米国は本当に低福祉の国なのか?」
 一方で、アメリカの捕捉率は高く、約60%と言われている。現金給付である「TANF(貧困家庭一次扶助)」では、金額は1家族あたり年間8000米ドル程度と低く抑えられている。また、5年間の有期制であり、就労訓練・ボランティアが義務付けられている。これらの事柄をもとに、

「日本においては生活保護基準を切り下げて有期制にすることが、公的扶助の捕捉率向上へとつながり、さらに当事者の就労自立へのモチベーションとなる」

 という主張がされる場面も多い。

 個々の社会保障制度の意味を性急に判断できるほど、筆者はアメリカの貧困事情や貧困政策に詳しくない。英語力も、踏み込んだ取材を英語圏で不自由なく行えるレベルに達しているわけではない。しかし日常的に、「アメリカでは」という主張は要警戒である、と感じている。現地の風土、現地の文化、現地の社会の生態系と切り離して、1つの制度の1つの側面だけを「……では」と取り上げることには、多くの場合、意味はまったくない。

 たとえば2011年、アメリカの公的扶助のうち食事・住宅・医療に関する上記の5つのメニューに必要であった費用の合計は、5077.8億米ドルであった。「1米ドル=95円」とすれば、48兆円である。人口を考慮しても、日本の生活保護費の約3倍程度の規模ではありそうだ。ここから「日本の生活保護制度は、そもそも予算不足すぎる」という結論を導くことも可能である。

http://www.capital-tribune.com/archives/616

 なお、これらの制度はアメリカ全土に適用される最低限度のものである。実際にはこれらに加え、州や各自治体が独自に提供している制度もある。制度により所得制限などの条件が異なり、したがって利用人数が異なるため、日本の生活保護制度のように1人あたりの金額を単純に算出することはできないが、少なくとも金額だけを見る限り、日本に比べ、かなり充実している感じを受ける。

「BenefitsCheckUp」サイト。自分の受けられる公的支援・扶助を、地域ごと・状況ごとに探すことができる。このようなサイトが必要とされるほど、アメリカには数多くの支援メニューがある

ホームレス排除と
ボランティアの努力


ボストン市内で見かけたベンチ。日本の大都市圏と同様、ベンチの上で人が横になれないよう、アームレストが設けてある
 とはいえ、アメリカといえば多数のホームレスを思い浮かべる方も多いであろう。筆者も、ボストンで数多くのホームレスを見かけた。大量の荷物を持ち運んでいる姿や、しばしば生気の乏しい表情、何よりも、ビルの前でドアを開けては金銭を乞う行動などから、「この人はホームレスなんだ」と明確に分かる。

 とはいえ、そのホームレスたちが、服や身体から異臭を漂わせていることは非常に少ない。多くは、小ざっぱりとした身なりをしている。頭も身体も、清潔に保たれている印象を受ける。何人かのボストン在住者に聞いたところ、

「シェルターがあって、食事を食べられたりシャワーを浴びられたり、清潔な服をもらえたりする」

 という話である。

 しかし、学会のプレスルームで知り合った女性は、

「シェルターは全く足りていない、なにしろホームレスは増え続けているんだから」

 と語った。彼女は、ボストン在住のサイエンス・ライターである。彼女をはじめとするボストン在住者たちに聞いた話を総合すると、単身のホームレスがシェルターでシャワー・食事・清潔な服などの提供を受けられるのは事実なのだが、ホームレス全員が寝泊まりできるほどのシェルターはない。数日に一度、シェルターが利用できれば幸運、という感じであるらしい。

 彼女は、

「空き地でキャンプしたり、公園で寝泊まりしているホームレスを、警察は排除しつづけていて、それは大きな問題になってる。日本でも同様の問題はある?」

 と筆者に尋ねた。もちろん、ありますとも。筆者は、現在進行形の問題として、東京都江東区堅川での野宿者排除問題について話した。そして、

「そのエリアは、成田空港から東京方面に『成田エキスプレス』で行くときに通過する場所だから、河川敷や空き地を見かけたら『ホームレスが排除された場所かも』と思ってみて」

 と補足した。話しながら、

「何か、自分が心から『日本の誇り』と思えることを話せればいいのに」

 と思ったが……「日本の」という括りで答えられることは、何も思い浮かばない。お笑い芸人の母親が生活保護を受給していたことに端を発した「生活保護バッシング」。勇気をもってデモや記者会見に臨む当事者たちにネット上でぶつけられた誹謗中傷の数々。どれ1つ取っても、「日本人として恥ずかしいから、外国の人には、話さずにに済むなら話したくない」と思ってしまうようなことがらばかりだ。

 彼女はまた、ボランティアとして支援活動に参加しているとも語った。過去、ホームレスが販売する雑誌として知られる「The Big Issue」の編集・執筆に関わっていたこともあるという。筆者が、

「同じ雑誌が日本にもあるよ」

 と答えたら、笑顔を浮かべてくれた。よかった。「日本の誇り」までの大風呂敷は広げられないけれども、日本のポジティブな側面として伝えられることが1つはあった。


ホームレスが販売し、収入を得て定住・自立へと至ることを支援する雑誌「The Big Issue」のサイト。日本版もある

貧困層を孤立から救うボストン公共図書館の試み


ボストン市中心部にあるボストン公共図書館。建屋上部に「人民によって建立され、学習と知の前進のために捧げられた」と刻まれている
 では、ホームレス状態から脱することのできた人々や、ホームレス状態に陥る可能性が高い人々に対してはどうであろうか。筆者は、ボストン公共図書館の子ども向け図書室を訊ねてみた。

 フィクションよりも数多くのノンフィクションが目立つ書架の間には、有名な絵本のキャラクターのぬいぐるみが飾られている。机と椅子を使って熱心に勉強している子どもたちもいれば、大声を上げてはしゃぎ回る子どもたちもいる。その一角、毛足の長いじゅうたんの上に、すわり心地のよさそうなソファが置かれている談話コーナーがあった。何組かの親子がそこにいて、互いに少し会話をしたり、子どもを遊ばせたりしながら過ごしていた。親のうち何人かは英語が充分に話せないようであった。


ボストン公共図書館の子ども向け図書室。大人でも思わず笑顔になってしまうような楽しい空間だ
 母親だけではなく、父親もいた。また、孫を連れた祖母も1人だけいた。親たちは、特に明るい表情ではなく、身なりは、どちらかといえば見すぼらしかった。この図書室は、孤立しがちな貧困層の親たちに対して、話し相手や子育て仲間を見つける場まで提供しているらしい。

 この図書館には児童図書を専門とする司書がおり、子どもとその家族向けのサービスを大いに充実させている。

 イベントカレンダーを見てみると、基本的ICTスキル講座など日本の図書館のイベントにもありそうなメニューがあるのは当然として、中国語など英語ではない言語で開催される講座・外国人向けの英語講座など、日本の図書館にはあまり見受けられないものもある。また、近隣の人々どうしの助け合いの支援・「Otaku」など特定の趣味を中心とした集まりが目に付く。公共図書館というものが、日本の一般的な公共図書館とは全く異なる社会的機能を持っている様子が分かる。

炊き出しや食糧配布に関する情報源は
公共機関のWebサイトに


ボストン中心街の近くにある炊き出し施設。マイナス4℃の気温の中、ダウンジャケットなどの防寒衣に身を包んだ人々が並んでいた
 早朝にボストン市街を移動していて、食欲をそそる匂いに鼻をくすぐられることが何度かあった。肉やチーズと思われる美味しそうな匂いが漂ってくる方向を見ると、たいていは炊き出しが行われている。ホームレスを含めた貧困層の人々が並んでいたり、食べ終えて談笑していたりする。

 並んでいる人々の中には、障害者の姿が目立つ。日本の障害者は、職を得ることも継続することも困難なゆえに、ホームレスになったり、最初から受刑を目的として軽犯罪を犯したりする以外の選択肢をなくすことが多い。日本とは障害者に対する考え方や障害者福祉制度がかなり異なるアメリカだが、そのあたりの事情はあまり変わらなさそうだ。

 これらの炊き出しの情報は、炊き出しを行なうNGOなどの団体が提供している。それらの団体のサイトへのリンクは、ボストン市役所など公共機関のサイトの内部のページからリンクされていたりする。日本でいえば、東京都のサイト内に、ホームレス・困窮者支援団体のサイトへのリンクがあるのと同じような状況である。

 このことを、

「公共が手に負えない問題をNGO・NPOに丸投げしている」

 と見ることも可能であろうし、

「このように民間活力を利用すれば、低福祉の小さな政府でも大丈夫」

 と見ることも可能であろう。

 筆者には、自分がいまだ、アメリカの「公共」について充分に理解できていないという自信がある。アメリカと日本の公的扶助制度を比較して何らかの結論を出すのは、もう少し詳しく知ってからにしたい。

 ただ、はっきりしているのは、アメリカは決して成功例ではないということだ。街に溢れる多数のホームレスが、そのことを証明している。アメリカの社会保障制度から何かを学び、日本に取り入れるべきであるとすれば、ホームレスを増加させ続けてきた冷酷な側面ではなく、困窮の末に孤立しがちな人々を社会へとつないで包摂する、決して押し付けがましくない営みの数々ではないかと感じる。


マサチューセッツ州の9つの郡と190の町で炊き出し・食糧配布を展開する「The Greater Boston Food Bank」のサイト内には、最寄りのどこで、いつ食糧が配布されるかを示す地図がある

 次回は、生活保護基準の引き下げが国民全体に及ぼす影響について考えてみたい。数多くの影響が、だんだん姿を明確にしつつある。どのような人に、どのような影響が及ぶだろうか? 「困ってもかまわない、あの人達」「困ってはいけない普通の人達」の間に境界線を引くことは可能なのだろうか?

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