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生活保護者の集いコミュの「新仕分け」で生活保護基準引き下げへ 保護費削減賛成派が知らない日本社会に及ぼす悪影響

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http://diamond.jp/articles/-/28302

2012年12月16日の衆議院選挙を前に、生活保護制度をめぐる動きは、さらに目まぐるしくなっている。

2012年11月15日、厚生労働省は、生活保護の見直しを衆議院選挙後に行う方針を明らかにした。国民の信任を得た新政権の意向を反映させるためであるという。翌々日である11月17日、行政刷新会議「新仕分け」では、「当初の厚生労働省案に沿って生活保護費を削減すべし」という結論となった。

衆議院選挙で成立する新政権が、この結論を支持すれば、生活保護基準は引き下げられることになる。本当に、それで良いのだろうか? 「新仕分け」で政府方針を支持した数多くの人々は、その結論が自分自身の首を絞める可能性に気づいているだろうか?

ノリで決められようとしている「生活保護基準引き下げ」
弱者を潰す大衆の「大義」とは?

2012年11月17日、私は自宅仕事部屋のパソコンの前で、「もう、目も耳も塞いでしまいたい」と思いながら、行政刷新会議「新仕分け」のネット中継を視聴していた。この日、生活保護制度と、生活保護受給者に対する医療が対象となっていたからだ。暗い表情で画面を見つめ、涙を流し、時に小さな怒声を上げながらキーボードを叩いてツイッターやフェイスブックで意見を表明し続ける私の顔を、同居する2匹の老猫が覗きこみ、猫語で心配を表明した。私は涙声で「ごめん」と答えた。障害者である筆者は、生活保護を利用しているわけではないが、生活保護政策の影響を強く受ける立場にある。いつまで、猫2匹と自分の生存・生活を支えられるだろう? 不安でたまらない。


【図1】生活保護費負担金(事業費ベース)実績額の推移 出典:内閣府 行政刷新会議事務局『行政刷新会議ワーキンググループ「新仕分け」』資料


【図2】世帯類型別の保護世帯数と校正割合の推移
出典:内閣府 行政刷新会議事務局『行政刷新会議ワーキンググループ「新仕分け」』資料


【図3】年齢階層別被保護人員の年次推移
出典:内閣府 行政刷新会議事務局『行政刷新会議ワーキンググループ「新仕分け」』資料


【図4】「その他の世帯」のうち障害・傷病のある世帯員
出典:内閣府 行政刷新会議事務局『行政刷新会議ワーキンググループ「新仕分け」』資料
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【図5】保護開始・廃止人員と失業率の推移
出典:内閣府 行政刷新会議事務局『行政刷新会議ワーキンググループ「新仕分け」』資料


 配布された参考資料の冒頭部分は、生活保護に関する現在の問題点を概ね網羅している。生活保護費は増大の一途にあり(図1)、比率では稼働年齢層の生活保護受給の増大が大きい(図2)。

 一方、人数でみれば、日本全体の高齢化に伴い、高齢者数の増大が著しい(図3)。「働けるのに働かない」とされがちな「その他世帯(注1)」のうち約27%は、世帯主以外の世帯員が障害者・傷病者であること(図4)も示されている。これらの世帯では、家族の介護や看病のために世帯主が働けない可能性も高いことが読み取れる。振り返って図5「保護開始(廃止)人員−失業率」を見ると、問題とされている「その他世帯」の増加の原因は不況による雇用状況の悪化であることが示唆されている。

(注1)
世帯主が高齢者・障害者・傷病者のいずれでもなく、母子世帯ではない世帯。

「この資料をベースに熟議を重ねれば、おかしな結論に至ることはないだろう」

 と、筆者には思われる。もしかすると、厚生労働省のギリギリの良心の表明なのかもしれない。


しかしながら、仕分け人として登場した人々は、生活保護について充分かつ正確な知識を持っているとは思えなかった。出来の悪いトークショーのような議論が、形式的に行われた。少なくとも筆者には、そのように感じられた。もともと生活保護受給者に対して好意的ではない層の多い「ニコニコ生放送」の視聴者アンケートでは、多くの人々が生活保護基準引き下げを支持した。


一部の生活保護受給者への攻撃が
自己責任とは言えない人々を苦しめる

 新仕分けの結論は、

「自立の助長の観点から、就労インセンティブを削がない水準とすべき」

「生活保護受給者の就労を促進するため、就労収入積立制度などの実現に向けて対応すべき。一方、正当な理由なく就労に向けた活動を怠る生活保護受給者に対し、就労を促すペナルティーの強化という点も含めて検討すべき」

 など、あくまで「働けるはずなのに働かない生活保護受給者を働かせる」という内容となった。

 また、「一般の低所得者の消費実態などとの均衡を図る」として、生活保護基準以下で生活している極貧層レベルへと生活保護基準を後退させる内容も盛り込まれた。

 この影響を受ける人々の大半は、「働けるのに怠けて働かない」とされたり「働けるのに生活保護費でパチンコ」と批判されたりする、極めて少数の人々ではない。そもそも働けない条件があって、生活保護以外に生計の道がない高齢者・障害者・傷病者たちであったり、家族の介護や看病に対する公的支援の手薄さから就労の困難な貧困層の人々であったり、生活保護世帯に生まれた子どもたち・親が生活保護を申請した子どもたちであったりする。

 生活保護基準引き下げを支持した人々は、「自分だけは決して障害者にも傷病者にもならず、そのような家族を抱えることもなく、失業状態が長期にわたることもなく、老いて働けなくなることもない」という自信があるのだろうか? たぶん、気分とノリで騒いでいるだけなのだろう。今のところは他人ごとだから、安心して生活保護基準引き下げを支持するのだろう。いざ自分が困難を抱えた時に、過去の自分のような人々が自分を追い詰めるのだとも知らずに。

「新仕分け」で気分が悪くなってしまった筆者は、布団をかぶって泣き、一日寝込んでしまった。でも、絶望も泣き寝入りもしない。ただ、今、現実に起こっていることを一人でも多くの読者に伝えるべく、本連載の執筆を続けるだけだ。

“最後のセーフティネット”の意味を再確認した
「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」

 社会保障審議会・生活保護基準部会と、同・生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会では、年内に結論を取りまとめる予定であったが、それら部会の結論提出は、衆議院選挙後、新政権の意向が明確になるまで見送られることとなった。11月15日、厚生労働省がそのような方針を明らかにしたからである。


11月14日、特別部会が開催されたホテル宴会場の入り口に掲げられていた案内。末尾の「御席」に、この宴会場のふだんの姿が現れているようだ

 前日の11月14日、生活困窮者の生活支援の在り方に関する第10回特別部会が、東京都内のホテルで開催されていた。そこでは、セーフティネットのあるべき姿と実現の可能性が検討された。

 第10回特別部会では、過去9回の議論の振り返りと追加の議論が行われた。当初、11月中に報告書がまとめられ、第11回特別部会で最終的な検討が行われる予定であった。議論は、予めまとめられた資料に沿って行われた。

 まず最初に、新しい生活困窮者支援の基本的な考え方が議論された。

 最初に、特別部会で議論していた新たな生活困窮者支援システムが、生活保護制度と相反するものではないことが確認された。さらに、両者を貫く理念の必要性が議論された。その理念とは、「人間が、人間として尊厳をもって暮らすことを支援する」というものである。新しいシステムは、既存の生活保護制度と有効に組み合わせられて、同じ目的のために総合的に機能するものである。このことは、生活保護受給者に強引な就労指導を強要することを意味しない。生活保護受給者でも、尊厳をもって精神的に自立した生活を営むことが可能でなくてはならない。もちろん、経済的自立ができれば、さらに望ましい。

 委員たちの間から、異論はなかった、宮本太郎部会長(政治学者・北海道大学)も、その理念を報告書に含めたいと語った。

「自立しろ」と言えば自立できるのか
生活困窮者支援の難しさ

 では、新しい生活困窮者支援システムは、具体的にはどのようなものだろうか。現在、公的機関に限っても福祉事務所(生活保護)・社会福祉協議会(貸付)・ハローワーク(就労支援)と3つに分かれている窓口を、1つに統合した新しい窓口である。生活困窮者は、健康問題・人間関係問題など、多様な問題を抱えていることが多い。多様な立場の専門家や支援者たちが関わり、1つの窓口で総合的な支援を行えるようにすることが目標とされている。


藤田孝典委員(困窮者支援・NPO法人ほっとプラス)は、新しい支援機関の法的位置づけに関して、懸念を示した。新しい窓口に、生活保護開始を決定する権限が与えられなければ、困窮者を支援の枠組みに乗せることができないからだ。藤田氏によれば、このために必要なのは、福祉事務所に十分な人員配置を行うなどの機能強化である。この点に関しては、委員たちの間で議論となった。主に懸念されたのは、福祉事務所だけが強大な権限を持つ可能性である。

 岩田正美委員(社会学者・日本女子大学)は、まず、資料に対して、

「私、『参加と自立』と言ってきたのに、『参加』が落ちています」

 と指摘し、

「やる側・供給側の視点が強いです。自己決定を最優先させる理念をはっきりさせておかないと、お尻を叩いて自立させるだけになります」

 と言う。なぜ、それではいけないのか。岩田氏によれば、困窮者は社会に参加できない状態が長く続いて自尊感情を失っていることが多いので、支援とは、自尊感情の回復プロセスを含むものでなくてはならない。

 岩田氏が過去に行ったインタビュー調査の1つでは、施設にいる元ホームレスの1人が、

「何かメニューがあって、自分の知らないところで決められて、自分は今、ここにいます」

 と語ったという。岩田氏は、新しい相談窓口が、そのようなものになる懸念を表明した。そして、困窮者本人による参加の重要性を強調した。

 議論の中では、

「かつて、生活保護世帯の家計指導をケースワーカーが行なっていた時代があった。かつては本当に指導のためであったが、今は少しでも余裕があれば剥がすためになっている」

 など、生々しい実態も語られた。委員たちは少なくとも、議論のプロセスの中で、このような事実を共有して結論へと向かっていた。

求人がなければ、教育が不十分ならば
実を結ばない「就労支援」

 就労支援に関しては、この不況下、選択可能な就労先を増やさなければ成果は出ない。また、長期にわたって困窮状態にある人々の再就職は、通常の失業者よりもずっと困難である。このため、中間的就労(障害者作業所のように、通勤すること・職場コミュニティをはじめとする社会に参加することを主目的とした、最低賃金法の束縛を受けない雇用形態)・社会的企業の導入が議論されている。

 中間的就労に関しても、「労働市場に悪影響を与えないか」「出口がなく、ずっと中間的就労のままにならないか」という視点から議論が行われた。議論の流れは、中間的就労・社会的企業というシステムを使って、人を変えるのではなく社会を変えていくことの重要性へと向かっていった。

 野老真理子委員(経営者・大里綜合管理(株))は、民間企業を経営する立場から、

「納税しているのに、生活保護受給者が増えて、税金が使われる」

 ということに対する不快感を表明した。野老氏は、税金が使われるにあたっては、自分たちが納税したことと同じくらいの意味がなければならないという。生活保護に関しては、生活保護受給者が納税者になったら、意味があったと思えるという。「国のお金を使わずに困窮者を支援する仕組みを作りたい」と、野老氏は主張する。それは「企業家としての思い」であるという。筆者には、「では、何のための納税なんだろう?」という疑問が残った。税の徴収と適切な分配は、公共、つまり国の仕事でなかったら、どこの誰の仕事なのだろうか。生活保護費は、国費の無駄遣いではなく、社会に対する投資だ。

 まず、どのような人々が、生活困窮者になるのだろうか? 2009年、大阪府堺市健康福祉局理事であった道中隆氏(関西国際大学)の調査によれば、生活保護世帯主の約73%が中卒・高校中退であった。「十分な教育を受けなかったことが、経済的自立を維持することを難しくした」と見るべきだろう。

 宮本みち子委員(社会学者・放送大学)は、生活保護世帯の子どもの学習・教育に関する問題は、後期中等教育欠如の問題であり、同時に就労の問題でもあるとして捉え直す必要があるという。すべての子どもに、学力とともに教育機会を保障して就労支援を行うことの重要さを、宮本氏は語った。

生活保護基準引き下げは
“就労インセンティブ”として機能するのか

 では、現在の日本にとって、生活保護制度とは何なのだろうか。前述の藤田氏は、生活保護をポジティブにとらえることの重要性を主張する。現在、生活保護受給者は増加して210万人以上となり、さらに増加する見込みである。このことは、生活保護制度が、それだけの人命を救っているということである。藤田氏は「日本で一番、生命を支えている制度」とも言う。

続いて、高杉敬久委員(日本医師会常任理事)は、

「日本は治しがたい症状だらけです」

 と語りはじめた。対策は、景気を良くすることであり、この特別部会でいくら議論しても無意味だという。困窮者の踏みにじられた尊厳や心は、まず治療されなくてはならない。この視点から、高杉氏は「生活保護基準の引き下げが気になる」と言い、「ただ金額を減らすということで良いのか」と懸念を表明した。

 高杉氏は、困窮者の支援の意味を「弱みのある人を治して社会に出られるようにすること」と語り、「教育は基本です、どんな人にも届けなくてはなりません」と教育の重要性を強調した。

 では、就労支援は結局、どうすれば実を結ぶのか。インセンティブは本当に就労に有効なのか。特別部会では、限られた時間の中で、インセンティブに関する議論も行われた。しかし、求人が不足しているために就労が困難な現状は、インセンティブによって就労意欲を向上させることでは解決しない。冒頭で紹介した「新仕分け」は、「生活保護基準を引き下げることが就労インセンティブとして機能する」という前提のもとに結論を導いたが、その前提は正しいのだろうか?

 生活保護基準引き下げに賛成する人々は、引き下げが日本の社会に及ぼす悪影響を「全く」と言って良いほど考えていないようだ。生活保護基準引き下げは、社会にとっても有意義だ。日本の活性化のために好影響を及ぼす。そのように考えているようだ。さらに、何らかの快感があるのかもしれない。

「生活保護基準×日本の総人口」は、概ね、日本の内需の総量の最低線の指標である。生活保護基準を引き下げるということは、内需を縮小するということに他ならない。どのようにポジティブな波及効果が考えられるだろうか? 筆者には、何1つ思い浮かばない。

 12月16日の衆議院総選挙まで、情報を集める時間・考える時間は、まだ3週間以上も残されている。バッシング報道に扇動された結果でなく、自分なりに調べ、知り、考えた結論を出す時間がある。

 次回は、選挙での選択を行う上で参考になると考えられる内容を中心に紹介する。各政党や候補者たちは、生活保護制度・社会保障・日本の向かうべきゴールについて、どのように考えているのだろうか?

<お知らせ>

 本連載は、大幅な加筆を行った後、2013年2月、日本評論社より書籍「生活保護のリアル」として刊行する予定です。どうぞ、書籍版にもご期待ください。

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