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生活保護者の集いコミュの生活保護費を根こそぎ奪う「貧困ビジネス」の実態 役所は知らん顔、見過ごせない「行政の不作為」

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https://toyokeizai.net/articles/-/723924

現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
不要な冷蔵庫を「生活保護費」から買わされた
千葉県内の小さな不動産業者の事務所。内見の代わりに、パソコンでアパートの室内を見せてもらっていたときのことだ。キッチンに備え付けの冷蔵庫があるではないか――。ちょうど冷蔵庫や布団など家具・家電の5点セット計3万7000円分を購入する契約書にサインを求められていたソウマさん(仮名、59歳)は「冷蔵庫はいらないです」と申し出た。しかし、スタッフからは「5点セットじゃないとダメ」とはねつけられたという。


ソウマさんが「2つも必要ないのに……」という備え付けの冷蔵庫(左)と業者に買わされた冷蔵庫(右)。購入費用は生活保護費から支払われる(筆者撮影)
このときネットカフェ暮らしだったソウマさんの所持金は約700円。すでに不動産業者を通し、最寄りの福祉事務所に生活保護を申請する“予約”も取り付けてもらっていた。

購入を拒めば、路上生活になるしかない。そう懸念したソウマさんは「冷蔵庫2つも要らないのに……」と思いつつもサイン。業者に対して不信感が芽生えた瞬間だった。

案の定、搾取はこれで終わりではなかった。今度は、毎月1万円、10カ月にわたって計10万円を支払うよう書かれた「保証会社初回保証料・敷金支払同意書」へのサインを求められたのだ。先に契約させられた家具・家電費や共益費7000円をなど差し引くと、生活保護費は2万円も残らない。

それでも路上生活よりはましだと思ったソウマさんは再びサイン。スタッフからは「この書類は役所には見せないように」と口止めされたという。ソウマさんは「(業者のホームページには)『生活保護申請のサポートをします』『入居時0円で新生活がスタートできます』と書かれていたのに、実際は全然話が違いました」と訴える。


不動産業者の入り口に設置された看板。生活保護利用者向けに「入居時総額0円」とうたいながら、実際には保証料や敷金などが請求される(筆者撮影)
その後、連れていかれたのは築40年近い木造アパート。家賃は生活保護の住宅扶助費の上限と同じ4万6000円だった。しかし、後になって同じタイプの部屋の一般向け家賃が約2万9000円であることもわかったという。

新型コロナウイルスの感染拡大以降、住まいのない生活困窮者を郊外の不人気物件などに割高な家賃で入居させたうえで生活保護を申請させ、いろいろな名目で保護費を巻き上げる「貧困ビジネス」が増えている。支援団体のひとつ一般社団法人「反貧困ネットワーク」によると、今年の相談件数は約30件で昨年の5倍にのぼるという。

悪質な無料低額宿泊所に入居させられた
実は、ソウマさんはこの直前にも同様の貧困ビジネスの被害に遭っている。

場所は東京23区。クレジットカードのキャッシングで借金をしながら仕事を探していたものの、半年余りに及ぶネットカフェ暮らしで所持金が底を尽きかけた。スマホで「生活保護」と検索したところ、「初期費用0で部屋が見つかる」「生活用品を無料支給」などとうたう一般社団法人を見つけたので、連絡を取ったという。

ところが、郊外のアパートに連れていかれ、生活保護を申請したまではよかったものの、その後、法人の車両でアパートまで移動した際の費用として1万6000円、布団代2万円、家電セット3万円、米や乾麺などの食料代1万6500円を取り立てられそうになった。これでは生活保護費が支給されても1銭も残らないどころか、マイナスになってしまう。

「一般社団法人というからなんとなく安心していたのですが、すぐに相当やばいところだとわかりました」

ソウマさんはなぜ何度も貧困ビジネスの被害に遭ったのか。生活保護を利用するなら、なぜ直接自治体の福祉事務所へ出向かなかったのか。

このような新手の貧困ビジネスの被害者には、ある共通の経験があることが多い。過去に生活保護を利用した際、福祉事務所から悪質な無料低額宿泊所(無低)になかば強制的に入居させられているのだ。

無低とは社会福祉法に基づく民間の宿泊施設。一部に住環境が劣悪だったり、粗末な食事に対して割高な食費を徴収したりする悪質な無低もある。生活保護費のほとんどを巻き上げられ、毎月数千円から3万円ほどしか残らないというケースも珍しくない。

東京の下町で生まれ育ったソウマさんはスポーツ推薦で高校に進学。しかし、その部活で激しい体罰に遭い、退部と同時に高校も辞めた。その後はトラックドライバーをしたり、建設現場で働いたりしたものの、リーマンショックのころに失業。住まいも失い、東京都内の福祉事務所で初めて生活保護を利用した。

このときに入居させられたのが大規模な悪質無低だった。ワンフロアに2段ベッドがいくつも並び、個人のスペースはカーテンで仕切られたベッドの上だけ。朝晩2回の食事が提供される一方、ソウマさんにはケースワーカーから毎月9000円が手渡されるだけだった。

ソウマさんは「朝、ご飯をおかわりしたり、炊き出しに行ったりして夜まで空腹を我慢しました。当時は生活保護とはそういうものだと思っていました」と振り返る。

これでは自立どころか、就職活動もできない。ソウマさんは1カ月ほどでこの無低を逃げ出し、別の自治体であらためて生活保護を申請した。ところがまたしても入居先は無低。そこでは数カ月もするとスタッフとして働かされるようになった。

「調理から買い出し、電話対応、新しい入居者の送迎まで。毎日朝6時から夜8時、9時までと、結構長い時間働かされましたよ」

この間も生活保護の利用は継続。施設からは毎月3万円の“給料”が出たので、福祉事務所に収入申告を行い、手元には4万円ほどが残った。とはいえ、これでは時給100円にもならない。結局2年ほどで逃走した。「スタッフにさせられた人は、自分が知る限り全員逃げていました。巻き上げた莫大な保護費を暴力団に流しているという話も聞きました」と証言するソウマさん。2度と無低には入りたくないと思った。

一部の福祉事務所が住まいのない申請者に無低入居を強いるのは、賃貸物件の家賃水準や初期費用が高く、ほかに選択肢がないからだ。ただ生活保護は居宅保護(アパートでの保護)が原則であり、無低を強制する法的根拠はどこにもない。厚生労働省も「1人暮らしができる人は必ずしも無低入所を経る必要はない」との旨の通知を出している。

被害に遭うたびに、SOSを出してきたが…
新たな貧困ビジネスがはびこる背景には、福祉事務所によるこうした不適切な運用がある。実際、ソウマさんは貧困ビジネス業者にコンタクトする前に福祉事務所に連絡をしたが、「生活保護を申請するなら、無低に入ってもらいます」とあしらわれたという。ソウマさんは福祉事務所に出向かなかったのではなく、出向けなかったのだ。

一方でソウマさんは悪質な無低や業者の被害に遭うたびに、担当のケースワーカーらにSOSを出してきた。

無低で賃金未払いの長時間労働を強いられたときは、無低側に改善するよう伝えてほしいと頼んだが、「いつもお世話になっているので、うちからは言えない」と断られたという。住まいのない申請者をいつでも受け入れてくれる無低には意見などできないということらしかった。

また一般社団法人による貧困ビジネスに遭遇したときも、ソウマさんは「このままでは生活できない」と助けを求めたが、逆に「(一般社団法人について)ソウマさんのほうから東京都に苦情を入れてくれないか。うちからは上(東京都)に言えないけど、上から問い合わせがあれば、ちゃんと話すから」と頼まれたという

冒頭の千葉の福祉事務所にいたっては、職員のほうから不動産業者のことを「悪徳だよ」と忠告してきた。しかし、ソウマさんが10万円もの保証会社初回保証料や敷金を徴収するのはおかしいのではと訴えると、「払ってください。皆さん払ってるんで」と突き放されたという。別の機会に管理職にあたる職員とも話をしたが「厚生労働省からなにかしらの通知でもあれば動けるのですが……」とお茶を濁された。

結局、悪質無低や貧困ビジネス業者に対してなにかしらのアクションを起こしてくれる職員はただの1人もいなかったという。行政側が生活保護申請者を直接送り込む無低と、行政側が搾取の手口を知りながら黙認する貧困ビジネスというスキームの違いはあれど、問題の根底にあるのはいずれも「行政の不作為」である。

ちなみにソウマさんは悪質無低をたらい回しにされたとき以外は何かしらの仕事に就いてきた。しかし、そのほとんどは賃金水準も低く、不安定な働かされ方だった。福祉施設の送迎ドライバーとして10年近く働いたときなどは、待機に当たる「手待ち時間」がすべて無給扱いだったので、給与は最後まで生活保護水準以下。住まいが社員寮扱いで仕事を失うと当時に路上に放り出されることもあった。


ソウマさんが紹介された木造アパート。家賃は生活保護の住宅扶助費の上限と同じ4万6000円だったが、後になって同じタイプの部屋の一般向け家賃が約2万9000円であることがわかったという(筆者撮影)
「公助」はだんまりを決め込んだまま
ソウマさんが生活困窮状態に陥った背景には、こうした雇用政策の貧困や住まいの貧困といった構造的な問題が少なからずある。その結果、生活保護を利用することになり、悪質無低や貧困ビジネス業者の食い物にされているのに、「公助」はだんまりを決め込んだまま。ソウマさんは「悪いことだってわかってるのに、どうして物が言えないんですかね。不思議ですよね」と首をかしげる。


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持論になるが、私は一部の無低や貧困ビジネスも悪いが、もっと悪いのはそれらを見て見ぬふりする行政だと思っている。私自身はライターとして安易な公務員バッシングからは一貫して距離を置いてきた。公共性や継続性、中立性が求められる公務をこなす職員には一定の身分保障や賃金水準が必要だと思うからだ。しかし、搾取の実態を知りながら業者にも上部組織にも物申せないというなら、いったいなんのための身分保障なのか。

現在、ソウマさんは反貧困ネットワークのシェルターで暮らしながらアパートを探している。「暇な時間は苦手だから」とハローワークにも通っているが、職員からは「年齢のこともあるので仕事探しは厳しいかも」と言われているという。

ソウマさんは今回取材に応じた理由を「自分と同じような被害者を出したくないから」と説明する。

沈黙を続ける行政と、何の後ろ盾もないまま声を上げるソウマさん。いびつな対比に違和感しかない。

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