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にひむりゃまさひこおやこコミュの2

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2

目覚まし時計がなかなか止まらない。
当然止めるのは、パジャマ姿のしかめっ面した俺しかいない。
胸が少し痛む

自分の顔が大きく変化したように感じたのはいつの頃だっただろうか。40も超
えれば若い頃の自分の顔などはとうの昔に忘れてしまったが、少なくとも今の俺
は朝鏡に映った自分の顔を見て高揚することはまったく無い。スーツを着て、家
を出るといつもの満員電車に乗る。電車が急ブレーキをかけると、誰かが俺の足
を思いっきり踏み付けた。ピンクのスニーカーが目に入っただけで、どんな顔の
女が踏み付けたのかはわからなかった。大学生くらいの若い男が大音量で音楽を
漏らし続けている。まるで赤ん坊が泣いているようだ。みのるが生まれたばかり
の頃も夜泣きが激しかった。あの頃は親は赤ん坊の奴隷のようになるのだなと思
っていた。池袋駅の構内には酒に酔って地べたにねっ転がっているホームレスが
いた。駅を出て会社に行く途中に、見上げると目がくらむような高層マンション
がある。こういう場所に住んでいる人間はどんな顔をして生きているのだろうか
。芝居がかったような男と女が、癒し系の壁の色にしようよ、とか家具はどうす
るとかいう会話で盛り上がったのだろうか。あらゆることが何かの模倣であるよ
うな気がする。この街もこの国もそして俺自身の行
き方もすべて模倣に過ぎない。モノマネをするように生きて、モノマネをするよ
うに死んでいく。若い頃は価値観というのをもっと持っていたような気がするが
、今は損得に従って生きていけば、あまり傷つかずに生きていけるような気がす
る。感情的になれば、誰かに裏切られるはずだ。会社を目の前にして赤信号で立
ち止まった時、子猫が横断歩道を横切ろうとした。瞬間的に猫が引かれることを
確信した。かわいそうだという感情は正しいはずだった。だが俺は動かなかった
。そして子猫がペシャンコになって赤い血が辺りに流された。年配の女性が悲鳴
とともに、猫の死体のもとにすぐに近寄ってきた。そして躊躇することなく死体
を抱き抱えようとしたが、うまくいかないようだった。俺はどんな顔をして年配
の女性のもとに行けば、いいのか瞬時に頭の中で計算した。良き理解者として芝
居がかった笑顔と悲痛な表情で近付いていくのだ。それを考えたのが朝だったか
ら、頭がぼうっとしていたのか、それとも年配の女性に自分の死んだ母親の姿を
重ね合わせて感傷的になっていたのか。俺は猫と年配の女性にばかりに自分の焦
点を合わせていて、信号が再び赤になろうとしてい
ることにまったく気付かなかった。次の瞬間大きなブレーキの音が俺の耳に吸い
寄せられた。強い衝撃とともに自分の意識が飛んでしまうことだけが本能的に理
解できた



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