北海道大学コミュの北大に女子寮があった

　北大中央図書館のロビーで、ときどき北大の歴史写真が展示されることがあります。戦後女子学生が増えて北大女子寮開設運動が始まり、某社の古いか従業員寮を買収して待望の女子寮ができたのです。
　それで運動をした女子学生と島学長はじめ大学事務局関係者が集まって撮った記念写真があります。その写真は「北大１２５年」の写真集にも載っています。いま図書館にはその開寮の資料はなくて閉寮の本はあります。
　といえば見た覚えのある人もいるでしょう。ところが、それにはこれがだれといういう説明がない。それで首都圏にいる昔の女子学生４人がこの人は誰それと特定して、その情報を北大文書館に納めました。
　小生はその人物情報送りのお節介をしたのですが、たまたま道立文書館で下記の報告を見つけたので、今月中に開く卒業６０年記念例会で４人が集まるときに渡す北大文書館の資料受領証の写しに添えるべくコピーしてきました。
　これらのビラには昭和２７～３１年のころの北大の雰囲気があります。毎日のように正門前でさまざまなビラを渡され、小生も何度か「破防法反対」など、立て飢えたるものよ―と歌いつつ赤煉瓦前迄のデモに参加しましたね。古い写真説明も文書館の収集対象だということを知ってもらうことも兼ねて、ここに紹介します。

資料紹介
　　１９５２年度における北大学生運動資料
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　堅田精司

　こゝに紹介するのは１９５２年度前期―つまリ「破防法時代」の北大学内において散布されたアジビラのいくつかである。最近、各地で労働運動史の編纂がおこなわれているが組合によつて作成された資料がほとんど散失している点、共通のなやみとなつている。
北大においても、こうした方面の資料が関係方面にあまり保存されていないので、一応、こうした形で紹介することにした。史的研究においては、この種の資料は利用が非常にむずかしいのであるが、やゝ事実を過少評価する傾向にある最近の反体制運動史にもつと利用される必要を痛感する。この方面に関心をもたれる方によつて利用いたゞければ幸いである。
　紹介にあたつては、文法上のあやまり、誤字等は出来るだけ訂正していない。これらのアジビラの文面上の不備はとくに教官層によつて非難を加えられたが、これらのビラの作成過程の実情を知るものにとつては、それらの非難が必ずしも当をえていないと感ずる。　なお、つゞいて「レーン講師赴任拒否」にはじまり、「白鳥事件」「北大事件」におわる１９５１年度をはじめとして、１９５２年後期、１９５３年、１９５４年と順次編集していく予定でいる。

　１９５２年前期
　　　　４月２１日　　　法経学部自治会ニユース　Ｎｏ２

　全学友諸兄に訴える
　　　　　　法経学部学生自治会執行委員会

全法経学部学友諸兄
我々は今明らかに重大な岐路に立つている。
すぐる東大事件、北大事件は完全こフアツシヨヨ化した政治権力により如何に学園の自治自由が犯されているかを如実に物語つている。そして今全国の労働者階級のゼネストによる抗議にもかゝわらず自由党政府は破壊活動防止法案を国会に提出した。
諸兄、この法案こそ我々青年を否全日本人を再びあの殺戮の巷に追いやる悪魔の爪ではないか。＜略＞
武装して斗うことのみが勝利の大道へ導びくものである。そのための土台として大衆が平和と独立を目指し、数百数千萬の部隊に結集し、愛国の統一を固め前進する。ここに革命的意義が存在するのである。われわれの斗争の場は、職場、部落等われわれが日常生活をしている場所である。統一された要求、行動で売国奴を工場、部落、町からつまみ出そう。大衆行動がすべてを決する。
去る七月吉田が演習地取り上げ問題で北海道え渡ろうとしたとき、全道の炭鉱労働者を先頭に労働者　農民、市民のゼネスト、デモ、集会の圧力により吉田は津軽海峡を越えることが出来なかつた。
両条約、行政協定と真剣に斗かわない反共ペテン師両社会党を地域大衆行動により粉砕せよ。愛国者を国会に送れ。真に彼等が粉砕されるのは国会ではなく大衆の中においてである。平和を熱望する世界の大衆は民族解放、民主政府樹立のために斗う日本民族に期待をかけている。
日本共産党徳田書記長の論文は歴史的斗争において初夏の太陽の如くその行手を照らしている。

　　１０月上旬？

　　　　　　　訴　え
　　北大女子学生の会女子寮問題責任者

　皆様御存知のように当北大には女子寮が御ざいません。所が、去年、今年と女子学生の数がふえ、現在二百名程居る中には今にも下宿を出ねばならぬ人、サーカス地方巡業のアルバイトをしながら畳をはがれた屋根うら部屋に生活している人、止むを得ず男子寮に寄宿させてもらつているが外聞が悪いというので立ち退きをせまられている人等、アルバイト難、物価高でますますきゆう迫する学生生活の中で早く女子寮をと希んでいる人が現在二十人位居るのです。私達は昨年来女子寮設置のことを学校におねがいしてきたのですが「九月迄には女子のためのトイレツトも控室も何とかしてやろう。寮もそつちで家を見つければ買つてやる」と確約した高倉学生部長が同じ問題で次の交渉には「部屋を何とか見つけて個人的な解決をしろ」と前言をひるがへす等、今後の為にも絶対女子寮はおかれねばならないという根本的な点から逃避した誠意のない態度しか見せてくれないのです。私達は先般来女子学生の生活状況調査や入寮希望等の資料を集めたり、家屋売買周旋所に何度も足を運んで寮にてきした建物を探し出したり、出来るだけの努力はしているのですがとても私達のカだけでは学校側が動いてくれそうにもありません。それで私達はこの問題を全学の皆さんに訴え、女子寮の立たない根本的な理由を考えていただき御協力をおねがいしたいのです。
全学の皆さん。女子寮がなくて生活が困難だというのは女子学生だけの問題でしようか。男子学生における入寮難や諸施設の不充実等はそれら学生生活を圧迫する原因については私達の問題と共通しているのじやないでしようか。
私達女子学生は何も女子学生の優先を希んではいないのです。どんな事も全学の問題としてとり上げていつてこそ意義があると考え、広く学生生活の向上につくしたいと志すのです。全学の皆さんが私達の署名運動に参加下さり、サークル等がとり上げて下さる等御協力下さることを切におねがいいたします。
　（このビラの撒布日時ははつきりしない。当時、撒布に従事した学生も時日に記憶がないといつているのて、とりあえず十月上旬としておく。）＜以下は略＞
（北海道地方史研究会編「北海道地方史研究」４５号５１ページ、昭和３７年１１月、北海道地方史研究会発行）