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【オリバト+】コミュの【FIREBALL】

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文:はるや

1991年4月。
誰もが恐れ忌み嫌う極悪不良高校『 県 立 魍 魎 高 校 』・・・
この学校で信じられるのは唯一、己の力のみ…なのである。

※はるやさん以外の書き込みはご遠慮ください。

コメント(31)

第1話 魑魅魍魎の巣食う高校


ふぅぅぅ…
晴れやかな気分だゼ。
(天気は曇りだしカラスがやたら飛んじゃあいるがな。クソッ)
入学式も無事(寝て)終えて、これで今日からオレもモーリョー高の生徒ってこった。
ま、とりあえずヤニだなヤニ…

体育館から校舎へと流れていく生徒たちをよそに、体育館ウラの方へと一人向かう派手な生徒がいた。
ソリコミリーゼント、前は短ランだが後ろは特攻服のように長い奇妙なデザインの学ラン、真っ赤な炎をあしらったバックルのベルトが目立つ長身の少年。
右ソリコミに『NUTS』と入れ墨、左頬に大きな傷跡などと凶悪そうなポイントもあるが、
へらへらとした表情には危険は感じられず、むしろ頼りなさげな印象すら受ける。

彼の名は火国 奈津也(ヒグニナツヤ)。
人呼んで「飛び火の粉のナッツ」。


小さい丘の上に立つ魍魎高からの眺めはそれなりに悪くなく、体育館ウラなどは適当にサボるにはちょうどいい場所だ。
ナッツはトイレッティングスタイルで座りこみ一息つく。
入学式中は熟睡していたので、まだ頭がボーっとしている気がするし、
こんな時はとりあえず…

シュボッ
セブンスターに火をつける…



「…オマエ タバコヲスウ フリョウダナ」

突如、どこからか声が聞こえた。

しかし周りには誰もいない…
何だ? 誰かの妙なイタズラか?




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


「オマエニハ、シレンヲアタエネバナラン…
 イキルカ、シヌカノナ…」

「う…うぐぐ…!?」
…首を…掴まれた!?

も…持ち上げられてるッ!?
何も見えないが…誰かいやがるのかッ!
動けねーッ! 息が…クソッ!!

ズズズ……

矢!?

目の前に突然「矢」が現れる。
それがナッツの額めがけてゆっくりと伸びてくるッ…

両手の自由はきくッ!
ナッツはとっさに両の手で額をガードした。

グサァ!

「うあぁぁぁッ!」

凄まじい力で矢は押され、刺し込まれる。
ナッツの右手の甲を貫き、左手の甲に突き刺さったところで、
矢は、止まった。

「…サラバダ」

フッ… 矢が消え、ナッツを捕まえていた力も消える…

「な…なんだったんだ…」
ガクリと倒れ込むナッツ…



突如 両手から電撃のような激痛ッ!

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」


ナッツは… 意識を失った…
薄暗い校長室で、二人の話し声が聞こえる…

「校長ーゥ… またMeのStandが発動した模様デース。
 また新たなStand使いが生まれールカ…それとも死体処理デースかね。」

「教頭…その件は君に任せると言ってあるはずじゃよぉ。
 わしは何にも知らんのじゃぁ…いいかの教頭ぉ…

 ただ願わくばぁ… この混沌とした学内の状況をまとめられるようなぁ…勇者が生まれることをぉ…」

「校長ーゥ…興味本位で学内をChaosにしたのはYouでショーが…」

「教頭、キミのスタンドでなきゃできなかったことじゃぁ。実行犯はキミじゃよぉ。
 そしてワシは、指示すら出しておらんのじゃよぉ…」

「Oh…(このF**Kタヌキジジイ…)」
「オイコラァ!
 一年坊! 起きろやァ!」

耳障りな怒鳴り声。
ナッツが目を開けると、4人の男に囲まれていた。
体育館ウラ…
両手の深い傷は痣だけ残し塞がっていた。もう痛みはない。

「やっと目覚めたんかぁ!?

 おめー一体誰の許可でここで寝てんのォ?
 いつもここにいるオレらに挨拶もねーのかァ?」

スキンヘッドに『卍』と彫られたいかつい体躯の目の細い男が吠えている。


ナッツのへらへらした表情が少し変わる。
まるでおもちゃを見つけた子供のような…


…ふふん。
おもしれーよ。
入学早々オレにケンカ売ってくるとはなぁ。


ナッツはこう見えて中学時代はケンカじゃ負けなしだった男だ。
しかし彼自身がふっかけたケンカは一つもなく、全ては曰わく『飛んでくる火の粉を払っただけ』だそうで、
それに感銘を受けた舎弟気取り達が勝手に呼んだのが『飛び火の粉』である。
まぁ彼自身は飛び火の粉を振り払う方なのだが、取り巻きどもにはカッコよさげな通り名であればそれでいいようだ。


ナッツはニヤリと笑う。
『高校レベル』ってやつを見せてもらおうじゃねーか…


「なにニヤついてやがんだコラァ!」

角刈りの男が殴りかかってきたッ!

ケンカ慣れしているナッツ、動体視力には自信がある。
この程度ならよけられるッ!


よけたッ はずだった…が!


ド ガ ァ ッ !

「グッ!」


くらっちまったッ!!てゆうか…

今…確かに殴る瞬間…

 腕 が も う 一 本 生 え て た !?


「しゃははははッ!
 オレの三本目の腕のパンチは重いだろうが!?

 これが選ばれし者だけが使える『 ス タ ン ド 腕 』よッ!」

角刈りヤローが吠える。
角刈りの右腕…見間違いなんかじゃない!
右肩から、半透明な怪物みたいな腕が生えてやがる!!

「おいおい角本…
 オマエだけじゃねーんだぜ。『選ばれし者』とやらはよォ…
 なぁ、吊野」

「そうだな明日真…。
 このオレ達のスタンドに、オマエはなすスベもなくボコされるんだよ。」

ズズズズ…

角刈りヤロー、ボサボサ頭の吊り目のヤロー、ピアスだらけの男の三人が、
一斉に『三本目の腕』を出現させた。
半透明な怪物みたいな腕だが、見間違いじゃない。


これが…スタンド腕!?
な…なんなんだコイツら!?


【スタンド名:無し(スタンド腕)
 能力:特に無し
 腕のみのスタンド】
ふざ…けんなよ…!


3人に囲まれ打ち込まれ、防戦一方なナッツ。


スキンヘッドの男は傍観しているが3対1ッ
普通のヤンキー相手なら3人でも5人でも負ける気はしないが、
奇妙な力(スタンド腕?とか言ったか)を使ってきやがるッ!

クソッ!
ふざけんじゃねーぞッ!
入学早々このオレがケンカで負けるだと…?
こんな連中にこのオレが…


「なめんなァァァァア!!」

やみくもに放ったパンチが角刈りヤローの頬をかすった!


「あ…あぢッ!あぢぃッ!!

 ななんなんなんだテテメーのその拳は!?」



!?
オレの両拳が……

赤 く 光 っ て る !

熱いマグマのように発光するグローブをつけているような…
力が、そして勇気が溢れてくるような不思議な感覚ッ!


「そそそ…それがテメーのスタンドかい!
 ナマイキなヤローだッ!
 いくぞ明日真!吊野!」

角刈り、ピアス、釣り目が3人がかりで襲いかかってくる…


…だが、しかしだ。

奴ら、腕が三本あるって、ただそれだけのこと。
よけられねぇパンチでもない。
つまり、ビビる必要はないッ!


しゃがみこんで角刈りヤローにダッシュ接近し…

「クソがァッ!」

ドゴッ! ボディブロウ!


「ウギャァァア!
 腹が燃えるようにあづいッ!!」


「お…おい角本ッ!?
 だいじょ… 」

「クソがァッ!」

バキィッ!


隙を見せた吊り目ヤローにも一発ッ!
ソッコーでKO!


妙な力に惑わされはしたが、見えない攻撃なんかじゃないんだ。

釣り目はダウンだし、角刈りヤローはもがき苦しんでいる…
あとはピアスマン(たぶん雑魚)とハゲヤローか…

ピアスマンは泣き言を言う。

「中野くんッ!
 コイツ強いんじゃあねーかッ!?」


「バカヤロウッ!
 ビビってんじゃねえ情けねえ!

 いいか明日真。
 スタンドバトルってのはな…」


ズ ズ ズ ズ …


「ノまれたら負けなんだぜ…!」


【スタンド名:ビッグ・マシーン
 上半身のみのパワー型スタンド
 特に頭突きの威力は凄まじい】
こ…コイツ!?
さっきの腕だけの連中とは違う…!

ハゲヤローの背後には、半透明でメカニックなフランケンシュタインみたいな、ゴツい怪物がいた。

これも…スタンドってやつなのか?

そしてオレのこのグローブみたいのも?


ドドドドドドドドドド……

強い相手と闘りあう前のピリピリした空気が肌に痛いくらい伝わる…


どんな奴だろうと、オレは喧嘩じゃ負けたことはないんだ。

スタンド?負けた言い訳にはなんねー。

オレにだってスタンドはあるのだから…



 負 け ら ん ね ー !


ドクンッドクンッ…

その強い思いがナッツの両手に伝わる…


ドクンッドクンッ…

両手のグローブが脈動し大きくなってゆく…

ドクンッドクンッ…

そしてサッカーボールほどの球体となった。
その様はまさに火球(ファイアボール)!


「それがオマエのスタンドか…
 ブッ潰してやるぞッ!」

ハゲヤローは本体の右手とスタンドの左手による同時二重のパンチを放つッ!

ビュン!ビュオッ!!

それをすんでのところでかわす! …しかし!

間髪あけずに今度は本体左手とスタンド右手の、タイミングをわざとずらしたパンチッ!

ビシュッ!
  ズガッ!

「ぐあッ!」

スタンドのパンチをあばらにくらったッ!


バッッ!

ひるんだ隙をついて今度は四本の腕を広げナッツを捕獲しようとしてくる!

ナッツは火球をまとった拳でのアッパーで迎え撃つ… が、空振り!!
火球はナッツの腕からすっぽ抜ける!

ガシィッ!

ナッツは四本の腕で体を捕獲された!
み…身動きがとれない!

そしてスキンヘッドの男…
スタンド頭部を後ろに振りかぶっての…

「くらいな…
 うりゃあァ!!」
頭 突 き ッ ッ !!

 ゴ ガ ン ッ ッ ッ !!


身動きとれないナッツに凄まじい頭突き!


ナッツの脳がぐわんぐわんと揺れる…
足元がおぼつかない…

「ふっははは!
 オレの頭突きをくらってなお立ち向かってこれる奴などいない!!」


「あ、ああ…
 もう、立ち向かう必要は、ねーからな…」

ひゅるるるる……

「そりゃそーだ!オマエは敗北したんだよぉ!!
 かわいそーにスタンドも出なくなっちまうくらいのダメージでよぉ!
 ひゃぁっはっはっ…」

ド ゴ ォ ッ ! ! !

スキンヘッドの男の脳天を、火球が落下し激突した!!

さっきのアッパーの空振り…あれは火球を真上に放り投げるため…!

「、、、あ、た、ま、が、も、え、、、」 バタリ!


【スキンヘッドの男、中野
 スタンド名:ビッグ・マシーン
 再起不能】


「ふぅ、ふぅ、はぁ…
 さぁって、オマエもやるかい?ピアスマン!?」
(若干フラフラっとするけどよ。クソッ!)
頭突きのダメージがだんだんおさまってきたか…
オレだって石頭には定評があるからな…

このピアスマンは見るからにケンカも大したことなさそーだし、
スタンド腕とやらだけってんなら、とっとと終わらせてやるぜ。


そんなナッツの心を読んだかのようにピアスマンが言う。

「てめぇ〜オレのことナメてるだろ…
 弱そうなヤツだとかなんとかなぁ〜」

気のせいかピアスマンの眼光が鋭くなった。


「このオレのことナメるヤツは絶ッッッッッ対に許せねぇ!!!

 ぶちキレた時だけ出るオレのスタンド!
 『 ス プ ラ ッ シ ュ 』でぶっ殺すッ!!」


ピアスマンのスタンドが両腕(片腕だけじゃなかったのかよ)で発現ッ!
そしてその両手が重なり一瞬閃き…

ビュオッ!

凄まじい勢いで何かが発射されナッツの左耳あたりを掠める!

「…水? 水流か??」

ナッツの耳たぶから血が流れる。
凄まじい勢いの水流か!


「その通りだ! くらえオラァ!」

ビュォッ!
   ビュオッ!

今度は二発! しかし…

「ガードしただとぉ!?オレの水流ビームの切れ味が通じなかったというのか!?」

「頭脳が間抜けなヤツだ。
 水鉄砲で火事が消えるかっての」

ナッツの両手には再び火球が宿っていた!
その手で水流をガードしたのだ。

「しかし便利なヤツだなこの火の球は…
 さっき放り投げて消滅したかと思いきや、また生み出せるんだもんな。
 そしてくらいなピアスマン…

 クソクソクソクソクソクソクソクソクソがぁーーーー!!!」

火球つきの拳による高熱高速のラッシュ!!!

「どぶぅええ!!!」

【ピアスマン、明日真
 スタンド名:スプラッシュ
 能力:手から水を生み出し、
    両手合わせると水流ビームが出せる
 再起不能】




かなりの負傷を負ったが、入学早々ケンカ敗北という事態は免れたようだ…
しかし『スタンド』…
この妙な超能力者がこの学校に一体何人いるというのか。
まぁ何人来ようがオレのスタンドでぶちのめしてやるがな。

オレのスタンド…コイツにもこれからはお世話になりそうだ。

ビッグ・マシーンにスプラッシュ…

名前…か。
火の球でそのまんま、安直すぎるかもしれないが…


「ファイヤー・ボール…これからもよろしく頼むぜ」


【本体名:ナッツ(火国奈津也)
 スタンド名:ファイヤー・ボール
 パワー:0(本体のパンチ力に依存)
 スピード:0(本体のパンチ速度に依存)
 精密動作:D 持続力:D
 射程距離:C 成長性:A
 ナッツの両拳に出現する高熱を帯びたスタンド。
 時間経過によりグローブ型〜サッカーボールサイズの球体型へと進化してゆく。
 球体に完成した時、着脱、投擲可能。
 今後成長する可能性を秘めている。】



第1話 魑魅魍魎の巣食う高校
    To Be Continued ⇒
本体名:角本 マサユキ(角刈りヤロー)
 魍魎高2年F組のヤンキー生徒
 角刈り、常にガンを飛ばしている
 学ランの背中に「天上天下唯」までの中途半端な刺繍が入っている。
 スタンドなしでのケンカはあまり強くないが、ケンカっぱやい。

スタンド名:なし(「スタンド腕」と呼んでいる)
 能力:角本の右肩から生える腕のみのスタンド。
    特殊な能力は特に無い
 破壊力 :B スピード:C
 精密動作:D 射程距離:0(肩から分断できない)
 持続力 :D 成長性 :D



本体名:吊野 カツミ(吊り目ヤロー)
 魍魎高2年E組のヤンキー生徒
 常に寝グセのひどい頭で、目は吊り上がっている。
 以前ボコされかけたところを角本に助けられて以来、角本のことを慕っている
 スタンドなしのケンカは強くないが逃げ足は早い。

スタンド名:なし(「スタンド腕」と呼んでいる)
 能力:吊野の右肩から生える腕のみのスタンド。
    特殊な能力は特に無いが、ビジョンを出したり消したりの流れが角本よりスムーズである
 破壊力 :D スピード:B
 精密動作:B 射程距離:0(肩から分断できない)
 持続力 :C 成長性 :D
本体名:中野 タケオミ(ハゲヤロー)
 魍魎高2年F組のヤンキー生徒。
 いかつい体躯でスキンヘッドに「卍」。目が細い。
 普段はどうしようもない不良だがこと戦闘に関してはストイックな面をみせる。
 モデル系の年上の彼女がいるらしい。

スタンド名:ビッグ・マシーン
 能力:上半身のみのスタンド。
 メカニックなフランケンシュタインのようなビジョン
 頭突きの威力は凄まじい。
破壊力 :B(頭突きのみA)
スピード:C(頭突きのみB)
精密動作:C 持続力:B
射程距離:E 成長性:D



本体名:明日真 ヒトシ(ピアスマン)
 魍魎高2年F組のヤンキー生徒
 両耳にピアス10個、唇にも1つつけている。
 普段はビビりだが、ナメられるとぶち切れる。

スタンド名:スプラッシュ
 能力:クリアーな水色の、両腕のみのスタンドビジョン。
 手のひらから水を出す。
 両手を重ね合わせることで激しい水流をビームのように放つ。
破壊力 :C(水流ビームはB)
スピード:C(水流ビームはA)
精密動作:C 射程距離:0(明日真の肩から分断できない)
持続力 :B 成長性 :B
次回予告

角本
「あの野郎〜…
 次はもっと大勢で襲いかかってボコボコにしてやるぜェェ〜?」

吊野
「いや無理じゃね?
 …つーか『次』があんのか?オレらによ。」

角本
「…え? 出番のこと?
 そりゃオマエ、あるだろ?」

中野・明日真
「「 ねーよ。」」

角本
「そ…そんな声揃えて… いったいなんで!?」

明日真
「次はな、ナッツのライバルが出てくるんだとよ。
 中学時代からの因縁に決着をつけたりするらしい。
 オレらの出てくる幕はねーよ。」

角本
「そ…そんなバカなことが…」

吊野
「あるある。
 中野や明日真ならまだしも、『スタンド腕』なオレらはもう出番はないと考えていいんじゃないか?」

角本
「あ…う…」

明日真
「…!(オレはむしろいいポジションじゃね?)」


中野
「さて…。
 次回、FIREBALL 第2話は、
 【ミスターローリングサンダー】だそうだぜ。
 俺の頭突きが今度こそナッツを仕留める!」

3人
(ないないない…)
バ… バカな…

このオレが…

昨日に続いてスタンドゲンカで2連敗だとォ〜!?


黒コゲたような傷を体のあちこちに負いながら、
スキンヘッドのヤンキー…中野はゆっくりと崩れ落ちる。

「…オマエみたいな ひょろっちィ…野郎に…」

…バタリ

その横にはすでに気絶して伏せる3人の仲間。


その4人を見下ろす長身痩躯の影。
傷だらけの長ランは稲妻の刺繍が鮮やかに描かれている



「ケッ!
 弱っちィくせにケンカなんざフッかけてくるなっての…
 人を見かけで判断しちゃあいけねェんだぜ。」


雷命院 牢磁(ライメイイン ロウジ)
中学時代は『“雷鳴”ロー』と恐れられた男であった。




第2話 ミスターローリングサンダー


その日は学校に着いた朝から、ナッツはムカついていた。


昨日の入学式後の体育館ウラでの勝利の後、叩き起こした吊り目ヤローから得た『スタンド』についての情報…


「ああ…アンタはこれからもっと強くなりそうだから、教えといてやる…」

吊り目ヤローの言うことには…だ。

ナッツの『ファイヤー・ボール』や『ビッグ・マシーン』、『スプラッシュ』などは『スタンド』という、
超能力が姿カタチをもったようなものだということ…
その『スタンド』を自由に扱える者が『スタンド使い』だと…
そして、『スタンド』は『スタンド使い』にしか見たり触れたりできない…
『矢』によって生まれた『スタンド使い』、そして『行方不明者』が、この学校にはたくさんいる…と。



…そうだ。
オレもあの時 妙な『矢』にやられた。
スタンドに目覚めたのはあの時…って事か。

―オマエニハ、シレンヲアタエネバナラン…
 イキルカ、シヌカノナ…―

ふいに甦る記憶。
この学校にたくさんいるという、行方不明者…
それは 死者…じゃないのか?

不吉な思考が頭をよぎる。

今思えば、あの時見えない何かに首を掴まれ持ち上げられたのも、『スタンド』によるものじゃあないのか?
あれは、誰かのスタンドに殺されかけたんじゃないのか?

姿も現さないコソコソした何者かに、命を奪われかけた…


クソッ! 許せねェ!

いつかはボコボコにしなきゃならねー!
今はまだこの学校のこともよく分かってないし心当たりも無いのだが、必ず見つけ出してやるよ。クソッ。



ドンッ

考え事をしながら廊下を歩いていたナッツに誰かがぶつかってきた。

見ればアフロヘアーでちょいデブの頭の悪そうな顔をした色白な男子生徒だった。
短ランなんか着ちゃってるところをみるとヤンキーのようだが、
ズボンの裾が短くピンクの靴下が丸見えだ。



「…ねェ〜、なァにぶつかってきてェんのォ〜?
 目ん玉ァ ついてんのォ?」


このアフロ、いきなりケンカ売ってきやがるぜ…


もともとイライラしてるところに、また生理的に受けつけない容姿の男がぶつかってきて、
鼻がつまった舌っ足らずな声でケンカを売ってくる。
ナッツのストレスは頂点に達していた。


「ねェ〜 なんなのォ〜?
 しゃべらんないのォ〜?」

やけに近づくアフロの口臭が鼻につく。



…決めたぜアフロヤロー、
てめーのその髪、全ムシりさせてもらう!!
ナッツは右手を肩の位置まで持ち上げる。

その右手に精神を集中させる……!

ゴォッ!

ナッツの右手から炎が燃え上がったかのような光が立ち上り、
ボクサーグローブのようなものに包まれた状態になる。

しかしアフロには反応はない。
気づいてない。

オーケー、それなら…



「クソがァ!!」

ゴッツゥゥゥン!

アフロの顔面にナッツの頭突きがクリーンヒット!

「ふがふごォ!?」


ひるんだスキに…

「ぅおらぁッ!」

ドゴォッ!

ナッツの左拳がアフロの出っ腹に入る!

「ぶげっ!」


さらにアフロのその髪を左手で掴んで、思いっきり…

ブチブチブチィッ!

「ぶっぎゃぁぁぁあッ!!」

ムシってやった。


ふぅぅ…
とりあえず大分スッキリさせてもらったし、感謝しねーとな。


満足げな表情のナッツに、たまたま廊下に居合わせて目撃した生徒達はドン引きだ。
容赦ない攻撃に見えるが、スタンドは一切使わなかった。
昨日吊り目からスタンドの話を聞いた夜に、
『スタンド使いじゃない奴とのケンカではスタンドは使わないようにしよう』と決めたのだった。
なんか卑怯っぽいし、スタンドに頼って腕っぷしが弱まるのもいただけないから。


「はひょー、はひょー、
 な… なァんてひどい事すんのォ〜?」

アフロは涙目でムシられた頭を抑えている。


その時ナッツの背後から声がかかる。

「オイ亜原。
 オマエなにやってんだ?」

「はっ!ローさァん!
 こ…このリーゼントがオレをいきなりィ〜!」


…ローさん?


「てててめェリーゼントォ〜!
 てめェなんか羅刹中最強の“雷鳴”ローさんにかかれば瞬殺なんだよォ〜!

 さ、ローさん!やっちゃってくださいよォ〜」


「ケッ。
 …なんでオレがオマエの尻ぬぐいしなきゃなんねぇんだっての、亜原よォ。
 オマエのために戦ってやるつもりはねぇよ。

 とはいえ…だ。」


ナッツは振り返りその男を見る。
長い黒髪をオールバックにし後ろで束ねた、ややタレ目気味な色男…
長身ながら痩せ型な体躯に、傷穴だらけの長ランを纏うその男…

「よォ “雷鳴”ロー。」


「…飛び火の粉のナッツ。
 相手がオマエなら話は別だっての。
 やっぱりモーリョーに来てたんだな?」


空気が張りつめる…
いつ戦いだしてもおかしくないピリピリした緊張感。


「…近ェからな。

 やるか?」


「ケッ。今日こそ殺してやんよ…」




「…ぶひょ?」
拳をふりかざすナッツと 足をふりかぶるロー。


「クソがァァァァァア!」

「うらァァァァァア!」


ガシィィィン!!


交差する2人の攻撃。

拳と蹴りの直撃…ナッツの右拳に少なからずダメージが入る…が、
気にせず間髪入れずに左拳をローの腹部へ!

ドゴォッ!

「かはッ!」

今だッ!
ナッツはトドメをさしてやろうと右拳を握りしめ…

ズキズキズキッ!

「……!?」

先ほどのローの蹴りとの直撃で負ったダメージがナッツの脳天にまで駆け巡る。

その隙をついてローの回し蹴りがナッツのスネにヒットし、ナッツがつんのめる。

「うらァアッ!」

さらにローの膝蹴りがナッツを襲う。
かろうじて回避を試みるが、左腕にくらってしまう。

つんのめったナッツを深追いしたためかローもバランスを崩す。
それをナッツは見逃さない。

「くらァア!」

ナッツは右拳の痛みを気合いで耐えてローの左頬を殴り抜ける。



「クソがァッ!」

バキィッ


「だぁりゃァ!」

ズガァッ


「おらァッ!」

ボガァッ


「うらァッ!」

ドガァッ


2人の戦いは血みどろで泥くさく、決して美しいものではなかったが、
見る者全てが誰も邪魔できないような神聖な何かを感じていた。



ローの大振りのアッパーがナッツの顎を狙う。

これは喰らったらアブない!

瞬時に本能で悟るナッツ。
後方に回避を試みる…が、


ドンッ

背中を誰かに押され…

ドッガァァァア!!

アッパーがクリティカルヒットする!


ぐにゃ〜…
視界が歪み、意識が遠のく…



ローはナッツの背後から現れた男を睨みつける。

「…亜原、てめェ… 何しやがる…」


「ぶ、ぶへへ… 今ですよ。
 このリーゼント野郎を、やっちまってくださいよォ〜」
「 亜 原 ァ !! 」

ローがうつむきながら吠えた。

「…は、はひィ〜」


「つまらねーマネしやがって…
 
 …てめェは破門だ。
 オレもオレの仲間たちも二度とてめェとはツルまねェし助けねェ。

 てめェの顔は二度と見たくねェ。
 蹴り飛ばされる前に消えな。」

ギロリッ と亜原を睨む。


「ひ、ひぃぃぃ〜!」

ローの迫力にチビりそうになりながら、
その場をドタバタと走り去る亜原。




ナッツに駆け寄るロー。

「お…オイ。 生きてるか?」


「…し…死んで、ねェぞ……」

ナッツは横向で倒れてはいるが、必死で顔を上げて応える。

「まだだ… まだ、ヤれる……」




あの時と同じだな…


そう2人は思っていた。
始まりは…ただの、下っ端同士のケンカだった。

負けた方が、仲間を連れて報復を果たす。
報復された方は、自分の頼りにする先輩達を呼んで。
繰り返しながら事は大きくなってゆく。

そして最終的には、当時 修羅中最強と呼ばれた『飛び火の粉のナッツ』の下へ、
羅刹中最強『“雷鳴”ロー』の一派が乗り込む事態となった。


互いの取り巻き達がギャラリーとして沸き立つ中、2人は殴り合いを始める。
互いに背負うものがあり、負けられない勝負…
それは凄まじく、もはやケンカの域を優に越えて、戦いと呼べる程であった。

しかしギャラリーたちは幼く愚かであった。
勢い余った羅刹中(ロー側)の取り巻きの1人がナッツに向かって石を投げる。
それがナッツの左目に当たり、避けられるはずのローの一撃を思い切り喰らってしまう。

「石投げやがったのはどいつだァ!?」
「ふざけんなコラァ!?」
「かまうか!やっちまえェ!!」

取り巻きの何人かが小競り合いを始める。


「…やめろコラァ!!」

ローの一喝で羅刹中の一派は動きを止めるが、石を投げられヘッドをヤられた修羅中の一派はそうはいかない。
本来止めるはずのナッツはKO寸前の状態で止めるすべもない。
ヤられっぱなしでは羅刹中も黙ってはいられず…

かくしてヘッド同士のタイマンで済むはずだった抗争は大規模なものへと発展してしまう…


学校側と警察が介入し数人のケガ人だけで済んだが、ナッツとローの勝負の行方はあやふやなものとなってしまう。

お互いあんなカタチの決着は望んでいない。
願わくば再戦を…

それは双方思っていたことだったが、
また同じ争いを起こしてしまうことを避けるために、再戦はしていなかったのだ…







そして2人は魍魎高に入学する…



「おい!起きろよナッツ!」

「う、うるせー… オレは負けてねーぞ…」


「そうか… それならいいんだ。」

スッと立ち上がる。

「決着はまたの機会につけようっての…」

その場を離れようとするロー…

「…!!」

体が、動かない!?

ローの四肢が、ピクリとも動かせないのだ。


グググ……

ローの右腕が勝手に持ち上がる…

ブォンッ!

ドガァッ!


ロー自身の右頬を殴り抜けた!


「なんだァ!?これは…」
異変に気付くナッツ。

まだ頭がぐわんぐわん揺れて視界も霞んでいるが…
なんとか顔を上げてローを見た。

ローの額、首、両手首、両肘、両膝、両足首に白い紙テープの輪っかのようなものが巻かれている。
そしてそれぞれからさらに白いテープが、ローの後方に伸びていく…

ローの背後5mあたりにいる1人の男…

小太りでアフロの男、亜原…!


「ぶっひゃーひゃっひゃァ!
 面白いほど簡単に引っかかったねェ〜!」

爆笑する亜原の両腕から生える、また別の白い腕… スタンド…!
そのスタンドの手、両の指10本から伸びる白いテープがローを拘束しているようだ。


「ローさんよォ〜
 アンタにゃ見えないだろうが、オレの『バッド・コミュニケーション』に捕まったら、
 もう動けないんだよねェ〜!

 動けないどころかよォ〜…」


亜原がスタンド『バッド・コミュニケーション』の指を一本、くいくいっと動かす。


ぐぐぐ…

ローの左脚が持ち上がる…

ドガァッ!

ナッツに蹴りが入れられる!


「…オレの手のひらの上…ならぬ指先で転がされる人形になるんだよねェッ!
 ほれほれェ〜」

ドガァ! ドガァッ!

ナッツはもううずくまったまま動けないと判断したのだろうか、
今度はロー自身の腕でローを痛めつけさせる。


【スタンド名:バッド・コミュニケーション
 白い腕のみのスタンド。
 指先から標的を拘束し操作するテープを放つ】



「…ぐ、ぐぅ…
 …亜原、テメーいったい…?」


「ぶひゃ…
 ずっと前から気に入らなかったんだよねェアンタのことが…
 目覚めたスタンドもいつかアンタを仕留めるために隠してたんだァ〜

 オレのおかげでソイツにも勝てたっていうのに、感謝もしねェどころか、
 破門なんてフザけたことを抜かしやがって…
 中学ん時のソイツら修羅中との戦いだって、オレが石投げてやったから勝てたんだよねェ…」


あの時もコイツが!

あの時はたしか…
オレが怒りながら石投げた犯人探した時は知らんぷりしてやがったくせに…
オレに勝ったと確信したからぺらぺらとしゃべり出しやがったか…
前から気に入らない奴だったが、なんてコずるいヤローだ!

こんな奴のせいでナッツは立ち上がれない状態になっちまった…


ローは小さくナッツに声をかける。

「ナッツよォ…
 すまねェな。
 人を見る目がなかったオレが悪いんだ。」


「気にすんなよ。
 オレは立ち上がれないんじゃない…
 立ち上がらないんだ。」





「なァにをブツブツ呟いてんのォ〜?
 もういたぶるのはや〜めた!」

スッ…と懐からナイフを取り出す亜原。

「これでイッキに終わらしてやる!
 ナッツとローを倒したオレは名をあげられる!
 オレの名誉のために死んでよねェ〜!」
「…この白いテープみたいのが…
 亜原、オマエのスタンドか?」


ローの言葉に亜原はナイフを投げようとしていた腕を止める。

スタンドはスタンド使いにしか見えない…はずだ。


「み…見えてるのか?お前」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……



「質問を質問で返したなァ?亜原よォ…
 だがオレが求めてた通りの反応でホッとしたっての。
 オマエはそのナイフを投げられない。」


ローの両脚がさらに眩い光に覆われる。


バチバチッ!ジジジッ!


閃光が走る!
バッド・コミュニケーションのテープを閃光が伝わり亜原へ…

ビビビビビビッ!!


「ぶぎゃァァァ!」



今だ!

ナッツは立ち上がる。
その右手にはすでに球体となって燃え盛るファイヤー・ボール!

「クソがァァァア!」

ドッヂボールの如く火球を亜原に向かってブン投げる!


ボゥンッ!!

亜原は思わずスタンドの腕でガードする…が、


「あぢっ!あぢぢぢィィィイ!」


あまりに高熱!

ローを拘束していたバッド・コミュニケーションを思わず解除してしまう。




「ふぅ…
 ようやく解かれたか…
 根性ナシで助かったっての。」

そう呟くローの脚には、ほんのり黄金色に輝く金属片を幅10cmくらいの輪っかにしたようなものが左右5個ずつ、
脚を軸に回転しながら火花を放っていた…


「オマエもスタンド使いってェんなら!
 オレも遠慮する必要はねーなァ!?

 ミ ス タ ー ・ ロ ー リ ン グ ・ サ ン ダ ー !! 」


金属片の輪っか…ミスター・ローリング・サンダーの回転が早くなり、輝きも増してゆく。
放つ火花もバチバチッという音も増してゆく。


「チィッ! ローさんよォ…
 アンタもスタンド使いだったとはねェ〜
 でももう一度捕まえてやればいいことよ!
 バッド・コミュニケーション!」


亜原のスタンドの指先から10本の白いテープがローを捕らえようと伸びる。


しかし…そのスピードはローの動態視力を持ってして見切れないほどではなかった。
ミスター・ローリング・サンダーをまとい青い火花を散らすローの脚に、
次々と蹴りおとされるバッド・コミュニケーションのテープ!

そしてローは亜原に向けてまっすぐ左足を伸ばす。
片足立ちするローの姿勢はしなやかで美しく、ナッツは一瞬目を奪われた。


「発射だ。 ビ リ ビ リ 喰 ら い な !! 」


ローの左足から金属片のリングが次々発射される!

ドスドスッ!ドスッ!ドスッドスッ!

亜原の体に次々と突き刺さる!
そして…

ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリッ!!

激しい電撃の閃光が亜原を包む!
亜原の骨体が透けて見えるかのようなスパーク!

「うっびゃァァァァァァァァア!」





金属片の輪は光を失い落ちる。
そこに残ったのは真っ黒焦げになったアフロの男。
そのアフロは一段と大きくなって煙を立ち昇らせていた…


【アフロの男、亜原
 スタンド名:バッド・コミュニケーション
 再起不能】




「ロー、 オマエ…」

「ナッツ…」


目の前の宿敵は、オレとの決着をつけるのにスタンドをあえて使わなかった…
オレがスタンドを使えないと思っていたから…!

2人の思考は同じものだった。


「…ぷっ、ははははっ!」

「はっはははは! バカじゃねーの!」

「バカはオメーだよ!ぎゃっはっは!
 決着どーすんだ!」

「どーすんだもこーすんだも、今日ってことはねーだろ!ぶははっ!」


笑いが堪えきれない。
あれだけいがみあってたのもなんか笑える。
体はボロボロになりながら、なんでこんな気分なのか二人にもよく分からない。


「ははは…
 なぁ、ナッツよォ。」

「はは…ん? なんだよ」


「…あー、なんつーか…

 ……サンキュな。」


「ぶふっ! ぎゃっはっはっはっ!」

「…あっテメーこらァ!」





飛び火の粉のナッツ

“雷鳴”ロー

二人は偶然にも同じクラスに入学する。



【本体名:ロー(雷命院 牢磁)
 スタンド名:ミスター・ローリング・サンダー
 パワー:0(電撃の破壊力B)
 スピード:0(『発射』時はB)
 精密動作:D 持続力:D
 射程距離:C 成長性:A
 ローの両脚に出現する電気を帯びたスタンド。
 金色の金属片を幅10cmの輪にしたような形状で、ローの左右の脚に5個ずつ嵌まりシュルシュルと回転し続ける。
 回転を増すことで電気が激しくなる。
 『発射』させることもできる。
 体を離れた輪は徐々に回転を失い電力も弱まる。
 今後成長する可能性を秘めている。】



第2話 ミスターローリングサンダー
    To Be Continued ⇒
本体名:亜原 ダイキ
 1年F組のヤンキー生徒
 小太りで色白でアフロ。服装は普通の短ランだがおなかがはみ出ている。
 顔の造り自体は決して良いとは言えないが、肌はやたら綺麗だったりアフロが綺麗に整っていたりしてそれが逆にムカつく。
 鼻がつまったような妙に高い声で、舌っ足らずのように喋る。
 本人は「痩せればモテるし、本気を出せばいつでも痩せれる」と思っているが、
 モテない原因は小太りだけではないし、生涯彼の言う「本気」が出されることはないだろう。

スタンド名:バッド・コミュニケーション
 能力:白いテープでグルグル巻きにされた両腕のみのデザイン。
 指先から先端が輪になったテープを10本まで伸ばせる。
 標的の体の各部位を縛り付け、動きを封じたり操ったりする。
 破壊力 :E スピード:D
 精密動作:B 持続力 :D
 射程距離:C(テープは15mくらいまで伸ばせる)
 成長性 :B
次回予告


亜原
「ちょっとちょっとなんなのォ〜?
 上の、このキャラ紹介は!?
 カンッペキに中傷じゃないのォ〜?

 仮にもナッツとローの2人と互角の戦いを演じたオレに、
 この紹介文はひどくなァ〜い?

 てゆーかオレが本気を出したら、あんなクズどもなんざ瞬殺なのにィ〜

 まったく見る目の無い…… ハッ!!」

ロー
「亜原よォ…

 聞 こ え て た ぜ ? コラ」


亜原
「はぶひょ!?
 違う違うよローさん!
 オレは改めてアンタに忠誠誓ったんだよォ!
 アンタの悪口なんて言うワケ無いじゃないかァ〜」


ロー
「…ふん、そーかい。
 まぁいいけどな。

 オレはこれからナッツ誘って床屋行ってくるっての…
 オレのいない間に妙なマネすんじゃねーぞ?」


亜原
「…床屋? …ナッツを誘って床屋?
 一人で行けばいいのに…
 さてはローさんアンタァ…寂しがり屋?」


ドゴッ! ドガッ! バギッ!


ロー
「…じゃあな。」



亜原
「…い…行ったか。
 それにしてもなんてひでェ奴なんだ。
 いつか奴をぎゃふんと言わせてやるよォ…

 でもオレ… 出 番 あ る か な ?

 そんなワケで…
 次回 FIREBALL 第3話は、
 【床屋さんへ行こう】だそうだよォ〜。

 オレもアフロ整えてもらいに行くもんねェ〜♪」
魍魎高のほど近く。
ゲーセンでも寄ってから帰ろうかと舎弟を3人ほど連れ歩く長身痩躯の色男ヤンキー、“雷鳴”ロー。

ある店の前にさしかかった時にその足が不意に止まる。

「…シブいな。」


舎弟の一人がローの様子に気付く。

「どーしたんすかローさん?
 立ち止まったりして…」


「…あ、いや何でもねーっての。
 行くぜ。」



その『店』…

『リーゼントの般若』や
『パンチパーマのドクロ』や
『ドレッドヘアーの明王』の生首オブジェがウィンドウに並ぶ『店』…

看板にはこう書かれていた。


――――――――――――――――――

 テメエの髪型はオレが決める

 テメエのカラーはオレが染める

 気に入らなけりゃ切り逃げ上等

  ヤンキー専門 斬髪サロン 

 ギ リ ギ リ チ ョ ッ プ 

――――――――――――――――――




第3話 床屋さんへ行こう


「よォ。ナッツ」

朝のさわやかな登校中に背後から呼びかけてくるのは、ローだ。
朝…と言っても午前10時なんだけどな…

「おゥ。遅刻ヤロー。」

この一言がローを少しムカつかせた。
せっかく面白そうな店を見つけたから教えてやろうと思ったのによ。

「あァ?テメーも遅刻じゃねーかっての。
 ネボスケが。」

「なんだコラ?
 朝はまったりしてーんだよ。おォ?」


ゴゴゴゴゴゴゴ…

ガンを飛ばしあう2人…


「やんのか?決着つけてやんぞ?」

「こいよヒョロ郎が。」

「ピーナッツ。」

ぷっつーーーーん


「「うぉらァァァッ!!」」


2人同時に放ったパンチは互いにクロスカウンターのようになり…

ドガァァッ!!

「ぶはっ!」
「がふっ!」

2人ともぶっ倒れた。
「…てゆうわけでよ、
 その床屋の看板が面白そうだから、一緒に行かねーかと思ったんだよ。」

ヨロヨロ歩きながら言うローの綺麗な顔立ちは痣で台無しとなっている。

「あァ?なんでオメーと一緒に行かなきゃならねーんだよ。
 こないだのアレでナカヨシにでもなったつもりか?」

返すナッツの顔もひどい痣だ。

「…言ってくれんじゃねーか。
 地味にフツーのリーゼントで一生やってろよピーナッツが。」

またしても2人に不穏な空気が流れる…


「あァ?またやんのかこのヒョロ郎がよォ!?」

「んだとコラァ!」


一触即発の場。
またしても喧嘩を始めてしまうのか。
この2人の無限ループ的なやりとりにより物語は破綻してしまうのか…




そこへ現れた新たな男…

「あれェ〜〜?
 また喧嘩しちゃってるのォ〜?」

アフロのデブ、亜原だった





「…その『床屋』なら知ってるよォ〜?
 オレのアフロもそこで直してもらったばかりだしねェ」

舌ったらずな喋りが耳障りだ。
確かに亜原のアフロはとても(無駄に)キレイに切り揃っている。
ムシってやったり黒コゲにしてやったにもかかわらずだ。


「なんでもヘアースタイルやら色やらに関して、客の要望は一切受け付けなくて、
 店主が客の顔を見て独断で切り始めるんだよォ〜

 気に入らなければ金はいらねぇとか言うんだ。
 オレは気に入ったから払っちゃったんだけどねェ」






興味を持ったナッツはローと一緒に学校をサボり、噂の店へと行くことにした。

その2人の背を見送りながら亜原はニヤリとほくそ笑む…

「ぶひひ…
 実は気に入ったから払ったんじゃないんだよねェ〜
 店主がおっかないから…

 なんでも噂じゃあの店主、

 ス タ ン ド 使 い らしいからねェ〜〜」
「ヤンキー専門…ざんぱつって読むのかこれ?斬髪サロン、
 ギリギリチョップ…か。

 確かにシブいが…大丈夫かコレ?」


怪しい店の看板を訝しく思うも、内心は好奇心をツンツン刺激されまくっているナッツ。


「知らねーよ。
 気に入らない髪型にしてくれやがったら文句言って出りゃあいーんだっての。
 そんで別んトコ行けばよォ。

 てゆうか、お前いくら持ってんの?
 オレ1000円くれーしかないぜ。」


「あ?オレは…
 300…円、…弱だな。」

しれっとした表情で応えるナッツにイラっとくるロー。

「お前…ハナっから金払う気なんかねーな?」

「おう。気にいらねーって言っときゃいいんだろ?」





カランカラン


「…いらっしゃいませぃ…。」


出迎えたのは黒髪に銀のメッシュの入った前髪だけやたら長い、
目の下にクマのはっきり残る、ネクラそーな男だった。
歳はオレらとそー変わんないように見える。


「あー、2人でお願いしたいんだけど…アンタ店長?」

「…僕は見習い。
 親父ちょっと呼んできますんで、
 …そこ、座ってて。」


理髪イスに座らされ待つナッツとロー。
店内の奥の方から下手糞なエレキギターの音がガーガー聴こえてくる。
さっきの見習いが息子で、その親父が店主ってとこか…

ギターの音が止み、さっきの見習いが戻ってくる。

そして、その後ろから現れたド派手なおっさん…


「へえー、
 なかなか気合いの入ってそうなガキじゃあねーか!!」

紫の豹柄の派手なライダースジャケットに、袖口が異常に広がったブーツカットのレザーパンツ、
ヒゲや髪を茶髪に染めてアメリカの国旗のバンダナをかぶった、
陽気そうなグラサン男が、葉巻を加えて出てきた。

突然おっさんがビシイッとナッツを指さす。

「リーゼント似合ってんな。
 おめー、周りからはなんて呼ばれてンだ?」

「あ?…『飛び火の粉のナッツ』だよ。」

「OK。てめーはもう、『決定』だ。」

ナッツとローはあっけにとられている。
もはや完全にこの店主のペースだ。

おっさんは今度はローを指さす。

「ロン毛の色男、おめーは?」

「『“雷鳴”ロー』だ。
 そんなこと聞いていったい…」


「あーいい。それさえ聞けりゃ十分だ。
 もうお前も『決定』だ。
 
 お前ら気に入ったぜ。
 このギリギリチョップの店主『霧埼ガク』が、
 最高にイカした髪型にしたててやんぜ!

 おいザン!こいつらにコーヒー出してやんな!」

すると、もう用意できてるよと言わんばかりに
さっきの見習いが2人にコーヒーを差し出す。
霧埼ガクとか名乗った店主はガハガハ笑いながら再び奥へと去っていった。

「…親父はいつもああなんだ。
 これから僕がシャンプーする。
 そしたら親父がカットしてカラーリングして…
 とりあえずまかせてくれればいいっすよ…」





ナッツとローは見習い『霧埼ザン』のシャンプーの気持ちよさに感心した。
ケンカばかりの日々だがたまにはこういうのも悪くない。

頭へのマッサージも兼ねてんのか?
なんだか眠たくなってきた。

…このまま寝ちまうか。





「…コーヒーの睡眠薬が効いてきたか。
 こいつら目覚める頃には全部仕上がってるのさ…

 親父ィ…シャンプー終わったよー…」
ん…あ?

いつの間にか眠ってたのか…


先に目を覚ましたのはロー。

「オゥ!やっと起きやがったな!」

いきなりおっさんのどアップは寝醒め悪い。

「完成したぜ!
 鏡ィ見てみろや!ガッハッハ!」

鏡を見るロー。


ローは、長髪オールバックこそ そのままだったものの、
眩 し い く ら い 見 事 な 金 髪 に 染 め 上 が っ て い た 。

もともとサラサラな髪質は損なわれず、これほど綺麗にブリーチをかけるのは難しいはずだ。
色白なローの顔立ちに金髪はよく似合う。
マユ毛なんかも金にそまっており、外人モデルのようだ。
店主霧埼ガクの遊び心だろうか、所どころに白銀や水色やグレーのメッシュが入っており、
まさに火花を散らす雷光のようだ。

「おお・・・」

思わず声を上げるロー。

立ち上がると、長身痩躯にまとう傷だらけの長ランの、稲妻の刺繍がより美しく見える。


(す…すげぇ…)



「『“雷鳴”ロー』の名に恥じねえだろ?
 もともと名が売れてたんならあんまりイメージは変えねえほうがいいだろうから、
 カットはあんまりしてねーよ。
 その分ブリーチとカラーには気合い入れたつもりよ。

 お?『飛び火の粉のナッツ』も目を覚ましやがったな?」


「ああ… さっきから見せてもらってるぜ…」

ナッツもまた、鏡に映る姿を見ていた。


ナッツの頭は、 燃 え る よ う な 紅 蓮 の ソ リ コ ミ リ ー ゼ ン ト と な っ て い た 。

耳にかかる部分にいくほど暗く、そして頭頂部はオレンジ。そのグラデーションが美しい。
黒や金や紫のメッシュも入り、まさに燃え盛る炎の火の粉のようだ。
長めの後ろ髪は攻撃的にツンツンと後方を刺す針山のようになっている。
右のソリコミに入っていた『NUTS』という黒い刺青の文字は、上に行くほど赤くなるように染まっていた。

鏡に向かって真正面からガンを飛ばしてみると、
ソリコミ部分から伸びる2本の黒いメッシュが禍々しく、まるで悪魔の角のよう。


(すげぇな…)


「がっはっは!
 飛び火の粉ってゆーよりはおめー自身が特攻する火の玉みてーな印象受けたからよ!
 オレ様久方ぶりの自信作ってヤツだ!」




しばらくポカンと鏡を見ていた2人。

この店主の腕は本物だ。

完璧なる『ヤンキー専門店』だ。
ケンカの前に相手をビビらせることまで計算にいれて、
本人の通り名に恥じないような髪型を完璧に作ってくれる。

店主ガクはがっはっはと笑って奥の部屋に去っていった。



「あの…会計なんだけど…」

見習いのザンが話しかけてきた。

ふと我に帰るナッツとロー。
互いに目を見合わせる。

(金、ねぇよな?)

(払わねー方向で。)

アイコンタクトを交わす。


「あー、オレらよ、正直気に入ってねーんだ。」

「そうそう。もっとバッサリいってほしかったっつーかよ。
 だからそんなわけでオレらは…」


「「 さ よ な ら !!! 」」


走って逃げるように店を出る2人。

ザンはプルプルと震えながら拳を握りしめる。

「あいつら…ほんとはメチャクチャ気に入ってたくせに…許せねえ!!」


突然姿を現した親父がザンに声をかける。

「まあ予想していたことよ。金なんてなさそーだったからな。
 とはいえ『気に入ってた』のに払わねーのは当店のルール違反だ。

 ザン! いつも通りとっ捕まえて懲らしめてきやがれ!!

 おめーの【ジャップザリッパー】使ってもいいからよ!」

 
「しかしアレだな、この出来なら金払ったってよかったかもしれねーな。」

燃える紅蓮のリーゼントを撫でながらナッツは呟く。


「お前… 財布の中見てからそうゆうこと言えっての…」

稲光のような金髪オールバックをたなびかせながらローは呆れ顔でナッツを見る。


てくてく学校へ向かう2人の後方から、叫び声のようなものが聞こえた。

「待てェお前らぁぁぁぁあああ!!!」


「げ!」
「あいつは…」

さっきの見習い、霧埼ザンがチャリンコで追っかけてきやがった!


ローはすぐさま走って逃げようとする。が…

「待てよ。」 ナッツが止める。

「ああ!?なんでだよ!?」

「ビビって逃げるなんざしたくねぇんだよ。
 切り逃げ上等ってェ店で切り逃げしただけだ。」

ザンを待ち受けるように立つナッツ。


「ケッ、好きにしろよ。
 お前のやり方、見届けてやんよ。」

ローはその後ろに控えることにした。






「いい・・・」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・


ザンが、チャリから降りる…

「いい…度胸スね… アンタら… 」


その視線を真っ直ぐこちらに向ける。
百戦錬磨のヤンキーばりのガンつけだ。

「確かにウチの店は『切り逃げ上等』だ。
 だが、まだアンタらは僕から逃げ切れてない…

 この僕から逃げ切ったらその時はアンタらの勝ちだ…」


ザンが両腕を空手家のように構える。

両腕から、奇妙な銀色の光が放たれる…


「だがよぉ!
 僕にとっつかまったんなら、支払ってもらうぜェ!!!」


ザンの両腕の銀色の光が強くなる。
そして、腕をばりばり突き破るように、
肘から手首にかけて、銀色の刃がせり出してきた!


「…ふぅーーー、
 
 これが僕の【ジャップザリッパー】だ…」


こいつ…スタンド使いだと!?
 
「てめーもスタンド使いだってんならよぉー。」

ゴゥッ!

ナッツの右手に炎が宿る

「こっちも遠慮することはねえなぁーー!」


【スタンド名:ファイヤー・ボール
 ナッツの両拳に出現する高熱を帯びたスタンド。
 時間経過によりグローブ型〜サッカーボールサイズの球体型へと進化する】


ファイヤー・ボールの放つ高熱が数メートル離れたザンのところにも届く。

「アンタのスタンド、シンプルすぎるうえにまだ未完成なシロモノとみえるね…」

…未完成だと?
なんでそんなことが分かるってんだ!?

「試してみろやァーーー!!」

ザンに殴りかかろうと駆けるナッツ。
しかし…

ビュオン!!


何かが凄まじいスピードで通り抜ける音がした。

そして…

ドッバァァーーッ!

右肩から勢いよく噴き出す血飛沫。
見ると深く鋭い傷ができている!

痛みこそたいしたことないものの…
いや、だんだん痛くなってきやがった。
いったいいつの間に!?


「ナッツ気をつけろ!
 ヤツは何か飛ばしてんじゃねーのか!」



ザンは腕をビュンと振る。
腕の刃がキラッと輝いた。

ヤバい!!

ナッツは咄嗟に身をかがめる。

スパッとリーゼントに傷が入り形が崩れた!

「てめェ!」

「気に入らないんだろう?その髪型…
 だからバッサリいってやろうかと思ったんだよ。」


「……」

ナッツは無言でザンを睨む。

ザンは身構えて、再び刃を煌めかせる。

「ホラホラホラァーーー!!バッサリよォーーー!!」
 
ズアッ!


切れたのは…すでにサッカーボールくらいのサイズとなっていたナッツの火球!



「見えねーとはいえよぉ…
 狙う場所が分かってんなら、ガードするのは容易いぜコラァ!!」


火球は傷こそ入ったものの完全に切れたわけではなかった。
高熱を放つスタンド…
高熱とはまさに周囲の気流をも揺らめかせる!
ザンの放った見えない何かは火球に辿りつくまでに勢いを失っていったのだ。

そのままその拳をふりかぶり…

「くそがァーーーー!!」

ザンに投げる!!


「う、うわぁーー!!」

慌てて腕をブンブンと振り回すザン。

いくつもの見えない何かが火球めがけてとんでいき、
遂には火球を真っ二つに裂いて失速させる。
二つに分かれた火球は地面へと落ち、燃え盛る色を失ってゆく…

「ば…ばかめ!
 僕の【ジャップザリッパー】に切れないものなんてない!」

そう強がりを吐いた瞬間、さっきまでの場所にナッツがいない!!

き…消えた!?


「てめーのスタンド、なんとなく理解できたぜ。
 
 その腕の刃で、『空気を切り裂くスタンド』なんじゃあねーのか?
 
 真空波だとかカマイタチとかいうヤツで俺を攻撃してきたんだ。
 違うかい?」


真横!!
バッと振り返るが、もう遅い。

ザンが火球に慌てている間に急接近したのだ。


「そしてよォ…」

ナッツの左手にはもう一つ、燃え盛る紅蓮の炎の球が宿っている!!



「わかってりゃぁ対策は簡単だ。

 このファイヤー・ボールを裂いて俺を攻撃できんのか?てめーはよ!」


「ヒィーーーーーッ!」


「うるァーーーーー!!」

ザンは覚悟した。
こいつのこの高熱スタンドでボコされる!


・・・・・・

・・・攻撃されない?



「いや、よく考えたら、金払わない俺らが悪いんだと思ってよォ。
 あっはっは・・・」

「その通りだぜ。正直気に入ってんだ。これ。
 また金ができたら払いにくっからよ。」

バツが悪そうに笑うナッツとロー。

「そ…そうすか。
 いや、払ってくれるんなら僕は別に…」



「 待 ち な ! 」 



げ!
あいつは…

ザンが呆けた顔で見る。

「親父!?」
「がっはっは!
 いつか払うだぁ!?

 ダ メ だ ね ! ! 」


紫の豹柄のライダースジャケット、アメリカ国旗のバンダナ
グラサンに葉巻のマッチョなおっさん!

 霧 埼 ガ ク !




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「2人ともまとめて捕獲してやんぜぇ…
 
 ナッツ、ロー。

 スタンドを出してかかってきなァ〜」


寒気すら感じる。

このおっさんはただものじゃあない!!

ナッツは再び両腕に炎を纏わせる。
そしてローもまた、両足に金属片の環、左右各5個を発現させた。

【スタンド名:ミスター・ローリング・サンダー
 ローの両脚に出現する電気を帯びたスタンド。
 回転を増すことで電気が激しくなる】


「ほーう。
 それがあんたのスタンドか。
 どう見ても明らかに『電気系』…

 炎や電気じゃあ俺様には勝てねぇよ。

 この俺様のスタンド【ギリギリ・チョップ】には勝てねえよ…」


ゾゾゾ・・・

ガクの背後に、3メートルはあろう巨大な『ガイコツの手』のスタンドが現れる。
白骨ではなく紫色なのが毒々しい。


【本体名:霧埼ガク
 スタンド名:ギリギリ・チョップ】


「お前ら負けたらなぁ、
 1週間くらいうちで泊まり込みで働いてもらうぜェ!

 もちろん学校にも行けねえし家にも帰れねえなぁ!ガッハッハ!!」
 
 
頭が、ぐらぐらする…

体は、ぼろぼろで立ち上がれねー…

だがなんとか、目は開くぞ…


ナッツが目を開けた時、まず見えたのは心配そうに覗きこむザン。
顔を横に向けると、ガクが葉巻吸ってる。
俺の横には、俺と同じようにブッ倒れて未だ意識を失っているロー。

負 け た ・・・ のか。

2人がかりで・・・


くっそ!!
高校上がって1週間でもう負けかよ!!!

しかも相手はなんだかよくわかんねーおっさんに!!!

「ふ…ふざけんな……」


「がっはっは!
 目ェ覚ましやがったか!

 だが、勝算はあんのか!?」


…勝算だと…?

…ねえよ。
勝てる気がしねーんだ。

わけがわかんねー…



**********


「ナッツ、今度は俺がいくっての…」

金髪をたなびかせて一歩前にでるロー。

「おう。」


そしてニヤニヤ笑うガク。

「2人でかかってきた方がいいぜぇ!ガキ共。」

「うるせぇ!!」

ガクの元に駆けだすロー。

「駆けてきたな?
 それは自分のスタンドが接近しなきゃ使えねーって公言してるようなもんだぜ!」

ブォン!

ガクの背後に現れていた巨大な『ガイコツの手』…【ギリギリ・チョップ】が猛スピードでローに迫った!

「くっ!」

とっさに蹴りを放つロー。
しかし目前で【ギリギリ・チョップ】は中空に浮かびあがり、かわされてしまう。

「いい反応だ!
 だが、お前のスタンドは足グセにだけ気をつけりゃいい。
 一目見りゃわかる!」

ブァッ…

ローの目の前でガイコツの手は広がり、ローの上半身を捕え、握りしめる!

上半身から持ち上げられたローは、片足を持ち上げる…
その片足は、ガクへと向けられている。
あの構えは…あの時の!

「ビ…ビリビリ…、く…らいな…!」

ローの片足から、ミスター・ローリング・サンダーの環が発射される!


「おもしれぇことができるじゃねーか!
 そして考え方はいい。
 スタンドが強いんなら本体を狙うっていうその思考は『正解』だ。
 だが…」

ブォン!
ガシガシガシガシガシィ!!

もう一つ…だと!?
もう一つのガイコツの手が現れて全てはたき落としやがった!!

「ちょっとビリっときたな。
 ついてなかったなガキ!俺のは両手があるんだぜぇ!
 片手出してくる敵は間違いなくもう一本腕を隠してると思うんだな!」

説教たれやがって…


「ナッツよぉ!ぼうっとしてていいのか!?」

そのもう一つが俺に迫ってくる!すげースピード!
しかしもう火球はできてんだ!

身構えるナッツ。

ナッツの目前で【ギリギリ・チョップ】は止まり、
旋回してナッツの背後に回ろうとする!

「させるか!」

その動きを見極め、体の向きを変え標的を正面に捉える。

「クソがぁ!」

火球のパンチ!完全に捉えたはずだったのに…
ギリギリ・チョップは寸前で後ろに下がり紙一重でかわす。

「ファイヤー・ボール!!」

そのパンチの勢いをそのまま放つ!

…が、

バシィ!


デコピンだと!?

デコピンの要領で火球は飛び散らされる。
火球が砕け散ったことで、ナッツの意識がクラっと遠のく。

「俺様の【ギリギリ・チョップ】もたいしたスピードだろ?
 そして覚えておけよ。スタンドのダメージは本体に返るんだ!がっはっは!」



ナッツとローの頭上に、【ギリギリ・チョップ】の巨大な手刀(チョップ)が振り落とされた…
 


【ナッツとロー:敗北】
 
マジに1週間だ。

冗談じゃなかった。
マジに1週間、泊まり込みで働かされた。

ちっくしょ、拉致監禁じゃねーのかこれ?


1週間の間…朝は筋トレとマラソン。ありえねー。

10時から店内の掃除。
11時開店。客が来ない間はひたすらスクワット。
何やらせんだこいつ?

夕方6時の閉店後、俺ら2人対ガクのスタンド喧嘩。
「勝ったら逃げていい」って言うから本気でやるんだが、さっぱりだ。

夜はガクによる、「スタンドバトルとは」みたいな講釈。

説教くさいが、ガクは相当いくつもの死線を潜り抜けているようで、
スタンドに関する知識はハンパない。

こういう時はこーするだとか、
まずは敵の能力を知れだとか、
そのためには観察しろだとか、
こんなスタンドやあんなスタンドがあるだとか…

ぶっちゃけちょっと面白い話だったり。



そして1週間がたった。



「今日から学校行っていいぜ?
 そんで学校終わったらまっすぐ家帰れ。」


「「 ま じ っ す か !! 」」

気がつけば敬語だ。

「うっわ超嬉しい!地獄の日々だったし!」
「おう!まぁ意外と嫌いじゃなかったけど!」

「お前らたぶん、ちったぁ強くなってんぜ?
 みっちり鍛えてやったからなぁ。」

「ガクさんもしかして、始めっから…?」


「おお、お前ら気に入ったって言ったろ?
 その最高傑作とも言えるヘアーを、ハンパな奴にしてもらいたくなかったからよ!
 がっはっはっは!」

「ぎゃっはっはっはっは!!」

「あっははははは!!」

「ああ、ザンも同じクラスらしいからな。
 仲良くしてやってくれ!」

ザンのやつはちゃんと学校行ってたが、
まさか同じクラスだったとは。

なんにせよ、これで明日からは地獄の日々から解放だ。

この後のガクさんの言葉が無ければ。


「あーそれでな。
 ザンがいろいろ調べてきたんだが、
 モーリョーの1年で『強い』って言われてる奴らがあと2人いるんだ。

 お前らそいつら1週間以内にブッ潰して、
 
 とりあえず1年生最強を名乗ってこい!」


「「 ま じ っ す か !? 」」



第3話 床屋さんへ行こう
    To Be Continued ⇒
本体名:霧埼 ザン
 1年F組のネクラな生徒
 髪切りバサミのモチーフの襟以外は普通の学ランを着こなす。
 ただし腕の部分はいつもまくっている。
 シルバーのメッシュ入りの前髪だけやたら長く目はいつも隠れている。
 その目にはクマがはっきり残り、色白の肌もあいまって病弱そうだ。
 基本無口で人見知りをするが、ネクラな者同士の友人は数人いるようだ。
 基本的にナッツやローみたいなヤツらとはツルみたがらない。

スタンド名:ジャップザリッパー
 能力:両腕の、肘から手首にかけて突き出るように生えるメタリックカラーのメスのようなスタンド。
 その腕をビュンと振るうと、空気を切り裂く真空波を放つ。
 基本モロいので直接攻撃すると刃が欠けてしまう。
 破壊力 :真空波はB、直接攻撃はC
 スピード:A
 精密動作:D
 持続力 :D
 射程距離:刃は常に本体の腕から離れられない。
      真空波は15mくらいまで届くがだんだん威力は減る。
 成長性:B


本体名:霧埼 ガク
 ヤンキー専門の理髪店『ギリギリチョップ』の店主。
 紫の豹柄のライダースジャケットに、裾が異常に広がったブーツカットのレザーパンツ。
 ヒゲや髪は茶髪。アメリカ国旗のバンダナを頭に巻き、
 グラサンと葉巻を常備する陽気なオッサン。38歳
 百戦錬磨で、スタンドの知識も深い。
 がっはっはと笑う。

スタンド名:ギリギリ・チョップ
 能力:紫色の、3mはあろう巨大なガイコツの両手のみのスタンド。
 本人曰く『中距離パワー型』とのこと。
 特殊な能力は特に無いが、パワーもスピードも長けてある程度の距離も離れられるという反則スタンド。
 破壊力 :A
 スピード:A
 精密動作:C
 持続力 :C
 射程距離:50mくらい。ただし、10m以上離れるとだんだん小さくなりパワーが落ちる。
 成長性 :E(完成)
次回予告


ザン
「僕と親父の… 似てなさは異常だよね。 この陽気なアメリカ親父から… どうして僕が生まれたんだ…?」

ガク
「がっはっは!
 お前も俺様のガキの頃みてーに百戦錬磨の場数を踏めば、
 ワイルドロードを歩めるってもんだぜ!
 ギター一本で渡米した時はよ、ニューヨークのゴロツキどもやテキサスの荒くれどもをバッタバッタとなぎ倒してだな…」

ザン
「…そうかい(親父の話は半分に聞いておかないとな…)
 僕はケンカ道を歩むつもりはないよ。
 ナッツやローがあんだけ強いんだ。
 あいつらにがんばってほしいな…。」

ガク
「まー最悪お前は俺様の斬髪テクニックさえ引き継いでもらえりゃあいいんだけどな!
 そしてスタンドの『いろは』はちゃんとあいつらに教えてやった!
 そう待たされることなく『最強』になってくれるだろ!
 がっはっは!!」

ザン
「…そ、そうだね。
 (言えない…!ヤンキー専門床屋なんてやりたくないなんて言えない…!
 とゆうわけで次回 FIREBALL 第4話は、
 【最強を目指せ!】だよ。
 ま、僕は目指さないけどね…」

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