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【オリバト+】コミュの【オリジナル読みきり作品】

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こちらは長編連載以外の短編作品が読めるトピックです。

連載をしている人も、していない人も短編を書いて、
こちらへ保管することができます。

執筆したい方は下トピを参照ください。

【読みきり作品投下トピ】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=23316981&comm_id=2544836

【読み切りトピック作品リスト】
読み切り1『上海奇怪オラトリウム』1/ blue baloque
読み切り2『タゴサクが来るッ』10/はるや
読み切り3『ディープ・パープルとココナッツ』16/はるや
読み切り4『脱獄大作戦』22/はるや
読みきり5『〜Freely Jail〜』28/るぱん
読みきり6『69‐ドミノの過去話』42/鳥ッシュ
読み切り7『Love your life』45/カルピス



※こちらへの書き込みはご遠慮ください。

コメント(46)



[5-3]


身と気を引き締める。
目前に居るのは、呉大人の情婦『雪蓮妃』ではなく。
新義安に敵対する刺姫にしてスタンド使い、倩蓮。

血が滾り、同時に凍える様な矛盾した感覚がオウエンを襲う。
この恍惚にも似た緊張感は、嫌いではない。

「ならば、こっちも久々に出すとしよう」


イメージは両儀。陰と陽。太極の具現。
生命力が作り出す、その像(ヴィジョン)は空を躍る双魚。
男の背後より出で、左右傍らに漂い泳ぐ、その名は。


「ダブル・フィッシュ――だ。覚えときな」

【スタンド名/ダブル・フィッシュ 本体/袁 衢雲】
 陰陽を象った宙空を泳ぐ双魚のスタンド。
 二匹が同じ対象に噛みつくことで、より大きなダメージを与える。


「こっちは、プロスティテュート。どっちもネーミングセンスが無いわね」

【スタンド名/プロスティテュート 本体/倩蓮】
 本体の能力を上げる不形型スタンド。
 身体能力は勿論、容姿や知性といった能力も上昇させる。



かたや、二匹の魚(ツイン・フィッシュ)。
かたや、娼婦(プロスティテュート)。

「――――違いない」

思わず、お互いのセンスのなさに、オウユンは笑う。

「それじゃあ、はじめましょう。
実を言うとね、一度でいいから本気でスタンド使いと殺しあってみたかったの」


列然とした戦闘予告を投げ掛ける。
それが改まっての、始まりの合図だった。



その指先は鋭角な角度を以て刃と化し。
その細腕に握られる刃は、岩をも粉砕するような一撃だった。

陽の魚は女の肩に喰らい付き、陰の魚は女の脇腹を喰い千切る。
たおやかに伸びる白い手足が、赤い奔流に染まり艶やかな彩りを見せる。

「素敵」

髪を掠める刃を拳で逸らし、その垣間に双魚を駆使し、その身体を傷つけていく。
裂かれた服の合間から除く白い肌は、やはり目に甘毒だった。

銃を抜く。ろくに狙いを定めず、ぶっきら棒に連射する。
それら全てを斬り落としたチェンリンが童女のような天真爛漫な笑みを浮かべ、
同時に柳葉刀をオウユンの左腕に叩き込んだ。呆気なく、肘から先が無くなる。

「素敵よ、オウユン。こんなに楽しいのは、とても久しぶり――――!」

一筋の涙が、彼女の白い肌を撫でた。
歓喜の涙。狂おしい愛憎悲喜に溢れる、歪んだ涙。

その涙を見なかったことにして、オウユンは更に踏み込む。
左腕が喪なったことに関しては、意識の外に捨てた。

そんなことに構っていて、命を落とす馬鹿ではない。
腕はなくとも、どうにかして生きていける。


陽の魚が飛ぶ。
喉笛を喰らい付こうと背後から周るも、足捌きと牽制攻撃で阻まれる。

陰の魚が往く。
足首を喰い千切ろうと死角を潜るも、それすら彼女は予想して飛ぶ。

その隙を衒って。
オウユンの右掌が獰猛に、彼女の肋骨を折り砕く。

その痛みに半ば失神しそうになりながら。
チェンリンは兇器を握っていない方の爪で、彼の右目を抉ろうとする。




――――その傷つけあう様は、まるで恋物語。


裂き、断ち、貫通し、破壊し、串刺し、喰い散らかし、
夥しい血は流れて、地面に脈々とした跡道を残していく。


傷を負うたびに満たされていく彼女を見て、オウユンは酷く透明な痛みを覚える。
どうして、何故、こんな悲しくて、美しくて、そして羨ましいと思うのだろう。
――――だから、オウユンは自らの口元の笑みには気付かない。



それは、性質の悪い戯曲のようで。
それはそれは、どこか可笑しい、少しばかり派手な殺戮劇だったのだ。




[6]


崩れ落ちる体。
オウユンは眉一つ動かさないチェンリンを見下ろした。
血気を失った白い肌は、女の満面の笑みすら白く見せる。

既に事切れていた女は、正しく美しかった。
傷だらけで、ところどころの肉を齧られ、右腕に関しては原型すらなかったが。
それでも、チェンリンは美しく、とても佳い微笑を浮かべていた。

握り締めていた、手を離す。
それはとうに冷たかったが、男の温もりだけが残っていた。
ところどころ血が乾いていたが、その分肌の白さが映えた。




オウユンが立ち上がる。
ところどころに負った傷に耐え忍びながら、そして千切れた己の左腕を右手に持って。
赤く染まった地面が、橙の日光に照らされる頃、彼はもうその場所を去っていた。
その過程で、一度だけ、オウユンはチェンリンの方に振り向いた。




そして、いつものとおりに上海の朝が来る。
虞美人草が揺れる様に、多くの命が朝を迎えることなく枯れていきながら。






跋扈する有象無象は、須く地を這う二本足。
明くる朝の光を受けて、血河肉草は刈り取られる。

戯曲はかくて語られた。明かされた言の葉に意味は無くとも。
此処は魔都上海。混沌と繁栄のディスクリクト。


      【 上海奇怪オラトリウム 】
     act 0 承前 枯れ落ちる虞美人草の如く  了



オリジナル読み切り作品2
【タゴサクが来るッ】
作:はるや

「ふぅぅ…やっと着いたべよ……。」

オラの名は権田原 田吾作。
タゴサクって呼んでいいべよ。

オラの村は深刻な若者不足、嫁不足に悩んでるだ。
それにオラ自身も嫁っこがほしいお年頃でもあるし…
そこでべっぴんの娘を探しに、村の若者代表としてこんな都会まで来たわけだ。

連れて帰る人数は多ければ多いほどいいだ。
村で待ってる男衆にも分けてやらねば、オラの村は絶えちまう。

それにしても都会はべっぴんの娘っこが多いべよぉ。
お?あの子オラを見てくすくす笑ってるべよ。
ちょうどいい。
あの子の意思は関係ねー。
オラの超能力(長老は『スタンド』って言ってたか)でムリヤリにでも連れて帰るべ・・・




―タゴサクが来るッ― 1/4



「ユキちゃーん!オハヨ!」

ウォークマン聴いてるアタシの耳にも届くデカい声。
しょーがねーから振り返る…と、
そこにいるのは学級委員長で巨乳の…石川サンっつったかな。
このアタシに気安く声かける奴なんか不良以外じゃコイツしかいねーから名前覚えちまったよ。

「…朝っぱらから声デカいんだよ オメーはよ。」

「えへへ。まぁいいじゃない。一緒にガッコ行こっ♪」

「…勝手にしろよ。」

まったくウザい。
毎朝思うが、アタシが怖くねーのかよ。
髪はピンク(生まれつきだよ文句あるか?)の超ロングだしピアスだしタバコくせーし目つき悪いし
時代遅れの長いスカートはケンカの時にナイフで切られて太ももまで切られて、まるでスリットみたいになってやがるしよ。
(それを愛用してるアタシもアタシだが)

怒鳴って追っ払ったこともあったが翌朝になりゃお構いなしだ。

「勝手にしろよ…。」
追っ払うのもめんどうだしよ。




「ねーユキちゃん知ってる?
 この近所で女子高生が何人も行方不明になってるの。
 連続誘拐事件じゃないかって噂。」

いつもくだらねー話しかしないコイツだが、今日のはちょっとだけ興味をひいた。
でもイヤホンは外さない。

「知らねーな。
 行方不明でなんで誘拐って分かるんだよ?」

「なんかね、行方不明になった子たちの家の近所にね
 なぜか毎回お米がばらまかれてるんだって!
 拉致する時に犯人はお米粒でも投げつけてたりして…」

バカかこいつは…
なんで米を投げつける必要があんだよ。
どんな誘拐犯だ。

それにしても変態ヤローはいるもんだな。
女子高生連続誘拐事件か…
アタシには関係ねーだろうが、コイツなんかすっトロいから真っ先に餌食だな。

そんなくだらねー会話しながら学校に着いた。

とりあえず音楽の授業だけ受けて、昼には帰るかな…。





「ユキちゃーん!待ってぇ!」

学校出て10分くらいの所で石川が追いかけてきた。
アタシは聞こえてはいたが歩みは止めないし振り返らない。

好きな曲を聴きながら歩いて帰るのは至福の時間なんだ。
誰にも邪魔はさせねー。

「ハァ、ハァ
 ユキちゃん、忘れものだよ、はいコレ。」

あ、アタシのケータイ…
机の上にでも置きっぱなしだったか。

「どーせ鳴らねーし いーんだよ…」
と言いつつも受け取る。

「んじゃ、授業あるから戻るねぇっ」

「あっ!おい…」
石川はすぐさま学校に走って戻っていった。

つーかトロくさい走りだな。


うーん…

あいつ走って来てくれたのかぁ。
トロくさいくせに気を使うやつだ…

うーん…、ありがとうぐらい言っとくかなぁ…
走れば追いつくだろうし。よし、行ってみるか。

アタシは脚力にも自信があった。
ケンカの時のキックも、時には逃げ足も。

アタシは自慢の足を走らせる…





追いついたアタシが見たものは…

地面から伸びた“稲”にがんじがらめにされた石川。

そしてニヤニヤ笑う麦わら帽子のダっさい男だった…。

―タゴサクが来るッ― 2/4



「…ユキ…ちゃん
 私…動けないよ…
 どう…して?」

ん?石川には自分をがんじがらめにしている稲が見えてねーのか?

なんだかよく分からねーが、とりあえずこの男を…


ボカァッ!
「うぶえぇッ!?」

…ぶん殴ってみた。

稲の力が弱まったみたいだ。
稲を引きちぎって石川を解放させる。

ふっ飛ばされた男はヨロヨロと立ち上がりながら言う。

「…オラの…村に…嫁に来るだよォ!」

ズズズズズ…

「モ…モンスター??」

わけがわからねー。
男の背後から奇妙なモンスター?が現れたのだ
人間の形をしちゃあいるが、明らかに人じゃねー。
宙に浮いてるし透けてるし全身稲に覆われてるし、
何より顔が雀みたいだが…雀でもない。

「ほーぅ、オメはオラのスタンド、『モメンタリー・ライフ』が見えるんだべな?
 けんど関係ない。
 オメもよくみたらべっぴんだべ。
 オラの村の嫁コになるんだべよぉ!」

男の背後から現れたモンスターがジャンプしてアタシに襲いかかる。

アタシは石川を抱えたままとっさに後ろに飛びのいた。


ドガァッ!


モンスターの拳は、さっきまでアタシ達のいた地面を殴り、コンクリに穴があいた。
なんて…パワーだ。

そしてもう一つ驚いたことがある。
アタシは石川を抱えて後ろにジャンプしたのだ…
さっきいた場所から3メートルほども後ろにジャンプしている!
何か足に…力がみなぎってる感覚…

「オメもスタンド使いだか?
 なかなかのスピードだ。」

男はアタシに迫る。

「ユキ…ちゃん?」

石川は怯えている。
あたりめーだ。
石川にはこの得体の知れねーモンスターは見えてないのかもしれない。だとしたら、突然地面に穴があいたと思ってるんだ。

石川の首や足には稲にがんじがらめにされた時についたであろう痣がくっきりと残っていやがる…

だんだんとムカッ腹が立ってきた。
このヤローはこのモンスターを操れるんだ。
そしてこの町の少女達を誘拐していった。
そして石川を…。

「テメー、石川に何をしたァ!?」
攫おうとしたことは状況からみてわかりきっているが叫ばずにはいられない。

石川を後ろにやり モンスターに向かって走る!
どんなにデカくて強そうな相手でも、スピードでせめてきゃケンカで負けることはないのだ。
予想通りモンスターはノロいッ!
全体重をかけた跳び蹴りをぶちかます。

「フンッ!」

ドグシャァァアッ!

モンスターは吹っ飛ぶ。
男も苦しんでいる。
このモンスターと男は一心同体みたいなもんなんだろう。
そして…スタンド?とは何だ?

「オメ…?
 生身の人間のくせにスタンドを蹴り飛ばすとは…一体!?」



少し考えてみる。
このモンスターは『スタンド』であり、
奴自身は『スタンド使い』だと言った。

そしてアタシも『スタンド使い』…
石川や普通の少女には見れないものが見える…
そういえばエジプトで死んだっていう顔も知らない兄貴も、人には見えないものが見えるらしかったが…

アタシにもこの男みたいなモンスターが使えるというのか??


そう思った時、足元から声が聞こえた。


―― ユキ 音量ヲ 最大ニシテ ――


見ると…アタシの膝から下がエメラルド色に光輝いている。
声に疑問を持つ気持ちは不思議となかった。

ウォークマンの音量を最大にする。


♪ドゥビドゥビバッバッ ドゥビドゥバッバッバ♪


イヤホンから出る音楽がアタシを満たす…

男が何か言いながらモンスターとともに近づいてくるが聞こえないし興味もない。
石川を苦しめた変態ヤローをぶちのめす!
その決定はゆるがねー。


♪ドゥビドゥビバッバッ ドゥビドゥバッバッバ♪


ノッてきた♪

アタシの中にもモンスターがいるというのなら、
ねぇ、飛び出しておいで。
アタシと一緒に戦おう♪


またさっきの声が聞こえた。


―― ユキ、私ハ、貴女ヨ ――



アタシの足元が眩しく、エメラルド色に眩しく輝き出す…!



…光がおさまった。

いつの間にかアタシは、エメラルド色に輝くハイヒールのブーツを履いていた。
綺麗…それになんだかとても…あたたかい。

光に目が眩んでいた敵のスタンドが再び襲いかかる!
よけられねー、間に合わねー…


ズドォン!

「ぶげろバァッ!!」


信じらんねー…
足が…いやブーツが勝手に動いて敵を蹴り飛ばしたんだ。

―― ユキ びびラナクテイイノ 奴ヲ…

『蹴り殺せばいいッ!!』

アタシとブーツの声がハモる。


ねぇ、名前は…名前はあるの?


―― ミュージック・ファイター ――


本体名/花京院 由貴
スタンド名/ミュージック・ファイター
脚力が強くなるブーツ型スタンド


―タゴサクが来るッ― 3/4



フンッ 負ける気がしねーな。

またしても吹っ飛んだ男を見て思う。

奴のスタンド『モメンタリー・ライフ』とやらのパワーは確かに凄まじいようだが、
『ミュージック・ファイター』で強化されたアタシのスピードについてこれるとは思えないし、
アタシ自慢のキックも相当に強化されてるようだ。

負ける気はしねーが、一応…


「このタゴサクがぁ!
 これ以上石川に危害くわえる気がねーならそのまま立ち上がるな!
 半殺しですましてやる!
 立ち上がってくるようなら、手加減はできねーぞッ!!」


「こ…この
 て…テメー タゴサクと呼んだな…
 ―(なんで知ってんだ?)―
 なめるなよ〜〜」

音量最大にしてるが奴のセリフはなぜか聞こえた。
ミュージック・ファイターのチカラだろうか。
奴はゆっくりと立ち上がる。
しかし近づいてくる様子はない。



「ふっふっふ…
 ちょうどいい時間だべ…

 オメはもう…」
奴がバッ!と上空を指差す。
指差した方を見た…が何もない。ただの青空だ。



「もう…動けないべ」

足元ッ!しまったッ!!
気がついて足元を見た時にはもう遅い。
奴が最初に殴った地面の穴から、たくさんの稲が生えていた!
そしてそれらがアタシの足に絡みつき…成長を続けているッ!


「時間が来たんだべ……
 娘っこぉ…
 『モメンタリー・ライフ』が殴った場所からは…
 オラに忠実な『稲』が生えるッ!!」

ちぃッ!動けねぇッ!
油断したッ!
奴が迫るッ!!


「…ダベェッ!!」

ドガッ!!

「カハッ!!」

腹を殴られた。血を吐いた。



「手加減はしたべ。 殺したら嫁っこには来れない。
 そしてオメの生っチロい腹からはニョキニョキっと…」

ニョキニョキ…

「稲が生えるべ!!」

ヤバい!
まだ“苗”って感じだが…
成長しきっちまったら“稲”だ!
全身動けなくなるッ!
どうすりゃいい?どうすりゃいいんだ!?


また… 声が聞こえる…

―― ユキ さびマデ待ッテ 飛ビ乗ッテ ――


…フン、オーケイ。
分かったよミュージック・ファイター。

アタシはただ、曲に浸って、ノッてればいいッ!

「なぁぁに目をつぶってるだぁ?
 観念しただか?ん?」


アタシの耳には今は外界の音は聞こえない…

そして、サビが、来る♪



♪傷だらけの胸に 自由を♪

♪歌いながら…♪

『♪とびのれぇぇぇい♪』

思わず歌っていた。


ブーツのくるぶしからエメラルドの刃が生えて、稲を切り裂いてゆくッ!

刃は翼のような形状となり…

そして空へ…

 駆 け あ が る ッ !



刃はそのまま広がった翼となったのだ!
ブーツのくるぶしから翼が生えたのだ!


嘘だろ、空…飛んでる!

足首をバタつかせることで翼が羽ばたき空を飛べる仕組み…か。
コツさえ覚えりゃあ…

ノッてきた♪

「I'm Music Fighter! Oh Yeah!!♪」


― タゴサクが来るッ ― 4/4



アタシは空中で、腹から生えた苗をブチブチちぎる。
しかし根元からはまた少しずつ生えてくる。
どーやら奴をノさねーと消えねーらしいな。

よし、やるか♪

「Yeah!!!」

急降下して奴のスタンド脳天にかかと落とし!


ガゴォォン!
「べぇぇッ!」

着地前もう一発ッ!
延髄蹴りッ!!

グシャァッ!
「べりゃぁッ!」

「とどめさしてやるッ♪」


アタシは近くの電柱に向かってダッシュ!

そのまま翼で電柱を駆け上り…

半ばまで上ったところで、電柱を思いっきりキックして、うずくまる奴に向かって一直線に飛んだ。



「…オメは 稲の強さを分かってねぇ…

 稲はすでに実っているッ!

 くらえッ!
 ラ イ ス ・ シ ャ ワ ー !! 」


地面に生えた稲穂がアタシに向けてッ!
米粒を発射しやがったッ!!

空中のアタシはよけられないッ!


ビシビシビシビシィッッ!!

「アアァァァッ!!」

痛いッ!痛すぎるッ!


スタッ

なんとか地面に着地はしたが…
致命傷ではないがこの痛みッ!
た…立ち上がれないッ!

しかし・・・問題ない!

「オメの最後の攻撃は失敗したようだべなぁぁぁあ。
 オラのライス・シャワーは痛いからなぁぁぁあ!!」

フンッ 変態ヤロー…

「あとは痛みで動けないオメを稲でがんじがらめにすればいいだけだべ。」



「いーや違うね。

 アタシの最後の攻撃は……成功だ。」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ……



電柱が!

半ばで折れた電柱が!

こっちに倒れてくる!!


(さっき電柱を思いっきり蹴ったのはこのため。
 このままじゃアタシもくらっちまうが…
 タゴサクッ!!
 くらってくたばりなッ!!!)


「うぎゃぁぁぁぁあ!?」

「ユキちゃぁぁぁぁん!!」


ズ ド ォ ォ ォ ォ ォ ォ オ ン … … … ! !









あ、あれ?
アタシ生きてる?

「ユキちゃん!
 良かった!無事で!」

アタシは目を丸くした。
まさか?石川が助けてくれた??

「電柱がふってきたから…
 ユキちゃんがヤバいと思って…

 突き飛ばしてみちゃったの。
 エヘッ♪」

コイツはホントに…なんつーか……

「エヘッじゃねーよバカ!
 アタシはあんなの平気だけど、
 オメーは下手すりゃ死んでたぞ!!
 バカなマネすんじゃねぇ!!」

「しゅん・・・」

口に出して言うなよバカだコイツ。

しかし、それにしても…だ。
うーん…。



「うーんと…
 あ…ありがとな。」


これだ。
やっと言えた気がする。
そっか。これが言いたくて追いかけたんだった。

「ユキちゃーん!」

石川は涙でくしゃくしゃな顔して抱きついてきた。
アタシは…仕方ねーから抱きしめてやった。






そーいやあのタゴサクは…

電柱の直撃は免れたものの、ビビって小便漏らして失神してやがる。
ふん縛って警察だな。
その前に思いっきり脅してスタンドは使えないよう釘さしとくか。

本体名 / タゴサク
スタンド名 / モメンタリー・ライフ
殴った所から稲を生やす。
    →再起不能




「ねーユキちゃん。
 さっきの稲とか米粒とか緑のブーツとか…
 あれってなんなの??」

…………はぁ??

「オメー…見えてたのかよ?」

「うん。」


おしまい(チャンチャン)


参考:
Momentry Life→ギルティギア、梅喧のテーマ
ミュージック ファイター(タイトルと歌詞)→ジュディマリの曲
ユキ→YUKI
ピンクの髪、エジプトで死んだ兄、花京院姓→ジョジョ三部のキャラに関連??


オリジナル読み切り作品3
【ディープ・パープルとココナッツ】
作:はるや



電話の向こうから情けない男の声が聞こえる。


『オ…オラはもうスタンドは使わねぇべよぉ。
 む…村にも帰らねぇだ…
 ちょ…長老には悪いとは思っ…』
ガチャリ ツー ツー ツー

それ以上情けない声を聞いていられなくなった老人は受話器を置いた。

期待していただけに残念ではあるが…仕方ない。
ワシが連れ戻し折檻…もとい教育しなおすより他にあるまい。
そしてスタンド使いの少女か……

老人はニヤリと笑う。




【― ディープ・パープルとココナッツ ―】


先生が黒板にわけのわからない数式を書いてる…
数学だけはホント苦手だなぁ…

しかし私には、目の前の数学の問題よりも頭を悩ませる問題があった。

私は石川くるみ。
ぶどうヶ丘高校に通うフツーの高校生…だった。
今の私はフツーじゃない…。

あの事件の数日後、なんとかゴン財団のなんとかさんって人が来て、私とユキちゃんに説明してくれた…
よく分からない内容ながら、大事な所だけはなんとなくは理解したつもり。
よーするに…

・私達を襲ったアレやユキちゃんのエメラルド色のブーツは『スタンド』であり、
 ユキちゃんやあの人は『スタンド使い』っていう超能力者みたいなものだということ。

・『スタンド』が見えてしまった私には、スタンド使いの素質があり、能力に目覚めるかもしれないということ。

・スタンド使いとスタンド使いはひかれあう引力というものがあるということ。

・スタンド使いには悪人もいて、襲撃されたら私もスタンドで戦わなければならない時もあるということ…


最後の一つが問題なの。
だって私が…戦うなんて。
自慢じゃないけど喧嘩したことなんてないし。
スタンドとかいうのだって私のところからは出てくる気配はない。

キーーン コーーン ………

あ、なんにも授業聞いてなかった。
次は…音楽だったかな。

…スタンドかぁ。
やっぱ私も戦わなくちゃダメ?なのかな?

不意に肩を叩かれる。

「…よォ。」

「あ、ユキちゃん!」

同じクラスの花京院 由貴ちゃん。
どの女子よりも綺麗で、どの男子よりもカッコよくって…

「とりあえず音楽だけ受けに…
 ……元気ねーじゃん。どうした?」

誰よりも、優しい。
ユキちゃんは余り喋らない人だから、何考えてるのかわからない時も多いけど、
ほら。こんなに優しいんだよ。

だけど、もっと思ってること喋ってくれるといいのになー。
そんなことを考えてたら楽しくなってきた。

「ユキちゃんありがと!全然平気なのッ。」

「…おぅ。」

私にはユキちゃんがいる。
何かあったらユキちゃんがきっとなんとかしてくれる。
そう思うと不安な気持ちは消えていくの。



― ― ― ― ― ― ― ―



…尾けられてやがる。

下校中のユキはさっきから視線のようなものを感じていた。
おそらくは…後ろ。
振り返る。


しかし…人の気配はない。
少し霧が出てきたようだ。
再び前を向く…と道の向こう、
さっきは誰もいなかった場所に見知らぬジジィが立っていた。

深い紫色の上質っぽい着物を着たジジィ。
頭には一本の毛もなく、代わりに真っ白なあごひげが首まで伸びている。

爺さんはニヤニヤしながら言った


「ピンクの髪のお嬢ちゃん。
 ワシの後ろにあるこれが見えるかな…?」

ズ ズ ズ ズ ズ ‥‥


爺さんの背後から紫色っぽいスタンドがあらわれる。
上半身だけのヒヨワそうなスタンドだが…

このジジィは敵ッ!

一瞬で理解したユキはウォークマンの音量を上げた。
ユキの膝から下がエメラルド色の光に包まれる…


【本体 / 花京院 由貴
 スタンド / ミュージック・ファイター
 ユキの脚力を強化させるブーツ型スタンド
 音楽にノッているほど強くなる】


ユキのウォークマンから音が漏れる…


♪走るー 雲のー 陰をー…

『♪飛びーこーえるわー♪♪』

歌いながら一足飛びでジジィのもとへ突っ込むッ!
ジジィは避けようとする気配はない。

ジジィのその腹へ飛び蹴りを

ぶ ち か ま し ッ …


 ス カ ッ !

「なッ!?」

ユキの蹴りはジジィを素通り抜けたッ!

バランスを崩しかけたがなんとか着地したユキは振り向いた。
しかしそこにいたハズのジジィはいない。
霧はさっきより濃くなっていたが、今までそこにいた奴を見失うほどではない。
どこだ…どこへ消えやがった…?


「ふぁっふぁっ。
 やはりスタンド使いであったか。
 では貴様だな。タゴサクを倒したというのは…」

後ろから声!
振り返ると目の前に突如ジジィの『手』があらわれ、
湿った布を口にあてがわれたッ!


…これは…クロロホルムか何かか!?

意識が…遠く……

……石…川ぁ……


ユキは意識を失った。



ユキの後頭部には3cmくらいの小さいアンテナがささっていた…


「そこで見ておったか?
 タゴサクよ…」

老人がそう語りかけると、物陰から男があらわれる。

「やっぱり長老はすごいべよぉ…
 長老はこの娘っこォ、どーするんだべ?」

前の事件でユキに倒された男…タゴサクであった。


「…村に連れ帰り、村の若い衆らとたくさん交わってもらう。
 そして孕ませる。
 何度でも何度でも孕ませて、スタンド使いの子供を多く生ませるのだ。
 さすれば次代の嫁探しも容易となり、村は安泰だ。
 この娘には、生涯我が村で暮らしてもらうこととなる…」

長老は不敵に笑う。
タゴサクはその表情にゾッとするのであった…




【 ― ディープ・パープルとココナッツ ― 2/4】



― クロ…ホル… ―

下校しようと一人校門を出た時、どこからか声が聞こえた。
ユキ…ちゃん…?
確かにユキちゃんの声だ。


― …石…川ぁ… ―


ユキちゃんが…きっとユキちゃんがピンチなんだ。

助けなきゃ…
私は何も考えず走り出した。

不思議なことに、なんとなくユキちゃんがいる方角がわかる。

たぶんユキちゃんはこっちの方にいる…
走る…
もっと…もっとこっちだ。
走る…あとちょっとかな…
走る…
少し霧が出てきたようだ。
こっちだ。なんとなくだけど…
ここを…右に…

いた!

道の真ん中、ユキちゃんが稲でがんじがらめに縛られている!
口も稲がまとわりついてて声をあげることすらできない。
そして、あたりのあちこちにも稲が生えてる…
道路だっていうのに!

この現象はッ!

あの時のアイツ!!


「ひさしぶりだべなぁ…。」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ‥‥


角の物陰からあらわれた男は…
以前ユキちゃんに倒されたはずのタゴサクとかいう男だった。

【本体 / 権田原 田吾作
 スタンド / モメンタリー・ライフ
 殴った所から稲を生やす】



「オラ達は今日のところはこの娘っこ以外をどうこうするつもりはねぇ。
 痛い目みたくなかったら、全て忘れて帰ることだべ……」

あの人今『オラ達』って言った…
まだ他に誰かいる…!

でも私じゃ戦えないよ…
どうしたらいいの…?
ユキちゃん… ユキちゃん!!


その時、どこからか声が聞こえた。


― 石川… ウォークマンのスイッチを… 押してくれれば… ―


口を封じられてるはずのユキちゃんの声だ。
タゴサクには聞こえていないようだけど…。


― そうすれば…アタシは自力で脱出するッ! ―


これは…ユキちゃんの心の声なのね…

わかったわッ!

私はユキちゃんを救うッ!!


そう思った瞬間…

ポンッ!!

情けない爆発音とともに目の前に変な生き物があらわれた。
大きさはとにかく小さい…10cmくらいで、
羽のはえた赤ちゃんみたいな感じ。
頭に透明なアンテナが1本、背中には色とりどりのアンテナが9本ささってる。
ぷにぷにした腕には左右5個ずつの色とりどりのボタンがある。
メタリックなオムツみたいなのをはいたこの可愛くて変なのは…


「…私の…… スタンド?」




よ…


よ…



よ わ そ ぉ 〜 〜 !


ちょっと無理だよこんなの!
あの人と戦うどころかユキちゃんを救うことすらできなさそうッ!

でも…とにかく…

やってみなくっちゃッ!


「ねぇ!ユキちゃんをなんとかしてッ!」

『くぴぷぴぷーー!』


私のスタンドが背中から白のアンテナを1本引き抜き、
数メートル先にいるユキに向かって投げた!
タゴサクは驚いているのか放心状態だ。

アンテナはすごいスピードと正確さをもってユキのウォークマン、再生のスイッチにヒット!

ユキのイヤホンから音楽が流れ出す。

♪ Ahー 夢はー いつまでも 醒めないー

♪ 歌う風のようにー

なぜか私のスタンドも歌っている。


ユキちゃんのエメラルドのブーツが輝き…

ブ ヮ サ ッ !

翼が生えた!

その翼は刃のように鋭く、ユキを縛っていた稲を切り裂く!
脱出成功!!



私のスタンドが私に耳打ちをした。

「石川、マジありがとな!
 そして問題はタゴサクじゃねえ!
 どこ行きやがったあのジジィ!!」

えッ!?
今たしかにユキちゃんの声で喋った!?

ユキちゃんを振り返るが何も喋った様子はない。
ユキちゃんの後頭部にはピンクのアンテナが突き刺さっている…
私のスタンドの頭にささってるアンテナもピンクに光ってる…

なんとなく理解したわッ!
私のスタンドッ!

胸元に文字が刻まれている…
『 C O C O N U T S 』
そう、ココナッツというのね。


「私達も戦えるわッ!
 『コ コ ナ ッ ツ 』!!」

「くぴぷぴぷー!!」


【本体名 / 石川くるみ
 スタンド / ココナッツ
 アンテナのささった生物の心の声を聞く】



「ほう…そこな娘もスタンド使いか…
 今年は豊作といってよかろう。
 顔も胸も悪くない…。」

ジジィがいつの間にかタゴサクの後ろにあらわれやがった!
ジジィの能力は未だ謎のままだ。

そしてアタシは、ここからどうやって攻撃すりゃいいんだ!?

位置関係は…
まずアタシが道の端。
道の真ん中には石川が。
そして少し離れた所にタゴサクとヤツのスタンドが、その後ろにジジィとジジィのスタンドがいる。
問題はタゴサクとアタシ達の間に生えまくっている稲どもだ。
もういくつかは稲穂に成長してるものもありやがる。
つっこんだらがんじがらめ、空を駆けようにもライスシャワーに狙われる。
これじゃあ近づいて攻撃できねー!

「いいよユキちゃん!
 私がやってみるッ!」

まるでアタシの心を読んだかのようなことを言う石川は、
自分の周りでふよふよ浮いてる小さいのをヤツら向かって突っ込ませたッ!
石川…いつの間にスタンドが出るように!?
そして凄まじいスピードッ!!
それにこのサイズならライスシャワーもよけられるッ!

石川のスタンドが、モメンタリー・ライフに体当たりッ!!


 ぽ ふ っ


情けない音… 全ッ然効いてねー。

「ぶわーっはっはァ!
 なんてェ弱々しいスタンドだべ!」

「ふぁっふぁっふぁ…
 …笑止よなぁ。
 ワシらも攻めさせてもらうぞ…」

攻撃?この距離から?
気がつけばジジィのスタンドが消えているッ!!

「見上げてみるがいい…」

見上げると…石だッ!!
おびただしい数の石コロの雨がアタシと石川に降ってくる!!


バラバラバラバラバラバラバラバラッッッ!!

「アアァァァァァア!!」
「いやァァァァァア!!」
降り注ぐ石つぶてのスコールをくらっちまった!!

ガードした腕が痛すぎるッ

なんなんだこの能力はッ!?
石川は無事かッ?
ふと石川を振り返る。

突如背後に気配ッ!
「ほれ。よそ見は禁物だよ…
 ディープ・パープル!」
ジジィのスタンドだッ!
左手を掴まれた!

シュワァァァァ…

ア…アタシの左手が…

霧 と な っ て 消 え た ッ !!!

「アァァァァァアッ!!」

恐怖で絶叫をあげちまった!

ジジィのスタンド、ディープ・パープルとやらもまた霧となって消えた。

たしかに左手はある。
あるという感触はあるんだから消えたわけではないのだがッ!
霧になっちまったんだッ!
感触はあるが自在には動かせないッ!
しかも左手首から肘にむかって霧化の侵食が進んでゆくッ!!

これはヤバい!
また石の雨でも降らされたらガードできないッ!

不意に現れて掴まれるのもヤバい!

このまま手をこまねいては左手の霧化がすすむッ!

ヤツのスタンド能力ってのも把握しなきゃならねー!

どーすりゃいいんだッ!!


― ― ― ― ― ― ― ―


石の雨をくらい、痛みに耐えながら私はユキちゃんとは違うことを考えていた。
ココナッツのパワーはとても弱い。
しかしココナッツの真価は破壊ではない…
こ の ア ン テ ナ ッ !

まだタゴサク達の近くにいるココナッツは、
背中の緑と紫の2本のアンテナを引き抜きタゴサクと老人に投げたッ!

 ビスッ!
      ビスッ!

ガードがおろそかになっていた本体2人に至近距離からの高速アンテナは避けられなかった。

「んーん?ちっとチクッとしたべ…?」

「そっちのお嬢さんのスタンド攻撃はまったく未熟のようだ…
 後で捕獲してあげるから待っていなさい…」

2人は完全に私を戦力外と見なしたのか注意をそらした。
その隙にココナッツを私のところまで戻す。
うん。スピードはすごいみたい。

ココナッツが私の耳元までやってきて、腕の紫のボタンを押す。
するとさっきまでピンクだった頭のアンテナが紫に光り出す。

そうね、ココナッツ。
あの老人の声を聞かせて…

するとココナッツが可愛い容姿からは想像つかないしわがれた早口で喋り出す!
「まずはあのピンクを捕獲巨乳は後回しでも平気だ方法はいつものでいくワシのディープパープルですでに霧としてあるロープ網をピンクの頭上で解除して落としてやりもがいてるところをタゴサクがライスシャワーするピンクが霧から実体に戻ってゆくロープ網に気付かれないかが心配ワシの霧解除実体化の弱点は少々時間がかかることワシの話術で気をこちらに向けさせるのが得策さてロープ網解除といくか…(3秒)」
老人本体が喋りだす…
「ピンクのお嬢さん、君がおとなしく捕まるなら我々は…」
「ユキちゃん騙されないでッ!!
 頭上のロープ網に気をつけてッ!」

ユキちゃんはハッと見上げ、霧が集まって形をなそうとしてるロープ網に気付きなんなくよける。

老人の心の声と実際の声がハモる!
『どどどどどうしてわかったァァァアッッ!?』




老人の思考はとめどなく喋り続ける…

「いや今のは偶然上を見たからに違いないしかしあの巨乳けしからん後でこのゲンゾウ自らいやらしく折檻してやるタゴサクは何をやっとる使えん奴め早くアレをやらんか…(2秒)」

ココナッツが緑のボタンを押し頭のアンテナが緑に光ると…

「網は失敗だべ…
 んならオラが今ユキの背後にある木に命令して動きを封じるだよ…」

タゴサクの心の声だ。

「ヤツらはオラがどんな植物にも命令できることは知らないからなァ…」


「…ユキちゃん後ろの木から離れてッ!捕まえられちゃう!!」

「わかったッ!」

ユキちゃんが背後の木に一撃くらわして距離をとる。

『どどどうしてわかったべ!?』


今度はユキちゃんの心の声…

「石川マジありがとなッ!
 オマエの能力はなんとなくわかったよ。
 アタシだってくらってばかりじゃ気がおさまらねー。
 飛び道具さえありゃいーんだろッ?
 ここは思いっきり、ノらせてもらうッッ♪」

伝わる…♪
ユキちゃんの、曲にノりまくってる心が伝わる♪

ブーツ型スタンド、ミュージック・ファイターが輝くッ!

そう、来るのね。
ユキちゃんの新しい必殺技…


『くらいなッ♪
 エ メ ラ ル ド ・ ス ラ ッ シ ュ ! ! 』

ビュビュビュオォォンッ!!

ミュージック・ファイターの翼がユキちゃんのキックの勢いでいくつもの刃となって飛んでゆくッ!!

阻む稲穂を刈りながら、向かうはタゴサクッ!!

タゴサクの焦る心が聞こえる。

「モメンタリ早くガードするべよ早くしろ…ま…間に合わ…」

ザクザクザクザクゥ!!

次々突き刺さるエメラルドの刃にタゴサクは…倒れた。
もう心の声も聞こえない。


ドーーーーン

【タゴサク…再起不能】



刃はタゴサクだけでなく老人の方にも何枚か飛んでいったのだけど…
老人の思考が聞こえる…

「ワシは霧化で回避できたがあの無能はやられたかしかし我々の攻撃が読まれてるのが解せんワシもピンクの攻撃は効かぬがアレがいつまでもつか長期戦はマズい短期決戦で決めてやる!!(3秒)」

ズ ズ ズ ズ ズ ‥‥‥

ユキちゃんの頭上に霧が集まって形成してゆくそれは…

「ロードローラーだッ!!
 気付くなよォ!」

「ユキちゃん上ッ!よけてッ!!」


ド ッ ゴ ォ ォ ォ ォ オ ン ‥‥‥


土煙が…

晴れてゆく…

ユキちゃんは…無傷ッ

私はわざと老人にも聞こえる声で叫ぶ!
「ユキちゃん!よけまくって長期戦でいこうッ!」

「なななんでだぁぁ長期戦は実にマズいぞスタンドエネルギーとは精神力ワシの老いて衰えた精神力と勃起もできない体力では自分の体を霧化するのに長時間耐えられんああもうすぐ実体化してしまう隠れなければ稲穂のあたりに隠れなければァァア!」

私はキッと稲穂のあたりを睨む!

「馬鹿な馬鹿ななぜなぜなぜわかるゥああもう体が実体化してああ…」

いけっ!コ コ ナ ッ ツ !!

『くっぴぽーー!』

ぴ か ー ー ん !

ココナッツが実体化した老人の頭に仁王立ち。
腕を腰にあてて『えっへんッ』って感じでなんか可愛い。

そして今度は私に耳打ちするようではなく周りに聞こえる大きな声で老人の心の声を代弁する!
「なななんだこの頭のはとれないっとっとれないうわおななわなんだワシの思ってることを喋ってるのか違うやめてくれそんなこと思ってないぞ思ってるけどあわあああこのままワシはサトラレのように生きるのか脳内で繰り広げられるめくるめくいやらしい妄想がだだ漏れになるのかやめてくれああ小娘どもそんな目で見ないでくれ確かに少女は好きだがああむしろ見てくれゲンゾウを見てくれやばいこんな状態で村には帰れないこんな妄想婆さんに知られたららボコボコにされれて見捨てられるるわワシは長老ぶってるが婆さんがいないと何にもできないんわあららなわばば………」

老人は…

泡を吹いて倒れた。

ドーーーーン
【長老(ゲンゾウ)…再起不能】



霧が…晴れてゆく…

ユキちゃんの左腕も元通り。
あたりには老人があらかじめ霧化させておいたらしいナイフやらまきびしやらトランポリンやらが散らばっている。
用意周到で…恐ろしい襲撃者だった…


いつの間にかココナッツが私の耳元に帰ってきてて、囁く。
「石川…イザって時は頼りになるし本当に信用できるヤツだ…
 感謝してる…
 でもアタシ…ありがとうとか素直に言うの苦手で…」
ココナッツはピンクのボタンをオフにした。
これで、いいの。
ユキちゃんは、寡黙で、思ったこと素直に言えなくて…
それがいいんじゃない。
友達の心の声なんて、聞こえなくていいんだ。

ユキちゃんが恥ずかしそうにもじもじしながら、言った。
「石川… あー、その あれだよ。
 ……ありがとな」

「ユキちゃん赤くなってるよっ!かわいいー!」

『くぴぷー☆』


おしまい(チャンチャン)


オリジナル読み切り作品4
【脱獄大作戦】
作:はるや



その太ったサラリーマン風の中年男がやって来たのは夕方頃だった。
ここはとある拘置所…
その最深部、特別懲罰房には今日ぶち込まれたばかりの2人の犯罪者がいる。

「香山様、スピードワゴン財団からわざわざご足労ありがとうございます。」
真面目そうな職員が太った中年男…香山に礼をする。
「おう。ワシはこれが仕事やからかまへんよ。
 スタンド使いの犯罪者なんて一般人にはどうしようもないやろ。」
「ええ。今のところ2人とも睡眠薬で眠らせておりますが、
 目覚められては我々では対処のしようがありません。」
「ワシ特注『特別懲罰房』なら大丈夫や。
 万が一のためにワシも来たしの。
 …和紙も喜多市の…」
香山が書類に目を通しながらニヤリと笑うとハゲかけた頭もキラリと光る。
それを見て職員は戦慄するのであった…。


【練習 ―― 脱 獄 大 作 戦 ――】 1/4


その特別懲罰房の一室で男は目覚めた。

そうか… オラはまた捕まっただか…

タゴサクであった。
窓はなく明かりは差し込まないため昼か夜かも分からない。
あるのは天井の頼りなさげな灯りだけ。
四畳半ほどの部屋の四隅には監視カメラ、鉄格子のドアから見える廊下にも監視カメラがある。

恐ろしい所だべ… タゴサクは思った。

……また脱獄してやるべよ…!
スタンドを使えばなんてこたァない!

ズズズ…

【本体名:権田原 田吾作
 スタンド名:モメンタリー・ライフ
 殴った所から稲を生やすパワー型のスタンド】

オラのスタンドのパワーであんな鉄格子ヒン曲げてやるべッ!

ググッ…

しかし…曲がらないッ!
それなら拳ッ!

「『 ダベェッ! 』」

ガゴォンッ!!

…ビクともしない。

おかしい… オラのモメンタリーはこんな鉄くらいヒン曲げるパワーはあるハズ…
妙に痩せた気もする…スタンドが痩せたりするのか?

「だっはっはっ!
 無駄無駄…ってヤツや!」

廊下からやたらデカいダミ声が響いた。
見ると…鉄格子の扉の向こうからサラリーマン風の太った中年男がこちらを見ている。

「初めましてタゴサク君。
 ワシはスピードワゴン財団から派遣された香山セイキチっちゅーもんや。」

香山はセンスの悪い扇子で仰ぎながら続ける。

「アカンやないか…
 スタンドを悪いコトに使ったら。
 法律ってのは破ったらあかんのやで。
 法律守った上でゼニ儲ける分には何したってかまへん。
 何でもアリになってまうとワシがゼニ儲けにくい世の中になってまうから…」
「モメンタリー・ライフッ!!」

ズォォン!

しかしその拳は香山のスタンドによって軽々と受け止められた…

「モメンタリーの拳を軽々と止めたべ…!」
香山のスタンドは不気味ないでたちだがパワー型には見えない。
愉快な顔…その耳にあたる場所から両腕だけが生えているビジョン…
いったい…

「タゴサク君、二回も同じ相手にスタンドで敗北しとるらしいやないか。
 しかも年端もいかぬ少女に…

 敗北感という傷で弱った心はそうは簡単には癒せない…

 分かるかタゴサク君。

 スタンドとは精神力から発現する能力ッ!!
 一度ならず二度までも再起不能となった負け犬に、
 戦うスタンドエネルギーなど 残 っ て へ ん の や ッ ッ !!!」

言われれば確かに…以前のようなみなぎるパワーは感じられない。
ハァ…ハァ…
頭がクラクラするべ…
スタンドを保っていられない…

スゥゥ…

「スタンドを持続させることもできひんとは…
 哀れな負け犬やなぁ…」

「ちょ…長老は…?」

「あの老いぼれかいな。
 アンタと同じように弱っとるが…
 あんなクソジジィじゃ長くもたんやろなぁ!
 だっはっはっ!」
「…を……ぃぅ…」

「あァ!聞こえへんわ!
 何とか言うてみぃ!」

「…長老を! 悪く言うなァ!!」

モメンタリーを再び出して香山に殴りかかるッ!

「ウザいわッ!!
 行けッ! ラ ブ ・ ラ ブ ・ シ ョ ウ !!」


香山のスタンド、ラブ・ラブ・ショウがモメンタリーの一撃を軽くいなし、
突 き の ラ ッ シ ュ を 繰 り 出 す ッ ! !

「ラァァブラブラブラブラブラブラブラブ……」

タゴサクの体中いたるところにラッシュが打ち込まれるッ!

「…ラブラブショォォォォウ!!!」

「ずるッぴゃァァァー!!」


タゴサクは吹っ飛ばされ壁に打ちつけられる…


「だーっはっはっは!
 負け犬に脱走なんてできひん!
 そこで生涯吠えてるがいいわ!」

香山は高笑いをしながら去っていった…

【モメンタリー・ライフ
 破壊力 :C スピード:D
 精密動作:D 持続力 :E
 射程距離:E 成長性 :?】

「うう…」

タゴサクは立ち上がった。
あまりダメージはない…
やはり香山の“ラブ・ラブ・ショウ”はパワー型ではないようだ。
しかしそれならなぜあんなラッシュを?
タゴサクは違和感を感じたが、それ以上は考えないことにした。

そしてあの香山、オラをここから出すつもりはないようだった…
それならやはり…
この牢獄は脱出しなければならないべ…!

ズズ…

タゴサクは自分の右手から、スタンドの右手だけを発現させる。
…この程度なら消耗は少ない。
鉄格子の扉の前に立ち、その錠に触れる。



拘置所の唯一の出入り口であり誰もが通るこの畳敷きの部屋…
そこの一角に20台ほどのモニターを配置…香山専用のモニタールームとなっていた。
まさに「ここまで来れたらワシが相手をしたる」という風に香山が居座る。

モニター4台がタゴサクを映している…
「稲を生やすのとパワーだけが取り柄のスタンドでは
 錠は開けられんやろ。
 情はかけられたとしても…」
香山は余裕の表情でほくそ笑む。



モメンタリー・ライフの指で錠に触れる…
すると、そこに小さな稲の苗が生えてきた。
「……ごにょごにょ…」
タゴサクはごく小さな声で何か呟いた。
いつもより成長は遅いが、苗はゆっくり伸び錠の鍵穴に入り込む…
「…ごにょごにょ……」


ガ チ ャ リ

 ピ ッ キ ィ ィ ィ ン !!

錠前解除完了!!


【モメンタリー・ライフ
 もう一つの能力…
 植物と会話、単純な命令ができる
 自分の生やした稲や育てた稲は特に賢く忠実】

タゴサクはスタンドの口だけを発現し命令をしたのであったッ!

「ありがとなッ! オラの稲ッ!!」



「どっしぇぇぇえ!?」
香山はモニターを見ながら目をまん丸く見開いた。
監視カメラからは錠前の部分は映らないので、
どうやって解除したのか分からないのだ。
「ま…まぁええわ。
 次はワシがプロデュースしたった地下迷宮や。
 一生さまよっててもらおか……」




「…長老!長老ッ!
 目を覚ますべよォ!」

タゴサクは隣の牢のゲンゾウを同じ方法で救出した。
しかし…顔色は悪く目を覚まさない…


ゲンゾウ長老はタゴサクにとっては育ての親だ。
両親は自分を捨てたと聞いている…
長老が拾ってくれなかったら自分は野垂れ死んでいたことだろう…
長老は自分のような身寄りのない子供を集めて育てていた…
厳しく、時に優しく、実にいやらしい長老であった。


オラは… 長老に恩があるッ!!
ここからなんとしても脱出し…
長老を病院へ連れて行くッッ!!

タゴサクは意識のない長老を背負い、一本道の通路を進む。


長老は… いちじるしく体力を消耗してはいるものの、意識は取り戻していた。
タゴサクの背に負われ長老は考える…

(あの香山とかいうヤツのスタンド能力が気にかかる。パワー型でもないスタンドなのになぜ突きのラッシュをワシやタゴサクに当てなければならなかったのか…しかもあの感じ…あえて全身にくまなく拳を当てようとする意思があったような…スタンドも出せずもはや無力のワシにわざわざラッシュを…おそらく何かヤツの特殊能力の発動条件となるものだろうな…今のところ変化はないが、ヤツの術中にハマったと考えていいだろう…/5秒)

長老もまた、タゴサクより先に香山のラッシュを喰らっていた。
ダメージないが体力の消耗が激しく少し休息をとる必要があると感じ、
気絶したフリをしていたところをタゴサクに救出されたのだ。

(それにしてもタゴサク…立派に成長したもんだ。我が村の未来はこやつにかかっておる。こんなところで死なすワケにはいかぬな…。このワシのスタンド…数秒も使えば気を失ってしまうやもしれぬが…ここぞという時には使わねばなるまい。それまではオマエの背で、しばし休ませてもらうぞ…/4秒)
…長老は、眠りについた。

【本体名:松城山 源造(長老)
 スタンド名:ディープ・パープル
 なんでも霧にする
 衰弱中につき数秒しか出せない】



細い通路を歩くタゴサクの目に、終点…ドアが見えてきた。
今のタゴサクにはドアの鍵などに阻まれることはない。
悠々と近づいていって……気付いた。

正面のドアだけでなく、通路行き止まりの左右にもドアがある。

「3つの…ドアだべ…」

とりあえず3つとも開けてみる。
どのドアの向こうも昇り階段があった…
とりあえず正面のドアの階段を昇る。
一つ上の階で階段は終わり、すぐに3つのドアがある小部屋に出た…




「最初から間違いよったわアホめが。
 この三択の地下迷宮…
 最初のドアは右、次からは左→中の繰り返し…これ以外正解の道はないわ!
 ヤツは延々と…気が狂うまで迷い続けるやろな…」


モニタールームでは、タゴサクの様子と現在地がよく分かる。
タゴサクは今、第二の三択で3つともドアを開けている。
どれも薄暗い通路、どれを進んでもまた同じような部屋があるのだ。
そしてそのどれも、ここに辿りつける正解の道ではない。

タゴサクは…来た道を引き返した。

「なんや?最初の三択で他の2つも行ってみようっちゅうんか?
 好きにすればええ…」


タゴサクは今度は右のドアの階段を昇る…
さっきと同じような三択の部屋…また3つドアを全て開けて…
今度は、左のドアの通路を進んでいった。
それは、正 解 の ル ー ト 。

偶然や。次は間違える。
それか自信なくして引き返すか…

タゴサクは次の3つの穴では…真ん中に飛び込んだ。

そして次は左のハシゴを昇る。

真ん中の通路を進む…

全 て 正 解 の ル ー ト !

「どぅぇぇえ!?
 なんでやねんッ!!」

派手にひっくり返る香山の太った下腹部には…

稲穂が一本生えていた……




タゴサクは足元を見ながら進んでいた。
ところどころに米粒が落ちているのだ。
本当は稲で香山を縛るつもりで当てようとした一撃…
下腹部をカスっただけだったが、苗は育ってくれたようだ。
歩くたびに穂から米粒が落ちるほどに…
これを辿れば香山の元に辿りつけるはずだ。


そして10ほどの三択を進んできた頃だろうか…

「最後の…ドアだべ?」

開けると少し広くて明るい畳敷きの部屋に出た。
奥には頑丈そうな鉄扉。
小っこいテレビが壁一面にいっぱいある。
そしてその前の椅子にふんぞり返るハゲ頭…

「ようここまで来たもんやな。
 やはりワシが直接叩いたらなアカンっちゅうことか…」

タゴサクは長老を後ろに置き、戦いを覚悟した。

「ワシの後ろの鉄扉が唯一の脱出口や。
 しかしすぐ通れんようになる。
 あんなもんはただの鉄とビラやから…」

ヒラリ…

鉄扉が…めくれる?
紙に描いた扉の絵だったべか?
その紙…チラシを何枚も貼り付けてあるようなそれは剥がれ落ちる。

とにかくアイツをぶっ飛ばせばいいべッ!
一気に距離を詰めようと走るタゴサク!

「そんな美味しそうな膝して走れんのかいな。
 ピザかと思ったわ。」

ガ ク ン ッ !

急に膝に力が入らなくなって足がもつれた。
見ると…

「なな…なんだべこれッ!?!?」

膝 が ピ ザ に 変 わ っ て い る ッ ッ !!


タゴサクの本来膝の部分が薄くえぐれてピザが貼り付いているッ!
これでは膝に力が入らず、走れないのはもちれん立つことすらままならないッ!

「何をしたんだべェ?オマエ…?」

「はん? ワシは知らんで。
 ダジャレ言うただけやん。」

香山はニヤリと笑う…

そして奴のスタンドが何かを投げつけてきた!!

「ただの石つぶてや!…」

石つぶてくらいなら耐えられる…が!

「…目ェはつぶってな!」

グググ…

勝手に目が閉じられていくッ!

バババババッ!!

石つぶてがタゴサクを襲う! そして…

グ サ リ ッ !

「ぐぁぁあッ!!」

タゴサクの右腕にナイフが!
石つぶてと一緒に投げたのか…目が見えずくらってしまった!

立っていられず膝…ピザをつくタゴサク。
目をやっと開くと、香山がニヤニヤしている…
「脱獄罪は死刑やでェ…
 保釈金は受けとったるが…」

タゴサクはダメージを受けつつも、
なんとか密かに自分の周りに苗をいくつも生み出していた…。
そして自分の腕にも。
香山が喋ってる間も成長をしている…

よし、オマエら頼りにしてるべよ…

苗は少しずつ稲となる…
これで少しは戦えるべ…

アイツをぶっ倒す『一撃必殺』の策はある!
しかしくらわせるために『接近』できるべか!?

香山のスタンドがまた石つぶてを投げつけてくる!

「墓石を削ったカケラや!
 触れたものを破壊してまうなァ!!」

ボンッ!
   ボンッ!

避けきれず2発!
ただの石に破壊力!!

「グハァッ!」

倒れるタゴサク。
急所は外したが足をやられた!

もうアイツに近づくことはできない!

いや、近 づ く 必 要 は な い ッ !

「…稲は伸び切ったべ!

 縛 り あ げ ろ ォ !!」

いつのまにか成長した稲に囲まれていた香山ッ!
稲がスルスルと香山を縛りあげてゆく!

よしッ!
これでライス・シャワーをくらわせれば勝ちだべ!!

スタンドを出現させる香山…

「勝利を確信しよったか。
 甘い… 甘すぎるなぁ〜。

 この稲… 稲 じ ゃ な い ね ! 」

稲が成長を止めた!?
香山を縛りつけようとした稲が…

造花…ならぬ『造稲』となっているッ!


【本体:香山 誠吉
 スタンド:ラブ・ラブ・ショウ
 一度スタンドが触れたものは
 香山のダジャレの支配下となる】


その昔、フランスのある高名な建築家は言った。

一流の職人が本気で手がけた作品には魂が宿ることがある。

純粋な魂を持った人間には、それを感じることができるのだ…と。


【練習 ―― 脱 獄 大 作 戦 ――】 4/4


香山は懐からトランプを数枚取り出した。
「スペードのトランプが…
 超スピードで襲いかかるなんてのはどうや?」

ビュビュビュンッ!

  サクッ! サクッ!

タゴサクの体に突き刺さるッ!
痛みに堪えるタゴサク!
香山は別のトランプを数枚、タゴサクの頭上に放り投げた。

「ダイヤは… タイヤや!」

もはやダジャレですらないが、トランプがカータイヤとなりタゴサクへ…!

ドゴッボガッドゴ!

輪投げのように落下!

タゴサクの体は数本のタイヤに封じられた!


両腕がッ! 身動きがッ!!

「…墓石つぶてとスペードでいたぶったろうかい…!」


ヤバいこの状況!

膝はピザとなりヤツに近づくのは難しい。
両腕はタイヤに封じられ『一撃』が放てない。
そしてヤツは飛び道具でオラをいたぶるつもりだッ!

オラは自分の身を守る手段すらねえのか!?

なんとかガードを… ガードをしなければァ!!


ラブ・ラブ・ショウが石つぶてとトランプを投げてくるッ!


ビュビュビュビュンッビュンッ!!


しかしその時 あ る 奇 跡 が 起 き た ッ !


そ れ は タ タ ミ !

畳 が タ ゴ サ ク を 守 っ た !

タゴサクの足下の畳が勝手に浮き上がり、タゴサクの盾となったのだッ!
まるで昔サムライがやったという『畳返し』のように!


そうか…イ草か…。
畳のイ草がオラを守ってくれただか…
植物と心を通わせるオラの能力が…

―そうよ あなたのタマシイにたのまれたの―

声が聞こえた気がした。
もう刈り取られ畳となってもその魂…

それならば… 遠慮なく頼りにさせてもらうべッ!

「行けッ! 『 タ タ ミ ガ エ シ 』!!」


石つぶてやトランプを防いだ畳がそのまま香山に襲いかかるッ!

「なんやてェ!?」

ドッゴォォンッ!!

派手に香山は吹っ飛んだ!

タゴサクを封じていたタイヤや膝のピザも元通り。

トドメの『一撃』を喰らわせるため走り寄るッ!



香山が立ち上がり吼える!

「やるやないかタゴサクゥ!
 これだけは使いたくなかったが仕方ないッ!
 お前はもう…『伝説のダジャレ攻撃』で死ねッ!!

 …『 露 骨 な 肋 骨 』ッ ッ !!」


ググ……

胸が… 苦しいッ!

オラの肋骨が飛び出そうとしてるのが分かるッ!

ググ……

ヤバい! これが突き出たら… 死 ぬ !




「…ふぉっふぉっ…
 我が村の未来を背負う若者を、こんな場所で死なせはせんよ…」

シュウゥゥゥ……

デ ィ ー プ ・ パ ー プ ル の 霧 化 ッ !

突き出ようとしていた肋骨ごと胸あたりが霧と化すッ!


痛みはない…!

足は…走れる!

腕は…殴れる!!


うぉぉぉぉーーーーッ!!!



く ら え ッ !! 必 殺 ッ !!

「 タ ゴ サ ク ・ モ メ ン タ リ ー ・ コ メ ・ パ ー ー ー ン チ !!!」



普 通 に 思 い っ 切 り 殴 っ た ッ !


否ッ!

畑仕事で鍛えられたタゴサクの筋力ッ!

米の実った稲穂でビキビキに覆われたタゴサク本体の右拳ッ!

衰えはしたが元パワー型であるモメンタリー・ライフ、
その右腕のビジョンも重ねるように発現ッ!!

その破壊力はAクラスッ!!


ド ッ ゴ ォ ォ ォ ォ ン !

「ヤッッダァァァバーーー!!」


【香山 誠吉 / ラブ・ラブ・ショウ :再起不能】



タゴサクは…強敵を倒した…

新しい技をも身につけて…

もう負け犬ではないのだッ!!

【復活モメンタリー・ライフ
 破壊力 :A スピード:C
 精密動作:C 射程距離:D
 持続性 :B 成長性 :B
 新技…タタミガエシ
   …タゴサク・モメンタリー・コメ・パンチ】

タゴサクは再び長老を背負い、鉄の扉を開ける…

眩しい… 太陽の光は久々な気がする。

この太陽のもとでまた稲を育てよう。

イ草を育てて 畳を作ってみるのも悪くないかもしれないべ…

それよりまずは…病院だべッ!



(やはりワシの睨んだ通りオヤジギャグのスタンド使いかそしてワシが予想してた通り『露骨な肋骨』が奥の手だったか分かりやすい敵で良かったわいタゴサクがタイヤに封じられた時霧化を使わなければ無理かとも思ったが自力で切り抜けてくれて本当によかった本当に成長しおったわたいした男だこれでワシも安心して村に帰れるあれ帰れる?帰ったら婆さんいるではないかやばいぶっ飛ばされる絶対ヤバい逮捕脱獄なんて絶対ヤバいヤバいヤバヤバヤバ…/4秒)

【長老:泡を吹いて気絶】

おしまい(チャンチャン)


オリジナル読み切り作品5
【Freely Jail】
作:るぱん


〜Freely Jail〜

「おい、巻(マキ)。ちょっと来い」
ニヤニヤしながらオレを呼ぶ。

始まった。コイツはいつもそうなんだ。
仕事中のミスはどんなに些細なことも見逃さず

相手を叱る…んじゃあなく、「オマエ頭悪いなァ」と見下す。
気に入らない相手限定。
それが日課。

「はい!」

オレは嫌な顔一つしないで返事をする。
悲しいかなオレってば新入社員。

「お前さァ、こんなに荷物並べたら通れないだろ?」

確かに荷物が多い、非常に通りにくそうだ。
「はい。」
「なァ、こんなに荷物あったら通れないだろ?」
二回目。これもいつものこと。返事をしたって繰り返す。
まるで相手が理解できていないから、しかたなく言い直してやってるって顔。


根暗な性悪ジジイ。


「はぁ。」
言ってる事は分かったが、オレが呼び出され説教されてる理由が分からない。
オレは確かにこのあたりの荷物の整理はした。しかし今の状況はオレの知っている状況ではない。
オレ以外の誰かが荷物を持ってきて加えた。そういう状況。

「『はぁ。』じゃあないんだよ。こんなに荷物があったら通れないだろ?」
三回目。クソッ!イラつく。
「これは自分がやったんじゃあないんですが。」
さっさと誤解を解いて仕事に戻ろう。
こんなときばっかり仕事をしようって気分になる。
「少しは頭使え。な?通れないと仕事になんないだろう?」
「あの、この状況は自分も今初めて見たんですが。」
「知らねェよ。頭使って仕事しろ。な?」

うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

ビシッ!ビシビシビシッ!

…
……
………
「スンマセン」
「そーいうことだ。戻れ。」
「はい。」

新入社員はツライ。
この不景気、新卒の内定取り消しなんて話があるくらいだ。
次の働き口があるかなんて保障はない。
問題は起こさないほうが良いのだ。

         @
         @

今日も長い一日だった。
なんでこんなにも仕事ってのはつまらないんだろうな。
時計の針がいつもの倍かけて進んでるみたいに感じる。
いつもと同じ感想を思い浮かべながら寮へと戻る。

ガチャ

「ただいまァ」
っても誰もいないんだけどとりあえず言う。
あんたの周りにもいない?そーいうヤツ。

6畳程の部屋にあるのは机、クローゼット、ベッド。
いたってシンプル。
先輩に寮に住んでるって話をすると決まって言われる。
『あの独房みたいな部屋だろ。』
全く同感。

自由に出入りできる牢獄。
そんなイメージ。

まぁここを出て暮らしていけないっつー意味じゃ自由でもないかもな。
4月から今の会社に入って、同時に入寮。

そして半年が過ぎていた。

「ダイコクゥ、お前さんさストレス溜まってんねー。」
「うぉ!!びっくりした!!」
気配もなく突然現れ声をかけてくるコイツはワラシ。
オレと同じ、社会人一年生。
「まぁな半年もキレなかったのは人生初だな。オレも大人になった。
もっとも、いつキレるかわかんないけど。」
「どんだけ短気だ…」
やれやれと呆れ気味にため息一つ。
オレからしたらなんで皆我慢できるのか理解『不能』。
「で、なんか面白いことでもあんの?」
ワラシのニヤニヤ顔はそういうサイン。
「お前さん格闘技とか超能力とかギャンブルって好き!?」
「どっちかっつーと自分が暴れる方が好きだけどな。
その組み合わせってことはなんかヤバい感じのイベントか?」
テレビで見れるファイトはクリーンなエンターテイメント。
プロレスはプロレスで面白いとは思うよ。三沢カッコ良いよ三沢。
でもやっぱりケンカはリアルじゃないと。そこにリスクはつきものだろ。
それが面白い。



…あ?
…超・能・力?

「実はよ、この寮のなかにファイトクラブがあるって噂なんだ。」

「おい、今さらっとおかしな言葉が挟まらなかったか?」
「だからファイトクラブがあるって話だよ。」
「いや、その前に。超能力とかって言わなかった?」
「言ったけどそっちの信憑性はイマイチだな。
噂ってのは尾ひれがつくもんなのさ。」
「だよな。」
「でさ…」

このあとオレは噂についてワラシに聞いた。

才能のあるヤツしか入れない。
入るためにはテストがある。
そのテストで死んだヤツもいるらしい。
行きたいと思うヤツが行けるとも限らないし
行きたくないと思うヤツが行ってしまうこともある。
そこでは莫大な金が動いているらしい。

「こんなんだから超能力って尾ヒレがついてんのよ。多分。」
ワラシは締めくくった。

なんとも噂話らしい噂話。
以前のオレにはちっとも信じられない話だけど。
だってそうだろ?
こんな狭い寮のなかでファイトクラブがあるなら
そんなの隠しきれる訳がない。
音もするし、怪我人だって出るだろ。
それに気づかないなんてことはないはずだ。
まぁ見たこともない人がこの寮にいるのは確かだけど。


でも今のオレは信じちゃうんだよ。
先輩が一人消えてるかんな。
それも今の話によく似た話をオレにした直後に。

         @
         @

今日もいつもと同じように、退屈な仕事を終え、寮へと向かう。
めっきり寒くなった最近はポケットから手を出すのも億劫。

ファイトクラブの噂を聞いて三ヶ月が過ぎていた。
こっちから探そうと思っても手がかりなんてない。
ワラシの話以上のものはなかった。

寮についていつもどおり玄関のオートロックにキーナンバーを入力する。
「0810、E…っと」
ウィィィンと音がしてサムターン式の鍵が開く。

はずなんだけど?

ウィィ゙ィ゙ィ
   ウィィ゙ィ゙ィ
 ウィィ゙ィ゙ィ

「アァん!?」
仕事で疲れてんのにイラつくぜ。
ガラス戸をブチ破ってやりたくなる。
でもそんなことはしない。
オレは大人になったんだ。ハハ…

「なんか引っかかってんのか?」
指なんか入らないのは分かっていたけど
ドアの隙間をチェックする。
一応ね。
あるだろ?無意味なのを分かってても思わずやっちゃうこと。


バチィッ!!


「イッテェッ!!!!」

ドォッバァァーーーン!

背後にあった植え込みに突っ込み強かに腰を、頭を打ちつける。
アニメで頭になんか降ってきてぶつかったとき、
キャラクターの目の前に星が出るってのよくあるだろ。
あれホントなんだな。

「クソッ!なんなんだ!電気系統がおかしかったのか!?」

ウィィィン…
何事もなかったかのように寮の入り口は開かれた。
なんともツイてないアフターファイブ。
玄関で下駄箱からスリッパをとりだし(当然ボヤきながら)履き替え
階段を上り五階の自分の部屋まで帰…

れなかったらしい。

四階まで上ってきたところで突然全身に毒入りの電流を流されてるような激しい痛みに襲われた。
オレが覚えてるのはそこまで。

その後意識をなくし、たまたま見つけたワラシが車で病院に連れて行ってくれたらしい。
その後四日間もの間、意識不明で高熱にうなされていたらしい。
気づいた時には病院のベッドで汗だくだった。

         @
         @

退院して一週間が過ぎた。
オレが入院していたことなんか誰も知らないって感じで淡々と毎日が過ぎていった。
むしろオレが休んでいたことすらこいつら知ってんのか?

「おい、巻。ちょっと来い。」

そうだよな、コイツが突っ込まない訳がない。
突然欠勤したオレなんてのは、格好の的だ。

「この書類な、ここ空いてるけど良いのか?」

ん?休みの話じゃあない…?
この書類はたしか休む前に提出した、四半期ごとにある自己評価のシートだ。
まさか、本当にオレが休んでたことを知らないのか?
お咎めなしなのか?

「継続しているところは書かなくて良いと先輩に聞いたので空白なのですが。
書いたほうが良いですか?書いたほうが良ければ書きます。」
「書いたほうが良いと思うが。強制はしない。」
「はい。では書きます。」
「書いたほうが良いと思うが。強制はしない。」
毎度毎度よくもまぁ飽きずに…
「えぇ、ですから書きます。」
「良いか?話を聞け。書いたほうが良いと思うが。強制はしない。
 仕事が出来ないんだから、日本語くらい理解してくれよ。」

アァ゙!?
ア゙ァァァァァァん!?

何言ってんだコイツ。
コイツ絶対ェ連立方程式解けねぇタイプ。
もっともそれ以前の問題かもしれないけどな。
つーかなんだ日本語がどうこうって。

とにかくそのニヤけ面をやめろ。

「で、どうする?」

ふぅ…オレも散々我慢してきたが限界がきたらしい。

プッツゥゥゥゥゥン!!!!

「あんだとコラァッ!!」




『待チナヨ。』

ズズ…



「ついに逆ギレか?…ん?」
「アァ?ア゙!?」




(動けねェ!コイツをブッ飛ばしたいのに!)
『ボクハキミダ。ダカラ動ケナイ。』
ズズズ…


金縛りにあったみたいだ。
腕を振り上げることも出来ない。

(何だコイツは!?)
オレの目の前には細身ながらも引き締まり、
しなやかな身体つきをした「人」のようなものが立っていた。
人に見えるソレは剣も盾も持ってないけど、
コロッセオにいるようなグラディエーターみたいなカッコをしていた。
パワーよりスピードやテクニックで勝負するタイプ。
全体的なデザインは左右非対称でありながらも、
均整の取れたものを美しいと感じるような美しさがあった。

『待チナヨ。ダイコク。キミガスベキコトハ、コンナクダラナイヤツヲ
ブチノメスコトジャアナイダロ。キミハスベキコトガアッテ今ココニイル。』


(そうだ、オレは先輩を探さなきゃあいけない。
 世話してくれた先輩との繋がりを切っちゃあいけない。)

「い、いえ。スンマセンでした。」
オレは急に冷静になった気がして頭を下げた。
「そうか、分かればよし。」
満足げに笑うとヤツは自分の席へと戻っていった。

「で、オマエはなんなんだ?」
グラディエーターに話しかける。

『サッキモ言ッタロ。ボクハキミダ。呼ブノナラ
【アンバランス】ソウ呼ンデ。』

そういうとソイツ【アンバランス】はふっと消えてしまった。

         @
@

不思議な経験をしたそのあとは仕事はほとんど手につかず
アイツに嫌味を言われっぱなしだった。
でもなんでかプッツンするには至らなかったな。
こんな穏やかな気分は初めてだ。

そんなことを考えているうちに寮に着いた。
習慣ってヤツは凄い。いつ曲がったのか全然覚えていない。

ズォオォォォォ…

いつもの寮に着いたはずなのに何かが違う気がする。
思わず寮を見上げてしまった。
気のせいか…?


ジィィィ
玄関を入ると誰かに見られているような奇妙な感覚があった。
周囲を見回すが当然誰も見当たらない。

「クックック。」

「ッ!?」
突然の笑い声。
途端に得体の知れない気持ち悪い感覚が上から迫ってきた。
気づくとオレは笑い声から遠のくように飛んでいた。

「所詮新人か。ヌルいな。」
「アァ゙!?」

廊下の奥から男が出てきた。
ほっそりとした体躯、無精ひげの生えた青白い顔をしていた。
オレの見立てじゃあ喧嘩なら絶対に負けない。
が理由は説明できないが一筋縄ではいかない。
とっておきを隠している。
そんな印象があった。

経験からするとバックに本職がいたり、ナイフやレンチをもってたり、
実は格闘技の心得があったりするヤツがこんな雰囲気だ。


「凄んでんじゃあないよ。新人君。」
「新人新人ってうるせェな。なんなんだアンタ。」
「ふぅ、やっぱりそこから説明しなきゃあならないか。」


「オレは布施一義(フセ カズヨシ)
今夜の君の 対 戦 相 手 だよ。」

「へぇ…(そうかこれがファイトクラブ。)」

ベキンッ!ベキンッ!
慌てて構えるのもカッコ悪い。
首を鳴らし悠々と余裕を持って構える。

「準備は良いみたいだね。始めようか。


【マカブラ】ァッ!!」

ズササァァァ

フセと名乗った男はカッと目を見開き叫んだ。
すると腕の長い【アンバランス】のような人型のヴィジョンがフセの前に現れ音もなく迫ってきた。

「んなッ!

予想外の事態に動揺しながらもヴィジョン【マカブラ】に向けて拳を放つ!
完璧なカウンター。

ソラァッ!」

フォン!

拳はすり抜け、オレはその勢いでバランスを崩しそうになる。

「ッとと。」

その間に【マカブラ】は背後をとった。

「ククッ。そこだ。」

【マカブラ】は両手を振りかぶり、手のひらをオレに叩きつけた。

バシィィィーン!!
背中に衝撃が走る!

「ガフッ。」

ひょろい見た目の割りにいいもん持ってる。

が、まだいける。
このくらい、昔の喧嘩で経験済み。
あいつはゲーセン計測300kgのパンチを持ってた。

ただこっちのパンチが当たらないのはいただけない。
追撃を受ける前に向き直る。

「『スタンド』に生身の拳が当たるかよ。ククッ。」
「『スタンド』…?」

「やれやれそこからかい。」

ユラァ ヒュッ! ユラァ ヒュッ!

【マカブラ】がボクサーがサイドステップを踏むように床に届く程長い腕を右に左にけん制しながら近づいて来る。
身長170cm、ミニマム級。

オレも左右に体を振りながらバックステップ避ける。
右、左、大きく右フック。右、左、大きく右フック。右、左、大きく右フック。
こんなワンパターン避けるのは楽勝。
それよりもこっちの攻撃をどうやって相手に当てるか、だ。
いつまでも笑いやがって。イラつくぜ。
この【マカブラ】をほっといてフセをぶっ飛ばすのが理想的だが、
長い腕とその動きは実に効果的で、攻撃を避けることは出来ても、コイツを抜くことは難しそうだ。
そう遠い位置にいるわけでもないのに。クソッ!
たいしたダメージでもないし、開き直って突撃だッ…

ドンッ! ピタァ!
「んん!?」

「ここまで避けきるとはなかなかの運動神経と言いたい。


なんてな。」


ゴゴ…ゴゴゴゴゴゴ ゴ ゴ…

(ヤバい!)
ツゥーっと冷や汗が流れるのが分かった。

「気づいたか?自分がヤバい状況であることに。」

そう。オレはハメられていた。
相手の攻撃はワンパターンだったんじゃあない。
避けさせられていた。そして誘導されていた。
そこは壁際。
ただ壁際に追い詰められただけならなんてことはない。
いくらでも打開策はあるだろう。
今ヤバいのは。

背中が完全に馬鹿デカい共用の下駄箱にくっついちまって動けないってこと。

「ぐむむ…!」
服が引きちぎれても良いくらいの力で引っ張ってるのに剥がれやしない。
接着剤やなんかとは質が違う。もっと強く超常的な力でくっついている。
ただただ下駄箱がガチャガチャ鳴る音が響いていた。

「無駄だ。それはオレの【マカブラ】の能力。

オレから視線を外すと話し始めた。
こいつ絶対自分に酔うタイプ。

本当に何も知らない新人君みたいだから少し説明してあげよう。
オレの持っているこのチカラ。これは生命エネルギーが造りだすパワーある像(ビジョン)。『スタンド』呼ばれる超能力だ。
この【マカブラ】が見えているということは新人君もスタンド使いであるのだろう。

そしてこの『スタンド』にはいくつかルールがある。
…ん?なんでオレがご丁寧に説明してやってるか疑問か?

もっともだな。
オレの目的はお前をぶちのめして勝つことだが、殺すことじゃあない。
どういうことかわかるか?
新人君。君がオレに負けたとしても次があるってこと。
まぁたまたまオレには殺す意思がない。ところがメンバーの中にはそうでないヤツもいる。
そしてこのファイトクラブの目的の為には新人君に死なれたら困るから必要な説明なのさ。


疑問に対する答えはこのくらいで満足か?それとその悪あがきも。無駄だ。クックッ。」

フセが明後日の方向を見て話していたのを良いことに
ばれないように服を脱ごうとしていたのもお見通しだったらしい。

「うるせェ!」
なんと虚しい反抗か。
下駄箱に貼り付けられたオレの言葉はまさに負け犬の遠吠え。

「聞きたくないなら聞かなければいい。オレは勝手に話させてもらう。
ルール1
スタンドに触れることが出来るのはスタンドだけ。
さっき新人君の拳はすりぬけたよな。
ルール2
スタンドが傷つけば本体も傷つく。
スタンドの頭が吹っ飛べば君の頭も吹っ飛ぶ。
ルール3
本体から離れて行動できる距離には限界がある。
オレの【マカブラ】は力はそこそこのパワーだがくっ付ける能力にパワーがいる。
だからあまり遠くへは行けない。その逆の場合もある。わかるな?

まぁこんなところだ。」

一通り話しきってフセは視線をオレに戻した。

「すっかり脱力して…諦めたか。ククッ。

さて、決着だ。」

         @
@

フセが得意げに『スタンド』の講釈を垂れてる頃。

「(どこだッ!【アンバランス】!!)」

『スタンド』には『スタンド』で立ち向かわねばならないなら
オレには【アンバランス】のチカラが必要だ。

ズズ…
(言ッタダロウ?ボクハキミダ。呼バナクテモソバニイル。
チカラガ必要カイ?ソレナラ強ク念ジルンダ。キミノ精神ノパワーガボクノエネルギーダ。)

「(【アンバランス】、この引っ付くチカラを解除できるか?)」

(ボクノ能力デ剥ガスコトハデキナイ。デモキミヲ少シダケナラ動カスコトハデキル。念ジテ。強ク。)

「(少し…か。)」

         @
         @

さて、決着だ。」

寮の玄関、裸足のフセの足音がペタペタと迫ってくる。
とどめは近くから確実に、か。
オレが動けないからっていい気になりやがって。

「【マカブラ】。」

スタンドを発現させ、オレにとどめを刺すべく長い腕の拳を振り上げる。

「じゃあな。」

フセがその拳を振り下ろそうとした瞬間。


「(【アンバランス】ッ!!!!)」


「ソラァッ!」
ガショッ!!
オレは下駄箱を背負ったまま立ち上がり

ガショッ!!
拳を引きながら

ガショッ!!
体を捻り

ガショッ!!
拳を振るう!

ブンッ!!

「うぉっと!」
素早く感づいたフセは飛びのき拳を避けた。
いかんせんモーションがデカすぎる。

「クソッ。避けられた。

(でも分かった。いや思い出した?まるで昔から知っていたみたいだ。
【アンバランス】の持つチカラ。
コイツはバランスをコントロールする…
下駄箱の重心をオレの重心に重ねたのか。)」


「動けるのか…どういう理屈だ。
しかし自由自在とはいかないらしいな。
しかし、警戒に値する。ここからは新人君は自由に動けると思って行動させてもらう。」

フセは【マカブラ】の手のひらで床に触れ距離をとった。

「(警戒すると言いながら…そこは十分にオレの可動範囲内だぜ。)

(【アンバランス】ッ!!)


ガションッ!!!!


ソッ…!!?」

攻撃モーションが途中で止まる。


「クックック。さっきから慢心が過ぎるな。不用意に突っ込んでくるとは。
足元に【マカブラ】の能力を発動している。
足を押さえてしまえば反撃の心配はしなくていい。
スタンドを出せない君の上半身だけのパンチと【マカブラ】のラッシュ。結果は見える。」

ペタペタペタ
「(来いもっと近くに。)」

フセはもう目と鼻の先。

「さて、今度こそ決着…だッ!?」
ペタ ピタァッ!


ドッ ド ド ド ド ド ド ド ド…

「どうだい。フセさん。ハメられる側の気分は。冷や汗がたらーり、か?
アンタは動けるオレを警戒するあまり、オレが下駄箱をしょったまま動けても関係ない必勝法を探しちまった。
それがアンタの心の隙だ。ハマれば必勝。それが油断。勝負に絶対はないんだぜ。」

「なぜ…ここに【マカブラ】の罠が…」

「アンタの距離のとり方が不自然だったからな。床に何かをしたんじゃあないかと思ったのさ。
あとは簡単。手前で引っかかった振りをすれば、距離を詰めてくる。そうすればアンタは自分で仕掛けた罠にハマる。オレの目の前で。
冷静に見れば間違える距離感じゃあなかったはずだ。必勝法で目が眩んだな。

さてどうする?能力を解除するかい?」

「解除するわけながない。状況は何も変わっていない。この距離は【マカブラ】の射程距離でもある。」

「そうか、じゃあオレの勝ちだ。」

オレは勝ち名乗りを上げるように拳を掲げる。

「【アンバランス】ッ!!!!」

左右非対称、グラディエーターのようなヴィジョンが下駄箱の陰から現れオレの拳を叩く。
拳がグングン重くなるのを感じる。
支え切れなくなったオレはそのまま拳を振り下ろす!!

「【マカブラ】ァッ!ガードしろッ!」

「アンタが教えてくれたんだぜ。
『ルール1
スタンドに触れることが出来るのはスタンドだけ。』
オレの拳をソイツで防ぐことはできない。

ソォォラァァァァァァッ!!!!」

ゴッギャァアアアン!!

【マカブラ】を素通りした拳がフセの顔面を捉えた。
下駄箱とオレの全重量が乗った拳による攻撃に歯はブチ折れ
フセの顔面がひしゃげ膝から崩れ落ちる。
意識は遥か彼方へ。

【本体:フセ カズヨシ 
 スタンド:マカブラ  再起不能】

ドガシャァーン!

能力が解除されオレの背後から下駄箱が落ちる。
文字通り肩の荷が下りた。使い方がおかしい?まぁ気にすんなよ。

「フゥ。なんとか勝った…か。」

オレもその場にへたり込む。
リアルでリスキー。
このファイトクラブ本物だ。オレが探してたファイトクラブだ。
先輩へと繋がる細い糸。
こいつを放しちゃあいけない。手繰って手繰ってたどり着かなければ。

        〜END〜
----------------------------------------------------------
本体:マキ ダイコク

男、不良上がりの会社員。
繋がりを非常に大事にしている。
外国人っぽい顔立ちだが純然たる日本人。
そのことをバカにされるとキレる。
それは日本人である両親との繋がりを否定されているも同義だからである。

テストにてスタンドを身につける。

口癖「イラつく。」
   「クソッ!」

スタンド:アン・バランス
近距離パワー型。
対象に殴るあるいは触れることでその対象の
「バランス(重心)」をコントロールする(移動させる)。
頭に重心を移動することで立っているのを困難にしたり、
拳に重心を持っていって打撃を強力にしたりできる。
(文字通り『全体重が乗ったパンチ』)
横に長い岩の重心を片側に寄せることで岩を立ち上げることもできる。
大きなもの、重いもの程コントロールの幅が狭く、持続時間も短くなる。


破壊力 …B
スピード…B
精密動作…C
射程距離…E 能力射程5m
持続力 …A-E
成長性 …B

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----------------------------------------------------------
本体:フセ カズヨシ

男、会社員。

見た目は貧弱だがスタンドパワーは強い。
プライドが高くおしゃべり。

口癖「クックック。」

スタンド:マカブラ
触れたモノ(部分)にくっつく力を持つ膜を張る。
解除するまでは離れない。
張った膜は見ることはできない。
それを利用して罠として利用したりもする。

破壊力 …C
スピード…B
精密動作…C
射程距離…E 能力射程∞m
持続力 …A
成長性 …C

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オリジナル読み切り作品6
【69‐ドミノの過去話】
作:鳥ッシュ


消してしまいたい、やり直したいと思う過去は誰でも一つくらい思い当たるのでは?
その時は過ちなどと思わなくても、振り返れば見えてくるようなそんな過去が・・・

違う選択肢を選んでいたらどうなっていたのだろうか?
今とは別の未来が用意されていたとしたら・・・

OSB2.1部ショートストーリー
『69‐ドミノの過去話』

敬虔なキリスト教徒である両親の元に生まれた彼は、幼い頃から母親に手を引かれ毎朝礼拝堂で祈りを捧げていた。
独り立ちし、親の手を借りることはなくなっても、彼は礼拝を欠かさなかった。神はいかなるときもすべての生命と共にあるのだと信じて疑わなかった。


12月も暮れに近づいた頃、寒波によって連日降り続いた雪により、家々やその周辺ではかなり雪が積もっている。
成人した彼は自分の運転する車で両親と共に買い物を済ませ帰宅への途を急いでいた。
「・・・だいぶ混んでるみたいだ。渋滞か」
「気をつけてねドミノ。この時期だからスリップなどしないように」
「わかっているよ母さん」
ショッピングセンターを出てしばらく経ったところで車は渋滞に捕まってしまった。ラジオの情報によると先の道路で追突事故が発生してその影響らしい。
「だめだな・・・動く気配がないや」
「大通りを直進するより迂回した方がいいんじゃないか?」
父親がそう進言する。
「そうだね。ちょっと慣れてないルートだからナビゲート頼むよ」
父親の言葉通りに大通りから迂回し、大幅な回り道の末ようやく車は家の近くの見慣れた通りまで辿りついた。行きの時間より20分くらいのロスだった。
家がすぐ目の前まで差しかかったその時、母親が思い出したように口を開く。
「あ、ごめんなさい。ミルクを買うのをすっかり忘れていたわ。ミルクだけはいつも大通り沿いのあの店で買っていたものだから・・・」
「母さん、それなら僕が買ってくるよ」
「でも悪いわ・・・事故で渋滞してるしわざわざ今日行かなくても」
「大丈夫。でも、家の雪かきは買い物から帰ってきてからになりそうだけど」
「そう・・・気をつけてね」
両親を家に降ろし、彼は一人でいつもの牛乳店に向けて車を走らせようとした瞬間、何かの囁く声を聴いた気がした。
『その選択でいいのか?』
「・・・気のせいか?」
いつもの店で牛乳を買い、再び家へと急ぐ。
その時、ラジオから事故者回収により渋滞一部緩和の情報が流れる。
「いつものルートで帰るかな」
大通りを直進し、いつも通りのルートを走っているとまたあの声が聴こえてきた。
『すでに選択は終わった。お前の未来も運命も決まってしまったのだ』
今度は最初の時よりはっきりと聴こえた。
「運命はきまっただと?」
後ろを振り返るとさっき買った牛乳の入った袋以外は何もない。気のせいにしては大げさかと思い始めた次の瞬間・・・
「う、ハンドルが!」
キキィィィィィィィィ
路面を滑るように車は回転しながら対向車線にはみ出した。
「うわぁあああああああああああ」
よけきれない対向車と衝突しようとする直前で、あの声が頭の中に響いた。
『運命の時は来た。さぁ選択するがいい』
「な・・・なんだ?」
周りの景色はまったく見えないほど白い光に包まれた。
奇妙なことに、彼は光に包まれた空間の中で自分のことを俯瞰して見ていた。
「あれは・・・僕だ。スリップして対向車とぶつかって、僕は死んだのか?」
『いや、まだ選択していない。だがそれに至る選択肢もある』
目の前にはさっきまで自分の頭に響いていた声と同じ声で話す、全身白づくめの顔の無い男が立っていた。
「お・・・おまえは、人間か?」
『私はお前自身だ。お前が信じる、最も崇高な魂、けがれ無き精神のヴィジョン』

「意味がわからない・・・やっぱり僕は死んだのか?」
状況が飲み込めずにいると、目の前ののっぺらぼうの男が質問を返してきた。
『今はいい。ただ選択しろ。おまえはこの場所から自分自身を俯瞰し、自分が選択した過去を塗り替えることができる』
「過去を塗り替えるだと?そんなことしてどうなる」
『お前は数秒前の過去にいくつかの選択をした。その選択の結果が今の状況というわけだ。このままでは確実におまえは死ぬとだけ言っておこう』
彼は説明を聞いてもまったく理解ができなかった。ただ、このままだと自分が死ぬだろうということはなんとなく理解できた。
「・・・どうすれば死を回避できる?」
『過去の選択とは別のもう一つの選択肢を選び、その結果を受け入れることだ。だがその結果が必ずしも死を回避する結果になり得るとは限らない。違う選択肢を選んだ場合の結果を辿ることができるということだ』
「・・・なんだと?じゃぁ、選んでやる・・・スリップしないですむようなそういう選択肢を」
その瞬間、のっぺらぼうだった男の後頭部が淡い光を発した。
『別の選択肢を選べるのは一度きりだ。それがいかなる結果であろうと従ってもらう。後悔はないな?』
「・・・後悔はない」
白い空間が消え去るのと同時に、彼の意識は次第に遠のいていった。

「はっ!」
気がつくと彼は大通りを走る車を運転していた。
どうやらあの声に気を取られずに後ろを振り向かないという選択をした結果、スリップせずに済んだらしい。
「さっきのは一体なんだったんだ?」
疑問を抱えつつ家の目の前の通りまで差しかかると、母親がなぜか外の庭でしきりに雪をかいているのが見えた。
「母さん、雪かきはぼくがやるって・・・」
「ドミノ!あぁ・・・聞いてちょうだい。屋根の雪かきをしていたお父さんが庭に落ちてしまってこの雪の中に・・・」
「なんだって!」
屋根の雪かきをしている途中、父親が誤って転落し、大量の雪と共に埋もれてしまったらしい。かろうじて雪をかきわけ救出するも、父親はすでに息をしていなかった。
「あなた!・・・主よ・・・どうか慈悲をお与えください」
「そうだ・・・あの声がまた過去を、選択肢を与えてくれる」
しかし、父親は二度と息を吹き返すことはなかった。

「・・・あの時、僕が大通りを迂回しなければ」
『選択はいつ、どこで迫るかわからない』
「・・・あの時、僕が母親の言うとおり牛乳を買いに行かなければ」
『運命とは連続した選択を積み上げることで生まれる結果だ』
「・・・あの時、僕が・・・何もできなかったから」
『他人の選択した運命に関わることはできない』
「・・・気づいた時には、すでに決しているんだ」
『長い時を遡って選択肢を変えることはできない』
「・・・神は父親を見捨てたというのか?僕は今まで一体何を信じていた?」
『名を冠するならば・・・69(シックスティナイン)』
「・・・主よ。あなたは何処に居られるのですか?」
『選ばれた選択肢も、選ばれなかった選択肢も。もし居るとするならばだが、神は平等に愛し育むだろう』

おわり。


オリジナル読み切り作品7
【Love your life】
作:カルピス



○月×日

天気:快晴

ジリリリリリ

日向家の部屋に目覚ましの音が鳴り響く

「ほわぁ〜〜」

ガチャ

「ん〜今、何時だっけ?」

梨乃が寝ぼけ眼のまま目覚ましに視線を移す

時計の針は8時前

「うわっ!ヤバイ!!遅刻だぁ」

梨乃は急いで制服に着替え顔を洗って歯を磨き食パンを加えたまま外へ飛び出した

日向家ではよくある光景である
姉の雪乃は基本的に梨乃に対しては放任主義なので自分の支度を終えるとすぐに職場へ直行する故に起こされる事はない

梨乃が家を出た所を上空から暖かい目で見守る姿があった

「ヤレヤレ!今日もまた遅刻か」

あの世とこの世の狭間で時を待つ男、夕樹である
梨乃を見守るのは既に日課になりつつある

「全くお前も物好きな奴だなぁ」

「ん?おぉ、泰二か」

夕樹の隣には煙草を嗜む泰二、嗜むと言っても死後の世界に物質の概念は無いので泰二の私物の煙草とライターはビジョンでしかないのだが

「しかし、まさか夕樹があんなホワホワした娘に趣味があるとは驚いたね」

「悪ぃかよ」

「だってよ、夕樹はどっちかってゆうとしっかりした感じの…ホラ!梨乃のバンドメンバーの」

「奏子か?」

「それだ!!」

「興味無いね」

「じゃあ、梨乃の魅力って何だ?」

「見てれば分かるさ」

二人は登校中の梨乃を見つめた

「あら、梨乃ちゃん!おはよう」

「あっ!!おっはよぉ」

近所のおばさんに挨拶を交わす梨乃
その笑顔には日々を生きる事の喜び
そして、同じ時間を生きているみんなに「ありがとう」の気持ち
それらを惜しみなく放出されている

「おっす!!梨乃っち」

「あっ!ピカちゃんオハヨー!!ねぇねぇ!聞いて聞いて!!新しいメロディ浮かんだんだよー」

「おっ!!どんなの?歌いなさいよ」

「コホン!!じゃあ歌うねっ!えーと」

「ん?」

「う〜んと」

「どしたの?」

「走ってたら忘れちゃった」

「だと思ったわよ」

「デヘヘ〜」


「夕樹」

「何だ?」

「梨乃の魅力は何となく分かったよ」

「そうか」

「彼女が笑えばその周辺は笑顔になる!」

「まぁ、確かにな」

「気になる事があるんだが、LIMBO-54の力を梨乃に授けたのはまさか梨乃に恋愛を」

「待て…それ以上は何も言うなよ」

夕樹はバツの悪そうな顔で取り乱した

「お前もニクい奴だなぁ」

「LIMBOは…実はスタンドではないんだ」

「そうなのか?それは初耳だぞ」

「あぁ、簡単に言えば守護霊みたいなもんだ、実は梨乃のバンドメンバーにもLIMBOは授けてあるんだ!例えば隣にいるピカリにはLIMBO-48を授けた」

「じゃあ、それを授ける力をお前はいつ手に入れたんだ?」

「あの時のナハティガルで霊体のまま錆びない鉄に触れた時だ」

「そう…だったのか」

ナハティガルと聞いて泰二は過去を思い出す

「あの時…俺はどうかしてたのかもな」

「だから俺はLIMBO-54を使った」

「それで浄化したのか…ありがとな」

「なぁに親友なら当たり前の行動だ」

夕樹は梨乃達がホームルームに間に合ったのを確認して一息ついた

「お前…まるで保護者だな」

「悪ぃかよ」

「ハハハハ」

談笑の後、二人は天へと帰っていった


「こんばんは!けいおすゆにおんです!皆さんは今、感謝したい人やありがとうを言いたい人はいますか?」

「そんな気持ちを素直に伝える事が出来るように心を込めて歌います!皆さんにも感謝の気持ちを込めて」

「じゃあ、聞いて下さい」

「Love your life」


END

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