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こころとサイエンスコミュの[とある悩み相談] 父親が大嫌いです。

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[とある悩み相談] 父親が大嫌いです。
朝日新聞2010年5月15日、「悩みのるつぼ」より

<相談内容>
相談者、女子高生(10代)
10代の女子高生です。父の休日は食べる、寝る、テレビの繰り返し。他のことは何ひとつやりません。仕事は自営業で、「忙しい」と言う時期もありますが、一日中テレビがついているようで、ちゃんと仕事しているのか不審です。最近は夜遅くまでケータイをいじっており、50歳にしてケータイ依存症で、意味がわかりません。

私は物心ついたときから父が嫌いで、母には「お父さんみたいにならないように」と、育てられてきました。幼い頃、2月の公園の噴水で私が遊びたがるからと父が遊ばせ、私は肺炎で入院したことがあります。

父への感謝の気持ちはこれっぽっちもありません。老後の面倒をみる気はなく、のたれ死ねばいいと思います。お父さんと仲がいい友達がとてもうらやましいです。

父を好きに、、なろうとしても、いいところなんて一つもないし、子どもに無関心ですべて母に任せきり。最近は通知表も父には見せてません。母は父との結婚は失敗と言っており、私は離婚してほしいのですが、経済的なことを考えると無理です。

父がいる休日はイライラし、死んでほしい、殺したいという気持ちが強くなります。虐待でもされれば訴えられるのにと、楽しいはずの休日はストレスでつらくて泣くようになりました。どうすれば良いのでしょうか。思春期という理由で片付けないでほしいです。

<回答> 評論家 岡田 斗司夫

「お父さんみたいにならないで」。母はいつも言う。
不思議です。あなたは女、父にはなれません。なるとすれば母親でしょう。
「お母さんのようになっちゃダメよ」。こう言うべきです。なぜ母は「私のような母親になるな」と言えないのか? ここがポイントです。
「私のような母親」とはどんな母親でしょう。答えは簡単ですね。
自分に無関心、無頓着な夫と結婚し、離婚もできず、思いつく限りの愚痴を幼い頃から言い聞かせ、やがて娘が「父など死ねばいい」と思いこみ休日に泣いて過ごすようにしむける母。

それが「私のような母」です。本当に最悪の父なら、なぜ母は離婚しないのか?
これも簡単、ちゃんとストレスのはけ口があるからです。自分の言い分を全部信じる娘に毎日悪口を言ってストレス発散している。だから母は耐えられる。つまりあなたの犠牲の上に、母は暮らしているのです。

あなたの父親像は、母の愚痴でできている。寒い中、娘にせがまれて公園まで連れて行く父。
はしゃいで寒いのも忘れ夢中であなたは噴水で遊んだ。でも風を引いたあなたに母は「父が悪い」と吹き込みます。繰り返される呪いの言葉が楽しい思い出を消し去ったのです。
人間は弱い。誰かの愚痴や文句を言わないと生きていけない。
母の不幸は、家に閉じ込められて、視野が狭いことです。趣味が「父のダメ出し→娘に吐き出し」だけ。こんなの誰も得にもなりません。
ではどうするか?

あなたがこのマイナスの連鎖を切りましょう。誘ってあげて、お母さんの興味を外に向けさせる。これができれば、状況はかなり改善されるはずです。お母さんと一緒に映画やショッピングや旅行をする。そのために、あなたがバイトするのもアリ。
お母さんにもパートに出ることをどんどん勧めましょう。

パートをすれば、お母さんの世界も広がるし、お金も、できることも増えます。本当に最悪な父なら、あなたと母が一緒に働いたら独立も可能でしょう。難しすぎますか?
じゃああなただけでも逃げてください。たった3人家族で2人が1人の悪口を言い合っている家族は地獄ですよ。高校生ならもう働けます。逃げなさい。さもなければ、母を助けなさい。
      * * * * * * * * * * * * *

その後、岡田さんはブログでこの相談についてこう述懐していた。
http://otaking-ex.jp/ 
 
毎回、このコーナーには悩まされる。でも今回の質問、かなり悩んだよ。
 なんだか言いたいことや聞きたいことが浮かんでは消えて、言葉になりにくかったからだ。
 
 最初、思ったのは「なんだかキツい文章だけど、妙に心にひっかかるな」という部分。後半の「父を好きに・・・なろうとしても」という部分だった。
 彼女自身も「好きになろうとしてる」けど「心の大部分がダメを出す」という状態なんだと思った。
 
 僕たちの心は、「ひとつの統一された自我」ではできていない。自分の心をよ〜く観察すると、「いくつもの考え」が混ざっているのがわかる。「いくつもの考え」というのは、複数の価値観がそれぞれ固有の「語り口」で主張している状態だ。
 僕たちの脳内には複数のキャラが存在し、彼らが話し合って行動を決めている。
 僕はこれを「脳内学級会」と呼んでいる。声の大きい奴もいれば、冷静な奴もいる。気弱だけどガンコな奴もいる。ただし、先生はいない。無力な学級委員長がいるだけ。
 そう、この学級委員長こそ「私」なんだ。
で、彼女の脳内には「お父さんだから好きになりたい」という女の子が確実に住んでいる。でも、それよりずっと声の大きくて威張っている「怖い人」がクラスを支配している。それが「母親」じゃないか、というのが僕の感想だ。
 
 ここまで分析したら、あとはどうやって新聞の文字数制限内に落とし込むか、だ。
 事情を彼女に伝える、それも納得してもらえるように伝えるには、母親自身の矛盾点、すなわち「お父さんのようにならないで」を切り口にするしかない。
 そこから入って、分析までたどり着くのに全体分量の半分までに収めなくちゃいけない。分析だけで終わってしまったら、彼女は母親まで憎むことになる。父が嫌いで母まで憎んじゃったら、彼女の人生に救いが無くなる。
 そんなことは絶体にやっちゃダメだ。
 
 では後半の展開は?
 今後、どのようにするか。どのように「現状を捉えなおし」「心を建てなおし」「今日からできること、に落とし込む」か?
 
 まず、母を赦さなくちゃいけない。母の絶望とその原因の特定。新しい感情のはけ口の提示。
 そのために女子高生の相談者でもできることの例示。ダメだった場合、最悪は「逃げればいい」という落としどころの提示。
 彼女自身、これまでいろんな人に相談してきたかも知れない。最後の「思春期という理由で片付けないでほしい」という叫びは、それまで彼女がどんな相談をして、どんな「回答」を得たかがうかがえて痛ましい。
さて、こうして方向性は決まった。
 でも分量がオーバーする。何度書き直しても、14文字×66行に収まらない。何十行もオーバーしてしまう。
 分析→考え方の提示→具体的助言までをこの分量で、という注文が最初から無理なんだよな。
 僕の顔写真とか不要だからカットしちゃえば、あと20行ぐらい使えるのに。いやそれより、他ページのつまんない○○○とか終わっちゃえば、まる一面使えるのに!
 
 などと不毛なことを考えながら、ひたすら文字数を削る。
 助詞を、助動詞を、接続語を切る。指示代名詞を切ると、文節そのものまでカットできることに気づく。
 どんどんカットすればするほど、相談者への気遣いまで失ってしまいそうになる。なんとかギリギリ、雰囲気だけでも残して、ひたすら切る。
 だから僕の回答は、毎回ギチギチで改行もロクにないんだよね。
 
 そうやってようやっと完成したのが、今回の回答だ。
 次の相談掲載日は6月12日(土)、締め切りはもう来週じゃないか。
 あ〜、やりがいはあるんだけど、しんどいな〜。
 今度はどんな相談が来るんだろう? 

コメント(1)

朝日新聞のこの相談コーナーは毎回、東大教授の上野千鶴子さんだったり、詩人だったりと、回答者が変わるのですが、岡田さんの回答が一番的を得ており、いつも相談者の気持ちにやさしくそいながらも、悩みの原因を客観的に把握し、それを丁寧に教え、最後、「じゃ、具体的にどうすればいいのか?」に答えており、感心させられます。

今回もとてもいい回答だったので、ついでにのせてみました。(^_^;)

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