(1)D. M. Wegner (1989). White Bears and Other Unwanted Thoughts: Suppression, Obsession, and the Psychology of Mental Control. New York Viking J. L. S. Borton and E. C. Casey (2006). ‘Suppression of Negative Self-Referential Thoughts: A Field Study’. Self and Identity, 5, pages 230-46. J. A. K. Erskine (2007). ‘Resistance Can Be Futile: Investigating Behavioural Rebound’. Appetite, 50 (2) B. Mullen, C. Johnson and E. Salas (1991). ‘Productivity Loss in Brainstorming Groups; A Meta-Analytin Integration’.Basic and Applied Social Psychology, 12, pages 3-23. (3) B. J. Bushman (2002). ‘Does Venting Anger Feed or Extinguish the Flame? Catharsis, Rumination, Distraction, Anger, and Aggressive Responding’. Personality and Social Psychology Bulletin, 28, pages 724-31. (4) L. Tabuk (2007). ‘If Your Goal is Success, Don’t Consult the Gurus’. Fast Company,18 December. (5) J. Rodin and J. E. langer (1997). ‘Long-term Effects of a Control-Relevant Intervention with the Institutionalized Aged’. Journal of Personality and Social Psychogy,35 (12),pages 897-902.
(1)S. Lyubomirsky, L. A. King and E. Diener (2005). ‘The Benefits of Frequent Positive Affect : Does Happiness Lead to Success?’ Psychological Bulletin,131,pages 803-55. (2)D.G.Myers(2000). ‘The Funds, Friends, and Faith of Happy People’ American Psychologist,55,pages 56-67.
(3)P. Brickman, D. Coates and R. Janoff-Bulman (1978). ‘Lottery Winners and Accident Victims: Is Happiness Relative?’ Journal of Personality and Social Psychology,36,pages917-27. (4)D. G. Myers (2007). The work relating to the relationship between GNP and happiness involved examining data from the World Bank and the ‘happiness’ and ‘life satisfaction’scales of the 1990-1991 World Values Survey. (5)同前 (6)S. Lyubomirsky, K. M. Sheldon and Schkade (2005). ‘Pursuing Happiness: The Archhitecture of Sustainable Change’. Review of General Psychology,9,pages 111-31.
(7)D. M. Wegner (1989). White Bears and Other Unwanted Thoughts: Suppression, Obsession, and the Psychology of Mental Control. New York: Viking. (8)J. L. S. Borton and E. C. Casey (2006). ‘Suppression of Negative Self-Referential Thought: A Field Study’.Self and Identity, 5, pages 230-46.
二人は参加者を3グループに分け、週1回つぎのような項目で短く書き出してもらった。第1のグループには、自分が感謝することを5つ。第2のグループには自分にとって嫌なことを5つ。そして第3のグループにはその週に起きたできごとを5つ。「感謝」グループは、夏の夕日を見たことから友達の親切までを走り書きした。「嫌なこと」グループは、税金のことから子ども同士のケンカまでを書き出した。「できごと」グループは、朝食の用意から車での出勤についてまで、こまかく書きだした。結果は驚くべきものだった。「嫌なこと」と「出来事」グループの人たちに比べて「感謝」グループの人たちのほうが幸福感が強く、将来に対して楽観的で健康状態もよかったのだ。
(14)R.A.Emmons and M.E.McCullough(2003).’Counting Blessings Versus Burdens:An Experimental Investigation of Gratitude and Subjective Well-Being in Daily Life’.Journal of Personality and Social Psychology,84,pages 377-89
(15)L.A.King (2001). ‘The Health Benefits of Writing About Life Goals’. Personality and Social Psychology Bulletin,27, pages 798-807.
(16)C.M.Burton and L.A.King (2004). ‘The Health Benefits of Writing About Intensely Positive Experiences’. Journal of Research in Personality, 38,pages 150-63.
というわけで手っとり早く日々のしあわせを自分のものにしたければ、ある種の文章を書きだすと驚くほど効果があるようだ。感謝の気持ちを示す文章、理想的な未来を記す文章、そして愛をあらわす文章である。その効果は科学的に証明されており、必要なのはペンと紙と数分の時間だけだ。
(17) K. Floyd, A. C. Mikkelson, C. Hesse and P. M. Pauley(2007). ‘Affectionate Writing Reduces Total Cholesterol: Two Randomized, Controlled Trials’. Human Communication Research,33,pages 119-42.
□ 実際に具体的にやってみる
あなたの日常に効果的な文章を書く習慣が取り入れられるよう、風変わりな日記をつぎのように考えてみた。その日あったことを記録する日記ではなく、幸福な未来を作りあげる項目に、自分で書き込んでいく日記だ。週のうち5日間、毎日違うテーマを立て、どの項目も数秒で書き込むこと。科学的研究によれば、1週間この日記をつけると、あなたは自分の気分や幸福感が変わったことに気づくはずだ。その効果は数ヶ月続く。(18)
効果が弱まってきたと感じたら、また日記をつけ直す。
(18)M. E. P. Seligman, T. Steen, N. Park and C. Peterson (2005). ‘Positive Psychology Progress: Empirrical Validation of Interventions’. American Psychologist, 60, pages 410-21.
それはなぜだろう。体験に対する人の記憶は時間とともに変わる(飛行機に乗ったときのイヤな思いでは薄れ、砂浜でくつろいだしあわせな瞬間だけが思い出される)。
かたや品物は時間とともに汚れたり流行遅れになったりして、その魅力を失いがちだ。そして体験は、幸福感を誘発する行動―ほかの人とすごすーをともなうことが多い。人との交わりは体験の一部に入り込むと同時に、自分の体験をあとで人に話すという形でも生じる。かたや最新の高価な品物は、それをうらやむ友人や家族からあなたを遠ざける場合もある。品物を人に取られまいとして、あなたが片意地で孤独な人間になってしまうかもしれない。
だが、しあわせを買うために品物より経験を選ぶということだけが、この話しのすべてではない。ここで、下記の十項目のリストを見ていただきたい。(20)
項目ごとに、自分にあてはまる度合を点数で書き出してみよう。いずれも長く考えず、正直に、そして先の評価結果を見たりせずに答えること。
(19) L. Van Boven and T. Gilovich (2003). ‘To Do or to Have: That Is the Question’ Journal of Personality and Social Psychology,85,pages 1193-202.
(20) M. L. Richins, and S. Dawson (1992). ‘A Consumer Values Orientation for Materialism and Its Measurement: Scale Development and Validation’. Journal of Consumer Research, 19(3), pages 303-16.
もちろん、物質主義者がみなふしあわせ、というわけではない。だからたとえあなたの得点が高くても、何も気にせず不運など跳ね飛ばせるかもしれない。
(ただし、ひとこと釘を刺しておこう。心理学の研究結果によると、人はマイナスの結果に直面したとき、自分だけは例外と思いたがるものである)
では、物質主義の人はなぜ幸福感が薄くなるのだろう。高級品をたえず自分のものにしようとして、経済的に行き詰まるからだろうか。いや、じつは問題は出て行くお金にあるわけではなく、お金を誰のために使うかにある。
物質主義の人は自己中心の傾向がある。たとえば100万円もらった場合、物質主義の人はそのお金を人のためより自分のために約3倍使う。そして他の人についてどの程度考えているかを測る質問(『私は家に客を呼ぶのが大好きだ』『私は友人によく物を貸す』など)をしてみると、彼らの答えはきわめて自己中心的である。つぎに紹介する研究結果が示すように、これは幸福感という点ではマイナス効果をもたらす。
(21) M. L. Richins, and S. Dawson (1992). ‘A Consumer Values Orientation for Materialism and Its Measurement: Scale Development and Validation’. Journal of Consumer Research, 19(3), pages 303-16.
(22) E. W. Dunn, L. Aknin and M. I. Norton(2008). ‘Spending Money on Others Promoters Happiness’. Science, 319, pages 1687-88.
(23) B, T. Harbaugh, U. Mayr and D. Burghart (2007). ‘Neural Responses to Taxation and Voluntary Giving Reveal Motives for Charitable Donations’. Science, 316(5831),pages 1622-5.
(24) S.Lyubomirsky, K. M. Sheldon and D. Schkade(2005). ‘Pursuing Happiness: The Architecture of Sustainable Change’. Review of General Psychology,9, pages 111-31.
だが、この原因と結果は方向が逆ではなかろうか。物質主義の傾向があるために、自尊心が低くなるのでは?
この点を見極めるため、研究者は子どもたちにお互いのいいところを、紙の皿に書き出して、相手に渡してもらった。子どもたちの一人一人が、自分の長所や自分へのほめ言葉が書かれた皿を受け取ったのだ。この「私のいいところ」の皿は、子どもの自尊心を大いに高めた。もっと重要なのは、その後「私がしあわせになれること」のコラージュ作りで品物の絵を使う割合が半分に減った点だ。
つまり、自尊心の低さが物質主義の傾向を生み出すこと、そうした傾向は非常に幼いときから芽生えることが、はっきりと証明されたわけである。そしてこの研究からもう一つ読み取れることがある。他の人に少しお金を使ったり、小さな親切を実行したりすることと同じように、紙皿を使えばわずかな時間で人の考え方や行動が変えられる。
(25) L. N. Chaplin and D. R. John(2007). ‘Growing up in a Material World: Age Differences in Materialism in Children and Adolescents’. Journal of Consumer Research, 34(4), pages 480-94.
□ 成功へのステップ ― 買うなら品物より体験を
(26) J. D. Laird (2007). Feelings:The Perception of Self. New York: Oxford University Press.
(27) J. Forster (2004). ‘How Body Feedback Influences Consumer’s Evaluation of Products’. Journal of Consumer Psychology, 14, pages 415-25.
(28) F. Strack, L. L. Martin and S. Stepper (1988). ‘Inhibiting and Facilitating Conditions of the Human Smile: A Nonobstrusive Test of the Facial Feedback Hypothesis’. Journal of Pesonality and Social Psychology, 54, pages 768-77.
(29) S. Schnall and J. D. Laird (2003). ‘Keep Smiling. Enduring Effects of Facial Expression and Postures on Emotinal Experience’. Cognition and Emotion, 17, pages 787-97.
姿勢も大事だ。コロラド大学のトミー・アン・ロバーツは、2007年の実験で参加者を任意に二つのグループに分け、片方には背筋をのばした姿勢で、もう片方には前かがみのし姿勢で、それぞれ椅子に座って三分すごしてもらった。そのあとで全員に算数のテストをあたえ、その後自分の気分の採点も頼んだ。すると背筋をのばしていた人の方が、前かがみになっていた人よりもずっとしあわせで、算数のテストの成績もよかった。興味深いことに、女性参加者にはこの結果があてはまらない場合が多かった。ロバーツは、背筋をのばして胸をつきだす姿勢に、女性は自意識を感じてしまうのではないかと推測している。(30)
(30) T. A. Roberts and Y. Arefi-Afsha (2007). ‘Not All Who Stand Tall Are Proud: Gender Differences in the Propioceptive Effects of Upright Posture’. Cognition and Emotion,21, pages 714-27.
□ 楽しげにふるまう
ビーレフェルト大学のペーター・ボルクナウ教授の研究によると、しあわせな人は、ふしあわせな人と行動の仕方が違う。(31)
この結果を応用して、しあわせそうにふるまうと、幸福感を高めることができる。つぎのことをお勧めしたい。歩くときは肩の力を抜き、いつもより腕を大きく振り、足どりを軽くする。
人と話すときは表情豊かに手を動かし、相手の話しにうなずく回数を増やす。カラフルな服を選び、プラスの感情がこもった言葉(とくに「愛」、「好き」、「良い」)をできるだけ多く使う。
自分自身を指す言葉(「私に」、「私は」、「私自身」など)はあまり口にしない。声の高さに変化をつける。早めにしゃべる、握手をするときは固くにぎる。これらの行動を日常に取り入れると、あなたの幸福感が高まる。
(31) S. Gosling (2008). Snoop: What Your Stuff Says About You. London: Profile Books.
心理学者のケネス・シェルドンとソニア・リュボミルスキーの研究結果を見ると、しあわせは楽をしていては手に入らないようだ。(32)
二人は2007年に数種類の実験をおこない、つぎの二種類の変化を最近体験した参加者を集めた。一つは「環境的変化」と呼ばれるもので、自分の環境にもたらされた重要な変化。
例えば引っ越しや昇給、新車の購入などである。もう一つは「意図的変化」と呼ばれるもので、目標達成や活動開始に努力が必要な変化。例えば新しいクラブに参加した、新しい趣味をはじめた、新しい仕事をはじめたなどである。
どちらのグループも自分の幸福感の度合いを、数週間にわたって評価するよう頼まれた。結果は一貫していた。どちらのグループも、変化を体験した直後は幸福感が急上昇した。だが、環境的変化を体験した人の幸福感は、すぐに以前のレベルにもどったのに対し、意図的変化を体験した人の幸福感は、長く続いたのだ。なぜだろう。
シェルドンとリュボミルスキーによれば、その原因は「快楽の習慣化」と呼ばれる作用にある。人はなにか新しいことを経験すると、高揚感を覚える。だが、そのすばらしい体験も、何度かくり返されると慣れてしまい、新鮮な喜びが失われる。残念ながら、環境的変化は快楽の習慣化を招きやすい。新しい家や昇給や新車は、最初のうちは人をわくわくさせる。だが、変化によってもたらされたプラスの感情は毎日同じなので、しばらくすると色あせてしまう。
かたや意図的変化は、快楽の習慣化が起きにくい。新しい趣味をはじめる、新しい職場で働く、計画に着手する、知らない人と出会う、新しい技術を学ぶ。
これらの場合は、たえず変化していく体験で脳が刺激されるため、習慣化が避けられ、幸福感が長く続く。
というわけで、しあわせ度を高めるためには、環境的変化より意図的変化を選ぶほうがいい。苦労をいとわずに、新しい趣味、大きな計画、はじめてのスポーツに挑戦してみよう。
自分の性格や価値観や能力にあった活動を選びだす。これまで自分がどんな活動が好きだったのか、なぜ好きだったのか考え、自分の嗜好を明確にしたうえで、その要素をふくむほかの活動を試してみる。たとえば線画を描くことが好きなら、水彩画を試してみよう。テニスが好きなら、バドミントンやスカッシュはどうだろう。数独ゲームが上手なら、クロスワードパズルで腕試しをする。いずれの場合も、自分が実行することの内容と実行する時間帯をこれまでと変え、快楽の習慣化を避けることが大事だ。一見大変そうだが、しあわせのためなら、努力のしがいは十分あると科学が証明している。
(32)K. M. Sheldon and S. Lyubomirsky (2006). ‘Achieving Sustainable Happiness: Change Your Action, Not Your Circumstances’. Journal of Happiness Studies, 7, pages 55-86.
(10) E. Zech and B. Rime (2005). ‘Is Talking About an Emotional Experience Helpful ? Effects on Emotional Recovery and Perceived Benefits’. Clinical Psychology and Psychotherapy, 12, Pages 270-87.
(11) S. Lyubomirsky and C. Tkach (2003). ‘The Consequences of Dysphoric Rumination’.
C. Papageorgiou and A. Wells(eds), Rumination: Nature, Theory, and Treatment of Negative Thinking in Depression, pages 21-41. Chichester,England: John Wiley & Sons.
(12) S. J. Lepore and J. M. Smyth(eds). The Writing Cure: How Expressive Writing Promotes Health and Emotional Well-Being. Washington, DC: American Psychological Association.
(13) S. Spera, E. Buhrfeind and J. W. Pennebaker(1994). ‘Expressive Writing and Coping with job Loss ’. Academy of Management Journal, 3, pages 722-33.