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文芸の里コミュのカモメのいる港

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カモメのいる港



日暮近い港に立つと
カモメがか細い声で 啼き交わしながら海面を
低く高く舞っている
啼き声を聞くかぎり、どのカモメの声も
哀切で救いを求めているようだった
パン屑を与えようにも
私の手には何もなかった
キオスクで買ったガムが数粒残っているだけ
包み紙を取って 海面に放ったところで 何になるだろう
喉を詰まらせて墜落するカモメを見せつけられるだけだ
私はカモメのそんな姿を見たくはない
カモメはいのちあるように いのちないように
暗い水面を低迷していた
高く舞うカモメも低迷していた

間もなく私は自分の住むアパートに引き返す
何とそのアパートの三階近くにカモメが三羽
ハチドリのように空中に浮かんで停止しているのだ
あれは何だ 何を求めて港からこんなところまで来ているのだ
外灯が蛍の灯のように すぐ下に揺れている
程なく私は カモメが浮上する窓から 音楽の音色が
流れ出ているのに気づいた
ビートルズでもない 現代の若者が掻き鳴らし唄う音響でもない
聴いた覚えのあるバッハのトッカータとフーガだ。

私は先ほど港で聞いたか細い哀切なカモメの声に感染し
私自身が救いを求めている思いにかられて五階の自分の
部屋へと急いだ
部屋に着くとパソコンを開いて、自分のページに一篇の詩と但し書きを
綴った 
詩は「カモメのいる港」で、但し書きは次の四行である
「自分は誰とも交わらず、この一室に幽閉されるようにして生きてきたが
ついにその限界がきた
誰でも私の苦しみが分る人は 電話でも メールでも、なんでもいい
発信して私を救ってくれ 頼む これは私からのSOSだ」
カモメのようにバッハの音楽を選んでいる余裕はなかった
カモメは私より強くて 偉かったのだ

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