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文芸の里コミュの少年の夢 未完 13

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 少年野球チームのメンバーは、S町で試合がある間、登校はしたが、屋外運動場に集合して、そこからバスターミナルに向かったから、教室に顔を出してはいなかった。
 試合が終った翌日、幹太は教室に入って、そこで担任が生徒に、少年野球チームがS町の有力チームを制して優勝したと正式に告げた。このクラスでレギュラー入りしているのは幹太一人だったので、どよめきは起こったが、一勝したときから、二勝、三勝と勝ち進む中で、村人の中には、村始まって以来のこんな目出度いことを、学校は何故黙っているのかと、校長への非難も出かかっていたくらいで、今回の優勝報告も遅きに失すると見ていたようだ。校長をかばうわけではないが、校長は実は学生時代からテニスの熱狂的なファンで、最近彗星のごとく脚光を浴びてきた一人の若者の動向に目が向けられており、野球、わけても少年野球になど関心がなかったのである。たとえ自分の息子が少年野球のピッチャーとして活躍していても、テニスの試合の時間になれば、テニスの方にチャンネルを切り替えてしまっただろう。しかし今、少年野球地区大会優勝という結果が出てしまったからには、月曜の朝礼時に全校生徒の前で報告されるはずである。小学校をあずかる公僕の校長ともなれば、個人のわがままは許されないのである。
 そんなわけで、表立って少年野球が喧伝されるのは免れたが、幹太が消えてしまったのではなく、それだけによけい内攻して、マリエのリボンを絡めた問題としてクローズアップしてきたのである。そのマリエが、姿を見せないとあっては、なおさらである。
「++マリエが、ずっと休んでいるんだが、誰か知っているものはいないか。家に電話をしても、誰も出ないんだ」
 担任がこう言ったとき、生徒の目がいっせいに後席の幹太を振り返った。
「近く行ってみようと思っているが、奥になると車が入らないようだな。バイクなら行けるかな」
 と担任は続けて言った。

 幹太が帰宅すると、妹のリカが、これ以上自分ひとりでは持ちこたえられないという顔をして寄って来た。
「お兄ちゃんのクラスの++マリエちゃん、ずっと休んでるね。マリエちゃんが休む前の日、私一緒に帰ったんだ。足をけがしてたから、途中まで送って行って、いろいろな話をした」
「足をけがしたって? どうしてけがしたんだよ」
「どうしてって……」
 言い出しておきながら、リカは困ってしまった。実際のことを知ったら、幹太は黙っていない気がしたからだ。それで成り行きに任せて、教えてしまったのである。誰にとはマリエも言わなかったし、名前が分からなければ、幹太も何もしないだろう。そう思ってけがをした経緯を教えたのである。もう一歩進めて、男子生徒に足を踏まれたとも付け加えた。続けて三人に踏みつけられたと。
「誰だろう」
幹太は腕組みをして考え込んでいた。「名前は言わなかったのか、マリエちゃんは?」
「言わなかった。後ろから迫ってきて、続けさまに踏みつけて行ったって」
「……」
「それでね、明日休みだから、私マリエちゃんの家に行ってみようと思うの」
「遠いんだぞ、マリエちゃんの家は。山の奥だし」
「知ってるよ、熊もいるところだって」
 リカがここまで言ったとき、
「俺も行くよ、明日一日だけは、練習も休みだから」
 と幹太が言った。地方大会で優勝したが、今度は中央大会が控えているのだった。
 マリエの事実を知って、兄も困っているところへ、妹が訪問の計画を告げたので、ほっとして自分も行くと言ったのだろう。
「安住さんのお店に寄って、癇癪玉買っていこうね」
「ピーピーもあったほうがいいから、持って行こう」
 幹太はそう言って、頭の下に手を組み、畳に仰向けに寝た。二十日後にある少年野球の中央大会のことを考えていたのか、もっと身近なマリエの足を踏みつけた生徒のことを思いめぐらせているのか、リカはちょっと判断できなかった。
 三十分ほど経ってリカが幹太のところに行ってみると、兄はさっきと同じ格好で鼾をかいて寝ていた。その幹太の胸の上に乗ろうとしている猫のチョコをさらって、リカは居間へ下りて行った。
「お母ちゃん、明日、お兄ちゃんと一緒に私の友達のお見舞いに行くから、お握り作ってね」
 とシンクで洗い物をしている母親に言った。
「リカの友達なのに、幹太も行くのかい」
 と母が意外な顔もせずに言った。
「そう、西里の奥で遠いからね。心配してついて来てくれるんだよ」
「幹太も優しいとこ、あるじゃないか。明日はお赤飯炊くから、なるべく早く帰るんだよ。一勝もしなかったチームが優勝するなんてねえ。お父さんも呆れて新聞見ていたよ」
「そんな時、あきれたなんて言葉、変だよ、ママ」
「だって、実際、パパのそのときの表情はそんなだったんだよ。幹太は何してるの上で」
「寝てたわ、仰向けになって」
「疲れたんだろうね。S町の強豪チームを破って優勝するなんて、考えられないことだからね。よっぽど疲れたんだろうね」
 リカは里芋の煮物を一つ摘まんで口に押し込み、リビングから出て行った。

 未完

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