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文芸の里コミュの少年の夢 未完6

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 幹太が有名人になって間もなく、真新しい出来事に遭遇した。それは三日前のことである。幹太が登校して自分の下駄箱を開けると、中に缶詰の空缶が入っていた。空缶の底を掻き鳴らす音がして、蓋を開けると、大きな甲虫が入っていた。空缶の下に一枚の便箋が敷かれ、これ上げる、マキエ と走り書きがしてあった。
 以前、理科の時間にグループに別れて、生き物の飼い方の学習をしたとき、甲虫の写真があって、幹太は写真を見るなり、こんな甲が欲しいなと、声を張り上げたことがあった。同じグループに山下マキエがいて、甲なら私の家の近くにたくさんいるよと言って、幹太を羨ましがらせた。山下マキエの家は、村の東端にあって、6キロ近い道程を歩いて学校へ通っていたのだ。母と未就学の妹との貧しい暮らしをしていると、村の役員をしている幹太の父親が、電話で村会議員と話していたのを聞いたことがあり、幹太はその子の家のことを知っていた。なるほど髪をまとめるのも、普通の輪ゴムで留めていた。幹太の一番上の姉は、ミッション系のS町の高校へバスで通っているが、その姉のしている飾りのついたリボンを見ていたので、比較から、あんなゴムのリボンで留めれば、マリエも引き立って美しく見えるのにと、いつも思っていた。姉にはリボンを蒐集する趣味があって、何本か纏めたものを姉の部屋で見かけたことがあった。
 幹太は甲虫の空缶の下に置かれたマリエの走り書きを見たとき、あの姉のリボンを一本かすめて、マリエへのお返しにしようと、とっさに思いついた。
 幹太はその日のうちに、姉のリボンを一本抜き取って、自分の鞄に隠しておいた。S町の図書館を利用している姉は、最終に近いバスを使っているので、まだ帰宅していなかった。
 翌朝、幹太は学校のマキエの下駄箱に、封筒に入れたリボンをそっと置いて、知らぬふりをしていた。メモも残さなかった。
 その次の日、マキエを見ると、幹太の与えたピンクのリボンをしていた。そのリボンは他の生徒の目にも留まって、みなにもてはやされていた。
   未完

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