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文芸の里コミュのヒグマ

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真っ昼間、うたた寝をして怖い夢を見た。玄関の木戸を押し開けると、狭い庭を挟んだ物置の前に、大きなヒグマが寝ていた。
私はクマに対して日頃からどこかユーモラスな、愛すべきイメージを抱いていたから、はじめは怖いとは感じなかった。それで動物園にでも行った感覚で、手にしていたカリントウを一粒投げ与えたのだ。
ヒグマはなんだこんなものと、鼻であしらうような態度を取ったが、口を伸ばして、なめ取ると、俄然態度が変わった。
うまい! 山では一度も口にしたことのない味だ。ヒグマの全身に緊張が走って立ち上がると、顔を私の居る方へよじって、美食の出所を確認したらしい。クマの視界には、私が木戸を押し開いて立っていたのである。カリントウの紙袋を手にして。
私は自分の迂闊さに気づいて、すぐ木戸を引いて閉ざした。しかしヒグマは巨漢にもかかわらず敏捷で、木戸を押し開こうとした。押して駄目ならと言うわけで、引いて開こうとした。そのための爪が、すでに閉ざした木戸の隙間にかかっている。
私はカリントウの紙袋を床に落とし、両手で木戸を引いて奮闘していた。内鍵の金具を留めようにも、一時も力を抜くわけにいかず、片手を放せないのである。その間クマの好物が蜂蜜であること、与えてしまったのが、選りに選って蜜入りのカリントウだったことなどをぐだぐだと考えていた。
と、私の目の前に、ヒグマのもう一方の手の爪が入ってきた。こうなると絶体絶命だ。私は自分の悲鳴で目が覚めた。

夢であって良かったようなものの、何か意味があると思った。迫っている危機の正体を探りにかかった。自分の体の異変か、どうもそれはなさそうである。あとは外部しかない。郵便、メールに異状はない。次にネットで内外のニュースに目を配る。直接攻めてくるものはなさそうだ。残るは巡るのを日課としているいくつかのウエブサイト。
そのうちの一つに来たとき、不安はいっぺんに解消した。長らく行方不明になっていた召し人の一人が、作品を投入していたのである。投稿日時を見ると、私にヒグマが現れた二時間後となっている。先回りして神が教えたなと思えた。このことでしたね、と神に訊いた。しかり、と神は応えた。
召し人を逃れたいと思っているのではないかとの不安もあったから、向かってきたヒグマは花嫁の確実性をも示していたのである。敵ではなく、花嫁なら果敢に立ち向かってくるほど、優秀だったのだ。


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