ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

文芸の里コミュの高原列車・長編連載(14)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 翌日歌子は病院の支払いを済ませ、支度をして迎えを待っていた。支払いは、サチの家に泊めてもらったので、出費を抑えることができて間に合った。こんなことを予期していたかのような旅だった。
 店長が着くのは、午後一時近くになると、前日主任が伝えてきていた。この日歌子は早く起きて、乾燥機つきの洗濯機で洗濯をした。借りていた病院のパジャマを洗って返し、洗った下着に替えてさっぱりしていた。
 店長は午後一時ちょうどにやって来た。すっかりカジュアルな旅装をして、
「やあ、関口さん、大変でしたね」
 とにこやかに笑顔を咲かせた。看護婦たちにも如才なく、歌子が世話になった礼を述べた。ナーススェーションに手土産を置くのも忘れなかった。歌子はそれを見て、まったく自分の頭にはなかったことを思い知らされた。
 病院の玄関には、四、五人の看護婦が立って見送っていた。歌子の治療に当たった医師と婦長は、手術があるとかでいなかった。歌子は挨拶できなかったので、よろしく伝えてくれるように看護婦に頼んで、病院を出て来たのだった。
 少し歩いて振り返ると、玄関には誰もいなかった。あまりにも軽い病気で、印象が薄かったのであろう。それはそれで嬉しかった。ことに帰ってから病院に行かなければならないのではないかと、まだ微かながら疑っていた歌子には、病にふさわしい扱いと見えてほっとしていた。
 では隣を歩くこの男については、どう受け止めるべきなのだろう。歌子ははたと行き詰まり、立ち止まった。
「どうかした?」
 店長が歌子の肩に手をかけ、次に強引に歌子の鞄を取り上げた。歌子が拒んでも容赦せず、先になって歩いた。
 駅に着くと、歌子の分も買おうとする店長に、
「私、周遊券がありますから」
 と彼女は言った。
 電車が来ると、さも決まったコースを辿るように乗り込んだ。赤いハイヒールを後方に押しやって、もう手の届かない方向へと電車はスピードを上げてゆく。漠然としてはいたが、まだ夢のように歌子の中にハイヒールは留まっていたのだ。
 電車は空いており、店長と歌子は窓際のボックスに向かい合わせて腰掛けた。開いた窓から風が流れ込み、初夏の緑が匂った。店長は麻のブレザーの首に、ブルーのアスコットをしていた。靴は歌子に合わせたのか、スニーカーだ。
 歌子はなんとなく、自分が貧しく思えてならなかった。店長の装いが、カジュアルであればあるだけに、ブランドものでまとめているように見えてしまったのだ。しかしそこは店長と一介の店員の身分で、やむを得ない。
 店長はほかに倉庫業もしている。スーパーのあるあたりは、すべて彼の所有地とも聞いている。店長の父はやり手で、所有地に大きなビルを建て、貸しビルにした。貸しビルと倉庫とスーパー。店長は大学を出ると外食産業で働いていたが、二年前父親が他界し、跡を継ぐことになった。
 歌子が入社した頃はまだ店長はいなかった。したがって歌子の面接をしたのも、事務方の人だった。店長はその後から入ってきたのだ。年齢こそ四十代半ばにはなっていても、どこか坊ちゃん坊ちゃんしていて、これでスーパーを切り盛りしていけるのかと、不安を抱かせたほどだった。
 しかしその後、二年近くを浮き名も流さず勤め上げてきたのだから、根はしっかりしていると見るべきなのだろう。
 歌子はこれまでの店長のイメージを重ね合わせながら、この度の自分の不祥事を素直に詫びる気持ちになった。看護婦が言うように、水も飲まずにかんかん照りの日中を歩き回ったのだから、不注意が招いた過ちともいえるのだった。
「店長さん、私のことでさんざんご迷惑をおかけしまして、本当に申し訳ありません。店長さんに、こんな遠いところまで足を運ばせてしまって‥‥」
 歌子は深々と頭を下げた。
「君何をいうんだ、水臭い。ぼくは社長として当たり前のことをしているだけなんだ」
 彼はこう言って、歌子の両肩を二つの手でぽんと叩いた。このとき歌子は、店長ではなく、社長と呼ぶべきだったと失策に気づいた。店長は社長と呼ばれたがっていると、店員の間で囁かれていたのを思い出していた。
 主任が店長と呼ぶのは、自分が店長のつもりではないことを主張しているのであり、それにならっていつまでも店長呼ばわりするのは、よくなかったと反省した。店長ではスーパーだけだが、倉庫業も貸しビル業もしているのだから、社長の方が格が上がるというものだ。おだてるつもりではなく、事実を粉飾するのは潔くないと思った。機会があったら一度社長さんと呼んでみよう、歌子はそう心に決めた。そんなことをぼんやり考えながらふと面を上げると、すでに肩から手を放していた店長の目が前にあった。どういうわけか、歌子を哀れむように涙ぐんで見詰めているのだ。
 やっぱり何かあるな、と歌子は睨んだ。重い病の覚悟ならすでにできていたから、逆に店長を哀れむように見返していた。見詰め合う一瞬があって、店長が気まずそうに目をそらし、ブレザーの内ポケットからタバコを取り出してくわえると、ライターの火を運んだ。
「ああ、こっちだと、煙がそっちへ行くね。いや、いいのかな」
 などと中腰になってうろたえている。店長は列車の進行方向を向いて坐っていたから、煙は逆巻いたりしないかぎり、歌子に害は及ぼさないはずだった。
 歌子は今の店長の目の底にあった光を、いとおしむように胸に浮かべていた。人の痛みに素直に同情する少年のような純真さがあった。やっぱり坊ちゃんなんだわ、と歌子は思った。これでよくやっていられるものだわ。きっと、先代の社長に乞われて入ってきたという事務方の柳瀬さんの力に、負うところが大きいのだろう。柳瀬さんは、歌子が入社するとき面接した人だった。
 一服して和らいだのか、店長は居眠りをはじめていた。歌子はこの店長に異性を感じなかった。歳の開きだけではなく、相手の方から向かってくるものがないからなのだろう。いろいろ考えているうちに、残るのはやはり、自分に向けられている異様ともいえる扱いだった。病気のことだけなら、自分の覚悟をしっかり持ちこたえていくかぎり、大丈夫だと思った。しっかりしなきゃ、と歌子は自らに言い聞かせた。
 電車はP駅に着き、二人は降りた。新幹線に乗り換えるまでしばらく時間があった。
 二人は駅舎を出て、広場につづく道を山に沿うほうへと歩きだした。
 P市は田坂がハイヒールの革を仕入れに訪れた街である。同じ通りを、店長と歌子は肩を並べて歩いていた。
「変わったなあ、この街も」
 と店長が懐かしそうに街並みに視線をめぐらせている。「学生時代、ここにボート部の合宿できたものさ。この下に、いい川があってね」
「あら、社長さん、ボートに乗ったりなさるんですか」
 ふいに、まったく予期しない形で社長が飛び出してきたので、歌子は我ながら驚いていた。店長も部下のその言葉を受け入れるのに、一刹那息を止めた。
「そう、ぼくは大学に四年、いや実際は五年通って、ボート漕ぎしか覚えなかった。ほかに、煙草とアルコールと夜遊び」
 店長はそう言って、歌子をうかがった。歌子が上司の不埒振りを、大らかな理解をもって受け取ったかどうか、気になったのである。
「そうだったんですか」
 歌子は感慨深げにもらした。たぶんに誇張があると読んだが、頷けるところもあった。
「帰って、皆に言いふらしたら駄目だよ。君とぼくだけの秘密だからね」
 店長は笑いに含んでそう言った。
 間もなく、古風な造りの蕎麦屋の暖簾をくぐった。ここも田坂がP市を訪れると、きまって寄る店である。歌子の靴革を仕入れに来た数日前も入っている。
「久しぶりだなあ。この店だけはまったく変わっていない」
 店長は勝手知った人のように、隅のテーブルへ歌子を誘っていった。分厚い木の机と、同じく木を切断して磨き上げたような椅子。
「中の人は変わっているけれどね」
 奥を覗き込んで、そう言った。
 歌子は勧められるままに、山菜料理と盛り蕎麦を注文した。店長は生ビールの大ジョッキを付け加えた。歌子のためにコーラも頼んだ。
 店内は冷え冷えとしていて、客は少なかった。ほの暗いのは、日差しの中を歩いてきたせいだけではなさそうだった。窓が少なかった。
「変わったお店ですね」
 と歌子は感想をもらした。
 料理がくると、店長は生ビールを三分の一ほど残して一息に飲んだ。そして二杯目を注文した。
 歌子が盛り蕎麦を食べている間、店長は天井のほうに目をやっていた。そして、ときどき、うーん、うーんと唸っている。何か言おうとしていて、どうしても言葉にできないといった感じにも見えた。アルコールの力を借りなければ、とても話せないともとれた。それで、酔いのくるのを待っているのだろうか。
 歌子は自分だけ食欲が進んでいるのが、悪いような気がしてきた。中途で箸をおいて、蕎麦湯をすすっていると、
「もう食べられない? さあどんどん召し上がれ。ぼくは好きでこうしてるんだから。食べはじめれば、さーっと一分でたいらげてしまう」
 店長は言って、滑らかな口調で話しだした。話をそらしたな、とも思えた。
「我家の娘ときたら、彼氏とアメリカのペンシルヴァニアに行くっていうんだ。彼氏が向こうの大学から招請されたらしくてね。二年間は帰って来ないらしい。光学異性体における、何とか反応の研究とか言ってたなあ」
「お嬢さん、結婚されていたんですか」
「便宜的にね。それでは向こうへ行くに当たって、ちゃんと籍を入れなければならなくなった。親としては反対だったんだけど、家出も辞さないといった態度に出られると、どうしようもない」
「ほかにお子さんは?」
「ない」
 これは寂しく聞こえた。だから歌子は、お寂しいですねと言おうとした口を閉ざした。
 店長は手洗いに立ち、帰りにビールを追加し、歌子にはジュースを頼んできた。

 店長はやや呂律が怪しくなっていたが、それでも列車の時刻は覚えていて、間に合うように店を出た。しかし酔った足では心配だったのか、店長はタクシーを止めた。
 五分ほどで駅に着いた。歌子は慌しく、職場と寮への手土産を買った。店長は酔ってはいても、それを見ていて、別の土産を買った。同じ所へ、同じ土産という無粋を避けたのである。
 店長は指定席券を二枚購入しており、番号は隣り合っていた。この日は自由席も空席が目立ち、歌子は周遊券のきく自由席に行こうとしたが、買ってあるのだからと、店長は譲らなかった。まだ病人だからとも言って、歌子の主張を通さなかった。
 歌子に奥の窓際をすすめたが、歌子は化粧室に立つからと、通路側にしてもらった。列車に乗ってからは、店長はほとんど口を開かなかった。酔いが回ったのか、疲れが出たのか、シートに沈み込んでいた。
 疲れたのは歌子も同じで、いつの間にかうとうとしていた。意識がぼーっとしてはいっても、先日ベンチに腰掛けていて味わった感覚とは違っていた。今のは日頃なじみになっていて、手元に手繰り寄せたり、少し綱を緩めて解き放してやることも可能な感覚だった。
 列車がP駅を出てどのくらい経った頃だろうか。歌子は体が重くなっている、重くなっていると感じていた。歌子はうとうとする前から、いざ眠くなったりしたときは、通路側へ体を傾けていこうと思っていた。間違っても、店長に寄りかかるようなことがあってはならないと、自らに言い聞かせていた。
 それなのに、どうも自分の体が重たいものに囚われている気がしてならない。しかも通路側にではなく、窓のほうへ傾いている。いや窓ではなく、隣にいるのは店長なのだ。半睡状態から覚めかけた頭が、今置かれている真相を究明しようとしていた。事態は体だけではない。歌子の頭がひき寄せられて、首筋から下顎にかけて重く力が加わっているのだ。
 熱いものが唇にきたとき、歌子ははっと揺さぶられて外圧を振り払っていた。彼女はそのまま立ち上がって、通路を化粧室へと身を泳がせて行った。
 化粧室に立つと、蛇口をひねって水を溢れさせ、無理な格好で口を持っていった。露出したあらゆるところを洗わなければと思った。冷水で意識が醒めていく中で、不覚だ不覚だと呟いていた。それは重たい重たいと感じながら、その得体の知れない圧力に、引きずられていったひと時があったということだった。その不決断、優柔さが腹立たしく、赦せなかった。
 何度も何度も口を漱ぎ、ハンケチを幾度となく濯いでは、首筋といわず額といわず、こすって拭いた。
 それからもとの指定席には戻らず、すぐ前の自由席の車両にいって腰を下ろした。空席のボックスがいくつもあって、自分の迂闊さが情けなかった。
 歌子はシートに沈み、半身を深く折って、これから持ち上がる難題について考え込んだ。酔った上の行状とはいえ、唇を押し付けるなんて行き過ぎている。彼女は憤っていた。次いで今後のことが、重くのしかかってきた。難病なら、それを治さなければならないのに、職場を失うのだ。二つの困難が、同時に襲ってきたようなものだった。
 歌子は身を屈め、両の手に顔を埋めた。じっとそうしていた。身の振り方など、簡単に決められるものではなかった。これからどうしよう。
 途方に暮れている歌子の肩を押さえたものがある。歌子は胴震いして顔を上げた。店長が歌子の鞄を持って移動してきたのだ。彼は自分の鞄を網棚に載せて、歌子の前に腰を下ろした。
「どうしても君に話さなければならないことがあったんだ。それができないで、ここまできてしまった。話そうとするとあまりにも君が不憫で、ついあんなことになってしまった。悪かった」
 店長はそこまで言って、身を硬くしたまま拳を膝に置き、頭だけこくんと垂れた。
「何ですか、話さなければならないことって」
 歌子はもうこれ以上引き延ばされたくないので、そう訊いた。
「実は、君のお母さんが亡くなった」
 歌子は痛棒を食らった思いで、愕然とした。それから言葉の意味するものを探りにかかった。
「いつです」
 と彼女はまっすぐ店長を見た。
「君が、倒れたという連絡を受ける二日前だった」
「会社に連絡があったのですか」
「そう、テレビでも全国放送されたようだけど。父親の運転で男の子が助手席、君のお母さんは後ろの席だった」

 事故のあらましを補足するとこうなる。
 歌子の母の再婚相手である増田の貿易の事業はうまくいっていた。二人の血を分けた息子も成績優秀で、今年有名な私立小学校への編入が認められた。そのお祝いをかねて、息子を連れて家族旅行を企てた。まず、青森の実家に寄り、老父母に息子の自慢をし、二泊ばかりして、それからは裏日本の名所旧跡をめぐり、名古屋まで南下して帰る予定だった。車も新しく買い換えたセダンである。前妻との間の娘は、きまった彼氏がいて同行しなかった。
 三陸海岸を走っているとき、ハンドルを切り損ねて路肩に激突し、五メートル崖下に落下した。近くで釣りをしていた人の通報で、救急車が駆けつけた。父親と子供は即死状態だった。母親は重症ながら意識はあった。
 事故は娘と増田の実家に連絡された。絶え絶えの息をしながら、母親は歌子の名を呼んでいた。娘は歌子を母親に会わせるために、スーパーと昔いた施設に電話をした。しかし歌子は旅行中で、連絡が取れず、痺れを切らして、娘はスーパーまで彼氏と共にやって来た。
 歌子の会社でも、国民宿舎やヒュッテに電話で問い合わせてみたが、埒は明かなかった。
 病院に帰っても、なんら慰めるものがないと嘆いている娘に、店長はこのときとばかり男を見せた。帰ったらお母さんにこう言ってください。歌子さんは、私、社長が娘のように思って大切に守るから、心配なさらなくていい。そう言って、名刺を渡した。
 店長も、この車の事故を通して、はじめて歌子の生い立ちを知ったようなわけだった。それまで、保護者が施設の園長になっていることも知らなかった。
 そのように歌子について知ることになった折も折、その歌子が旅先で倒れたという情報がもたらされたのである。
 そしてその直後だった。舞い戻った娘が、歌子の母の死を報せてきたのは。
「間に合いませんでした。せめて社長さんの温かなお言葉を伝えたかったのですけれど」
「そうでしたか。何と申し上げたらよいか、言葉がありません。実は、お二人が帰られて間もなく‥‥」
 店長はそこで言いよどんだ。続きが出てこなかった。もしもし、と先方が呼びかける。
「はあ、その関口歌子さんなんですが、旅先の病院から連絡がありまして、熱中症で倒れて運び込まれたらしいんです。我が社としても、その報せを受けて慌てているしまつなんです。お母さんが、いやお父さん、弟さんまで亡くされているとき、こんな災難が続けて降りかかるなんて、何といってよいか」
 歌子の様子がはっきりしたら、こちらから連絡するということで電話はおさめた。
 歌子が運び込まれた病院との情報交換はすべて店長が取り仕切って行われた。母親の死について、病院側に告げるか否かはずいぶん迷ったが、単純な熱中症という診断だったため、言うのを踏みとどまった。旅先で事故のニュースを知って、後を追ったのではないかと、一瞬疑惑が走ったが、熱中症という病院側の言い分に従った。
 本人に最近変わったことはありませんでしたね、と訊かれたときも、別に沈んだりしているようなところはありませんでした。旅行が好きな子で、愉しみにしていて出かけたようですが。そう言ってのけた。
 いやそうではなく、普段眩暈がしてふらつくとか、倒れるとか、そういう症状は。
 そういうこともなかったと思いますが。
 店長はとにかく、決断をもって、母の死を告げなかった。もしそれを知ったときの、歌子の動揺と憔悴が目に映ってきてならなかった。そのことで死へと走る不安さえ抱いてしまったのである。
 歌子に母の死を告げることは、大問題として店長の身にのしかかってきていた。
 そんな彼が、セクハラ紛いの愚行を犯すとは、どう考えたらいいのか。ただ魔が差しただけで、すむものではない。愛娘を失う寂しさから、親のない娘の保護者になろうとした。その動機たるや、純粋だった。それは職場の誰もが認めるところだ。店長はこの朝、全権を委ねられて、旅先に倒れた女性社員を迎えに向かったのである。
 間もなく列車は東京駅に滑り込んだ。国電に乗り換え、最寄の駅に着いた。二人はタクシーに乗った。店長は運転手の隣に、歌子は後ろに。歌子を社員寮の前に降ろすと、
「これから困ったことがあったら、何でも言いなさい」
 店長は振り向きざまそう言った。「一週間は忌中扱いだ。店に来なくていいからね」
 歌子は世話になった礼を述べて頭を下げ、店長を乗せた車のテールランプが小さくなっていくのを見送っていた。手には最後に渡された母の義理娘の名刺があった。

                      つづく

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

文芸の里 更新情報

文芸の里のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング