ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

【大正浪漫RP】月の民の拠所コミュの地震 A <ヨシノ+薔薇+α>

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
周囲の花が一様に揺れた。
花だけではない。
花瓶や水差し、花入れなども小さくかたかた揺れている。
赤い髪の剣士は、その長い耳をひくりと動かした。
視線をすぐ後ろに居た紫色の少年へと向ける。

「地震―」
「そのようですね」

掛け合いが穏やかなのは、然程大きいものではないからか。
静まり返っていた、黙っていれば絵になりすぎる二人きりの店内は、
大地のささやかな嫉妬により静寂から脱していた。

かたかた。
かたかたかた。

「・・・少々、長いですね」

花売りの言葉に頷いて剣士は足元に意識を集中する。
まだ暫く続きそうな揺らぎを感じる。
とりあえず一応外に出ておくべきか、思案した瞬間。

足元の揺らぎが唐突に形を変えた。
どん、と音を立てて、壁の花々までもが揺れる。
壁の振り子時計が落下し始め。
剣士の瞳はそれに一瞬奪われ―

また一瞬後、小さな体躯は花売りの少年によって抱きとめられ、
そのままの勢いで外へと運び出されていた。
5秒にも満たなかったであろう間の芸当。
少年の瞬発力が如何ほどか知れようというものである。

胴着の袖に食い込む指がやや痛いと感じ顔を上げ、
そして初めて剣士は花売りの表情を見た。
安堵と、そして、悲愴な面持ち。
安堵は明らかに腕の中の剣士に向けられており、
そして悲愴は。

剣士が恐る恐る店内を見遣る。
先程まで自分達が立っていた場所には、
割れた硝子のショウケースが粉々に散っていた。

「大丈夫・・・!?どこも、どこも怪我してないっ!!」

危ない、と声をかける時間も惜しいと駆け出した少年の、
一番最初の言葉。
傷めてしまった花々への悔恨もすぐに押しのけ、
腕の中の剣士へと向けられた言葉。
それが、残響音を伴って、胸の奥へと響く。

「ああ…すまない」

そう言って腕から抜け出そうとする。
そこで初めて、少年の腕が震えていることに気づく。
否。
腕だけではない。体が、先程の地震の続きのように。

自分はどんなに馬鹿なのだ、と叱咤する。
彼が必要としているのは謝辞ではない。

「花売りの。私は、無事だ」

少年の全身から力が抜けたのを感じたが、
剣士はしかしその腕から抜け出すことをしなかった。
意外だった真摯な一面を心地よく感じたからであり、
守ってくれた相手をやわらかくでも押しのけるような真似が、
どうしても出来なかったからでもあった。

…だから彼は落ち着いてからもちょっとだけそのまま、
華奢な剣士の胴着や髪の感触を楽しんだりしていたのだが。
巧妙であったがそれは流石にバレて、あとはいつもの通り。

剣士は店の片付けを申し出て、花売りは一度は拒むも受け入れ。
二人一緒にした片付けはそれなりの時間に終わった。
道場へは早足で行けば十分間に合うだろう。

簡素な礼をして、先を急ごうとした剣士に声がかかる。

「ちょっと傷んでしまったけれど・・・先日の薔薇が終わってしまったかと思って」

花売りの手には、少し大きめの花束。
春の終わりの色、夏の始まりの色で埋め尽くされている。
固辞しようとも、その花は確かに売れはしないだろう。
それならいっそ受け取ってしまえ、と、
剣士は両手に花束を抱え、軽い足取りで道場へと去った。

角を曲がったのを確認して、花売りは店の隣のオープンテラスに声をかけた。

「覗き見は感心しませんね、学生服の少年」
「うぁ」

珍妙な声を上げてのけぞり、結果的にダッシュで逃げた少年は、
さらさらの銀髪に、きれいな赤い目をしており。

彼女の友達だろうと容易に推測した花売りは、
彼にはどんな花束が似合うかなと考えつつ、片付けを終えた。


地震の痕跡はショウケースに硝子が嵌っていない事くらい。
明日も少女は来てくれるだろうか。
きっと来てくれる。

腕に残る感覚を思い出して、花売りは小さく笑った。



<NEXT> 地震 side B
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=21390647&comm_id=2334275

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

【大正浪漫RP】月の民の拠所 更新情報

【大正浪漫RP】月の民の拠所のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング