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【大正浪漫RP】月の民の拠所コミュの地震 B <ヨシノ+海老+α>

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地震 side A
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=20049710&comm_id=2334275


「そういえば昼間地震があったね」

海老茶の髪を汗まみれにして、少年が呟くように話す。
細く見える体躯には、使う為の健康的な筋肉が程よくついており、
二の腕もあらわに汗を拭う姿が何故だか眩しく、
あわてて目を逸らした。
指先についた汗が宙を舞い床を叩いた音を2、3回耳にする。
息切れでざわめく頭でもはっきりわかるような大きな鼓動が一度。

(脳裏に昼間の出来事が浮かんだ所為で心乱れたのやもしれない)

自身の額に張り付いた燃えるような赤い髪を払うように、
剣士はぷるぷる頭を振って何かを振り払った。
未だ頬が上気しているのはきっと、打ち合いの後だからだ。

「そうだな。海老様とやらは無事だったか?」
「あはは、無事だからここにいるんじゃないか」

そうだな、と繰り返した剣の師匠に違和感を感じたか、

「一回大きいの来たもんね。ヨシノ君は無事だった?」

言葉に詰まった師匠を少年はただ不思議そうに見ている。
真っ直ぐな、茶色の瞳。

(…いけない、今日はどうも、妙だ)

一度唾を飲み込んで、あーともえーともつかぬ呻き声をあげ。
何か言おうと思った時、少年がああそうかと楽しげに目を細めた。

「花束持ってたもんね、あのいい匂いの花屋さんにいたのかな?」

何せ理由もなく誤魔化そうとしていたもので。
金魚のようにぱくぱく口を開け。
視線を斜め下に置いてじっとして。
ようやく「ああ」と一言だけ告げた。
良いか悪いかは別として、少年は不振な様子に気づいた風もなく防具を布で軽く拭く。
胴着をやや肌蹴させてリラックスする姿は、
師匠の姿と非常に対照的だった。
落ち着け落ち着けと脳裏で繰り返していると、
少年の言葉を聞き逃していた。
何か違和感を感じたので聞き返してみる。

「いや、あの花屋さんって素敵だよねって」
「………………は?」
「他のお店と違って、店自体が生きているみたいに華やかでさ」

一瞬男色を疑った自分を全力で恥じる。
そんな連想をした経緯に気付き更に恥じ入る。

確かに。
確かにあの花屋は、奇妙な性格だが、間違いなく根はいい。
それに、確かにあの店は他とは違う。
花其々が彼の唯一人の恋人のよう、とでもいうか。
遠目に見ても華やいでやけに目立つし、
店に入ればその空気に触れた途端にそわそわする。

「あそこがヨシノ君のお気に入りなのも頷けるな」

何故かその言葉が気になった。
さっきまでの落ち着かなさとは少しだけ違う種類の動揺が、
膝を、腰を、肩を、首筋を。
じわりと体を締め付ける。
歯痒くもどかしい感覚を押さえつけ、そうかと答えると、
なんてことのない声の調子で、

「僕も好きだし、あのお店」


なにやら居ても立っても居られず――まさに立っていられず、
座り込もうかという時。

どん、と音を立てて、長い沈黙を破った第2波が訪れた。

座ろうという体勢だっただけに、それはもう見事にバランスを崩し。
立ち上がろうとしていた体勢の少年はとっさに腕を伸ばした。
その腕に収まる瞬間剣士が思ったのは、
『大きいようなら道場から庭に出なければ』という、
妙な方向に冷静なものだった。

身動ぎも出来ぬ程きつく、熱い中にいた。
少年は自分の体を盾にして、全てから守ろうというように。
片腕を地面につき、もう片腕で抱き締め、
両足には力を込めてあり、いつでも動ける状態にしてある。
緊張の糸が道場内に張り巡らされている。
切れ長の瞳が、揺れる地面と天井の間をせわしなく移動する。

守られている。
そうだ、守られている。

地震も、体調不良さえも、
気の置けない相手に隙を見せる理由にはならない。
隙があるから、相手に身を任せる羽目になっている。
そう、今、この時に理解した。
気を許しているからこそ、隙が出来てしまったこと。
出来た隙に入り込んでいる温かい色のこと。
その色を、出来るなら失いたくな――

どしっ




少し前に地震は収まっていた。
黄味がかった茶の瞳が落ち着きを取り戻し、
一息ついたらバランスを崩した。
なんだか決まりきらない自分らしいミス。
いつもならそれで終わる筈だったのだが。

「うわっ」
「ふぐぁ」

小柄な少年を押しつぶしていた。
……周囲に気を配っていたので、腕の中の師匠を忘れていました。
そう言ったら怒られるかな、と少年は思ったが。
どうやら今の自分の一撃で気絶してしまった師匠に気付き、
泡を食って、背中から気付けを施した。



…頭の中がじんわりしている。
まさか一本取られて気でも失ったかと焦ったがそうではないようだ。
思い出せない。
思い出せないのだが、何故か。

「良かったぁ…!」

心底安心しきった少年の表情と、
その熱い両手が自分の肩にかけられているという、
たったそれだけの事で。

「あれ、まだ戻りきってないのかな、顔が真っ赤」

左手が優しく無造作に額に添えられて。
心臓が、理由もなくばくんと跳ねた。

「だ、だ、だ、だいじょうぶだっ!」

後ろに下がろうとすれば腰が抜けており、
へたりと崩れ落ちれば逞しく育った腕に支えられ、
そのままゆっくり床に横たえられ、
もうどうしようもなくなって、

「少し休みなよ」
「……ああ」
「また地震が来たら、大きい時は外に連れ出ていくから平気だよ?」
「……ああ、頼む」

目を閉じた。
そうか、さっき地震があったのか、などと思いながら、
今日一日の流れを思い出そうとして、
そこはかとない不安を感じたので、懸命に、やめた。
額の髪をかきあげる温かさが、折角心地良いのだし。



「海老ちゃ…うわぁぁぁあごめん俺何も見てない見なかった!!」
「…あ、ルシャ君だ。大丈夫だった?」
「あぁもう!俺は大丈夫!出直す!出直すからごゆっくり!」
「あれ?行っちゃった」




…これは、少年が剣の師匠は実は少女なのだと気付く、
数日前のお話。

少女が、自分は誰かに恋心を抱いていると気付く、
数日前のお話でもある。

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