ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

TOKYO ポエケットコミュのポエケットレポ / 平田真紀

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「平田真紀一人書店」から見た第19回TOKYOポエケット

                  平田真紀


 私は詩を30年くらい前、短歌を25年くらい前から作っています。ノートに手書きして友人間で回し読み、とかでない印刷の歌集を初めて作ったのは2007年で、翌2008年の春、初めて文学フリマに参加して自分の本を対面販売しました。しばらくは文学フリマだけに参加していましたが、そのうち、作家が自分の本を自分で売る機会が文学フリマだけというのが、いかにも不自由なことに思え、2011年の春から日本中どこでも面白そうなイベントに出かけては本を売る「平田真紀一人書店TOUR」をはじめました。TOKYOポエケットには、その2011年から参加するようになり、以来毎年参加しています。

 2015年の第19回ポエケットは平田真紀一人書店TOURの24イベントめになります。今まででいちばん遠くに出かけたイベントは札幌の「芸森アートマーケット」、いちばん標高の高かったイベントは神戸の摩耶山山頂の「リュックサックマーケット」、いちばん受難だったイベントは本が強風で飛ばされ何冊も海に落ちた横浜の「日本丸メモリアルパークアート解放区」です。

 このように、文学系や同人誌系以外のイベントにもたくさん出店し、それぞれの新鮮な面白さに触れ、あらためて文学系のイベントに参加すると、いろいろなことが感じられます。

 ポエケットに関して言えば、いいところはなんと言っても、詩の好きな人しか来ない、というところです。たまには、江戸東京博物館のほかの部屋に用があって来たとおぼしき人などが立ち寄ってくれたりもしますが、来場者の98%くらいまでは、詩人か、詩の愛好者です(多分)。これは野外のアートフリマや手作り市なんかではありえないことで、また、文学フリマでさえ、ありえません。文学フリマでさえ、詩や短歌というと見もしない人がいるし、野外市などでは自作の歌集なんか並べている私と目が合うだけで逃げていく人がたくさんいます。ポエケットでは、声をかけずとも近づいてくれ、声をかければ本を手にとってくれ、話をすれば自然に詩や言葉や表現についての話ができます。これはとてもすばらしいことです。

 また、コンパクトな会場で、全体が見渡せることもポエケットの特長です。文学フリマは、参加希望者がどんどん増えて抽選に落ちる人が出てきたので、なるべく多くの希望者に参加してもらえるようにということで大きなハコに会場を移していき、今や何百ブースという巨大なイベントになりました。それに比例するようにして、当初濃密にあった文学の香りとか泥臭さみたいなものが薄まっていき、いろんな業者がじわじわ入り込んで商業のにおいをたちのぼらせるようになりました。文学と亜文学と非文学と商業がカオスとなってぶち上がる花火のようなイベントに文学フリマは育ち、それが一つの方向なら、ポエケットはその真逆、規模の拡大とテーマの拡散を注意深く抑え続けることで、詩のイベントとしての密度を守り抜いているのだといえるでしょう。ポエケットの中で毎回開催される朗読のライブも、耳からも詩は楽しめるということを感じさせてくれる、とても濃いプログラムです。

 どちらが良くて、どちらが悪いということではなく、詩歌をつくり、本をつくり、それを対面販売したいと望む作家にとって、この両極端の二つのイベントが日本で開催されていることは、とても意義深く、ありがたいことです。

 さて、ポエケットの問題点もまた、その濃密さにあると思います。濃密すぎて、あまり詩歌の近くにいない一般のお客さんが、ほとんど来ないというところです。出店者同士の交流もさかんなので、詩人同士は出会ったりお互いに刺激しあったり、そこまでいかなくても挨拶しあったりして、いい感じになっていきますが、そうなればなるほど内輪感をかもし出し、サロン化して、詩人もしくは熱心な愛好者以外の人に対して壁を作ってしまいます。これは自然ななりゆきであり、ある程度は仕方ないことだと思いますが、あまり風通しがわるくなると、濃いばっかりでおいしくないコーヒーのようになってしまう気がします。詩とはぜんぜん関係ない人や、詩なんかべつに何とも思っていない人たちが、時に詩をおもしろくするような気がします。だからそういう人に対して門戸を開いておくことは大切で、どうしたらもうちょっと一般の人が来やすいようにできるか、これからも考えながら参加していきたいと思っています。

 作家が自分の作品を対面販売することの意義は、その作家によって色々でしょうが、これを読んでおられる作家諸氏の中に「一度も対面販売をしたことがない」という方がありましたら、ぜひ一度、やってみられる事をおすすめします。ちゃんとした出版社から本を出し、その本がふつうに書店に並んでいるような方でもです。対面販売をすると、自分のことを全く知らないお客さんが目の前で自分の作品を納得いくまで吟味し、そしてお金を払って買って行ってくれる、という経験ができます。自分の作品が作品として確かに機能する瞬間を目の当たりにできます。また、目の前で納得いくまで作品を吟味してなお、買わずに立ち去っていくお客さんにも出会えます。これはとても迫力のあることです。この迫力を心身にたたき込むために、この迫力によって作品を鍛え、鍛え抜いた作品をまだ見ぬ読者へ手渡すために、私は平田真紀一人書店TOURを続けています。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

TOKYO ポエケット 更新情報

TOKYO ポエケットのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング