劇団ろくでナシっ！コミュの戯曲：永田町

8時まで西日暮里の駐車場で寝てそのまま車を走らせた。若干の尿意はあったものの、そんな切羽詰まった状態ではなかった。時間的に朝の渋滞でいつもなら30分で帰れる所、もぉ既に50分程走らせている。7で買った玄米茶をガブガブ飲みながら必死に眠気と戦っていた。すると永田町にさしかかった辺りで猛烈な尿意に襲われた。寝酒と寝起きとガブ飲みで突然膀胱は破裂寸前に、しかしマズい事にこの辺りはコンビニや商業施設は見当たらず、官省庁や国会議事堂ばかり。そう思うと尚更尿意は激しさを増す。男子の特権「立ち」もワンブロックごと警察官が見張っているようなこのエリアでは、操縦桿を握った瞬間に連中が飛んできかねない。銃刀法違反で逮捕となっては目も当てられない。そうこうしているうちに、仮に目の前に厠を発見しても、もぉ既に降りて云々する余裕のない所まで来てしまっていた。さぁここ一番落ち着いて考えよう。いま車の中には寝袋、段ボール、コンビニ袋、玄米茶、、、ん、、、玄米茶、コレだ！コンパクトで防水性に富んだ紙パック式。私はあわてて車を左に寄せサイドブレーキを引いた。膀胱にはなるべく刺激を与えないように助手席へと移動する、先程まで飲んでいた玄米茶を覗き込むとまだ半分以上余っている。ソレ以内に済ます自信がないと判断した私は、残りを窓から捨てる。ベルトを緩め先端を露出させる。誰かに見られるかもしれない、しかしこの有事にそんな事は言っていられない、私は先端を玄米茶パックに挿入させた。しかしあの紙パックは、また丁度いいサイズの菱形が迎え入れてくれたものだ。ここまでくればコッチの物、軽く深呼吸したあと、一気に下腹の筋肉を緩和させた。ナイアガラの滝には行った事がないが、これが、これこそがナイアガラだ。どのくらいの時間だったろう、たぶん数十秒なのだろうけど、私にはとても長く感じた。車のドア一枚向こうは歩道だ、人が普通に歩いている。誰も気付かないでくれ、いや、誰か気付いてくれ。複雑な時間が流れ、一仕事終えた私は紙パックの菱形を閉じた。