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ジャータカ説話コミュの黄金の茶碗

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アンダブラという都に、二人の行商人が河を渡って入ってきました。
一人は誠実で賢い商人、もう一人は強欲でずるい商人でした。

二人はそれぞれが回る町筋を公平に分けてから、それぞれの町筋に入っていきました。

この都には、以前はたいへん栄えた大商人で今は見る影もなく落ちぶれている一軒の家がありました。
その家では息子も兄弟も死に絶えて、孫娘とお祖母さんだけが細々とその日暮らしをしていました。

けれどこの家には、昔あるじが使っていたすばらしい黄金の茶碗があったのです。
二人はそれに気づかず、茶碗はホコリまみれになったまま他の食器などとともに無造作に放り出されていました。

この家に強欲でずるい行商人がやってきました。

孫娘は、お祖母さんに
「お祖母さん、私になにか一つ買って下さいな。」
と頼みました。
お祖母さんは何とかして買ってあげたいと思い、行商人に渡す物を探して家の中を何度も見回すのでした。
孫娘も一緒になって見回しているうちに
「お祖母さん、あそこにあるお茶碗はどうでしょう。
どうせ使わないものですもの、あれを売って買えないかしら。」
と言ってホコリだらけの茶碗を取りに行きました。

お祖母さんは行商人を家の中に入れると、茶碗を見せて遠慮がちに言ったのです。
「これを買い取って、何か適当な品物を孫娘に渡してやってはくださいませんか。」
行商人は茶碗を手にすると、そのずっしりとした重さで
「純金かもしれないぞ」
とすぐに気が付きました。

行商人はわざと仏頂面をしながら、面倒臭そうにホコリだらけの茶碗の底を針でちょっと傷をつけてみました。
それはまぎれもない黄金の茶碗でした。

(これはたいへんな代物だ。
ところがあの二人はまるで気が付かないでいる。
よし、ただ同然でこの茶碗を手に入れてやろう。)
と考えました。

そして、いかにも不機嫌な様子で
「これは半マーサカの値打ちもないので、ダメだな。」
と言いながら茶碗を下に投げ捨てて出て行ってしまいました。

一人が商いを済ませて出て行った後には、他の者が商いをしても良い事になっているので、今度は誠実で賢い行商人がその町筋に入ってきました。

この行商人の物売りの声を聞いて
「また違う人が装身具を売りに来ましたわ。
何か買って下さいな。」
とお願いしました。

お祖母さんは、さきほどのやりとりですっかりこりていましたが、孫娘がかわいそうでなりません。
「でも売れる物は、他に何も無いし。」
と言いました。

孫娘は、茶碗を手にとって
「さっきの人は物の言い方もきつかったし、目付きも何だか鋭くて恐かったわ。
今度の人は言葉遣いも、目も姿もとても優しそうです。
きっとこれを買って私に品物を置いていってくれるでしょう。」
と明るい声で言いました。

そこで、お祖母さんは行商人を招き入れると茶碗を買ってもらえないかお願いしたのです。

商人は茶碗が黄金でできている事を知ると
「なんとこれは黄金の茶碗でございます。
十万カハーパナ(カハーパナはマーサカの20倍)はいたします。
私はこの茶碗に見合うだけの品物を持っておりません。」
と言って大切そうに茶碗を二人の前に返しました。

お祖母さんは、思わずにっこりして
「ほんの少し前にここへ来た人は、これを半マーサカの値打ちもないと言って投げ捨てて行きました。
それなのにあなたのような人が来て下さって、こんなに嬉しいことはありません。
きっと、あなたの徳でお茶碗が黄金に変ったのでしょう。
これを、差し上げますのでどうぞお持ち帰りください。
そして何かこの孫娘に置いていっていただければありがたいのですが。」
と言いました。

これを聞いた誠実で賢い商人は、持っていた全ての商品五百カハーパナ分と全てのお金五百カハーパナを二人の前に置きました。
その中から商売に必要な、秤と袋と帰りの船賃八カハーパナだけをきちんとことわって、二人から茶碗と一緒に改めて受け取りました。

商人はそれを持ってまっすぐに河岸へ行くと、船頭に八カハーパナを渡してすぐに船を出させました。

一方、強欲でずるい商人はそろそろ二人ともあの茶碗はあきらめ切ったころだろうと、もう一度訪ねて行ったのです。

「さっきの茶碗、やっぱり私がもらっていってあげましょう。
そのかわり何か置いていってあげますよ。」
商人が上手くだますつもりでこう言うと、
お祖母さんは商人をにらみつけながら
「何を言っているのです。
十万カハーパナはするという黄金のお茶碗を、半マーサカの値打ちもないといった者に、誰が渡すものですか。
あのお茶碗は、あなたの御主人としか見えない、誠実で立派な商人が来て、快く千カハーパナを出して持って行きましたよ。」
と胸がすくように言いました。

今度は、この商人が打ちのめされる番でした。
欲を出して策を弄したばかりに十万カハーパナの黄金の茶碗を、みすみす手に入れ損なったのです。

それを買い取っていったもう一人の商人への怒りと恨み、失望といらだちで、全身が燃え上がったり冷たくなったりして何が何だか判らなくなりました。

そして、持っていたお金や商品を戸口にまき散らかすと、気が狂ったように着ている物を脱ぎ捨て秤の棒を棍棒のように持ち、もう一人の商人の後を追いかけて出て行ってしまいました。

けれども、河岸に着いたときには船は既に出た後でした。
「船を戻せ」と叫んでも、船はどんどん遠くへ行ってしまいます。
誠実で賢い商人が相手の心の中を見通して、船を返させなかったのです。

河岸の商人は地団駄を踏んで悔しがり、心臓は燃えるように熱くなりついには裂けて死んでしまいました。

コメント(6)

人への嫉妬や恨みで自らの身を焼き尽くしてしまったのですねがく〜(落胆した顔)
強欲でずる賢い。今も昔も人を騙す輩は減りませんね。
誠実であることが一番と思える世の中になるため、この様な説話は語り継がれて欲しいです。
はじめまして。
自己紹介が遅れてしまいましたふらふら

高校生のときにインドを訪れました。
アジャンター石窟寺院を観光したのですが、そこには壮大な壁画が描かれてて、その中にジャータカのお話もたくさんあったのです。

帰国してすぐ、私は世界史の先生に仏陀の前世の話をまとめた本はないかと尋ねました。
ところが、そのような著書はなかなかないとのこと。

そうして、それから何年も経った今回このコミュニティを知っていろいろなお話が紹介されていたので驚き参加させていただきましたうれしい顔

どうかよろしくおねがいします
タカさん

いらっしゃーい☆
管理人が留守なので、自称副管理人のルンルンが
かわってご挨拶。
(管理人は阿佐ヶ谷の阿波踊りに行ったみたい・笑)

よろしくお願いしまーす。

インドで見たり聞いたりしたお話あれば、ぜひトピたててくださいね。
こんにちは、ルンルンさん。

一つだけアジャンター寺院の壁画について特集した雑誌を持っていますので、また暇を見て紹介させていただきたいと思いますうれしい顔
たくさん

あーーごめんなさぁい。
タカさんではなく たくさんでしたぁがく〜(落胆した顔)
楽しみにしてますねわーい(嬉しい顔)
名前を間違えるとは 失礼しました。もー間違えないですよ電球
よろしくお願いします。
たくさん、はじめまして

踊りを見ていて遅れましたごめんなさい。

ルンルンさんフォローありがとうございます。



高校生でインドとはうらやましい限りです。

先生にはちょっと専門的すぎるかもしれませんね。


ジャータカ(本生経)は通称です。
〜ジャータカといった、様々な話を集めたのでジャータカ説話というらしいです。

らしい、というのは実は原話の出典は定かでは無く民話や童話、説話などが仏教の教えを具体的に説くために使用されたのが始まりではないかと言われているからです。

経典としては南伝大蔵経に収蔵されていて、サンスクリット、バーリ、漢、チベット訳などがありもちろん和訳もあります。

こちらは、学者というよりもお坊様の方が詳しいと思われますが、マハーバータラなどの劇の主題とされる部分の解釈は役者さんの方が詳しかったりします。

また、今昔物語集などに取り込まれているお話もあったりして、専門的にはあまりに広範囲に研究しないと全体像はみえないと言われています。

@kiraもバーリ語は読めませんので、和訳の解説本を何冊か読んでエッセンスを記入している訳で・・
上記の解説も同じ手法なので小学生時のの夏休みの読書感想文のようでもあり恥ずかしい限りなのですが、それとは別に少なくともお話の底にあるストーリーが心を捕らえてしまうのは間違いが無いと感じているのです。

おこがましい限りではありますが、皆さんとあーじゃない、こーじゃないと言えれば嬉しいです。


だいたい一ヶ月に一話アップできたらと考えています。
よろしくお願いします。

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