尾崎行雄コミュの尾崎を支えた３人の女性

尾崎を支えた３人の女性

　尾崎は身長157?、体重はたったの34?でした。生きた時代は激動の時代です。こんなにきゃしゃな体でどうして長年にわたって活躍することができたのか、とても不思議に思いました。それには、彼を支えた３人の女性の力があったのです。いい男の陰にはいい女がいるんですね、やっぱり。

　最初の奥様、繁子さん。14才のときに22才の尾崎と結婚、40才の若さで亡くなりました。尾崎が衆議院議員開設とともに国会議員になって以来、心労は全く休みがなかったと言われています。尾崎の政治生活は常に命を狙われる危険なものであったし、ひどい貧乏だったしで、長年に及ぶ心労が結核に倒れた原因だったと言われています。
　尾崎は自伝に「私は家を顧みずに政治に奔走していたから、私の妻などはずいぶん辛い思いをしたやうだ」と書いています。
繁子が亡くなったときに尾崎が読んだ歌
「今さらになげく言葉もなかりけり　十年余りは泣きてくらしつ」

　二番目の奥様、テオドラさん。父は日本人、母はイギリス人のハーフです。源氏物語を英訳するほどの才女で、明治38年、36才のときに48才の尾崎と結婚、63才で亡くなりました。
彼女と結婚してからは、尾崎との会話はすべて英語で、家庭生活も洋式になり、欧米人との交際が広くなりました。また夜遅くまで痛飲することもなくなり、規則正しい生活に改まって、健康が回復したそうです。
　彼女の亡くなる頃に尾崎が読んだ歌は沢山あって、病床の彼女をどんなに大切に思っていたかが切々と伝わってきます。　
「愛と云ふ言葉に妻の微笑みぬ　重き病も忘れたるらん」　

　服部文子さん。尾崎が大正15年中耳炎のため入院したときに尾崎を担当した看護婦でしたが、尾崎とテオドラさん気に入られて家政婦になりました。以来結婚もせず、30年間尾崎に仕えました。尾崎は亡くなるときに「長生きできたのは服部さんのおかげだ」と深く感謝して、自分の著作権をすべて彼女に譲っています。
　ここまでくると家族みたいなものだったのでしょう。尾崎の使用人に対する姿勢も大きいようです。尾崎は使用人のことを、決して呼び捨てにしなかったそうで、彼の葬儀には法被や仕事着のまま駆けつけた人が多く、広く庶民にも愛された人でした。