■きさらぎ賞を分析する
96年 きさらぎ賞２着 → ダービー２着 ダンスインザダーク
98年 きさらぎ賞１着 → ダービー１着 スペシャルウィーク
98年 きさらぎ賞２着 → ダービー２着 ボールドエンペラー
99年 きさらぎ賞１着 → ダービー２着 ナリタトップロード
01年 きさらぎ賞２着 → ダービー２着 ダンツフレーム
03年 きさらぎ賞１着 → ダービー１着 ネオユニヴァース
04年 きさらぎ賞３着 → ダービー２着 ハーツクライ
06年 きさらぎ賞１着 → ダービー３着 ドリームパスポート
06年 きさらぎ賞２着 → ダービー１着 メイショウサムソン
07年 きさらぎ賞１着 → ダービー２着 アサクサキングス
08年 きさらぎ賞２着 → ダービー２着 スマイルジャック
09年 きさらぎ賞１着 → ダービー２着 リーチザクラウン
11年 きさらぎ賞３着 → ダービー１着 オルフェーヴル
13年 きさらぎ賞１着 → ダービー？着 タマモベストプレイ
もうすでに誰もが周知の通り、きさらぎ賞とダービーは深い関連性を持っている。
96年以降の17年間で、きさらぎ賞３着以内馬がダービーで馬券にならなかったのは97年、00年、05年、10年の４回（00年は１頭もダービーへ出走せず）。
ほぼ毎年のように、きさらぎ賞上位馬がダービーで活躍しているのだ。
しかも、ボールドエンペラーやアサクサキングス、スマイルジャックなど二桁人気での激走もあり、配当的妙味も高い。
皐月賞や青葉賞など直近の前哨戦以上に、重要なレースと言ってもいいだろう。
[きさらぎ賞での上がりと通過順]
1.48.2（34.7） 【04-04】 ダンスインザダーク
1.51.3（35.7） 【09-09】 スペシャルウィーク
1.51.9（36.5） 【04-04】 ボールドエンペラー
1.49.1（35.5） 【06-05】 ナリタトップロード
1.48.0（34.9） 【06-02】 ダンツフレーム
1.49.6（35.2） 【04-03】 ネオユニヴァース
1.48.6（35.2） 【10-10】 ハーツクライ
1.47.4（34.2） 【11-08】 ドリームパスポート
1.47.5（35.0） 【02-02】 メイショウサムソン
1.48.8（35.0） 【01-01】 アサクサキングス
1.48.9（35.0） 【06-04】 スマイルジャック
1.48.9（35.0） 【01-01】 リーチザクラウン
1.47.8（33.2） 【09-07】 オルフェーヴル
1.48.9（34.3） 【02-02】 タマモベストプレイ
過去、ダービーで馬券になったきさらぎ賞好走馬は上記13頭。
そのうち、きさらぎ賞で自身上がり33〜34秒台前半をマークしていたのは、ドリームパスポートとオルフェーヴルの２頭のみ。
残る11頭は、すべて35.0秒前後の上がりでフィニッシュしており、この35.0秒前後という数字がダービー激走への布石となりそうだ。
今年のきさらぎ賞を制したタマモベストプレイは、通過順02-02の先行策から自身上がりが34.3秒。
過去のダービー好走パターンである『上がり35.0秒前後』からはだいぶ遠い数字だが、問題は自身上がりだけではない。
[前半５Ｆ、後半４Ｆ推移]
96年 61.1 → 12.1−11.9−11.6−11.5 （35.0）
98年 62.8 → 12.4−11.8−12.3−12.0 （36.1）
99年 61.2 → 12.1−11.6−12.1−12.1 （35.8）
01年 60.4 → 12.5−11.7−11.7−11.6 （35.0）
03年 61.7 → 12.4−11.8−11.8−11.9 （35.5）
04年 60.3 → 12.5−11.8−11.7−11.7 （35.2）
06年 60.0 → 12.5−11.9−11.3−11.7 （34.9）
07年 61.7 → 12.1−11.3−11.4−12.3 （35.0）
08年 60.8 → 12.1−12.1−11.8−12.0 （35.9）
09年 61.7 → 12.2−11.8−11.1−12.1 （35.0）
11年 60.2 → 12.0−11.3−11.8−12.3 （35.4）
13年 62.2 → 12.2−11.7−10.9−11.9 （34.5）
上記は、ダービー好走馬を輩出した年のきさらぎ賞で刻まれた、前半５ハロン通過ラップと後半４ハロンを振り返ったもの。
これを見ても分かる通り、すべて例外なくレース上がりが34.9秒以上かかっているのである。
前半５ハロンを１分以上のゆったりしたペースで折り返しながらも、後半はそれなりに持久力を要求するのが例年のきさらぎ賞。
前半で折り合いが試され、後半でスタミナが問われるレースだからこそ、長距離のダービーに直結してきた。
34.2秒、33.2秒という高速上がりで馬券圏内まで追い込んだドリームパスポートやオルフェーヴルも、そういうタフなレースを差してきたことに価値があったのだ。
しかしながら、今年のきさらぎ賞は前半５ハロン通過が62.2秒、レース上がりは34.5秒と例年に比べてラスト４ハロンが軽い質感であった。
これまで一度も刻まれたことがなかった10秒台のラップがラスト２ハロンで計時されている点からも、それは明らかであろう。
ダービーと関連深いレースとは言え、きさらぎ賞というだけで短絡的に今年も直結すると考えるのは軽率である。
■京都新聞杯を分析する
[前半５Ｆ、後半５Ｆ推移]
04年 59.7 → 12.9−12.0−11.6−11.2−11.7
05年 60.2 → 12.0−12.0−11.9−11.8−12.6
12年 58.0 → 12.5−11.9−11.3−11.5−12.0
13年 59.2 → 12.6−12.3−12.1−11.8−12.0
[勝ち馬の詳細]
04年 2.11.9 【33.4／１位】 10-10-10-10 ハーツクライ
05年 2.13.0 【35.7／２位】 15-15-14-07 インティライミ
12年 2.10.0 【34.7／２位】 02-02-02-02 トーセンホマレボシ
13年 2.12.3 【34.5／１位】 16-16-15-13 キズナ
過去10年で、京都新聞杯からダービー好走を果たしたのは３頭。
05年のインティライミ以降、長く京都新聞杯組は本番で馬券になっていなかったが、昨年は久しぶりにトーセンホマレボシが気を吐いた。
02年のハーツクライは本番で５番人気２着、インティライミが２番人気２着、トーセンホマレボシが７番人気３着。
京都新聞杯はあくまで別路線であり、これまでは皐月賞やＮＨＫマイルＣを経由してきた主役を引き立てる脇役にすぎなかったのだが、今年はどうやら１番人気に支持されそうな勢いである。
４角13番手という絶望的な位置から、上がり２位に0.7秒差をつける末脚で突き抜けた前走内容は確かに圧巻だった。
キズナが先頭に立ったのは、ゴールまで数十メートルの位置なので、おそらく直線で早めに抜け出した２〜４着馬も、それほど大きくは失速していない。
にも関わらず、これを最後方から直線だけで捉え、さらに並ぶ間もなく１馬身半突き放したということは、キズナ自身は尻上りのラップを刻んでいた可能性が高いだろう。
テンのダッシュ力に乏しく、後方待機を余儀なくされる脚質である上に、コーナーでマクる器用さもないという欠点はあるが、それを補って余りある瞬発力を持っている。
直線の長い東京は間違いなく合うだろうが、問題はどれだけ長く脚を使えるか。
鞍上の武豊騎手は、この馬をディープインパクトに似ていると評しているが、ディープインパクトのようにコーナーでマクっていくことができない分、仕掛けるタイミングは重要なポイントになりそうだ。
■青葉賞を分析する
[前半５Ｆ、後半５Ｆ推移]
03年 59.7 → 12.6−12.6−11.3−11.4−11.8
04年 60.2 → 12.2−12.2−11.3−11.4−11.4
06年 60.4 → 13.0−12.0−11.5−11.6−12.2
11年 63.7 → 12.7−12.2−11.4−11.2−11.8
12年 60.9 → 12.5−12.1−11.6−11.2−12.1
13年 61.9 → 12.3−11.9−11.4−11.6−11.7
[勝ち馬の詳細]
03年 2.26.3 【34.1／２位】 06-05-04-05 ゼンノロブロイ
04年 2.24.1 【33.7／１位】 06-08-08-08 ハイアーゲーム
06年 2.25.3 【35.3／２位】 01-01-01-01 アドマイヤメイン
11年 2.28.8 【33.6／１位】 16-16-16-13 ウインバリアシオン
12年 2.25.7 【34.1／１位】 09-07-09-08 フェノーメノ
13年 2.26.2 【34.0／６位】 04-04-04-04 ヒラボクディープ
リニューアルした03年以降、青葉賞勝ち馬がダービーで馬券になったのは５頭だが、いずれも青葉賞で上がり２位をキープしていた馬だった。
上がり２位だったゼンノロブロイは上がり最速から0.1秒差、アドマイヤメインも最速から0.3秒差をキープしている。
今年の青葉賞馬ヒラボクディープは、上がり最速から0.7秒差のメンバー６位。
過去にダービー好走を果たした青葉賞馬とはタイプが少し異なるようだ。
良馬場で前半５ハロン通過61.9秒は、過去10年で２番目に遅いラップ。
ただし、前半５ハロン通過63.7秒という超スローで折り返した11年も、勝ったウインバリアシオンが本番で好走しているので、ペースが遅かったからと言ってそれが減点材料になるとは限らない。
今年は３〜７ハロン目の５ハロン間が、12.5−12.7−12.6−12.9−12.5まで緩み、中盤までは消耗がほとんどない流れ。
残り５ハロンから満を持してロングスパートに持ち込み、ラスト５ハロン12.3−11.9−11.4−11.6−11.7で逃げ切りを図るアポロソニックを、ゴール前ぎりぎりで差し切った点は高評価に値しよう。
中盤まで流れがゆったりしていたにも関わらず、切れ味勝負にもならないという逃げ馬には絶好の展開。
本来であれば、アポロソニックが楽に逃げ切っていたはずのレースであり、中団以降から差し回った馬はまったく何もできなかった。
■皐月賞を分析する
[勝ちタイム１分58秒台の皐月賞]
02年 12.0−10.9−12.1−12.2−12.0−11.8−11.7−11.7−12.2−11.9
04年 12.1−10.9−12.3−12.2−12.2−12.5−12.0−11.6−11.3−11.5
09年 12.1−10.8−11.9−12.1−12.2−12.1−11.9−11.8−11.7−12.1
13年 12.0−10.6−11.5−11.6−12.3−12.1−12.0−11.9−12.0−12.0
[前後半４Ｆ]
02年 47.2 → 47.5 1.58.5 ノーリーズン
04年 47.5 → 46.4 1.58.6 ダイワメジャー
09年 46.9 → 47.5 1.58.7 アンライバルド
13年 45.7 → 47.9 1.58.0 ロゴタイプ
今年の皐月賞は、従来のレースレコードを実に0.5秒も上回る超高速決着。
１分58秒台で決着した皐月賞は過去に三度あったが、それらと比較してみても今年は前半４ハロンまでの流れが突出して速い。
先行勢が総崩れとなった09年でさえ、４ハロン目には12.1秒までペースダウンしたのに、今年は４ハロン目も11.6秒で駆け抜けている。
馬場差を加味しても明らかなオーバーペースであり、先行集団の一角を形成していたクリノヒマラヤオーやミヤジタイガが、４コーナーを待たずしてズルズルと後退したのも頷けよう。
先頭からシンガリまではかなり縦長だったが、後方待機６頭以外は先団で大きな馬群を形成。
勝ったロゴタイプはこの先団馬群の後ろに位置取り、コディーノやエピファネイアら他の上位人気馬もその近くを追走している。
ロゴタイプが３ハロン目を通過したとき、レース映像の時計は35秒を計時していた（画像１参照）。
逃げたコパノリチャードは、３ハロンを34.1秒で通過していたので、ロゴタイプとその周辺にいた上位人気馬は、逃げ馬より約１秒後方を走っていたことになるわけだ。
同じく、ロゴタイプが５ハロン目を通過したとき、映像の時計は58秒から59秒に変わる直前（画像２参照）。
コパノリチャードの５ハロン通過が58.0秒なので、やはりここでも約１秒遅れで５ハロン目を通過したことになる。
前半３ハロン通過35.1秒、５ハロン通過58.9秒。
正確な時計は分からないが、ロゴタイプが皐月賞で刻んだ自身ラップは、だいたいこんなところだろう。
馬場差は別にして、過去これに近いラップ構成で皐月賞を逃げ切った馬がいた。07年のヴィクトリーだ。
[前後半３−５Ｆ]
35.1−58.8 → 59.2−35.3 ロゴタイプ
35.5−59.4 → 60.5−35.9 ヴィクトリー
刻んだラップは前半も後半もロゴタイプのほうが速いが、前後半の時計差がほとんどない平均ラップである点において両者は酷似している。
ここでヴィクトリーを引き合いに出したのは、ロゴタイプの能力がヴィクトリー並だという意味では勿論ない。
ロゴタイプが皐月賞で刻んだラップは、逃げ馬が逃げ切ったときに刻む効率のいいラップに限りなく近いことを強調するためだ。
前後半３ハロン34.1→35.9秒という超前傾ラップのレースで、ロゴタイプは35.1→35.3秒の平均ラップを刻んでいた。
ロゴタイプが最も効率のいい位置にいたとすれば、必然的にこれより前にいた馬はオーバーペースであり、逆にこれより後ろを追走していた馬にとっては後傾ラップのスローだったことになる。
そして、今年の皐月賞上位３頭が、道中ロゴタイプの近くにいたことは偶然ではあるまい。
[自身５Ｆ通過、上がり]
58.0 → 37.4 【01-01-01-01】 コパノリチャード
58.2 → 39.5 【02-02-02-10】 クリノヒマラヤオー
58.4 → 37.6 【03-03-02-03】 ラブリーデイ
58.4 → 37.3 【03-03-05-08】 ミヤジタイガ
58.6 → 36.6 【05-05-02-02】 クラウンレガーロ
58.7 → 35.8 【05-05-05-05】 コディーノ
58.9 → 35.3 【07-07-08-05】 ロゴタイプ
58.9 → 35.6 【07-07-05-03】 エピファネイア
59.2 → 35.6 【10-10-11-08】 タマモベストプレイ
60.4 → 35.2 【17-17-16-14】 テイエムイナズマ
61.0 → 35.1 【18-18-18-18】 メイケイペガスター
落ち込みのない持続ラップを後ろから差すには、前にいる馬よりも速い脚を長く使わなくてはならず、相当なスピードと持続力が要求されるわけだが、前にいる馬が勝手に止まってくれたのなら話は別だ。
５ハロン通過時点で、ロゴタイプら上位人気勢の前を走っていたのは、コパノリチャード、クリノヒマラヤオー、ラブリーデイ、ミヤジタイガ、クラウンレガーロの５頭。
彼らの自身上がりが、軒並み36.6秒以上かかっていることからも分かるように、５頭はともに残り３ハロンで大きく失速した。
クリノヒマラヤオーやミヤジタイガに至っては、４コーナーを待たずしてズルズルと後退している。
つまり、中団を追走していたロゴタイプは、自ら加速することなく楽に前を捉えることができたわけだ。
これだけのハイペースでありながら、ラスト１ハロンを12.0秒という好ラップでフィニッシュできた背景には、勝負どころでの急加速によるスタミナ消耗を回避できたことが大きい。
そのおかげで、ロゴタイプは道中ほとんど緩急のないラップを刻み続け、結果的に逃げ馬が平均ラップを刻んで逃げ切ったときと同じようなラップ構成で2000メートルを走破することができた。
もし仮に、ロゴタイプがヴィクトりーのラップを刻んでいたとすれば、厳しいのはこれを後方から追いかけなくてはいけない馬たちである。
例えば、４着馬カミノタサハラが加速したのは公式時計が１分13秒を計時したあたりだったが、これは６ハロン通過（１分10秒１）から約３秒後の位置。
これは約５ハロンに渡ってスパートをかけていたことを意味しており、４コーナーで大外を回したことも含めて、最後の最後に脚色が劣勢になってしまったのも当然と言えよう。
また、中団に待機していた上位陣の中で、エピファネイアだけは自ら動いて前を捕まえに行っていた。
もうワンテンポ仕掛けを遅らせ、前が勝手に失速するのを待っていれば、ロゴタイプと同じく急加速によってスタミナを消耗することはなかったはずだ。
ゴール前でロゴタイプに半馬身屈したのは、自分から動いた分の失速であり、能力の差では決してない。
逆に、中盤まで２頭の前にいたコディーノは、勝負どころで仕掛けを待ちすぎたため、先に抜け出した２頭を差すことができなかった。
奇しくも１〜４番人気が上位を独占したため、いかにも能力差が露呈したレースだったかのように思われているが、実際は位置取りの差が結果を大きく左右するレース。
それでなくとも、今年の皐月賞は従来のレコードを0.5秒も更新したレースでありながら、10着馬までが勝ち馬から1.0秒以内にひしめいた接戦のＧ�気任△襦�
距離が400メートル伸びることで、また舞台が東京に替わることで、いくらでも着順は逆転するだろう。
１分58秒台で決着した皐月賞の連対馬が、ダービーで１頭も馬券になっていない事実も、ロゴタイプにとっては耳障りなデータだ。
■結論
駆け足ではあるが、ざっと前哨戦を分析してきた。
本当はプリンシパルＳやＮＨＫマイルＣも精査したかったのだが、時間の都合でやむを得ず割愛。
重要なステップレースの分析を放棄してまで、なぜ前哨戦でもないきさらぎ賞を真っ先に調べたのか。
それは、ある１頭の馬に対する心情を一度リセットし、ニュートラルな状態にするためである。
皐月賞が終わった段階で、ダービーの本命は決まっていた。
しかし、本命ありきの予想になってしまうと、どうしてもその馬にとって都合のいい解釈しかできなくなってしまう。
冷静にダービーと向き合うために、今年は本命馬の減点材料を知ることからスタートしたわけだ。
過去の歴史が示す通り、きさらぎ賞は皐月賞に匹敵するほどダービーとの関連性が高い。
きさらぎ賞を勝っているというだけで、重い印を打つ価値があると言っても過言ではないだろう。
だからこそ、最初にその頼みの綱である強調材料をバッサリ切り捨て、他に推せる要素がないか模索してきた。
もし、きさらぎ賞勝ちという後押し以外に逆転材料が見つからなければ、他の馬を本命にすることも考えていたのだが、どうやらその必要はなさそうである。
本命は、タマモベストプレイ。
前項で述べた通り、今年の皐月賞は位置取りが勝敗を左右したレース。
ロゴタイプが最も理想的な位置を確保し、なおかつ最も効率的な脚の使い方をしていた。
効率的な脚の使い方というのは、逃げ馬が平均ペースで逃げ切ったときに刻むラップ構成だ。
皐月賞のポイントをまとめると、以下の２点になる。
●ロゴタイプより前にいた馬は、すべて勝手に止まった
●ロゴタイプより後ろにいた馬が、ロゴタイプを差すことは物理的に至難
もちろん、ロゴタイプが楽をしていたという意味ではない。
スタミナの消耗が激しい急加速こそしなかったものの、一貫した持続ラップを最後まで失速することなく刻み続けたのだから、強い競馬だったことは確かだ。
しかし、距離が400メートル伸びたとき、つまり道中で必ずペースの緩急がつく距離になったとき、ロゴタイプと他馬とのパフォーマンスがどれだけ変わってくるか。
[皐月賞上位陣]
１着 1.58.0 【07-07-08-05】 ロゴタイプ
２着 1.58.1 【07-07-05-03】 エピファネイア
３着 1.58.3 【05-05-05-05】 コディーノ
４着 1.58.5 【13-13-09-07】 カミノタサハラ
５着 1.58.5 【10-10-11-08】 タマモベストプレイ
皐月賞上位陣のうち、タマモベストプレイは３コーナー時点で一番後ろの位置。
中盤まではカミノタサハラのほうが後ろだったが、３コーナー手前で外から加速したため、タマモベストプレイは置いていかれる格好となった。
テン２ハロン22.6秒の皐月賞で先行できなかったズブい馬。勝負どころで瞬時に反応し、急加速するような脚は使えない。
持続ラップで押し切ったロゴタイプを捉えられないのは当然であり、むしろこの位置から0.5秒差なら健闘の部類だろう。
[隠れ優駿王道ローテ]
03年 02.16 きさらぎ賞１着 → スプリング１着 → 皐月賞１着 → ダービー１着 ネオユニヴァース
06年 02.12 きさらぎ賞２着 → スプリング１着 → 皐月賞１着 → ダービー１着 メイショウサムソン
06年 02.12 きさらぎ賞１着 → スプリング３着 → 皐月賞２着 → ダービー３着 ドリームパスポート
08年 02.17 きさらぎ賞２着 → スプリング１着 → 皐月賞９着 → ダービー２着 スマイルジャック
11年 02.06 きさらぎ賞３着 → スプリング１着 → 皐月賞１着 → ダービー１着 オルフェーヴル
11年 02.13 共同通信杯４着 → スプリング２着 → 皐月賞11着 → ダービー３着 ベルシャザール
12年 02.12 共同通信杯２着 → スプリング２着 → 皐月賞３着 → ダービー１着 ディープブリランテ
13年 02.03 きさらぎ賞１着 → スプリング２着 → 皐月賞５着 → ダービー？着 タマモベストプレイ
東京競馬場がリニューアルした03年以降、２月重賞→スプリングＳ→皐月賞→ダービーの臨戦過程で、ダービー好走を果たした馬は７頭。
４頭ものダービー馬を輩出したばかりか、スマイルジャックやベルシャザールなど皐月賞大敗から巻き返してきた馬もいる隠れ王道ローテだ。
さらに今年は、スプリングＳ１着馬のロゴタイプが皐月賞を勝ち、３着馬マイネルホウオウがＮＨＫマイルＣを制した。
ならば、今度は２着馬タマモベストプレイが栄冠に輝く番だろう。
何だかんだ言って、新馬戦から一度も乗り替わることなくこの舞台まで駒を進めたのは、内田騎手のレッドレイヴンとこの馬だけ。
距離適性や絶対能力など、上位人気馬に劣る点はいくつもあるが、デビューから培ってきた和田騎手との絆こそがこの馬の最大の武器。
明日は期待をこめて現地で彼らを応援したいと思う。
がんばれ！ タマモベストプレイ！！
◎タマモベストプレイ
単勝
５０００
複勝
１００００
96年 きさらぎ賞２着 → ダービー２着 ダンスインザダーク
98年 きさらぎ賞１着 → ダービー１着 スペシャルウィーク
98年 きさらぎ賞２着 → ダービー２着 ボールドエンペラー
99年 きさらぎ賞１着 → ダービー２着 ナリタトップロード
01年 きさらぎ賞２着 → ダービー２着 ダンツフレーム
03年 きさらぎ賞１着 → ダービー１着 ネオユニヴァース
04年 きさらぎ賞３着 → ダービー２着 ハーツクライ
06年 きさらぎ賞１着 → ダービー３着 ドリームパスポート
06年 きさらぎ賞２着 → ダービー１着 メイショウサムソン
07年 きさらぎ賞１着 → ダービー２着 アサクサキングス
08年 きさらぎ賞２着 → ダービー２着 スマイルジャック
09年 きさらぎ賞１着 → ダービー２着 リーチザクラウン
11年 きさらぎ賞３着 → ダービー１着 オルフェーヴル
13年 きさらぎ賞１着 → ダービー？着 タマモベストプレイ
もうすでに誰もが周知の通り、きさらぎ賞とダービーは深い関連性を持っている。
96年以降の17年間で、きさらぎ賞３着以内馬がダービーで馬券にならなかったのは97年、00年、05年、10年の４回（00年は１頭もダービーへ出走せず）。
ほぼ毎年のように、きさらぎ賞上位馬がダービーで活躍しているのだ。
しかも、ボールドエンペラーやアサクサキングス、スマイルジャックなど二桁人気での激走もあり、配当的妙味も高い。
皐月賞や青葉賞など直近の前哨戦以上に、重要なレースと言ってもいいだろう。
[きさらぎ賞での上がりと通過順]
1.48.2（34.7） 【04-04】 ダンスインザダーク
1.51.3（35.7） 【09-09】 スペシャルウィーク
1.51.9（36.5） 【04-04】 ボールドエンペラー
1.49.1（35.5） 【06-05】 ナリタトップロード
1.48.0（34.9） 【06-02】 ダンツフレーム
1.49.6（35.2） 【04-03】 ネオユニヴァース
1.48.6（35.2） 【10-10】 ハーツクライ
1.47.4（34.2） 【11-08】 ドリームパスポート
1.47.5（35.0） 【02-02】 メイショウサムソン
1.48.8（35.0） 【01-01】 アサクサキングス
1.48.9（35.0） 【06-04】 スマイルジャック
1.48.9（35.0） 【01-01】 リーチザクラウン
1.47.8（33.2） 【09-07】 オルフェーヴル
1.48.9（34.3） 【02-02】 タマモベストプレイ
過去、ダービーで馬券になったきさらぎ賞好走馬は上記13頭。
そのうち、きさらぎ賞で自身上がり33〜34秒台前半をマークしていたのは、ドリームパスポートとオルフェーヴルの２頭のみ。
残る11頭は、すべて35.0秒前後の上がりでフィニッシュしており、この35.0秒前後という数字がダービー激走への布石となりそうだ。
今年のきさらぎ賞を制したタマモベストプレイは、通過順02-02の先行策から自身上がりが34.3秒。
過去のダービー好走パターンである『上がり35.0秒前後』からはだいぶ遠い数字だが、問題は自身上がりだけではない。
[前半５Ｆ、後半４Ｆ推移]
96年 61.1 → 12.1−11.9−11.6−11.5 （35.0）
98年 62.8 → 12.4−11.8−12.3−12.0 （36.1）
99年 61.2 → 12.1−11.6−12.1−12.1 （35.8）
01年 60.4 → 12.5−11.7−11.7−11.6 （35.0）
03年 61.7 → 12.4−11.8−11.8−11.9 （35.5）
04年 60.3 → 12.5−11.8−11.7−11.7 （35.2）
06年 60.0 → 12.5−11.9−11.3−11.7 （34.9）
07年 61.7 → 12.1−11.3−11.4−12.3 （35.0）
08年 60.8 → 12.1−12.1−11.8−12.0 （35.9）
09年 61.7 → 12.2−11.8−11.1−12.1 （35.0）
11年 60.2 → 12.0−11.3−11.8−12.3 （35.4）
13年 62.2 → 12.2−11.7−10.9−11.9 （34.5）
上記は、ダービー好走馬を輩出した年のきさらぎ賞で刻まれた、前半５ハロン通過ラップと後半４ハロンを振り返ったもの。
これを見ても分かる通り、すべて例外なくレース上がりが34.9秒以上かかっているのである。
前半５ハロンを１分以上のゆったりしたペースで折り返しながらも、後半はそれなりに持久力を要求するのが例年のきさらぎ賞。
前半で折り合いが試され、後半でスタミナが問われるレースだからこそ、長距離のダービーに直結してきた。
34.2秒、33.2秒という高速上がりで馬券圏内まで追い込んだドリームパスポートやオルフェーヴルも、そういうタフなレースを差してきたことに価値があったのだ。
しかしながら、今年のきさらぎ賞は前半５ハロン通過が62.2秒、レース上がりは34.5秒と例年に比べてラスト４ハロンが軽い質感であった。
これまで一度も刻まれたことがなかった10秒台のラップがラスト２ハロンで計時されている点からも、それは明らかであろう。
ダービーと関連深いレースとは言え、きさらぎ賞というだけで短絡的に今年も直結すると考えるのは軽率である。
■京都新聞杯を分析する
[前半５Ｆ、後半５Ｆ推移]
04年 59.7 → 12.9−12.0−11.6−11.2−11.7
05年 60.2 → 12.0−12.0−11.9−11.8−12.6
12年 58.0 → 12.5−11.9−11.3−11.5−12.0
13年 59.2 → 12.6−12.3−12.1−11.8−12.0
[勝ち馬の詳細]
04年 2.11.9 【33.4／１位】 10-10-10-10 ハーツクライ
05年 2.13.0 【35.7／２位】 15-15-14-07 インティライミ
12年 2.10.0 【34.7／２位】 02-02-02-02 トーセンホマレボシ
13年 2.12.3 【34.5／１位】 16-16-15-13 キズナ
過去10年で、京都新聞杯からダービー好走を果たしたのは３頭。
05年のインティライミ以降、長く京都新聞杯組は本番で馬券になっていなかったが、昨年は久しぶりにトーセンホマレボシが気を吐いた。
02年のハーツクライは本番で５番人気２着、インティライミが２番人気２着、トーセンホマレボシが７番人気３着。
京都新聞杯はあくまで別路線であり、これまでは皐月賞やＮＨＫマイルＣを経由してきた主役を引き立てる脇役にすぎなかったのだが、今年はどうやら１番人気に支持されそうな勢いである。
４角13番手という絶望的な位置から、上がり２位に0.7秒差をつける末脚で突き抜けた前走内容は確かに圧巻だった。
キズナが先頭に立ったのは、ゴールまで数十メートルの位置なので、おそらく直線で早めに抜け出した２〜４着馬も、それほど大きくは失速していない。
にも関わらず、これを最後方から直線だけで捉え、さらに並ぶ間もなく１馬身半突き放したということは、キズナ自身は尻上りのラップを刻んでいた可能性が高いだろう。
テンのダッシュ力に乏しく、後方待機を余儀なくされる脚質である上に、コーナーでマクる器用さもないという欠点はあるが、それを補って余りある瞬発力を持っている。
直線の長い東京は間違いなく合うだろうが、問題はどれだけ長く脚を使えるか。
鞍上の武豊騎手は、この馬をディープインパクトに似ていると評しているが、ディープインパクトのようにコーナーでマクっていくことができない分、仕掛けるタイミングは重要なポイントになりそうだ。
■青葉賞を分析する
[前半５Ｆ、後半５Ｆ推移]
03年 59.7 → 12.6−12.6−11.3−11.4−11.8
04年 60.2 → 12.2−12.2−11.3−11.4−11.4
06年 60.4 → 13.0−12.0−11.5−11.6−12.2
11年 63.7 → 12.7−12.2−11.4−11.2−11.8
12年 60.9 → 12.5−12.1−11.6−11.2−12.1
13年 61.9 → 12.3−11.9−11.4−11.6−11.7
[勝ち馬の詳細]
03年 2.26.3 【34.1／２位】 06-05-04-05 ゼンノロブロイ
04年 2.24.1 【33.7／１位】 06-08-08-08 ハイアーゲーム
06年 2.25.3 【35.3／２位】 01-01-01-01 アドマイヤメイン
11年 2.28.8 【33.6／１位】 16-16-16-13 ウインバリアシオン
12年 2.25.7 【34.1／１位】 09-07-09-08 フェノーメノ
13年 2.26.2 【34.0／６位】 04-04-04-04 ヒラボクディープ
リニューアルした03年以降、青葉賞勝ち馬がダービーで馬券になったのは５頭だが、いずれも青葉賞で上がり２位をキープしていた馬だった。
上がり２位だったゼンノロブロイは上がり最速から0.1秒差、アドマイヤメインも最速から0.3秒差をキープしている。
今年の青葉賞馬ヒラボクディープは、上がり最速から0.7秒差のメンバー６位。
過去にダービー好走を果たした青葉賞馬とはタイプが少し異なるようだ。
良馬場で前半５ハロン通過61.9秒は、過去10年で２番目に遅いラップ。
ただし、前半５ハロン通過63.7秒という超スローで折り返した11年も、勝ったウインバリアシオンが本番で好走しているので、ペースが遅かったからと言ってそれが減点材料になるとは限らない。
今年は３〜７ハロン目の５ハロン間が、12.5−12.7−12.6−12.9−12.5まで緩み、中盤までは消耗がほとんどない流れ。
残り５ハロンから満を持してロングスパートに持ち込み、ラスト５ハロン12.3−11.9−11.4−11.6−11.7で逃げ切りを図るアポロソニックを、ゴール前ぎりぎりで差し切った点は高評価に値しよう。
中盤まで流れがゆったりしていたにも関わらず、切れ味勝負にもならないという逃げ馬には絶好の展開。
本来であれば、アポロソニックが楽に逃げ切っていたはずのレースであり、中団以降から差し回った馬はまったく何もできなかった。
■皐月賞を分析する
[勝ちタイム１分58秒台の皐月賞]
02年 12.0−10.9−12.1−12.2−12.0−11.8−11.7−11.7−12.2−11.9
04年 12.1−10.9−12.3−12.2−12.2−12.5−12.0−11.6−11.3−11.5
09年 12.1−10.8−11.9−12.1−12.2−12.1−11.9−11.8−11.7−12.1
13年 12.0−10.6−11.5−11.6−12.3−12.1−12.0−11.9−12.0−12.0
[前後半４Ｆ]
02年 47.2 → 47.5 1.58.5 ノーリーズン
04年 47.5 → 46.4 1.58.6 ダイワメジャー
09年 46.9 → 47.5 1.58.7 アンライバルド
13年 45.7 → 47.9 1.58.0 ロゴタイプ
今年の皐月賞は、従来のレースレコードを実に0.5秒も上回る超高速決着。
１分58秒台で決着した皐月賞は過去に三度あったが、それらと比較してみても今年は前半４ハロンまでの流れが突出して速い。
先行勢が総崩れとなった09年でさえ、４ハロン目には12.1秒までペースダウンしたのに、今年は４ハロン目も11.6秒で駆け抜けている。
馬場差を加味しても明らかなオーバーペースであり、先行集団の一角を形成していたクリノヒマラヤオーやミヤジタイガが、４コーナーを待たずしてズルズルと後退したのも頷けよう。
先頭からシンガリまではかなり縦長だったが、後方待機６頭以外は先団で大きな馬群を形成。
勝ったロゴタイプはこの先団馬群の後ろに位置取り、コディーノやエピファネイアら他の上位人気馬もその近くを追走している。
ロゴタイプが３ハロン目を通過したとき、レース映像の時計は35秒を計時していた（画像１参照）。
逃げたコパノリチャードは、３ハロンを34.1秒で通過していたので、ロゴタイプとその周辺にいた上位人気馬は、逃げ馬より約１秒後方を走っていたことになるわけだ。
同じく、ロゴタイプが５ハロン目を通過したとき、映像の時計は58秒から59秒に変わる直前（画像２参照）。
コパノリチャードの５ハロン通過が58.0秒なので、やはりここでも約１秒遅れで５ハロン目を通過したことになる。
前半３ハロン通過35.1秒、５ハロン通過58.9秒。
正確な時計は分からないが、ロゴタイプが皐月賞で刻んだ自身ラップは、だいたいこんなところだろう。
馬場差は別にして、過去これに近いラップ構成で皐月賞を逃げ切った馬がいた。07年のヴィクトリーだ。
[前後半３−５Ｆ]
35.1−58.8 → 59.2−35.3 ロゴタイプ
35.5−59.4 → 60.5−35.9 ヴィクトリー
刻んだラップは前半も後半もロゴタイプのほうが速いが、前後半の時計差がほとんどない平均ラップである点において両者は酷似している。
ここでヴィクトリーを引き合いに出したのは、ロゴタイプの能力がヴィクトリー並だという意味では勿論ない。
ロゴタイプが皐月賞で刻んだラップは、逃げ馬が逃げ切ったときに刻む効率のいいラップに限りなく近いことを強調するためだ。
前後半３ハロン34.1→35.9秒という超前傾ラップのレースで、ロゴタイプは35.1→35.3秒の平均ラップを刻んでいた。
ロゴタイプが最も効率のいい位置にいたとすれば、必然的にこれより前にいた馬はオーバーペースであり、逆にこれより後ろを追走していた馬にとっては後傾ラップのスローだったことになる。
そして、今年の皐月賞上位３頭が、道中ロゴタイプの近くにいたことは偶然ではあるまい。
[自身５Ｆ通過、上がり]
58.0 → 37.4 【01-01-01-01】 コパノリチャード
58.2 → 39.5 【02-02-02-10】 クリノヒマラヤオー
58.4 → 37.6 【03-03-02-03】 ラブリーデイ
58.4 → 37.3 【03-03-05-08】 ミヤジタイガ
58.6 → 36.6 【05-05-02-02】 クラウンレガーロ
58.7 → 35.8 【05-05-05-05】 コディーノ
58.9 → 35.3 【07-07-08-05】 ロゴタイプ
58.9 → 35.6 【07-07-05-03】 エピファネイア
59.2 → 35.6 【10-10-11-08】 タマモベストプレイ
60.4 → 35.2 【17-17-16-14】 テイエムイナズマ
61.0 → 35.1 【18-18-18-18】 メイケイペガスター
落ち込みのない持続ラップを後ろから差すには、前にいる馬よりも速い脚を長く使わなくてはならず、相当なスピードと持続力が要求されるわけだが、前にいる馬が勝手に止まってくれたのなら話は別だ。
５ハロン通過時点で、ロゴタイプら上位人気勢の前を走っていたのは、コパノリチャード、クリノヒマラヤオー、ラブリーデイ、ミヤジタイガ、クラウンレガーロの５頭。
彼らの自身上がりが、軒並み36.6秒以上かかっていることからも分かるように、５頭はともに残り３ハロンで大きく失速した。
クリノヒマラヤオーやミヤジタイガに至っては、４コーナーを待たずしてズルズルと後退している。
つまり、中団を追走していたロゴタイプは、自ら加速することなく楽に前を捉えることができたわけだ。
これだけのハイペースでありながら、ラスト１ハロンを12.0秒という好ラップでフィニッシュできた背景には、勝負どころでの急加速によるスタミナ消耗を回避できたことが大きい。
そのおかげで、ロゴタイプは道中ほとんど緩急のないラップを刻み続け、結果的に逃げ馬が平均ラップを刻んで逃げ切ったときと同じようなラップ構成で2000メートルを走破することができた。
もし仮に、ロゴタイプがヴィクトりーのラップを刻んでいたとすれば、厳しいのはこれを後方から追いかけなくてはいけない馬たちである。
例えば、４着馬カミノタサハラが加速したのは公式時計が１分13秒を計時したあたりだったが、これは６ハロン通過（１分10秒１）から約３秒後の位置。
これは約５ハロンに渡ってスパートをかけていたことを意味しており、４コーナーで大外を回したことも含めて、最後の最後に脚色が劣勢になってしまったのも当然と言えよう。
また、中団に待機していた上位陣の中で、エピファネイアだけは自ら動いて前を捕まえに行っていた。
もうワンテンポ仕掛けを遅らせ、前が勝手に失速するのを待っていれば、ロゴタイプと同じく急加速によってスタミナを消耗することはなかったはずだ。
ゴール前でロゴタイプに半馬身屈したのは、自分から動いた分の失速であり、能力の差では決してない。
逆に、中盤まで２頭の前にいたコディーノは、勝負どころで仕掛けを待ちすぎたため、先に抜け出した２頭を差すことができなかった。
奇しくも１〜４番人気が上位を独占したため、いかにも能力差が露呈したレースだったかのように思われているが、実際は位置取りの差が結果を大きく左右するレース。
それでなくとも、今年の皐月賞は従来のレコードを0.5秒も更新したレースでありながら、10着馬までが勝ち馬から1.0秒以内にひしめいた接戦のＧ�気任△襦�
距離が400メートル伸びることで、また舞台が東京に替わることで、いくらでも着順は逆転するだろう。
１分58秒台で決着した皐月賞の連対馬が、ダービーで１頭も馬券になっていない事実も、ロゴタイプにとっては耳障りなデータだ。
■結論
駆け足ではあるが、ざっと前哨戦を分析してきた。
本当はプリンシパルＳやＮＨＫマイルＣも精査したかったのだが、時間の都合でやむを得ず割愛。
重要なステップレースの分析を放棄してまで、なぜ前哨戦でもないきさらぎ賞を真っ先に調べたのか。
それは、ある１頭の馬に対する心情を一度リセットし、ニュートラルな状態にするためである。
皐月賞が終わった段階で、ダービーの本命は決まっていた。
しかし、本命ありきの予想になってしまうと、どうしてもその馬にとって都合のいい解釈しかできなくなってしまう。
冷静にダービーと向き合うために、今年は本命馬の減点材料を知ることからスタートしたわけだ。
過去の歴史が示す通り、きさらぎ賞は皐月賞に匹敵するほどダービーとの関連性が高い。
きさらぎ賞を勝っているというだけで、重い印を打つ価値があると言っても過言ではないだろう。
だからこそ、最初にその頼みの綱である強調材料をバッサリ切り捨て、他に推せる要素がないか模索してきた。
もし、きさらぎ賞勝ちという後押し以外に逆転材料が見つからなければ、他の馬を本命にすることも考えていたのだが、どうやらその必要はなさそうである。
本命は、タマモベストプレイ。
前項で述べた通り、今年の皐月賞は位置取りが勝敗を左右したレース。
ロゴタイプが最も理想的な位置を確保し、なおかつ最も効率的な脚の使い方をしていた。
効率的な脚の使い方というのは、逃げ馬が平均ペースで逃げ切ったときに刻むラップ構成だ。
皐月賞のポイントをまとめると、以下の２点になる。
●ロゴタイプより前にいた馬は、すべて勝手に止まった
●ロゴタイプより後ろにいた馬が、ロゴタイプを差すことは物理的に至難
もちろん、ロゴタイプが楽をしていたという意味ではない。
スタミナの消耗が激しい急加速こそしなかったものの、一貫した持続ラップを最後まで失速することなく刻み続けたのだから、強い競馬だったことは確かだ。
しかし、距離が400メートル伸びたとき、つまり道中で必ずペースの緩急がつく距離になったとき、ロゴタイプと他馬とのパフォーマンスがどれだけ変わってくるか。
[皐月賞上位陣]
１着 1.58.0 【07-07-08-05】 ロゴタイプ
２着 1.58.1 【07-07-05-03】 エピファネイア
３着 1.58.3 【05-05-05-05】 コディーノ
４着 1.58.5 【13-13-09-07】 カミノタサハラ
５着 1.58.5 【10-10-11-08】 タマモベストプレイ
皐月賞上位陣のうち、タマモベストプレイは３コーナー時点で一番後ろの位置。
中盤まではカミノタサハラのほうが後ろだったが、３コーナー手前で外から加速したため、タマモベストプレイは置いていかれる格好となった。
テン２ハロン22.6秒の皐月賞で先行できなかったズブい馬。勝負どころで瞬時に反応し、急加速するような脚は使えない。
持続ラップで押し切ったロゴタイプを捉えられないのは当然であり、むしろこの位置から0.5秒差なら健闘の部類だろう。
[隠れ優駿王道ローテ]
03年 02.16 きさらぎ賞１着 → スプリング１着 → 皐月賞１着 → ダービー１着 ネオユニヴァース
06年 02.12 きさらぎ賞２着 → スプリング１着 → 皐月賞１着 → ダービー１着 メイショウサムソン
06年 02.12 きさらぎ賞１着 → スプリング３着 → 皐月賞２着 → ダービー３着 ドリームパスポート
08年 02.17 きさらぎ賞２着 → スプリング１着 → 皐月賞９着 → ダービー２着 スマイルジャック
11年 02.06 きさらぎ賞３着 → スプリング１着 → 皐月賞１着 → ダービー１着 オルフェーヴル
11年 02.13 共同通信杯４着 → スプリング２着 → 皐月賞11着 → ダービー３着 ベルシャザール
12年 02.12 共同通信杯２着 → スプリング２着 → 皐月賞３着 → ダービー１着 ディープブリランテ
13年 02.03 きさらぎ賞１着 → スプリング２着 → 皐月賞５着 → ダービー？着 タマモベストプレイ
東京競馬場がリニューアルした03年以降、２月重賞→スプリングＳ→皐月賞→ダービーの臨戦過程で、ダービー好走を果たした馬は７頭。
４頭ものダービー馬を輩出したばかりか、スマイルジャックやベルシャザールなど皐月賞大敗から巻き返してきた馬もいる隠れ王道ローテだ。
さらに今年は、スプリングＳ１着馬のロゴタイプが皐月賞を勝ち、３着馬マイネルホウオウがＮＨＫマイルＣを制した。
ならば、今度は２着馬タマモベストプレイが栄冠に輝く番だろう。
何だかんだ言って、新馬戦から一度も乗り替わることなくこの舞台まで駒を進めたのは、内田騎手のレッドレイヴンとこの馬だけ。
距離適性や絶対能力など、上位人気馬に劣る点はいくつもあるが、デビューから培ってきた和田騎手との絆こそがこの馬の最大の武器。
明日は期待をこめて現地で彼らを応援したいと思う。
がんばれ！ タマモベストプレイ！！
◎タマモベストプレイ
単勝
５０００
複勝
１００００
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