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最強(をめざす)ゼミ@WLSコミュの第4回目 二問目

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【演習問題12】
 Xが全く知らない間にXの姉の夫であるAは、自分の会社の債権者からの差押えを回避するために自己所有の土地をXに無断でX所有のものとして登記し、これをX名義でBに売却して譲渡所得を挙げていた。Y税務署長は主として登記簿の記載を資料として、これに買受人Bの補足的調査を加え、さらにXに出頭を求めたが応じなかったので、Xに譲渡所得があるものとして課税処分を行った。この課税処分の効力について論ぜよ。

【解説】
1 行政行為の瑕疵
⑴ 行政は法律の執行機関であるから、行政行為(=処分は法律に適合することが必要である。法律の定める要件に適合しない行政行為は、瑕疵ある行政行為であって、本来、法的効果を生じないはずである。にもかかわらず、伝統的学説は、全ての行政行為を無効とはせずに、民法の無効と取消しとの区別にならって、瑕疵の程度によって、無効と取消し得る行政行為を区別してきた(大浜啓吉・行政法総論158頁以下)。これによれば、瑕疵の種類は次の4種類に分けることができる。
? 自由裁量が認められた行政行為のうち、公益に適合しない行為は不当
? 法律の定める要件に適合しない行政行為は違法
? 法律の定める要件に適合しない度合いがひどくデタラメナ行為は無効
? 行政行為とみるべきものが存在しない場合には不存在

このような区別は、実定法に別段の定めがあるわけではなく、解釈理論によって認められてきたものに過ぎない。注意すべきは、この区別論には二重の機能があるということである。第1は「職権取消し」であって、瑕疵ある行政行為は、行政庁が自らその瑕疵を認め、?の場合には撤回し、??の場合には取消すことができる。第2は「裁判取消し」である。すなわち、瑕疵ある行政為は、法律に基づく行政の原理のもとでは本来許されないのであるから、最終的には裁判所によってその適法性の回復が担保されなければならない。?の自由裁量には原則として当不当の問題があるだけで、違法の問題を生じないので裁判所が介入することはないが、???の瑕疵は裁判所のレビューを受ける。これを制度化しているのが、行政事件訴訟法の定める抗告訴訟である。
 行政事件訴訟法は、取消訴訟中心主義を採用している。すなわち、瑕疵は原則として取消し原因に過ぎないとされ(3条)、出訴期間を制限している(14条)。つまり、行政行為に瑕疵があっても、これを直ちに無効とはせずに法的に一応有効なものとして扱い、その処分によって法律上の利益を害されたものが取消訴訟を提起することにしたのである。これは、瑕疵の判定には専門技術的な判断が必要であるから、専門機関がこれを取消すまでは一応有効として扱い、行政上の法律関係の安定を図ることが重要だと考えたからに他ならない。
 しかし、あまりにデタラメナ処分に対して尊重を強要することはかえって行政法秩序の信頼性を損なうので、これを無効とし、公定力や不可争力はもちろんのこと、いかなる法的効果も生じないものとした。したがって、処分の相手方は処分の無効を前提とする民事訴訟(45条)や当事者訴訟(4条)を提起できる。行政事件訴訟法は、抗告訴訟の一類型として無効等確認訴訟(3条4項)を設け、取消訴訟に適用される出訴期間の制限や不服申し立て前置の制約等をはずすとともに、厳しい原告適格の制約を課している(36条)。
⑵ 行政行為の瑕疵論の行政法学におけるパースペクティブは、以上の通りであるが、本問におけるXは本件売買契約を知らず、且つ譲渡所得がないのであるから、Yの課税処分に瑕疵があることは疑問の余地がない。問題は、この処分が取消し得る処分か、それとも無効な処分かである。

2 無効と取消しの区別の基準
(1)無効の行政行為と取消しうる行政行為をどのように区別するかについては、見解の対立がある。
(a)通説・判例は重大明白説を採ってきた。ここでいう「瑕疵の重大性」とは、法律要件が解釈上重要性を有するという意味である。
 「瑕疵の明白性」には?何についての明白性か、?誰にとっての明白性か、の点で議論がある。?の点は「法解釈の違法の明白性」と「瑕疵の原因となる事実の存在の明白性」があり得るが、力点は後者にあるといえよう。?の点については、最高裁判所のとる処分成立の当初から瑕疵の存在が客観的に外見上明白でなければならぬとする(最判昭和36年3月7日民集15巻3号381頁、行政判例百選?〔第四版〕91号事件)外見上一見明白説と、下級審判決に示された行政庁が具体的場合にその職務の誠実な遂行として当然に要求せられる程度の調査によって判明すべき事実関係に照らせば明らかに誤認と認められるような場合、すなわち少し調査すれば違法性が明らかになるような場合をいう(東京地判昭和36年2月21日行集12巻2号204頁)とする調査義務違反説(=客観的明白説)の二つがある。両者は外見上一見明白説が通常人の眼を基準とする点に相違があり、後者の方が瑕疵の発見能力は高いから当然無効の範囲は拡がることになる。
 かくして、最高裁判所のとる外見上一見明白説は、?重大明白な違法とは、処分要件の認定についてのものであること、?明白性の基準時は処分成立時であること、?明白性の有無の判断は行政庁が怠慢により調査すべき資料を見落としたかどうかに関係ないこと、に要約できる(芝池義一・総論講義159頁参照)。
(b)これに対して、瑕疵が無効であるためには明白性の要件は不要であるとの説がある。一つは、重大説であって、明治憲法の時代と違って行政裁判所が廃止され司法裁判所が行政事件の管轄権を有する現在においては、もはや明白性を要求する理由はないとする(美濃部説)。今一つは、明白性補充要件説であって、明白性が要求されるのは行政の法的安定性、国民の信頼保護の要請がある場合に限られるとする。従って、ここでは明白性の要件をケースに即した利益衡量の結果、補充的に加重する要件と考えることになる(芝池・164頁、塩野・142頁)。

(2)瑕疵の態様については、次のように整理できる。
? 行政行為の主体に関して生ずる場合(主体の瑕疵)
  行政庁がみずから権限に属さない処分をしたような場合がこれである。
? 行政行為の形式に関して生ずる場合(形式的瑕疵)
 運転免許の交付のように書面によることが必要なのに、書面によってなされなかった処分などがこれである。
? 行政行為の内容に関して生ずる場合(内容の瑕疵=実体的瑕疵)
 これには、いくつかの場合があるが、1つは、処分の内容が法律の根拠を欠く場合(法律上不能)である。2つ目には、処分要件が欠如する場合(基礎的事実がないとか、関係者の申請が必要なのにない等)である。3つ目として、処分内容が不明確である場合(土地収用の対象が特定されていない等)がある。
? 処分手続に関して生ずる場合(手続的瑕疵)
 法律の要求する手順を踏んで決定が行われなかった場合がこれに当たる。通知を欠くとか、処分理由の附記がないなど。
本問はいうまでもなく、?の内容に関する瑕疵に該当する。

3 本問の分析
 以上の予備知識をもとに本問を考えてみよう。
(1)Yの課税処分は、本来譲渡所得のある者に対して行われなければならない。Xは土地所有者ではなく譲渡による利益も得ていないのであるから、課税されるいわれはない。従って、本件Yの処分には実体的瑕疵がある。問題はこの瑕疵が違法原因か無効原因かである。現行法は処分に瑕疵があっても、一律にこれを無効とはせず、原則として公定力を認めている。従って、無効であるためには、不可争力(出訴期間)を否定するに足りるほど、当該処分に重大な要件違反がなければならない。課税処分にとって、所得の存在はもっとも根幹的な法律要件であるから、本件の瑕疵は重大なものであるということができよう。
(2)判例は、処分が無効であるためには、重大性に加えて明白性も必要だとしている。しかし、本件類似の事案において、判例は特に明白性を要求しなかった。これは何故であろうか。 思うに、明白性が要求される根拠は、沿革的には明治憲法下の行政国家に由来するものである。すなわち、司法裁判所と行政裁判所が並立する制度の下では、司法裁判所は民事訴訟の先決問題として、行政庁の公権力の行使たる行政処分の適否を判断することができなかった。そこで、処分が無効であるためには明白性が要求されたのである。現憲法のもとでは司法裁判所が行政事件も審査するのであるから、この前提自体がすでにない。重大明白説は、制度的基盤を失っているといえよう。
 そこで、近時、明白性を補充的な加重要件とする説が有力に唱えられている。これは、行政上の法的安定性や国民の信頼保護の要請がある場合にのみ補充的に明白性要件を必要と考える立場である。もっとも、判例はいまだに基本的枠組みとしては、重大明白説を維持していると解されており、補充要件説は判例を内在的に理論化したものといえないこともない。
(3)私は、しかし、法律に基づく行政の原理から考えれば、明白性はもはや無効の要件から外す方が賢明ではないかと考えている、何故ならば、行政は法律の執行機関として「法律適合性の法理」に服さなければならないのであるから、違法な執行は許されず、その違法性が「明白」でなければならない理由はない(「法律に基づく行政の原理」については、大浜啓吉「法律による行政の原理」法学教室275号4頁以下参照)。
 もっとも、法律要件には重要性の高い根幹的なものと重要性の低いマイナーなものがあることは認めなければならない。従って、重要な法律要件に違反した場合には、それが明白でなくても本来「無効」と考えるべきものであろう。しかし、行政処分は多種多様である。法律要件の重大性だけで割り切るのは適当とはいえない場合があり得る。そこで、?行政庁の側の過誤をどう評価するか、?処分の相手方である私人の不利益救済の必要性、?第三者の信頼保護・行政上の法的安定性などの要素を勘案して、違法か無効かを判断すべきである。
 類型的にいえば、第1に、換地処分、公売処分、農地買収処分のように第三者の処分を前提に法律関係が積み重ねられてくるような場合には、一律に無効とするのではなく、??の要素が相当強い場合でなければ、無効にすべきではない。第2に、公務員の懲戒処分、課税処分、差押処分などの単純な二元的関係の場合には、?の要素が低いか又はないので、??の要素が強い場合には無効と考えるべきであろう。
(4)本問では、Xには課税の根幹的要件である所得がない上、Xは本件の事実を全く知らなかったのであるから取消訴訟の提起を期待できないこと、YはAに課税する可能性があるから必ずしも行政処分の目的が決定的に損なわれる訳ではないこと、また徴税行政上格別の支障が生ずるわけでもないことを考えれば、処分を無効と考えるべきであろう。

コメント(1)

次って結局明日でいいのぉ??
何時からかね?

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