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三題話コミュの柘榴石・翡翠・真珠

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クリスマスまで後一月少々となりました。
クリスマスカラーの赤・緑・白を凝り固めた
宝石をお題に挙げて見ます。

コメント(3)

では、とりあえずお目汚しにて。

○●○

 その数珠は、何時も彼の傍らに在った。
伝え聞く所に拠れば、それは彼に遺された
形見を仕立て直したものであるそうだ。誰が
遺したのかは定かには伝わっていない。然し
ながら、主珠の真珠と言い二天珠及び菩薩の
翡翠と言い親珠の柘榴石と言い何れを取って
も遠目からも上品な品である事が判る為、相
当に近しい女性の形見であろうと静かに噂さ
れていた。その所為も有るのだろうか。人品
卑しからぬ人でありながら、彼の周りには浮
いた話の一つ流れなかった。
「随分大切にしているんだね」
「何時かは壊れるものと思うから余計にそ
うなっているのやも知れませんね」
「成る程。しかしさっきの剣幕は尋常じゃ
ない。彼女はただ検分しようとそれを手に取
っただけだろう?」
「彼女は間が悪かったんですよ」
彼の視線に導かれ私は理解する。ああ、彼
女は寿司を摘んだままの手で…。
柘榴石・翡翠・真珠



「わらわに求婚されると申されるか。ならばわらわへの愛の証に、これへ挙げる三種の聖なる石を持ち帰るがよい。三種の石とは、柘榴の化したる柘榴石、天照大神の身に着けし翡翠、万に一粒現れるという紫の真珠の三種じゃ。見事三種をわが前に陳列しえたる暁には、わらわはかの皇子の求婚を受け入れようぞ」
 姫へ求婚に訪れた皇子は、姫から結婚の条件を突きつけられると、一様に顔を曇らせました。姫のおっしゃった三種の石とは、いずれも伝説の中に現れる聖なる宝石ばかりで、実際にこの世に実在するかどうかも、疑わしいものばかりだったからです。
 若い皇子たちの中には、この条件を聞くと、そそくさと立ち去り、姿をくらました者も少なくありませんでした。しかし、伝説の石でも、姫との結婚のためならどうにかして探し出してこようと、若い活力に任せて息巻く皇子も、何人かは残りました。
 結婚を熱望する皇子たちは、早速聖なる石を探すために、各地に散って行きました。
 姫のおっしゃった、「柘榴の化したる柘榴石」とは、ちょうど熟しきった柘榴の実が地面に落ち、その姿を保ったまま地中に埋もれ、数万年の時をかけて、柘榴の色、艶を保ったまま化石となったという、いくつかの偶然が重なり合って初めてできる、奇跡の宝石のことです。ある王子は、柘榴の樹が多く自生している山を探し、たくさんの家来を使って、その山を端から削らしました。しかし、掘れども掘れども、「柘榴の化したる柘榴石」は一向に見つかりません。柘榴石の見つからないことで、頭に血の上った皇子は、さらに激しく家来たちを叱咤します。来る日も来る日も、土を削り、岩を砕くことに嫌気の差した家来たちは、黙って皇子のもとを去って行きました。すると皇子は、法外の報酬を用意して、新たな家来を雇い入れました。大きな山が、一つ、また一つと、姿を消していきました。後には、真っ平らな大地だけが残されました。今の千葉県の辺りに高い山のないのは、この皇子の仕業なのです。
 また、第二の「天照大神の身に着けし翡翠」とは、文字通り、太古の昔、天照大神が日の本の国にご降臨になられた際に首から下げられていたと伝えられる神秘の翡翠のことです。この翡翠は、夜の暗闇の中でも、ぼんやりと緑色の光を内側から放つと言われています。そしてその翡翠は、その後ある地方の有力な王族の手に渡り、その後国王の死去の際、一緒に墓の中に祀られたという言い伝えが残っています。ある皇子は、この聖なる翡翠を探すために、やはりたくさんの家来を従えて、日本に数ある古い古墳を、片っ端から発掘させました。かつては日本の各地に転々と存在していた前方後円墳が、今や日本に約五千基しか残っていないのは、この皇子の働きによるものなのです。
 また、第三の「万に一粒現れるという紫の真珠」とは、一万の真珠の中に一粒あるかないかという、紫色をした神秘の真珠のことです。ある皇子は、四方を岸に囲まれ、たくさんの貝の取れる瀬戸内海に着目し、瀬戸内海全域の漁を権力によって禁止しました。そしてその海域に生息するあらゆる貝を残らず集めさせ、それを船に乗せて陸に運ばせました。陸に届けられた貝は次々に専門の家来たちにより開かれては、捨てられて行きました。今の大阪湾の辺りにある貝塚のうちいくつかは、この皇子の手によるものです。また、現在でも三重県の辺りが真珠の生産で栄えているのも、この皇子の恩恵に預かるところといっても過言ではないでしょう。
 しかし、全国で何人の皇子が額に汗して奮闘しても、なかなか聖なる石を見つけ出すことはできませんでした。
 姫が皇子たちに条件を出してから、二年の歳月が流れたころです。姫の前に、恰幅のよい、歳は三十をいくらか過ぎたと思われる、顎に髭を蓄えた一人の商品風の皇子が、涼しい顔で姫の前に現れました。
 畳に両手の拳をつき、恭しく姫へ挨拶を済ませたその皇子は、余裕のある笑みを浮かべながら、姫にこう言いました。
「姫のご所望とあらせられる三種の聖なる石を、このたびこれへ持参致しました」
「本当か」
 姫は、目を丸くして驚きました。
「いかにも」
 答えながら、皇子は携えてきた三つの木箱を、順々に姫の前で開けて行きます。
 中には、正しく姫のおっしゃった三種類の宝石が、まっしろな綿にくるまれて、まばゆい輝きを放っています。
 姫は近習に命じて三つの木箱をご自身のそば近くにもってこさせると、それぞれの石を顔に近づけて、まじまじとお眺めになりました。
 そして、まさに魂が消えたようなお顔をなされて、
「これは、おどろいた。これらはまさしく、わらわの仰せたるかの三種の石に相違ない」
 とつぶやかれるようにおっしゃました。
 しかし、姫が不思議に思われるのは、言い伝えの中にしか存在しないかと思われるような聖なる石を集めて来たにしては、目の前にいる皇子の風情から、その労苦がまったく感じられないことでした。
 他の皇子たちが、各地で血眼になって、必死の思いで石を探している姿とは、あまりにも対照的なのです。
「そなたはどのように、これらの石を集められたか」
 皇子は、その問いかけを姫から受けると、胸を張って答えました。
「はい。わたくしは、財の力を使いました。日本は言うに及ばず、唐の国や南蛮の国、唐の国よりさらに西方に位置する国々の商人たちに、かようなる石を所有している者がおらぬか、徹底的に調べ上げました。すると、石を所有している商人を、難なく探し出すことに成功致しました。わたくしはその商人と交渉を行い、相当の財とその石とを交換致しました。わたくしのごとき財を有する者にとりましては、かようなる石の三つ四つを集めることなど、訳もないことにございりまする」
 姫は、驚嘆しました。もともと、姫はあるご事情から、いかなる皇子とも結婚をなされないおつもりでいらっしゃいました。そのために、あのような無理難題を求婚に来た皇子たちに押し付けて、結局ご自身はどなたとも結婚なされないおつもりでいらっしゃったのです。
 ですのに、現実に、このようにいとも簡単に、それほどの苦労もせずに、富の力だけによって、姫の無謀とも思える注文を叶えてしまった皇子が現れたのです。
 約束は、約束です。姫は、この皇子との結婚を受け入れられました。
 めでたく、皇子は姫との結婚を果たされたのです。
 さて、この知らせを受けた、各地の皇子たちの落胆ぶりは、いかばかりであったことでしょう。
 他の皇子に、姫を奪われた、その精神的な痛苦ばかりであれば、まだ皇子たちは救われたのかもしれません。
 しかし、皇子たちを襲った心労は、そればかりにとどまりませんでした。
 新たな国王のもとで整備された法律により、山を削った皇子には、「器物損壊」という、古墳を掘った皇子には、「不法侵入、窃盗」という、また、貝を集めた皇子には、「独占禁止法違反」という、それぞれに重い罰則が科せられたのです。
 このような罪に問われ、島流しにされた多くの皇子たちは、今の新潟県佐渡島にその身を交流され、亡くなるまで金の採掘に献身されたそうです。
 集められた金はすべて国王のもとに届けられ、国王は労せずして、さらなる財を積み上げてお行きになられた、とのことでございます。
 いつの世にも、財の力は、恐ろしゅうものにござりまする。

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