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書庫 「葉っぱ猫」 mixi処コミュの『ラフメイカー ~ 笑顔は君への贈り物/下』

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  −4−

「痛っ……事故った!?」

 やっちまった。というのが俺が意識を取り戻して最初に浮かんだ言葉だった。

 同時に後ろに乗っていた少女の安否。相乗りする人間の安全は運転する人間の責任だ、俺は自分の状態チェックよりも先にラフメイカーの落ちた場所を探そうとして、固まった。

「どこだよ……ここ」

 視界に広がる景色は夜、という話ではない。前後左右に留まらず、上下に至るまで、漆を塗りたくったような黒に染まり、所々に、星のような微かな白が混じっている。

 新月の晩でもこんな風にはならない。

 何故ならどこかしこに明かりがあるからだが、この場所に人工/自然関係なく明かり自体が存在していなかった。

「ここは、ゆーご君の心の中だよ」

 深い闇の中、正面に"ふわっと"現れたラフメイカーがそう告げてくる。

 バイクに乗っていた時のジャケットもヘルメットも今はなく、最初に見た白い姿で。

 俺はその光景に躊躇いながらも、彼女の言葉がおそらく正しい事を感じ取った。

 まるで夢を見ているような、しかし意識はしっかりしていて自分もこの場にしっかりと立っている。

 何で立ててるんだ? 俺は下を向くが地面を踏んでいるはずなのにそこは透明で、不思議というよりは不気味な感覚。

「部屋の中にいるより健全、とは言えないけど、いいかな」

「何がだよ」

「ここはゆーご君の世界で、ゆーご君の今の心が現在進行形で映し出される。とりあえず、そこから歩いていこうよ」

 ラフメイカーの指差す先には、見えないが感じられる、下へ向かう螺旋階段の入口。

「いや、待て。その前にお前、怪我は……俺は事故って」

「怪我はしてないよ? ここは夢の世界だから、怪我をしてても気付かないけどね」

「気付かないなら怪我してるかも、じゃないのか」

 まず夢の世界って。ならなんでお前がここにいるんだと突っ込みたい気分にもなるが、先に階段を降り始めたラフメイカーに俺は声をかけ損ねてしまう。

「ぼくはラフメイカー。なくした心の鍵を一緒に探すもの、怪我なんてしようがないよ」

 何かを呟いたらしいラフメイカーに追いつくが、俺はその言葉を聞き逃してしまった。

 とはいえ聞き返すのもアレだな。俺は黙ってラフメイカーの横に並んで階段を降りていく。

「今ぼくとゆーご君が降りてるのは"記憶の階段"なんだ」

 聞いてもないのに説明を始めるラフメイカー。

 俺は何も考えておらず、ただ横に並んで歩いていただけだったからか特に突っ込むでもなく自然とその言葉が耳に入ってきた。

「記憶の階段?」

「基本的に記憶を目に見えるようにすると大きな縦穴なんだよ。広さや深さは人それぞれで蓄えられる量も違うけど、基本的には。一番上の階層は現在の記憶、生まれた時の記憶。そこらへんまで普通は自力では辿り着けないんだけどね」

 すらすらと説明するラフメイカーに俺は、これが本当に夢なのかどうか疑問を抱いた。

 いや、夢でない事は大体受け入れたつもりだったが中々それが出来ていないらしい。

「なんでそんな事知ってんの?」

「神様だから?」

「ふざけんな」


 −5−

 どこまで降りるのか。

 体感にして数十分は降り続けたようなそんな感覚の中、 まだまだ下りの螺旋は続いていたがようやくラフメイカーが足を止めた。

「記憶って触れるだけで、近くにあるものに触れるだけでも勝手に思い出しちゃうものだから、場所を選ぶのは大変なんだけど、とりあえずこれ」

 笑顔で指差した先に浮かび上がってくるのは、

「クッキーの生まれた瞬間……か?」

 今は亡き愛猫がその親猫から産み落とされ、綺麗に舐められている光景。

 すっかり忘れていたが、俺はその場面に立ち会っていた。

 今から13年ほど前のことだから、俺がまだ4才の頃の思い出だろう、自分ではいつの間にか忘れていて、ただそこに居て当たり前だと思っていたクッキー誕生の瞬間。

「この場面の時にゆーご君は部屋に入ってきたみたい、お母さんに呼ばれたのかな」

「……さぁな。つかなんでこれを」

「ほら、いいから存分に眺めたまえ?」

 椅子に座るように腰を降ろした。

 螺旋階段からはずれた訳ではない。ただ見えないから立ち止まれば平面に感じるだけで後ろには上りの螺旋が、前には下への螺旋がある。

 その段差に腰掛けただけなのだろうが、俺はやや怖いので立ったまま。

 口では疑問をぶつけようとしているのに俺の目は、目の前に鮮明に映し出されるクッキーの生まれたての姿から離せなかった。

 ◇ ◆

「今度は上がっていくのか」

 次は螺旋ではなく、直線の昇り階段だった。

 あの状態からどう移動したのかは正直、全くわからなかった。ただ俺は目の前を歩くラフメイカーを追いかけるようにして、気付けば真っ直ぐに階段を登っていた。

 上がろう、と考えれば見えないにも関わらず一歩一歩を確実に踏みしめる事ができ、踏み外す事も予想している位置とずれる事もない。不気味な感覚だったが、いい加減慣れてきた。

「なんで直線?」

「記憶にはそれぞれ保管されている位置があるんだよ。ゆーご君には全てが見えたら酷い事になるから自己制限がかかってるだけで、ぼくには目指す記憶の位置がわかるから」


「なるほど」

 ん? ちょっと待て、という事は俺の記憶は目の前の少女には丸見えだという事か。

 途端に見られては気まずい様々な、そう様々な記憶が蘇ってきて、しかも場所が場所。例えば遠くに小さく映し出されたり、斜め後ろに映し出されたり、

「うわちょっと待てこれは」

 真正面に映し出されたりもする。思い出すとこうなるのか、なるほど。妙に冷静な自分とテンパる自分が混ざって俺は訳がわからなくなってくる。

「目指してるもの以外は見ようとしない限り見えないから大丈夫だよ?」

「フォローかそれ。実は見えてんじゃないのか」

「見てもいいなら見るよ?」

「俺が悪かったすみません」

 そんな馬鹿な会話をしている間に、どうやら次の目的地に辿り着いたらしい。

 俺はラフメイカーの見上げる場所を意識して注目する。

 次に映し出されたのは、

「あぁ……台風の日か。これは覚えてる」

 あれは俺が8才の頃だ。いつも脱走しては俺を困らせていたクッキーはその日も脱走して、俺は台風の中探しにいって、見つからず。

「しかも戻ったらびっしょびしょになりながら、玄関で母さんに拭かれてる最中で、俺は泣きながら恨んだっけかな。その後で安心した……って何言わせんだよ!」

「ほら、ぼくよりも思い出見ないと。忘れてる部分があるかも」

 きっと光を当てられたら顔が赤くなっているだろう。馬鹿なことを口走ったと後悔しつつ俺は、部屋に戻って泣いていた自分を客観的に見る。

 あの時は酷い酷いって思ってたっけか……と、映像の中、部屋にクッキーが入ってくるのを俺は(こんな事あったっけ?)眺め続ける。

 拗ねてクッキーの方を見ようともしない俺の腰に擦り寄り、そのまま寝転がるクッキー。

 鳴くでもなく何かをするでもなく、ただくっついてくるクッキーの姿に、俺は自分の腰に触れていたクッキーの暖かさを"思い出していた"。

「本当に鮮明な記憶は、その時のことを全て思い出させてくれる。匂いも、音も、感じた事も。あまり自分でそこまで思い出そうとしないから、思い出せないだけなんだよ」

 これってちょっと哲学的かも。

 照れて笑うラフメイカーにそれはどうなんだと物理的に突っ込みながら、俺はその映像が繰り返される様からしばらく目が離せなかった。


  −6−

「おい、ちょっと待て」

 一体どれぐらいの時間が経ったのか、時計も外的要素もないこの場所ではわからなかったが、きっともう何時間も経っているんだろう。

 記憶巡りは思ったよりも悪くはない。

 しかし、時間をかければかけるほど、冷静になる自分と先導するラフメイカーに対して疑問が沸き上がる自分が大きくなっていった。

「次の記憶までもうすぐだけど、疲れた?」

「疲れてはない。けどまぁ、ちょっと待て。なんていうか、理不尽だ」

 唐突な俺の言葉に不思議そうな表情を作るラフメイカー。

「俺の記憶ばっか見てるけど、お前のはどうなんだよ。記憶を見せろとまでは言わないが、笑顔の理由ってなんなのか、教えろよ」

「やです」

「……おい」

「本当はまだもう少しだけ待ってほしいかも? でも少しなら」

 こほん。

 軽く咳払いをしてラフメイカーが向き直り、正面から見据えてくる。

「ぼくの"生きがい"なんだよ、人に笑顔を届ける事が、笑顔にする事がぼくの"生きがい"。でも、ぼくがそうなったのは過去の積み重ねがあるからで、それを話してしまうと今度はぼくの荷物を君に背負わせる事になる。わかる?」

「まぁ、わかる。だけどなんで生きがいなんだよ? 価値観は人それぞれかもしれないが」

 そして、価値観うんぬんになると口も出せないし聞かされても萎えるが。

 ラフメイカーは少し悩んだ素振りを見せた後、口を開いた。

「うーんと、昔々、ぼくがまだ幼かった頃──」

「今も幼いだろ」

「外見はいいの! 精神的にもっと幼かった頃──」

「それも幼い気が」

「もう話さない」

 膨れるラフメイカー。

 うわすまん言い過ぎたと謝る俺に、珍しく笑顔ではない、"じろり"と擬音のつきそうな視線を向けてきて沈黙。

「──幼かった頃、大事な人を亡くして。その人はぼくにとって世界の全てだったんだけど、世界中の全ての人を、国を、生命すらも憎んだけど、長い長い時間をかけてこういう考えに至ったんだよ。昔話、終わり」

「省略しすぎだろ」

「ぼくはラフメイカー。それでいいの! それ以上は必要ないの!」

 珍しく強い語気で言われ、それ以上は追及できない。

 結局押しきられ、俺は大幅は端折られた昔話で妥協せざるをえなかった。


  −7−

「高校に入学した日か」

 次に見せられたのは小学校時代、中学三年間を一気に飛ばして春休み直前。俺が第一志望、第二志望を落ちて滑り止めにぎりぎりで合格できた高校の初日だった。

 この頃にはやる気を無くしていて、俺は級友と仲良くなろうとも考えずに入学式が終わって早々に帰宅した。

 今から一年と半年ほど前の話だ。

 玄関に入ると、クッキーが前足を揃えて座っていて、不思議に思ったのを覚えている。

「この時、家に上がろうとした俺を襲ってきたんだよコイツ。初めてやられて焦った」

 そう。靴を脱いで部屋に戻ろうとした俺に対して猫ジャンプに猫キック──引っかいたりはされなかったが、二階に上がろうとする俺の邪魔をするようにして襲われた。

「これには俺も流石に、びっくりして部屋に玄関に鞄放り出して、逃げたんだ。んで仕方なくゲーセンで時間潰して、その後帰ったらいつも通りだったんだよ」

 だからもしかしたら夢だったのかもと思っていたら、やはり現実だったわけか。

「ゲーセン?」

「あぁ、ゲームセンター。って知らないのか、お前。こう、対戦ゲームとかがある場所だよ」

 昔はよく中学の友達と行っていて、高校で一気にばらばらになって、春休み中に何となく遊ばなくなってしまった連中をふと思い出す。

 同時に、その日ゲーセンで高校の同じクラスの奴とたまたま鉢合わせて対戦する事になったりした記憶も蘇ってくる。そいつとは二年になるまでよくつるんで遊んでいた。

「考えたらクッキーが追い出してくれたおかげかもな、そいつと遊ぶようになったのは」

 もしかしてそれに気付かせたくてコイツ……?

 特にこれと言って口を挟んでこないラフメイカーの様子に、俺はふとそんな事を思った。

 ◇ ◆

「ここで最後だよ」

 今度の場所は、これまでと違って様々な階段を上り下りしてようやく辿り着いた。

 なんでこんな複雑なルートなんだよ、と愚痴をこぼす俺にラフメイカーは「そうしないと辿り着けないような記憶なんだよ」とだけ告げてくる。

 そして辿り着いたこの場所に浮かび上がるのは──

「こ、れは」

 今から一週間前。いつものように誰と遊ぶでもなく帰宅した俺はその日、同級生と些細な事で喧嘩をして苛立っていた。

 だからリビングのソファーで転がっていたクッキーを見た時、別に何を思ったわけでもなく掴み上げ、外に追い出した。

「ただ、晴れてるんだから外で遊んでこいよ、って思っただけなんだ」

 俺の動揺を感じ取っているかのように、映像は早くなったり遅くなったり、不安定で。

 ふと気付けばこの空間自体が、黒に浮かぶ白い点もぐらぐらと揺れ始めている。

 映像が進んでいく。

 間を抜いて、夜中──クッキーは戻ってこなかった。俺は気にもしていなかった。

 ちょくちょく遊びに出かけていたし戻らない日もあったが朝には気付くとそこに居た。

 だからその日もそうだと"思いこんでいて"、だから"探しもしなかった"。

 結果──映像に映し出される、朝の玄関。

「クッキーがいた。首をナイフか何かで切り裂かれて、横には、あれが……」

 激しく。赤く。映像が染まっていく。

 黒かった世界にも色が灯る。ただしそれは決して綺麗な色ではなく、黒、黄色、赤、警戒色や攻撃色が世界を覆っていく。

「何かを殺してみたかったので殺しました、ごめんなさい……だと」

 乱れた映像に浮かんでいるのは、ごく普通のメモ切れ。そこに書かれている言葉を一字一句間違うことなく言い放ち、俺は怒りのままに言葉を吐き出す。

「恨みかもしれない、そうじゃないかもしれない。でも書かれていたのは要するに好奇心、だろ。衝動的なもんだろ。人間じゃないからそいつは捕まりもしない、警察だって動かない」

 記憶は辛い事は自然とぼかしていく。それは人が生きる上での防衛本能。しかしこの空間では記憶は決してぼやけない。

 "見てはいけないと思う気持ちが強ければ強いほど、それはより鮮明な映像となっていく"。

「なんでこれを俺に見せた」

「必要だから」

 何が必要だ、お前は俺に笑顔を届けるんじゃないのか。

 怒りから世界はより赤く、形さえ歪に狂わせていく中で、ラフメイカーは静かに言った。

「見せかけだけの笑顔でよければいくらでも届けれた。でもぼくはそれでよしとしない。おどけて見せて、あるいは癒して笑わせて、目を逸らせることはできてもそれじゃぼくは嫌だ」



「何故ならぼくはラフメイカー。笑いだけではなく、心に平穏を届けたい」



「だから、まずは見て。今の、君の心を。赤く血を流しながら、それでも何かを攻撃しようと荒れ、狂っているこの世界を。ぼくじゃない、この世界を眺めてみて」

 ただ見てと言われても怒りに染まった俺は聞けなかっただろう。だが、ラフメイカーの言葉に俺はこの世界に目を向ける。

 どす黒い赤と黄色が混ざり合って、吐き気を感じるような世界に変わってしまっていた。

 それだけじゃない、遠くに見える様々な記憶が、その色に"喰われていた"。

「心が壊れるっていうのは、そういう事。過去の楽しい記憶も哀しい記憶も、全てが自分の憎しみや苦しみに覆われ、いつか忘れてしまう」

「俺は、忘れていってんのか」

「誰でも忘れるし、それが普通。でも、憎しみと苦しみに喰われ続ければ"記憶そのものを忘れてしまう事になる"。今しか見えなくなって、苦しみしか見えなくなって、壊れる」

「俺もそうなってる?」

「まだ大丈夫。だってぼくが居る。ぼくがクッキーに頼まれて来たって言ったら信じる?」

 思わず俺はラフメイカーの目を見、真剣な輝きの宿っている瞳に、目を逸らす。

「さぁな」

 俺はどうすればいい?

「誰でも生き物は死ぬし、生きてる人間は現実を受け止めて生きなければならない」



「けど、それは違うんだ」



 自分よりも小さく、しかし言葉に込められた意思の強さに俺は逸らした目を無理やりに戻す。

「生きるとか死ぬとかじゃない。今、生きてるか死んでいるとかは関係ないんだよ。君の大切な相手の、生死は関係ない。生きているクッキーが、とか、死んだクッキーは、とかじゃなくて」

 わかるかな……呟くラフメイカー。

「そんな前置きはいらなくて……。その相手自身が何を望んでいたか。"それを考えながら自分をしっかり保つ事"つまり生きるのが、大事。生きるのは二の次でも構わないんだよ、考え方としては、だけど」

 俺は答えない。答えられないしわからない。

「居なくなった事は哀しくて辛くて、でもそれは極論、君には関係ない」

「……んな事ないだろ」

「うん、それは割りきった考え方。それでも関わっていたいのが普通で、けどそれなら、せめて……居ても、居なくても。自分が関わっていたいと思う相手が君について悲しむことだけは、やめてあげてほしい」

 世界の彩りが様々な色へと変わっては流れていく。俺自身の混乱そのもの。

「見えなくなってもそこに居るから、君を心配してるから、笑顔でいさせてあげてほしい。そしてゆーご君自身が、笑顔でいてほしい。これは、ぼくの望みです」

 ふと力を抜いて、俺は後ろを、上を、周囲に散らばった記憶を眺める。

「殺されたんだ。俺の、殺した人間に対する憎しみは変わらないぞ」

「それでもいいと思う。ただ、憎む事だけに全てを捧げないでほしいかも。放っといても立ち直る時は立ち直る、でもぼくはラフメイカー。見過ごせないんだ」

「……そうかよ」

 あまりにも真剣。ここが夢のような空間だという事も忘れて俺は急に可笑しくなってきた。

 今まで一度も出会わなかった、さっき初めて話した相手にここまで真剣になれる、というその行為が、馬鹿らしいのではなく、眩しくて、凄すぎて。

 俺は思わず、笑ってしまった。


  −8−

 目を覚ますと、真新しい白い天井が見えた。

 部屋には誰もおらず、薄いのか頭側の壁向こうから看護士の声が漏れ出している。

 頭には包帯が巻かれやや小さな頭痛。今やそちらの方が夢ではなかったのかと思えるような事故の外的証明に、俺はふう、とため息を漏らした。

 ふと窓際を見れば、丸椅子の上に置かれた予備のヘルメットに一着の古いジャケット。

 最後の最後、意識が落ちる直前に言われた言葉が鮮明に頭に蘇ってくる。



「どうか笑ってください。こんなぼくでも笑顔になれる、だから笑ってください」



 俺は枕に頭を預けて、笑みを浮かべる。

「あぁ、……忘れねーよ、ラフメイカー」

 窓の外では雪が舞う。俺は静かに目を閉じた。

 サンキュ、ラフメイカー。


 終。

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