【NUDE】 アンディー・ラティマー氏がなぜ日本の帰還兵に興味を持ったかについては、インタビューなど読んだことがないのでその経緯は知りません。でも「個と社会」(色々な解釈はできるでしょう)をテーマとした本作はコンセプトアルバムとするに相応しい内容だと思います。「SNOW GOOSE」のようなFANTASY系とは異なり、前世紀期後半に発表された社会的(文学的)なCAMELの何枚かのコンセプト・アルバムなどはプログレという領域に多いことは興味深いことです。ぼくのACCEPT(JP)作品でもMOBIUS(2009)、TAIJI(2012)、 UNDER THE 23rd(2015)そして今年リリースしたDREAM OF TREE、新しいものほど社会的メッセージが濃いコンセプト・アルバムとなってきています。 音楽作品に政治的な内容は取り込むことへは様々な意見があるところでしょう。単純にI'M NOT ABEなどと歌ってしまうのではなく、僕らが生きるこの世界を考える表現として、ARTがPOLITICSに言及していくことは僕は全く正当なことと考えています。ただし、作品がARTとしてとどまれる要素は「表現方法・芸術性・文学性」の有無だと思います。ぼく自身がそこまで達しているとは思っていませんが、このEMBRACEというアルバムの一曲目も、モチーフとしては戦争孤児(一昨年、当事者が歴史を残すために勇気を持って執筆や講演活動をされました)のことが着想点です。WARとかCHILDRENとかそれを示唆する単語は使っていますが、極力固有名詞は避け、内容を抽象化し、普遍的なテーマを織込むことで、「単なる反社会的な曲」とはしていないつもりです。 プログレというジャンルはそういうややこしいことを考えている創作を包括できる(あるいはそういう創作家が音楽を作るとプログレになるのか?)フィールドかと考えてきました。