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わいがやクライマーズコミュの★いま、労働安全衛生マネジメントシステムは、なぜ必要なのか

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★いま、労働安全衛生マネジメントシステムは、なぜ必要なのか
この問題について、再度整理してみました。

現在、わが国の労働災害は減少を続け、死亡災害は1500人を下回るまでになった。しかし、減少の割合は鈍化し度数率は微増傾向にある。また、大手企業による重大災害の続発も特筆すべきことである。そして労災保険新規受給者数は年間55万人にもなり経済的損失も大きい。更なる労働災害の減少を図るために、労働安全マネジメントシステム(OHSMS)の普及を推が推し進められている。
一方、今までの安全管理手法に加え、なぜ新たな手法が必要か分からずに導入しているところもある。このことを明確にしないとISOを導入した時のように疲弊するのではないだろうか。

ISOが企業経営に取り入れられ、その一連の流れで労働安全衛生においてもマネジメントシステムを導入すべきという流れになっている。特にEUでは従来型の法律だけでは社会の変化と技術革新に対応していけないという観点から、企業の自主的管理を主体にする体系にかわりつつある。日本では、EUの流れを受けてそれに乗り遅れまいとして取り入れた感じがする。
しかし、受け入れる現場側は、またISOの再来かという雰囲気で、あまり乗り気でないのが現状である。ISOとの違いが明確に理解されていない。現場にとっては、もうこれ以上余計な仕事をしたくないというのが本音のようだ。

まず、労働安全における現状の問題点を洗い出し、その改善策としてOHSMSが効果的な方法かどうか検討する必要がある。


1.暗黙知の継承の断絶
 団塊世代の大量退職と企業のリストラの進行で、安全知識の豊富な熟練者の暗黙知(ノウハウ)を若年労働者にうまく継承できない傾向にある。また、急速に進む人口の減少傾向は、ますます安全管理に熟知した人材の確保が困難になる。将来、就労人口減少の解決策として、外国人労働者の活用が考えられるが、これまで蓄積してきた安全ノウハウが断絶するおそれもある。
一方で、若者の気質の変化が顕在化しており、今までの方法では上手く育成することができない。その特徴として物事を相対的に見ることができず、マニュアルがあれば状況が変化しているにもかかわらず、元のマニュアルに固執し、臨機応変に現実に対処できない者が見受けられる。
いわゆる幼児性といわれるもので、自分の狭い世界での経験が世界の全てだと思い込み、物事を相対的に見ることができず、自分が見ているものだけに執着する。したがって何か現場で不具合があっても、それを今まで蓄積してきた経験と知識で解決していく能力が落ちていて、応用が利かない。
また、このような気質の人間は組織の中でコミュニケーションがうまく取れない。このような状況において、フォローアップにまで手が回らないことも問題である。

2.安全文化が未醸成 
安全文化が育っていないことが問題である。
第一に、安全が建前になっている。どこの現場でも「安全第一」や「安全はすべてに優先する」というスローガンを掲げていが、実質的には作業効率や利益を優先するケースが多いのではないか。本質安全を追求すると確かに余分な費用がかかるので、金のかからない方法が優先されるのは分かる。しかし、現実的な範囲であれば多少の金をかけて安全を確保しなければならない。
また、外資ファンドが企業の経営権を握り、米国流の株主を優先する経営手法が日本の経済に影響を与え、即効効果のない間接部門に費用をかけるよりも、直ぐに利益が出る部門に力を入れるようになる。次第に安全が建前になり経営者の安全意識は低いものになる。
第二に、精神論を優先する国民性がある。日本人は昔から己の肉体と精神を鍛えて競争相手と戦ってきた。私たちも体育を通して根性を鍛える学校教育を受けてきた。試合等でうまくいかなかったら、理論的に何が悪かったとかいう分かりやすい説明はなく、「最初から根性を鍛え直す」など怒鳴られたものである。その流れが、安全活動にも現れている。労働災害が起こった後の再発防止対策に、「〇〇に注意する」というような労働者の注意に依存する安全対策が多い。また、「足元に注意する」という言葉を良く聞くが、注意しなくても良いような安全通路をなぜ整備できないのか。本質安全を図ることより、労働者の注意に依存する傾向が伺える。JR西日本の尼崎での事故はその典型であろう。
第三に、経営者や技術者の倫理観の欠如があげられる。最近、マンションの耐震設計の偽装、ゼネコンによる労災かくし、電力会社の安全にかかわる重要事項の隠蔽、食品会社による使用材料や賞味期限の偽装等、国民の安全にかかわる不祥事の多発している。安全第一であるべき企業や技術者が平気で偽装や隠蔽工作をするようになっている。最初は小さな逸脱行為であったものが、これぐらいなら大丈夫という感覚が次第に増幅していったのであろう。
バブル経済を経験した後、社会全体の安全に対する意識が低くなったように思われる。利益や工程、品質優先がまかり通り、見せ掛けの安全であって本気でそのように考えていない。安全文化が育っていないということであろう。倫理観を持ち備えていない者が安全活動をすることが間違いである。

3.人と組織のかかわりに問題が潜在化
労働環境への影響が労働者の心の病となって現れてきている。社会の仕組そのものが、このような病気を生む要因になってきているが、それを法律でカバーするには無理がある。
就労人口の減少や、経済のグローバル化による市場原理主義的な低価格競争は、組織の縮小や人員削減を進めて作業効率や労働生産性の向上を追及し、その結果、一人当たりの労働負荷が増大している。現実に、元請職員が書類作成のため事務所でパソコンに向かっている時間が多く、現場に出る時間が少なくなっている。当然、職員は長時間労働に陥り、組織はギクシャクとしたものになり、精神的なストレスから精神疾患を発症する者が増えている。このような状況では、上司と部下が現場の安全について具体的な話をする機会が極めて少なく、暗黙知(ノウハウ)の継承ができない。
また、自殺者が増えていることも深刻な問題である。なんら規制が無い市場原理主義では、人間も単なる高等知能を備えた機械であり消耗品として扱われるようになる。そしてその企業もいずれは消滅していく。明治時代の労働者とは違った形で、現代では精神面での人間性の軽視が見受けられる。

4.高齢化による労働災害の増加
雇用労働者全体のうち50歳以上の高齢労働者の占める割合は、平成17年には3人に1人の割合になっている。この結果、50歳以上の高齢労働者が休業4日以上の死傷者全体に占める割合は、42.8%になっている。今後、高齢化の進展がさらに急速に進み、労働災害が増加に転ずることも考慮に入れなければならない

5.後追いの安全での現状との乖離
 これまでは、大きな災害が起きるたびに法令が改正され、法令を守ることによって安全を確保する方法がとられてきた。しかし、このような方法では社会の急激な変化に追随できなくなっている。
主なものとして
1)コンピュータを屈指した機械の使用、バイオテクノロジーやナノテクノロジーなど新たな技術の導入による技術革新が進むが、技術革新のスピードに対して安全対策が法令で対応できない。
2)労働安全衛生法は、建設業や製造業など第二次産業を主体に構成されている。しかし、現在では第三次産業の割合が増加し、産業構造の変化にうまく対応できない面がある。
3)建設業では、請負形態の重層下請構造が進み、法でいう100人以上の労働者を使用する現場はもはや国内にはない。直接労働者を雇用していた時代の話ではないか、これからは事業場を店社という単位で考ないといけない。
4)派遣労働者など非正規従業員の増加で雇用形態が変化している。また、非正規労働者の変形として建築業では一人親方が増加している。請負単価の値下げ要求により下請会社が社員を抱えることができなくなり、雇用保険の費用を削減して労働者に給与相当を手間請けで支払っている。偽装請負に近い。労働者の所得格差が拡大し、労働意欲の低下、労働の質の低下を招いている。このような状況では安全管理の質の向上は望めない。

これらの問題の解決方法として、企業の自主的な安全水準の向上の手法である労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)の導入が進められているが、解決策としてどのように役に立っているのか、どのように運用しなければ効果が出ないのかを考える必要がある。

労働安全衛生マネジメントシステムを運用する上での問題点、課題について意見を下さい。

コメント(11)

「いま、リスクアセスメントがどのような理由で取り入れられるようになったか」という質問が試験にあった。

リスクアセスメントは、労働安全マネジメントシステムの中核をなすもので、厚生労働省も関連する指針も出している。とにかくリスクアセスメントを全面的に推し進めていこうという動きは分かる。

一方、現場ではリスクアセスメントの重要性を理解しているのかどうか疑わしい。
今までの現場の安全管理業務に危険性・有害性の特定表を作ったり、作業手順書に見積り・評価の項目が余分に加わえたりして、ただ仕事が増やされたというぐらいにしか思われていない。
形だけのリスクアセスメントで導入前と導入後に、仕事が増えたという以外に何も変わらないのです。
リスクアセスメントの教育は、なぜ必要かということを理解することにほとんどを割いてもよいぐらい重要であることを痛感します。

それでは、なぜ必要なのか
今のところ、教科書に書いてあるようなことしか思い当たらない。
これまでの労動安全衛生法や基準を守ってさえいればいいという管理では、重大事故が起こった後に法令を改正して基準を上げていくというやり方であるため、近年の技術革新や社会構造の変化に追随していかない。いわば、「後追い型」の安全管理では、更なる労働災害を減少させることができない。
そこで、災害に繋がる危険性・有害性が、現場のどこに潜んでいるかを洗い出し、事前に安全対策を立ていくという「先取り型」の安全管理を旧来の方法と併せて行うことで労働災害を減らしていくという方策を導入したと考えます。

しかし、建設工事は多くの工種があり、限られた要員で一つ一つリスクアセスメントをやっていては時間がいくらあっても足りない。また、「危険性・有害性の見積り」は、判断する者の経験や知識レベル及び社会による許容限界の容認の度合いによって大きく異なり、単純には行かない。
いくら新しいマネジメントシステムを導入しても、最近では基本的なミスを犯すものが増えている傾向でもある。形だけで済まされてしまうのも、この辺に問題があるのでしょう。

労働安全衛生マネジメントシステムやリスクアセスメントを上手く軌道に乗せるためには、まだまだ議論が必要です。問題点をドンドン出して議論をしましょう。
リスクアセスメントは労働安全衛生マネジメントシステムの中核をなすものですが、先取り型の安全というものの、形だけであまり効果が上がっていないように思われます。何が問題なのでしょうか。

1.リスクアセスメントを実施する上での課題
1)店社で実施するリスクアセスメントが、過去の災害事例等をデータベース化しリスクを点数化されたものが多く、目前に始まる具体的な作業のリスクではない。この危険性・有害性の特定表をいきなり現場段階へ導入するところに、現実のリスクとの乖離が生じる。
2)現場経験が乏しく、安全知識の低い職員や職長では、的確な危険性・有害性の洗い出しができない。
3)リスクアセスメントの主旨が理解されておらず、また手順を理解していない場合、リスクアセスメントが表面的、一過性の実施に陥りやすい。したがって刻々変化する現場のリスクの変化に対応できない。
4)これまで安全施工サイクルとして行ってきた危険予知活動にリスクアセスメントをうまく取り込むことができず、顕在化した現場のリスクに対し日々の作業の中で対応できていない場合がある。
5)建設現場は有期事業であり、重層下請構造の混在作業であるため、リスクアセスメントに参加する労働者はその都度場所とメンバーが変わり、ある特定の者だけで実施するリスクアセスメントになりがちです。
6)リスクアセスメントの手法に慣れていないこと及び趣旨を理解していないために、現場担当者の負担と疲労感が大きい。

2.リスクアセスメントの理解不足
職長教育におけるリスクアセスメント教育内容を知らない職員にとって、協力会社を指導することはできない。元請トップができなければ、部下の職員もできない。そして協力会社の職長など、尚更できないと思われます。
法令でいう職長教育におけるリスクアセスメントの内容は以下の通りです。
1)リスクアセスメントの実施手順
2)作業手順書の作成とリスクアセスメント
3)作業員の適正配置(職長・安全衛生責任者の役割とリスクアセスメント
4)危険予知活動とリスクアセスメントの方法
5)機械・設備の具体的改善方法(機械設備の本質安全化とリスクアセスメント
そんなに難しい内容ではないのですが、ISOの二の舞を恐れて深く係わろうとしないのではないでしょうか。
リスクアセスメントをどの時点で実施すれば最も効果が上がるのかが理解されていないように思います。

リスクアセスメントの手順には、5つのステップがあります。
・ステップ1:危険性又は有害性の洗い出し
・ステップ2:危険性又は有害性の見積もり
・ステップ3:危険性又は有害性の評価
・ステップ4:危険性又は有害性の除去・低減対策の検討と実施
・ステップ5:実施内容の記録

製造業では、工場の各ラインについて関係者を集めてこの5ステップで行えばいいことがすんなり分かります。しかし、建設業の場合は店社があり、現場は有期事業であり、重層下請構造の混在作業であるためやや複雑です。
そして、リスクアセスメントがどの時点で重点的に行わなければならないか、意外に理解されていません。 当然、当該作業が行われる直前です。しかし、現実には工事安全衛生管理計画書を作成時に行って、そのままということはないでしょうか。工事計画時に、危険性・有害性の危険性が完璧に洗い出しできるわけありません。

建設業で行われているリスクアセスメントの方法は
?店社で主要工種の危険性・有害性の特定表を作成する
?店社版特定表をもとに、工事安全衛生管理計画書で現場独自の危険性・有害性の特定表を作成し、重点管理項目を決定する。
?工事安全衛生管理計画書で現場独自の危険性・有害性の特定表を協力会社安全衛生責任者に提供し、それを基に作業単位ごとの危険性・有害性を特定し、見積もり、評価及びリスク低減対策を立て、当該作業の作業手順書を作成する。
?当該作業を実施する前に作業手順の周知会を開く。
?当日の朝、作業手順書のリスク評価を参考に危険予知活動を実施する。
 (作業の実施)
?工事終了時、工事反省会を実施し新たな危険性・有害性及びリスク低減対策を店社のデータベースへ反映させる。

現場では?から以降であるが、?から?、?から?への繫がりがあまりない。実際に作業する労働者が危険性とリスク低減対策を理解していないと、いくら立派な工事安全衛生管理計画書を作っても意味がない。一方で、ISOの影響で、完璧なものを求めようとする傾向があり、あまり細かくやっていると時間がいくらあっても足りず、労力が消耗するだけである。
また、手順を分かりやすく簡単できるようにし、どこに重点をおいてやれば最大の効果が上げることができるかが明確になっていないことが問題としてあげられます。

リスクアセスメントをISOのように疲弊せずに普及させるにはどうしたらよいでしょうか。
労働安全衛生マネジメントシステムは成果を上げているのか

その前に、労働安全衛生マネジメントシステムは、労働安全衛生の諸問題の解決として、どのような効果を目的としているのかを明確にする必要がある。
1.暗黙知の継承の断絶に対しては、業務の流れをマニュアル化して誰でも分かるようにすること。災害など経験不足の対策として、主要工種の危険性・有害性と対策のデータベース化があり、リスクアセスメントに利用されている。しかし、応用力に欠けるといったマニュアル化の弊害や経験不足によりデータベースにはない新たな危険性・有害性を洗い出すことができない問題が出ている。

2.安全文化が未醸成である現実に対し、トップの安全衛生方針の表明と労働者の意見を聴き、全員参加によるシステムの運用を、COHSMSガイドラインに謳っている。社長の安全衛生方針の表明はどこの会社でも行われているが、作業所長の安全衛生方針の表明はまだ弱々しい。労働者の意見を聞くというのは、具体的にどうすればよいのか難しいが、コミュニケーションを密にすることだと考える。職員が現場に出る時間が少なくなる傾向にあり、今の現場はコミュニケーションに問題が残る。

3.人と組織の関わりがギクシャクとしたものになりつつあり、職員や労働者に精神的な負担がかかっている。労働安全マネジメントシステムは労働者の健康について配慮することを強調していることが、ISOと明確に違う点である。安全衛生委員会で討議する内容になっているが、うつ病にかかる人は増える一方である。

4.高齢化の問題も、健康と労働災害に係わる大きな問題として、全員が考えていかなければならない。これから先も人口減少や所得減少が続き、現場から高齢者を排除するという考えは成り立たない。自分達でやれる範囲のルールを自主的に作り安全を確保するという自主的管理を有効に使っていく必要があるが、未だに既存の基準に縛られた管理になっている。いわゆる前例主義である。

5.後追い型安全管理から先取り型の安全対策に切り替わっていない。リスクアセスメントが店社の危険性・有害性特定表のデータベース→工事安全衛生管理計画書でのリスクアセスメント→作業手順書でのリスクアセスメント→実際作業をする当日のKYでのリスクアセスメントとして上手く流れていない。したがって形式だけになっていて、本当の意味での安全の先取りになっていないのが現状である。

はっきり言って、建設業ではまだ労働安全衛生マネジメントシステムの効果がさほど上がっていないように思われる。
安全文化が育っていないと、リスクアセスメントは形だけのものになるのではないか。

鉄道事業者は、リスクアセスメントをまだ導入できていない。
2005年4月に死者107人を出したJR宝塚線脱線事故の新安全計画についての提言がまとめられた。それには「リスクアセスメント」の導入などが柱になっている。
なんと、鉄道事業の安全管理へのリスクアセスメントの導入は日本初らしい。
この例でも分かるように、リスクアセスメントはまだ普及していない。

導入の理由は、建設業でもあげられている「過去の事故への対応を主体とする安全対策からの脱却が必要」とし、後追いの安全管理から先取りの安全管理の必要性を説いている。
形だけのリスクアセスメントでは意味がなく、真の意味を理解して普及させるにはかなりの努力が必要と思われる。また、施設の改修や速度基準の変更の際、過去の事故などを参考に危険を事前に数値化し、点数の高い順に対処する方法をとるといっているが、経済性と安全性のトレードオフをどのようにコントロールするか、安全文化が育っていないと経済性を優先するように流れてしまう。

リスクアセスメントを推進するには、組織の安全文化が育っていないと形だけのものになってしまうであろう。したがって、労働安全マネジメントシステムがうまくまわっていないと機能しないと考える。
リスクアセスメントを行わないと罰則があるのか?

労働安全衛生法の第28条の二で、リスクアセスメントが努力義務化されたとなっていて、この条文には罰則規定がありません。
では、リスクアセスメントを実施しなければ、法的に何のお咎めも無いのだろうか。よく法律を読んでみると
 法第10条(総括安全衛生管理者の職務)の五 労働災害を防止するための必要な業務で、厚生労働省令で定めるものとして、安衛則3条の2の二 危険性又は有害性の調査及びその結果に基づき講ずべき措置が規定されている。50万円以下の罰金
 法第11条(安全管理者の業務)法10条各号の業務を行うこと。 50万円以下の罰金
 法第17条(安全委員会)1項 調査審議事項として 三、労働者の危険の防止に関する重要事項として 安衛則第21条 二、危険性又は有害性の調査及びその結果に基づき項ズル措置のうち、安全に係るものに関すること。 50万円以下の罰金
これらを遵守しないとあきらかに罰則が科せられるのは明白である。
しかし、法的にどのような場合に違反となるのか明白に規程できないので罰則規定ははずしているのであろう。 

 しかし、民法上の企業の安全配慮義務が、労働契約法として条文に盛り込まれた。
労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。これまで裁判の判例で判断していたのもが成文化されたものだ。その内容は
?危険予知の義務 :職場における危険、特に働いている人の周りにある危険を予知して発見する。いわゆる「予見可能性」といわれるものである。
?結果回避の義務 :リスクを除去したり、低減させる。残留したリスクに対して作業者にその存在などを示し、日々の活動で危険が顕在化しないように対策を取ること。
これらの具体的な対策は、危険予知活動とリスクアセスメントに他ならない。

 リスクアセスメントは、企業の安全配慮義務を労働安全衛生法に取り込んだものであり、これを実施していないと何らかの法的処分があるのは間違いない。また、民法の企業の安全配慮義務にも抵触し、訴訟上不利になるのは間違いない。
 労働契約法の解説では、企業の労働者に対するリスクアセスメントの説明責任を述べています。これからの訴訟社会を予見したものだろうか。
国が安全管理手法として労働安全マネジメントシステムを導入する一つの理由が以下のことからも分かる。

厚生労働省が平成16年2月17日に発表した「大規模事業場における安全管理に係る自主点検結果について」に現状の労働安全の問題とその分析に基づいて、労働安全マネジメントシステムを国として取り上げた理由が載っている。
自主点検結果は、
1.事業場のトップ自らによる率先した安全管理活動の実施が不十分
2.事業場のトップが、安全管理に必要な人員・経験や経費に不足感
3.下請等の協力会社との安全管理の連携や情報交換が不十分
4.労使が協力して安全問題を調査審議する場である安全委員会の活動が低調である
5.入社後の定期的な現場労働者への再教育や作業マニュアルの見直しが不十分
6.設備・作業の危険性の大きさを評価し、災害を防ぐための措置の実施が低調
この調査は製造業に対して行ったものであるが、建設業にもいえることである。

これに対し、厚生労働省は以下の緊急対策要綱を出している
1.都道府県労働基準局幹部による経営トップに対する安全管理の徹底を指導
2.個別事業場に対する安全管理の重点的監督指導の実施
(1)事業場のトップによる安全確保の宣明
 (2)下請け企業が混在している事業場における親企業と下請け企業との確実な連絡調整
 (3)安全管理者に対する選任時等の教育の充実
 (4)雇い入れ時あるいは作業転換時などの労働者に対する安全教育の充実
 (5)職場の危険個所の特定・評価及びそれに基づく対策の徹底

レポートの解説が、「今後の労働安全衛生対策について」という労働政策審議会安全衛生分科会の報告に述べられている。
リスクアセスメントの必要性に関しては、製造業についてリスクアセスメントを導入している事業場は、導入していない事業場に比べ災害の発生率が低くなっているという結果が得られているとしている。新しい装置を導入する際にリスクアセスメントを行うと効果が上がるであろう。しかし、建設業では常に新しい環境、新たな工程に対して新たな作業員で行わなければならない課題がある。
この後、労働安全衛生法が改正され自主的な安全管理である労働安全マネジメントシステムの導入とリスクアセスメントが法律に取り込まれた。

労働安全マネジメントシステムやリスクアセスメントについては、建設業の特異性を考慮した方法で行わないとうまく導入できないであろう。
労働安全衛生マネジメントシステム及びリスクアセスメントの普及について話しを進めて行きたい。

国の第11次労働災害防止計画の解説に、リスクアセスメントの実施率が20%(平成17年)、労働安全衛生マネジメントシステムの導入率が1000人以上事業場37%、500〜999人23%であり、未だに普及は低調である。 
労働安全マネジメントシステムの普及に経営トップの理解と過去のISOの記憶が妨げとなっているの ではないでしょうか。

これまでやってきたISOのやり方で労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)を実行しようとすると、堅苦しいものになってしまい形だけに終わってしまいそうである。また、建設業では事業場が有期事業であり場所もその都度変わること、事業者が混在する作業であり、かつ重層下請構造が進んでいるとなど製造業とは異なり、建設業の特性を考慮した建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)に準じないと現場は違和感を生じる。

そもそもISOとOHSMSは、出発点が違う。ILOのガイドラインが、ILOを構成する政府、使用者、労働者の三者で策定されている。そこで基本となっているのが
・法的な拘束力を持たず、国の法令や基準に置き換えない
・認証を目的としない
・労働者の参加を本質的な要素とする
・本来の目的は、ディーセントワークであること
※「ディーセントワーク」とは、働く価値のある仕事、適正な仕事、やさしく働ける仕事、良質で生産的な仕事、日本語にぴったりと当てはまる訳がない。
この当たりがISOと馴染まないところがある。

COHSMSはILOのガイドラインに基づいて策定されたOHSMS(厚生労働省の指針)に基づき建設業の特性を考慮して建設業労働災害防止協会が策定している。
ISOとCOHSMSの違いは、建災防の資料によると
     <ISO>     <COHSMS>
主導性 :顧客の要請    ⇔ 事業者の自主性
保証水準:システムの維持 ⇔ 安全衛生水準の向上
品質   :検査重視    ⇔ プロセスでの作り込み
目的   :顧客要請への合致 ⇔ 労働者要求の満足
特徴   :体系的・論理的に構築 ⇔ 改善と実践のシステム
      (プロセス管理)     (プロセス改善)
のようになる。
顧客要求事項ではなく、事業者の自主性で行うなど、明らかにISOとは異なる。管理基準や目標は自分たちで設定すればよいのである。ISO担当者が安全管理も兼務していると、よほど注意して頭の切り替えをしないと活動が形骸化するであろう。

OHSAS18001という規格も存在しているので、ややこしい。認証業務をビジネスにしようという動きからBSIが規格化したもので、国際規格ではない。この動きは別の物として頭の中から除外した方がよいであろう。
といいつつも、労働安全衛生マネジメントシステムも認証を進める動きが出てきた。
国の第11次労働災害防止計画に、公共工事の調達制度の中で、労働安全衛生マネジメントシステムに対する取り組みを評価する制度を発注者に導入を促すとしている。これに対応して建災防も4月よりCOHSMSの認証制度をスタートした。(従来は評価制度) そして、法第88条の免除規程とも整合性を取る制度とするとしている。国もいよいよ認証に走り出すようである。
正しいリスクアセスメントを普及させるには、教育訓練が必要か

人間は情報に左右され易く、正確なリスク評価は難しいと思われる。

「ヒューマン・エラーの科学」(村田厚生著)では分かり易い例を示している。
その中でリスク評価時に起こる認知のバイアスについてふれている。
人間はリスクの認知・評価において以下のような傾向を示す。
 ・リスク忌避的な傾向
 ・ギャンブル的認知バイアス
 ・フレーミング効果
 ・孤立比較効果
 ・後認知バイアス

その中で、フレーミング効果の例として以下のような質問に答える場面がある。
<質問1>
アメリカ政府が、特殊なアジアの病疫を迎え撃つ対策を講じている。この疫病が流行すると600人の死者が予想されている。次の2つの対策のうちどちらを採ればよいか。
 選択肢A:対策aを採ると、200人の生命が助かる。
 選択肢B:対策bを採ると、1/3の確率で600人の生命が助かるが、2/3の確率で1人も助からないかもしれない。
この質問に対する選択行動としては、選択肢Aが選ばれる場合が多く、リスク忌避的な傾向を引き出されている。
<質問2>
アメリカ政府が、特殊なアジアの病疫を迎え撃つ対策を講じている。この疫病が流行すると600人の死者が予想されている。次の2つの対策のうちどちらを採ればよいか。
 選択肢A:対策cを採ると、400人は確実に死ぬ。
 選択肢B:対策dを採ると、1人も死者の出ない確率は1/3の確率であるが、600人の死者が出る確率が2/3ある。
この質問に対する選択行動としては、選択肢Bを選ばれることが多く、ギャンブル的認知バイアスの傾向を引き出されている。
しかし、質問1と質問2は同一の内容であるが問題が表現される方法が異なることにより違う選択肢が導かされるフレーミング効果である。

このように、リスクの評価は表現方法が重要であり、かつリスクの存在を見つける能力が備わっていなければならない。現場においてリスクを見つけ、それを作業員にうまく表現する方法は訓練するしかないであろう。

建設業におけるリスクアセスメントは、まだ普及していない。

最近、ある製造業にリスクアセスメント診断に行ってきた。
製造業の場合、事業場所も労働者も固定していてリスクアセスメントの推進体制を構築し易い。事業場長が安全衛生方針を表明し、目標を設定して、ヒヤリハット活動を活発に行い、安全パトロールを実施していれば、リスクアセスメントの導入は容易である。トップによりスクアセスメントの導入を宣言し、役割分担を明確にすると共に教育を実施していけば継続していけると思われる。

しかし、建設業の場合、そんなに簡単にはいかない。
まず、店社が実施することと、現場が実施することの二つがある。
現場で実施するリスクアセスメントが問題で、施工計画時に元請職員が店社が作った危険性・有害性のデータベースを使って、その現場のリスクの特定をする。その段階では、細かな作業の危険源をすべて洗い出しているとは言えず、大まかな危険性・有害性を特定しただけで、工事全体の重点管理項目と目標設定に使用しているだけである。おまけに、すでにリスク評価されているデータを選択しているだけなので、施工計画段階でリスクの見積りと評価をしているとは言いがたい。
目標設定のツールとしては最も有効な方法であるが........

問題は、実際の作業に対するリスクアセスメントである。製造業の場合は同じ会社の従業員が行うが、建設業の場合、事業者(協力会社)が詳細な作法作業方法を決め労働者に直接指示をする。いわゆる事業者の責任であり、言い換えれば、社員ではなく協力会社が作業手順書を作成して元請けの作業計画書との整合性の確認を取ることになっている。
したがって、社員ではなく協力会社が作業手順書に基づいてリスクアセスメントをしなくてはいけなくなる。協力会社が元請け会社の安全衛生協力会に入っていて、日頃から元請によるリスクアセスメント教育がなされていたら元請・下請一体の体制で実施できる。
しかし、昨今の価格競争の影響で、常に新しい下請会社が参入し、労働者も安全知識の乏しい新規入場者が多数を占めるようになっている。このような状態でリスクアセスメントの実施を叫んでも形骸化するだけである。

対策としては、元請職員がリスクアセスメントを良く理解し、協力会社に教育・指導できるようにしていくしかないのかと思う。今月は、現場で元請職員と安全衛生責任者が同席して、1時間ほどリスクアセスメントの教育をすることにしている。

建設業におけるリスクアセスメントの形骸化に対する何か良いアイデアはないであろうか。
コンサルタント会研修会で厚生労働省委託事業であるリスクアセスメント診断の発表を行った。

対象事業場は、製造業であった。この事業場ではまだリスクアセスメントは導入しておらず、一からの教育指導となった。しかし、独自の安全活動を行っていて下地はできていると判断した。
その独自の安全活動であるが、
一つは、300×運動 :ハインリッヒの法則の300の部分をヒヤリハットでつぶしていこうとする運動で、毎月かなりの量の報告が出ていた。
次に、ベルパトロール :トップ自らがベルを鳴らしながらパトロールするもので、東レの元岐阜工場長である丹羽氏が始められたものを実践していた。

したがって、リスクアセスメントをするための資料が豊富にあることが分かった。演習では危険性または有害性を表現する方法がうまくできず、「〜とき、〜して、〜になる」という表現方法を指導し、原因と結果が明確になるようにすることによって、対策を立て易くするようにした。
しかし、リスク評価はグループによって大きくばらつき、少し混乱が見られたが、ここで指導したことは、リスクアセスメントで重要なことは危険性または有害性をとことん洗い出すことで、リスク評価は経験者を交えることと時間をおいて見直しをかけ現時点でのばらつきはあまり気にしないようにすることを強調した。

製造業に対するリスクアセスメントは、固定場所で同じ人が行うので、時間をかければだんだんと精度がよくなっていく。しかし、建設業の場合はそうはいかず、協力会社の教育が主体になり教育効果も限定的にならざる得ない。

しかし、リスクアセスメントのポイントは何となく判った。
建設業におけるリスクアセスメントの重要ポイントは作業手順書の作成にあると思う。施工計画書段階では作業の細かい所まで危険性または有害性を洗い出すことはできず、重点対策を策定することがメインとなる。また危険予知活動では細かいことをやる時間はない。となると元請けの現場職員はリスク評価を行う機会はなく、協力会社の作業手順書作成時のリスクアセスメントが最も重要になる。

最近感じることは、建設業でのリスクアセスメントが形骸化しないよいうにするため、元請け職員にも職長・安全衛生教育を受けさせ、リスクアセスメントを職長と同じレベルで理解させる必要があることだ。

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