１／４〜１／１０
闇の中へ魂を導き入れ
心の熱を通して
感覚の啓示を予感させるもの、
それはこの冬の暗がりの中での
おのれの力の発現であり
魂の力強い衝動である。
（シュタイナー 高橋 巌訳）
……………
シュタイナーは長い間、ヨーロッパでは異端者扱いされていた。
その理由を今後の思索のためにメモとして整理しておきたい。
シュタイナーが、繰り返し言及した教会会議がある。
869年から東ローマ帝国（ビザンティン帝国）の
首都コンスタンチノープル（現トルコ領イスタンブール）で開催された、
キリスト教の公会議である。
この時の、公会議で、
人間というのは魂と肉体からなる存在であるということが、
キリスト教の教義の中に取り入れられたのである。
「聖書」の福音書を読むと、
あらゆるところに「霊」の存在がでてくるにもかかわらず、
「霊」の存在は、西洋では８６９年コンスタンチノープルにおける公会議で否定されたのである。
それ以前のキリスト教の人間観では、
プラトンやアリストテレス以来、
基本的には人間は霊と魂と肉体からなるものと考えられていた。
このことが『精神科学から見た死後の生』（シュタイナー 西川隆範訳 風濤社）に
以下のように述べられている。
『霊の存在は、西洋では８６９年コンスタンチノープルにおける公会議で否定された。
カトリック教会は、人間が身体と心魂と霊からなるものではなく、
身体と心魂からなるものであるということをドグマにしました。
そして、心魂は「霊的な特性」を持っている、と書き添えられました。
このようにして霊が否認されたことは、非常に大きな意味をもっています。
人間は「心魂と霊」を持っていると考えてはならず、「理性的で知的な心魂」しか
有していないというドグマが、８６９年コンスタンチノープルで決定されたのです。
「心魂は霊的な特性を有している」という考えが、
９世紀以来、西洋の精神生活に雲のように覆いかぶさってきました。
このような考えを、再び克服しなくてはなりません。
霊の存在が再び承認されなくてはなりません。
中世においては、「人間は身体と心魂と霊からなる」という三分説を唱えると、
「著しい異端だ」とされました。
この三分説が再び正しい人間観として通用するようにしなくてはなりません。
・・・・・哲学者たちの書いているものを読むと、
身体と心魂のみを区別し、霊を抜かしています。
彼らはそれを「とらわれのない」世界考察だと言いますが、
「霊を承認しない」という８６９年コンスタンチノープルでの決定に拠っているのです。
人々はそのことを知りません。
例えば、ヴィルヘルム・ヴントのように、出版社のおかげで世界的に有名になった哲学者も、
人間を身体と心魂に分けています。
彼はそれを「とらわれのない学問的な見解だ」と言いますが、
自分が８６９年コンスタンチノープルの公会議の決定に従っていることを知らないのです。』
（『精神科学から見た死後の生』より）
この部分を読んで、「シュタイナー教育」は好きだけどシュタイナーの「人智学」は嫌いだ
という人の気持ちが自分なりに少しわかるような気がした。
シュタイナーが言うように自分では気づいていないが、「人智学」、
即ち三分説を認めると、社会から「異端者」とされてしまう恐れを、
無意識に感じているからではなかろうかとふと思った。
では、なぜ、このようなドグマがコンスタンチノープルで決定されたのか。
その理由が、「シュタイナー入門」（小杉英了 ちくま新書）に書かれている。
「普通、教会史の中でこの公会議は、
最終的には東方教会と西方のローマ教会とが分裂するにいたる
教義論争の流れの中に位置づけられているが、
シュタイナーがこの会議を繰り返し取り上げたのは、
会議における三位一体論をめぐる聖霊論争の中で、
個々の人間と霊的なものとの直接的な結びつきが否定され、
人間はただ、使徒の系譜に立つ教会を通して
聖霊を受ける時にのみ霊的なものと結びつくという教義が確立されてしまったからであっった。
それによって人間は、肉体と、個人的な内面生活の場である魂との、
二つの要素から成る存在とされたのである。
肉体は動物的本能と感覚とに支配されており、魂は悪魔の誘惑に弱い。
これだけでは救済はかなわない。
肉体と魂という二元的要素からなる人間は、
霊がそこから恩寵として下される教会組織に属してはじめて、
永遠なる神との契約に入る、とされたのである。
裏をかえせば、教会の外では、
霊的なものとの直接的な結びつきなど生じるはずがない。
もし、そのようなことが可能であると主張する者がいたならば、
それは悪魔のささやきにほかならず、
悪しき異端である、ということになるのだ。」
（シュタイナー入門より）
即ちこの教義では「人間には魂と体だけで、
霊は教会の中のみにある」ということになり、
人間の中に霊は存在せず、教会の中に聖霊が生きておられて、
信者にならなければ霊性にふれることはできず、
悪魔の誘惑に堕ちてしまうというのである。
これ以来、「人間は身体と心魂と霊からなる」という三分説を唱えると、
「著しい異端だ」とされた。
しかし、シュタイナーは自明の理として霊の世界を知っていた。
「異端者」扱いされるのを承知で、
この三分説が再び正しい人間観として通用するように
「三分説」を高らかに宣言したのである。
日本でこれから「シュタイナー教育」等を通して、
真にシュタイナーが理解されるには
この「異端」とされた「人間観」が受け入れられるかどうかではなかろうかと思っている。
一人の「子供」、一人の「人間」を目の前にして、
この目の前の人は、魂と肉体だけでなく「霊」からも成り立っていると
真に認識できるかである。
闇の中へ魂を導き入れ
心の熱を通して
感覚の啓示を予感させるもの、
それはこの冬の暗がりの中での
おのれの力の発現であり
魂の力強い衝動である。
（シュタイナー 高橋 巌訳）
……………
シュタイナーは長い間、ヨーロッパでは異端者扱いされていた。
その理由を今後の思索のためにメモとして整理しておきたい。
シュタイナーが、繰り返し言及した教会会議がある。
869年から東ローマ帝国（ビザンティン帝国）の
首都コンスタンチノープル（現トルコ領イスタンブール）で開催された、
キリスト教の公会議である。
この時の、公会議で、
人間というのは魂と肉体からなる存在であるということが、
キリスト教の教義の中に取り入れられたのである。
「聖書」の福音書を読むと、
あらゆるところに「霊」の存在がでてくるにもかかわらず、
「霊」の存在は、西洋では８６９年コンスタンチノープルにおける公会議で否定されたのである。
それ以前のキリスト教の人間観では、
プラトンやアリストテレス以来、
基本的には人間は霊と魂と肉体からなるものと考えられていた。
このことが『精神科学から見た死後の生』（シュタイナー 西川隆範訳 風濤社）に
以下のように述べられている。
『霊の存在は、西洋では８６９年コンスタンチノープルにおける公会議で否定された。
カトリック教会は、人間が身体と心魂と霊からなるものではなく、
身体と心魂からなるものであるということをドグマにしました。
そして、心魂は「霊的な特性」を持っている、と書き添えられました。
このようにして霊が否認されたことは、非常に大きな意味をもっています。
人間は「心魂と霊」を持っていると考えてはならず、「理性的で知的な心魂」しか
有していないというドグマが、８６９年コンスタンチノープルで決定されたのです。
「心魂は霊的な特性を有している」という考えが、
９世紀以来、西洋の精神生活に雲のように覆いかぶさってきました。
このような考えを、再び克服しなくてはなりません。
霊の存在が再び承認されなくてはなりません。
中世においては、「人間は身体と心魂と霊からなる」という三分説を唱えると、
「著しい異端だ」とされました。
この三分説が再び正しい人間観として通用するようにしなくてはなりません。
・・・・・哲学者たちの書いているものを読むと、
身体と心魂のみを区別し、霊を抜かしています。
彼らはそれを「とらわれのない」世界考察だと言いますが、
「霊を承認しない」という８６９年コンスタンチノープルでの決定に拠っているのです。
人々はそのことを知りません。
例えば、ヴィルヘルム・ヴントのように、出版社のおかげで世界的に有名になった哲学者も、
人間を身体と心魂に分けています。
彼はそれを「とらわれのない学問的な見解だ」と言いますが、
自分が８６９年コンスタンチノープルの公会議の決定に従っていることを知らないのです。』
（『精神科学から見た死後の生』より）
この部分を読んで、「シュタイナー教育」は好きだけどシュタイナーの「人智学」は嫌いだ
という人の気持ちが自分なりに少しわかるような気がした。
シュタイナーが言うように自分では気づいていないが、「人智学」、
即ち三分説を認めると、社会から「異端者」とされてしまう恐れを、
無意識に感じているからではなかろうかとふと思った。
では、なぜ、このようなドグマがコンスタンチノープルで決定されたのか。
その理由が、「シュタイナー入門」（小杉英了 ちくま新書）に書かれている。
「普通、教会史の中でこの公会議は、
最終的には東方教会と西方のローマ教会とが分裂するにいたる
教義論争の流れの中に位置づけられているが、
シュタイナーがこの会議を繰り返し取り上げたのは、
会議における三位一体論をめぐる聖霊論争の中で、
個々の人間と霊的なものとの直接的な結びつきが否定され、
人間はただ、使徒の系譜に立つ教会を通して
聖霊を受ける時にのみ霊的なものと結びつくという教義が確立されてしまったからであっった。
それによって人間は、肉体と、個人的な内面生活の場である魂との、
二つの要素から成る存在とされたのである。
肉体は動物的本能と感覚とに支配されており、魂は悪魔の誘惑に弱い。
これだけでは救済はかなわない。
肉体と魂という二元的要素からなる人間は、
霊がそこから恩寵として下される教会組織に属してはじめて、
永遠なる神との契約に入る、とされたのである。
裏をかえせば、教会の外では、
霊的なものとの直接的な結びつきなど生じるはずがない。
もし、そのようなことが可能であると主張する者がいたならば、
それは悪魔のささやきにほかならず、
悪しき異端である、ということになるのだ。」
（シュタイナー入門より）
即ちこの教義では「人間には魂と体だけで、
霊は教会の中のみにある」ということになり、
人間の中に霊は存在せず、教会の中に聖霊が生きておられて、
信者にならなければ霊性にふれることはできず、
悪魔の誘惑に堕ちてしまうというのである。
これ以来、「人間は身体と心魂と霊からなる」という三分説を唱えると、
「著しい異端だ」とされた。
しかし、シュタイナーは自明の理として霊の世界を知っていた。
「異端者」扱いされるのを承知で、
この三分説が再び正しい人間観として通用するように
「三分説」を高らかに宣言したのである。
日本でこれから「シュタイナー教育」等を通して、
真にシュタイナーが理解されるには
この「異端」とされた「人間観」が受け入れられるかどうかではなかろうかと思っている。
一人の「子供」、一人の「人間」を目の前にして、
この目の前の人は、魂と肉体だけでなく「霊」からも成り立っていると
真に認識できるかである。
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コメント(16)
エンジさま
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
＞ 教会は何か魂胆があって霊を否定したんじゃないですか？
まさにそうですね。
どこかで読んだことがあるのですが、
霊視ができる人と聖職者の間に衝突が起こったようです。
聖職者は神示（霊界通信）を受ける霊媒にばかりに信者が関心を向ける
ことに不快感をいだくようになったようです。
そこで、それまでに入手した神示を資料として、
信条・儀式・祭礼・ドグマ・教説等を分類して綱領を
こしらえる、いわゆる神学的操作を行ったようです。
今日まで引き継がれているもので、霊の資質と実質的に
関わりあるものをなくしたのです。
かくして、宗教というと何かお決まりの儀式のことを
思い浮かべ、「聖典」とよばれるものを
読み上げることと考え、賛美歌をうたい、特別の
衣装を着ることだと思うようになりました。
ほかにも複雑な経緯があると思いますが・・・・・。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
＞ 教会は何か魂胆があって霊を否定したんじゃないですか？
まさにそうですね。
どこかで読んだことがあるのですが、
霊視ができる人と聖職者の間に衝突が起こったようです。
聖職者は神示（霊界通信）を受ける霊媒にばかりに信者が関心を向ける
ことに不快感をいだくようになったようです。
そこで、それまでに入手した神示を資料として、
信条・儀式・祭礼・ドグマ・教説等を分類して綱領を
こしらえる、いわゆる神学的操作を行ったようです。
今日まで引き継がれているもので、霊の資質と実質的に
関わりあるものをなくしたのです。
かくして、宗教というと何かお決まりの儀式のことを
思い浮かべ、「聖典」とよばれるものを
読み上げることと考え、賛美歌をうたい、特別の
衣装を着ることだと思うようになりました。
ほかにも複雑な経緯があると思いますが・・・・・。
naho さん
自己のあらゆる動きを自覚する、「観る」あるいは「気づき」を「霊」ととらえていらっしゃるのですね。
「シュタイナー用語辞典」によれば
「主観的な思いの場である心魂に対し、精神（霊）は神性を含むものである。」（P170）
とありました。
グルジェフの言葉に置き換えると、心魂は通常の感情センター・思考センターを指し、精神（霊）は高次感情センター・高次思考センターであるのかなとおもいます。
くわしく引用すると膨大になるのでしませんが、「アストラル体、エーテル体、メンタル体、コーザル体」や「レムリア期、アトランティス期」や「地球期、月期」とかが関わった記述になると焦点がぼやけてしまって、何を把握しようとしていたかわからなくなってしまいます。
社会有機体３分節化理論は法律・経済・文化で分かりやすいのですが、「霊（精神）・心魂・肉体（物質的身体）」の構造をシュタイナーの理論をたどっていく
とややこしくて、自分の内部で明瞭に弁別できないと感じます。
自己のあらゆる動きを自覚する、「観る」あるいは「気づき」を「霊」ととらえていらっしゃるのですね。
「シュタイナー用語辞典」によれば
「主観的な思いの場である心魂に対し、精神（霊）は神性を含むものである。」（P170）
とありました。
グルジェフの言葉に置き換えると、心魂は通常の感情センター・思考センターを指し、精神（霊）は高次感情センター・高次思考センターであるのかなとおもいます。
くわしく引用すると膨大になるのでしませんが、「アストラル体、エーテル体、メンタル体、コーザル体」や「レムリア期、アトランティス期」や「地球期、月期」とかが関わった記述になると焦点がぼやけてしまって、何を把握しようとしていたかわからなくなってしまいます。
社会有機体３分節化理論は法律・経済・文化で分かりやすいのですが、「霊（精神）・心魂・肉体（物質的身体）」の構造をシュタイナーの理論をたどっていく
とややこしくて、自分の内部で明瞭に弁別できないと感じます。
シュタイナーは、この「地球期」に人間に自我の萌芽が与えられ、その自我によって霊を地球上に示現させることが、人類の使命だと言います。
魂の性質は本来、非自我的です。
もしも自我が与えられていないまま、人間の魂に霊が浸透すると、人間の魂は霊そのものに変容することでしょう。
そうなったら、人間が自我を発展させる可能性はなくなってしまいます。
人間に自我がなかったなら、人間は神霊の分身のような存在にはなったでしょうが、個的な存在にはなりえなかったはずです。
人間の魂が一個一個の肉体の中で発展するように仕組まれているのは、肉体に宿った魂の中で、自我の萌芽が生育するためです。
もしも肉体のない魂の中で自我の萌芽が成長したら、その自我は流産してしまい、魂は崩壊することでしょう。
肉体に宿った魂の中で、自我が霊を捉えることによって、人間は人間であることができます。
ですが、人間の自我はまだ未成熟なので、自我が霊を見失うことがあります。
そうすると人間は、もう人間ではないような存在になってしまいます。
シュタイナーが非常に危惧したのはそのことだと思います。
霊を意識的に求めること。それが、自我の本来の発展の場である、意識魂の在り方の基本です。
ですが、そもそも霊を認めていない人間の場合は、自我と霊とのつながりを断ち切られてしまう可能性が高くなります。
人間は霊とのつながりを意識しないまま生きていますが、霊との関係を断ち切られても、それを意識しないままで生き続けることもできます。
そこからさまざまな悪が生じます。
魂の性質は本来、非自我的です。
もしも自我が与えられていないまま、人間の魂に霊が浸透すると、人間の魂は霊そのものに変容することでしょう。
そうなったら、人間が自我を発展させる可能性はなくなってしまいます。
人間に自我がなかったなら、人間は神霊の分身のような存在にはなったでしょうが、個的な存在にはなりえなかったはずです。
人間の魂が一個一個の肉体の中で発展するように仕組まれているのは、肉体に宿った魂の中で、自我の萌芽が生育するためです。
もしも肉体のない魂の中で自我の萌芽が成長したら、その自我は流産してしまい、魂は崩壊することでしょう。
肉体に宿った魂の中で、自我が霊を捉えることによって、人間は人間であることができます。
ですが、人間の自我はまだ未成熟なので、自我が霊を見失うことがあります。
そうすると人間は、もう人間ではないような存在になってしまいます。
シュタイナーが非常に危惧したのはそのことだと思います。
霊を意識的に求めること。それが、自我の本来の発展の場である、意識魂の在り方の基本です。
ですが、そもそも霊を認めていない人間の場合は、自我と霊とのつながりを断ち切られてしまう可能性が高くなります。
人間は霊とのつながりを意識しないまま生きていますが、霊との関係を断ち切られても、それを意識しないままで生き続けることもできます。
そこからさまざまな悪が生じます。
- mixiユーザー
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