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日記ロワイアルコミュの【反則】

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のちのち、ちょっとエロい個所があります。
お気をつけください。
ではいきまーす!

***************************




ラブホテルに行ったら、二つしかパネルがついてなかった。

彼氏が迷わず安い方の部屋を選んだ。

「よし、別れよう」

あたしはその場を去った。

彼氏は後を追ってきて大声で喚いていたが、あたしは笑顔で言った。

「喋らないで」


それから一週間後、別の人と付き合い始めた。

その人は車に乗ると人格が変わるタイプだった。

またすぐに別れた。


一つ気に入らないところが見つかると、すべてがイヤになってしまう。

バイトもそんな感じでよく辞めていた。


今、働いているレストランは入って2日目だけど、
先輩バイトの女がマジでウザくて、もう辞めようかと思っている。

その女は週6で遅番だから、あたしとシフトが被っている。

「働いている人数が多いから、こういうことは徹底しておかないと」
ってのが口癖で、ものすごく細かいところまで指示してくる。

そんなの臨機応変にすればいいじゃん、って思う。

口に出しては言わないけど。

今日もその女がまたアレコレ言ってきたら、明日あたしはこの場所にいないな。


そう思っていたら、その女は休みだった。

ま、そいつがいないんなら今日は機嫌良く働いてやるか。



「おはようございます」

休憩室で煙草を吸っていたら、あたしより背の低い女の人が入ってきて声をかけられた。

「あ、おはようございます」

軽く頭を下げた。

「最近入った方ですよね?初めまして、私、西浦千草と言います」

「あ、芦田です。どうも」

「芦田さん、どうですか?慣れましたか?」

「はぁ、まぁ。まだ今日で3日目なんで何とも言えませんが」

「わからないことがあったら何でも聞いてくださいね」

西浦さんは、白い、というより乳白色の肌で赤ちゃんみたいにスベスベのほっぺをしていた。

唇もリップクリームしかつけていなさそうなのに、
外国の少年みたいに真っ赤でポッテリとしていた。

髪は真っ黒で少し猫っ毛だった。

マスカラもアイシャドーもつけてないし、眉毛も全然さわっていなかった。

「あ、どうも。ありがとうございます」

「ふふ。芦田さん、私より年上なんですから敬語使ってくださらなくていいですよ?」

「あ。でもココでは先輩じゃないですか」

「あはは。他の人、誰もそんなこと気にしていませんよ。
みんな下の名前で呼び合ってますし」

「そうなんですか」

「はい。だから芦田さんも私の事は千草って呼んでくださいね。
私も芦田さんの事、麻衣子ちゃんって呼びますから」

「はぁ。っていうか、千草・・・さんは何歳なんですか?」

「二十歳です」

「え!?そんなに若いの!?あたしより5つも下!?」

「はい。だから敬語は使わないでください」

西浦さんはクスクス笑った。


でも結局あたしは敬語を使った。

それから千草って呼べなくて苗字で呼んだ。

彼女もあたしを芦田さんと呼んだ。


「芦田さん、視力どれぐらい悪いんですか?」

「あー、かなり悪いですよ」

「コンタクトはしないんですか?」

「あ、いや、普段はコンタクトなんですけどね。
長時間つけてると目が痛くなるからバイトの時は眼鏡なんです」

「眼鏡かけてる人ってかっこいいですよね。憧れます」

「はは。かけない人からすればそうかもしれませんね。でも実際は面倒くさいだけですよ?」


それからしばらく彼女があたしの指導係として色々と教えてくれた。

よく一緒にいるようになり、彼女のことをたくさん知っていった。

西浦さんは大学生で、一年の頃からこのレストランで働いているので
何でも出来る優秀なバイトだった。

穏やかな性格だし、接客も丁寧で、気配りも出来て、誰からも好かれていた。

彼氏がいないのが不思議なくらいだった。



いつまでたっても相変わらず、あの先輩バイトの女はウザかった。

ちょっとマジで辞めようかと思いはじめていた。


試験が終わって、夏休みに入った西浦さんは毎日出勤していた。

西浦さんとあたしは同じ方向の電車だったので一緒によく帰っていた。

「あー。今日もよく働きましたね。足がパンパンですよ」

あたしはロッカー室でヒールを脱いだ自分の足を見て溜息をついた。

二つ向こうのロッカーで着替える西浦さんに向かって一人で喋っていた。

「めちゃめちゃむくんでます。あー、お風呂でほぐさなくっちゃ。さてと、帰りますか」

着替えが終わり、いつものように帰ろうとすると、
西浦さんは下を向いたまま動こうとしなかった。


「西浦さん?」

「…芦田さん、この後、時間あります?」

「この後ですか?はぁ、特に何もありませんけど。どうしたんですか?」

「…飲みに行きませんか?」

「いいっすよ。じゃ、行きましょうか」

あたし達はいつも一緒に帰るけど、一緒に飲みに行ったことはなかった。

誘われなかったし、誘わなかった。

「ちょっとトイレに行ってくるので、外で待っててください」

あたしはトイレに行って、彼氏にメールをした。

{友達と飲みに行くから今日は会えない}

すぐに返信がきた。

{友達って男か?}

あたしはそいつの番号とアドレスを拒否設定した。



居酒屋に入ると、西浦さんはカシスオレンジを頼んだ。

絶対あたしが飲まない甘い酒だ。

何故、これを飲みながら飯が食べれるんだ。

あたしはビールを頼んだ。

西浦さんは学校の話や自分が好きな映画の話をしていた。

カシスオレンジには二、三回ほど口をつけただけだったけど、顔は真っ赤になっていた。

「に、西浦さん?大丈夫すか?顔、赤いですよ?」

「ふふ。なんだか酔っぱらってきました」

「もしかして、お酒めちゃめちゃ弱いんじゃ」

「はい。というか、初めて飲みました」

「ええ!?」

西浦さんは赤い頬を手で押さえた。

「あー、顔が熱いです」

「烏龍茶、頼みましょうよ」

「あ、でもまだカシスオレンジ残ってるから…」

「あたし、飲みますから」

「すみません」

あたしは店員に烏龍茶と冷たいおしぼりを頼んだ。

西浦さんはクスクス笑いながら何度も何度もすみません、と言った。


結局、一時間ほどで店を出た。そして普通に駅に向かって歩いた。

…なんだったんだろう?何か話があって飲みに誘ったんじゃないのかな?

あたしはワザと営業時間がとっくに終わったシャッターの閉まった商店街の中を歩いた。

真ん中あたりまで歩いた時、足を止めた。

「芦田さん?どうしたんですか?」

首を少し傾げて西浦さんはクスクス笑っていた。

「西浦さん、あたしに何か言いたかったんじゃないですか?」

彼女の笑顔が固まった。

「どうしてですか?」

「珍しく飲みに誘って、初めてお酒を飲んで。それって何かあったのかなとしか思えなくて」

西浦さんはゆっくり目を閉じた。

「やっぱり芦田さんはお姉さんですね」

「はぁ、まぁ、25ですからね」

「先週の木曜日にね、上田君から告白されたんです」

「上田君ってあの上田?」

「はい」

上田というのはホールのバイトで、彼も大学生だった。

「確か同い年でしたよね?いいんじゃないすか?付き合えば」

「私、今まで誰とも付き合ったことないんです」

「おお、それはそれは」

「男の人が怖いんです」

「え、普通に喋ってるじゃないですか」

「意識しないと喋れるんですけど、意識しちゃうと怖くって」

「はは。
この世には男と女しかいないんですから怖がってても仕方ないじゃないですか。
ま、その間の人もいてますけど。それはおいといて。
付き合ってみたらいいんじゃないですか?
そうすれば案外怖くなくなるかもしれませんよ?」

「だっていつかはキスしたり、そういうことしたりするんでしょう!?」

西浦さんがあたしを見つめた。

「それが怖いんですか?」

「…はい」

西浦さんの目は潤んできていた。

「芦田さんはお付き合いってされたことありますか?」

「ありますよ」

「じゃあ、キスとかセ…」

「普通にありますよ」

あたしは苦笑した。

「怖くなかったですか?」

「ま、別に減るもんじゃないですからねえ」

西浦さんは期待していた返答があたしから得られなかったのか、下を向いてしまった。

「…別れたりしたこともありますか?」

「しょっちゅうです」

「辛くなかったですか?」

「西浦さん、あのね、ごめんなさい」

あたしは笑いながら片手を挙げた。

「多分ねぇ、あなたが求めている答えはあたしからじゃ出て来ませんよ?
あたし、そういうのユルイですから。
西浦さんが欲しい答えはあたしじゃなくて、もっと純粋な人に聞かれた方がいいですよ?」

「…誰に何て聞いていいのかわかんないんです」

西浦さんは泣きだした。

「あー…えっと、困ったな」

あたしは頭を掻いた。
自転車で通り過ぎる人が泣いている彼女をジロジロと見ている。

「こんなこと相談されても困りますよね。ごめんなさい」

彼女は鼻をすすりながら頭を下げた。

「あ、いや、そうじゃなくて。
えーっと上手く言葉が見つからないんですが…ま、その、ですね」


あたしは躊躇ったけど、結局、彼女を抱きしめた。

泣いている彼女の体は熱かった。

「大丈夫ですよ。何かあったらいつでも相談してきてください。
その時もきっと今みたいな答えしか出せないですけど、
それでも良かったら相談してください。
夜中、不安になったら電話もしてきてください。それから…」

あたしより背の低い彼女の頭を撫でた。

シャンプーの匂いがした。

「上田は良い奴です」

彼女は嗚咽しながら頷き、あたしの体に腕を回してきた。

「ありがとうございます。芦田さんがいてくれて良かったです」



次の日の昼間、西浦さんからメールが来た。


{上田君に告白の返事をしました。付き合うことになりました}

{そうですか。お幸せに}

彼女からの返信は笑っている絵文字だった。


「チクショー、こんなに可愛い子と付き合える上田の野郎が羨ましいぜ」

あたしは咥え煙草をしながら尻をかいた。

それから西浦さんと上田はシフトを合わせて入るようにしたようで
二人でよく笑っている姿を見かけるようになった。

二人とも楽しそうに笑っていた。



でも長くは続かなかった。


一か月もしないで西浦さんの顔は曇りだした。

あたしはまた飲みに誘われた。彼女はまたカシスオレンジを頼んだ。

「西浦さん、最近元気ないですね?」

あたしの言葉に彼女はグッと唇を噛んだ。

それからゴクゴクとまるでジュースを飲むように一気飲みをした。

「ああああ、大丈夫ですか?お酒、弱いんでしょう?
そんな飲み方をしたらひっくり返りますよ」

「いいんです、どうなっても」

彼女は少し酒をこぼしてしまった口を左手の甲でゴシゴシと拭いた。


「他に好きな人が出来たから別れようって言われました。
私といてもつまらないそうです。つまんない私なんかどうなってもいいんです」

「あの馬鹿、そんなこと言ったんですか?最低ですね」

「確かに上田君は馬鹿かもしれません。
でもその上田君に告白されて、好きになりかけていた私はもっと馬鹿です」

西浦さんはテーブルの上で握り拳を作り、それをジッと見つめていた。


「ははは!」


あたしは大笑いした。西浦さんは顔をあげて不満そうにあたしを見た。

「何で笑うんですか?」

「ああ、ごめんなさい。だって西浦さん、おかしいんですもん」

「何がですか?」

あたしは西浦さんの左手の甲を掴んで、彼女に見せた。

「西浦さん、手の甲にドリンクの発注をボールペンで書いたでしょう。
そんな手で口を拭いたもんだから鼻の下が真っ黒ですよ?」

手の甲は擦られて滲んだボールペンの文字があった。

彼女は慌てておしぼりで鼻の下を拭いた。

「取れましたか?」

「まだ少し残っています」

あたしはワザと大声で笑った。彼女は必死になって鼻の下を擦った。

「取れました!?」

「はい。キレイに取れましたよ」

彼女はホッとしたように顔をほころばせた。


「いつかそんな風に心の痛みも消えていきますよ」


言ったそばから、あたしは自分で言った言葉に笑ってしまった。

「おしぼりでは消えないでしょうけどねー。っていうか一緒にすんなよって感じですね」

西浦さんは笑いながらポロポロと涙を落した。

「芦田さん、私の失恋を何だと思ってるんですか」

「あはは、すみません」

「ひどいです。だからお詫びにカラオケ付き合ってください」

「いいですよ。でもあたし、すごい音痴ですから西浦さん、きっとびっくりしますよ?」

「じゃあ、今度は私が芦田さんの音痴を思いっきり笑います」

「まいったなぁ」

あたし達はそれからカラオケに行き、朝まで歌いまくった。

カラオケボックスを出ると外は明るかった。

もう蝉が鳴きだしていた。


「あー…。朝ですねぇ。お互い今日バイト休みで良かったですね」

「ホントですね。それにしても芦田さん、ほんとに音痴でしたね」

「はは。これでもずいぶん上手くなったんですよ?」

「あれで?」

「ひどいなぁ」

西浦さんは交差点で信号待ちをしている時、鞄からリップクリームを取り出して唇に塗った。

始発はまだ走っていない。車も人通りもほとんどない。


「西浦さん」

「はい?」

あたしは前を向いたまま、言葉を続けた。


「先に謝ります。すみません、ごめんなさい。イヤな質問していいですか?」

「え…何ですか?」

西浦さんはあたしの方を向いた。


「上田とキスしましたか?」


「…していません」


「そうですか」

「どうしてそんなこと聞くんですか?」

あたしは西浦さんの方を向いた。




彼女にキスをした。


それからすぐにまた前を向いた。


「すみません。一回あなたとキスしてみたかったんです」


信号が青に変わったので歩きだした。彼女は立ち止ったままだった。

ちょうど渡り切ったぐらいで後ろから走ってきて、あたしの手をつないできた。

「おわ!?」

あたしは驚いて西浦さんの方を向いた。彼女は前を向いたままだった。


「…いきなりなんて反則です」

「すみません」

「そういうことは前もって言ってください」

「…はい。すみません」

あたしは無表情のまま答えた。

西浦さんは急に笑顔でこちらを向いた。


「芦田さん、明日コンタクトで出勤してくださいね」

「え。まじっすか」

「はい」

「はぁ、まぁ、西浦さんがそう言うならしますけど」



翌日、あたしはコンタクトをして出勤した。

休憩室で煙草を吸っていると、西浦さんが入って来た。


「おはようございます」

あたしが言うと、西浦さんがあたしの隣に座って顔を覗き込んできた。

「な、なんすか?」


「芦田さんて目、大きいんですね。かわいい」

あたしは苦笑した。


「西浦さん、それ、反則。ちょっとドキッとしました」


西浦さんは何も答えず、にこにこしながらまだあたしを覗きこんでいた。


「まいったなぁ」


あたしは頭を掻いた。


こんな可愛い子がいるバイト、辞めれないな。もう少しここにいるか。





おしまい。


追記。

おしまい。ません。


http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1424824739&owner_id=24383800

につづきます。

コメント(691)

書籍化して欲しいなー

長かったけど
全部読みました!

超泣いてしまったー 笑

ちびまいこが
ナイスキャラ(ノ∀`*)w
一票!書籍化応援してます(≧∇≦)
これだけ読ませる自慰作品には脱帽。

一票です。
一票

初めてこのコミュに参加し、初めての一票がこの作品です。
素晴らしかったです。

私の初めての一票にこんな素晴らしい日記に出会えて良かったです。

ぴかぴか(新しい)最高王冠の一票ぴかぴか(新しい)

どんどん惹き込まれ揺れるハート
一気に読み終え
最後は 泣いていました涙

挿絵も物語に 合っていて
素敵カメラでしたるんるん

感動しましたほっとした顔ありがとう
一気に読んでしまいました!
ほんといい話。
いい涙流せました。ありがとうございます。
一票です!
一票♪( ´θ`)ノ 素晴らしい話をありがとう!

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