ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

日記ロワイアルコミュの父が放火した日

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
端的にわたしは父親が好きである。

理由を短く説明するのは難しいが、一般的にハンサムと形容される父は背が高くスタイルも悪くない。
性格は明朗で父権というものを全く持ち合わせておらず、女子大生のわたしも女子高生の妹も友達のようなノリで彼と接している。
中学生の頃から友達に、はーちゃんのお父さん格好良いよねと言われ続けた自慢の父親だった。


今日はそんな実の父親が放火したときの話をしようと思う。









我が家には無駄に広いだけの庭がある。
せっかくスペースがあるのだからガーデニングでも家庭菜園でもすればいいのだけど、うちにそんな崇高な趣味を持った人はいないから、コンセプトを失ったそこには無駄に仰々しい木だとか訳分からん草がここぞとばかりに生い茂っていた。
庭の最も奥の方にはもはや光が届いておらず、真剣に探したらインディアンの一人や二人くらい見つかるんじゃないかと思うほどだった。


ここで実際にインディアンの一人や二人が「よっ!」とか言いながら出てくるのが見つかったら、多分わたしはもっと面白い文章が書けたけど今回の内容はインディアン発見の日記ではないので悪しからず。





まぁそんな感じでとりあえず庭は荒れていた。
この状況を打開すべく立ち上がったのが父、ユウジである。
ユウジは早速雑草を燃やす家庭用の火炎放射機と家庭用の農薬散布機を買ってきて毎週雑草を焼いては農薬をまいていた。


そんなある日事件が起きた。
いつものようにユウジが庭の手入れをしていたら、雑草を燃やすはずの炎が木に引火してしまったのである。
引火したのはシュロの木という種類で、ググってもらえればわかると思うのだがそれはもう、見るからによく燃えそうなのである。えぇ、それはもう。
更にうちにあるシュロの木は隣の家に隣接している上に、隣の家と同じくらい背が高い。
我が家のシュロの木は一瞬にして豪快に燃え盛る火柱と化した。





驚いたユウジは動揺しつつもまず応援を呼んだ。
ただこの時わたしと母親は出掛けており(わたしはそれを今でも非常に悔やんでいるのだが)家にいたのは定期試験を控え自宅で勉強していた妹と我が家の愛犬のプリン(♀当時3歳)だけであった。
ユウジは火から目を離せないから(こう書くとまるで天ぷらでも揚げてるかのようなノリだが)大声で妹の名を呼んだ。


「チサキーーー!!!!!チーサーキィィイィーーー!!!!!!みずーーみーーーずぅーーーー!!!!!」


名を呼ばれた妹は、砂漠に迷い込んだ流浪の民のような父の叫びに気付いて颯爽と庭に飛び出した、
かと思いきや彼を無視して勉強を続けた。
彼女曰く勉強の途中だったし、どうせまたいつものようにくだらないことで呼びつけているのだろうと思ったそうだ。
ここら辺に普段ユウジがわたしたちと、いかにくだらないコミュニケーションを交わしているかが表れているのだが、とりあえず彼の応援要請はあっさりと却下されたのである。



水を欲しがる男の絶叫を隣近所の方々はどうとらえたが定かではないが、誰も助けに来ない状況にユウジはいよいよパニックに陥った。
火はみるみる上に上がっていき、このままではお隣さんちに引火してしまうかもしれない。そう危惧したユウジは自ら消火活動を開始した。
火から目が離せないというのは普通火事にならないようにという趣旨で用いる表現だが、既に出火しているのだから見守っていても仕方ない。
彼はその場を離れ庭にある水道をひねってバケツに水が溜まるのを待った。

そしてその頃、どうも様子がおかしいことに気付いた妹が、ようやく窓の外を見て我が家の木が一本豪快に燃えているのを発見した。
そして、そこになみなみと水が入ったバケツを持ったユウジが走り来たのである。
炎はもう木の上部を焼きにかかっていたらしい。ユウジはバケツの底を持って下から上へ放るような形で水をかけようとした





あまりに勢い良く放たれた水はそのほとんどが火にかかることなく綺麗に真上に上がってしまったのである。
そして水はまるで、この世には重力があったということをふと思い出したかのようにいたずらに落ちた。
ユウジの上に。



水をかぶるユウジ。

息をのむ妹。

燃え盛る木。



全てがスローモーションのように見えたと後に妹は語ってくれた。

さて、我に返った妹は困惑した。
さっきまで試験勉強をしていたのに、ふと庭を見たら木は燃えているわ、その横で父親が自らに水をかけてるわの始末である。
そして更に、自分の失敗に気付き妹に遅れを取りながらも我に返ったユウジはその場で高らかに笑い始めたそうだ。



高笑いするユウジ。

どん引く妹。

転がるバケツ。



何の儀式が始まるのか、ここまでくると逆に興味深い。
もし本当に庭にインディアンが潜んでいたらきっとさぞ驚いたことだろう。新入りかと思ったかもしれない。

そしてもはや前後不覚となったユウジは直接火を消しにかかったのである。道具なんてない。そう、最後の手段。by his hand.


水浸しになりながら、
楽しげに声を上げて笑いながら、
手で火を消し始めたユウジ。



ちなみに熱さなど全く感じていなかったと後に彼は語ってくれた。





しかし、そんな彼の涙ぐましい努力をまるで嘲るかのように木を包む炎は無情にも、











自然鎮火した。










そう、わたしは父親が大好きなのである。

コメント(509)

一票!!www
妹も父もサイコーです!
文章の上手い人ってなんぼでもいるんだなー

一票
今日、うちの父がシュロの木を全く同じ手法で燃やして、しかしうちは住宅密集地のため秒で通報され消防士さんとお巡りさんが来て大層物々しい感じになりました。
その様子を見て、この作品を思い出して、mixi開いて、読み返してめちゃくちゃ笑いました。

一票です!
お父さんが笑い出した時点で地獄絵図のはずなのに、自分も笑ってしまいました(笑)

一票です。

ログインすると、残り478件のコメントが見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

日記ロワイアル 更新情報

日記ロワイアルのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。