萬葉集・万葉集コミュの万葉一九九番歌は「高市皇子挽歌」ではない

万葉一九九番歌は題詞に高市皇子への挽歌と書かれ、通説でもそのように解釈されて、壬申の乱を歌うものとされていますが、その内容は次の点で異なります。

①高市皇子が活躍した壬申の乱は夏の戦いであるのに、歌中に「み雪降る・大雪の乱れて来れ」とあるように、冬、それも厳冬の戦いの歌であること、
②同じく歌中の「背面の国（＊北方の国）」「狛劔（＊百済に「固麻城」）」「和射見（＊同じく「倭山」）「百済の原」「虎か吼ゆ（＊虎は大和でなく朝鮮半島にいる）」などから戦地は「半島の百済」と考えられること、
③「城上の宮を常宮と高く奉り」とあるが、大和に「城上きのへの殯宮」は見出しがたく、高市皇子の挽歌とは考えづらい。

正しくは

①筑紫朝倉郡には「城上」が存在すること（上座かむつあさくら郡「城邊きのへ」）。
②また、万葉百九十六番に、一九九番と同じ「城上の宮を常宮と定めた」「吾王」の名は明日香皇子とある（御名に懸かせる明日香川）ところ、その朝倉郡に「明日香皇子」を祀る「麻氏氐良布神社」があること、
③白村江で筑紫君薩夜麻が捕虜となったが、その前哨として冬の百済での戦があったこと、などから、この歌は「皇子」といっても天皇家の高市皇子ではなく、九州王朝の明日香皇子に奉げられたもので、明日香皇子とは筑紫君薩夜麻をさす。

ということです。詳しくは下記を参照下さい。

新･万葉の覚醒（Ⅰ）
https://furutasigaku.jp/jfuruta/kaiho149/kai14901.html
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コメント(12)

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[1] mixiユーザー 01月13日 21:30

なお、筑紫君薩夜麻については下記を参照下さい。

伊勢王と筑紫君薩夜麻の接点
https://www.furutasigaku.jp/jfuruta/kaihou86/kai08604.html

を参照下さい。また、伊勢王については下記を参照下さい。

伊勢王（いせのおおきみ）の時代(1)
盗用された常色の天子の事績
https://www.youtube.com/watch?v=Q8w91y8o-jc

伊勢王の時代⑵
『書紀』に盗用された伊勢王の事績
https://www.youtube.com/watch?v=hEw996sHQ0A

伊勢王の時代⑶
繰り下げられた利歌彌多弗利の葬儀と伊勢王の事績
-- 熟田津と「斉明」虚構の航海
https://www.youtube.com/watch?v=9VGSjQbK3rY

伊勢王の時代⑷
持統の伊勢行幸は無かった
https://www.youtube.com/watch?v=jCZUTuSqjiw

伊勢王の時代(5)
伊勢王の改革と「大化の改新・天武の改革」
https://www.youtube.com/watch?v=hEw996sHQ0A
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[2] mixiユーザー 01月14日 16:01

明日香皇子こそ九州王朝の天子「筑紫君薩夜麻」であり、日本書紀では、大伴博麻を奴隷に売って帰国した「卑怯な男」筑紫君薩夜麻として描かれています。

詳しくは、下記を参照下さい。

明日香皇子の出征と書紀・万葉の分岐点
https://furutasigaku.jp/jfuruta/kaihou84/kai08402.html
◆

[3] mixiユーザー 01月25日 23:02

現状の地名解釈は前詞に依拠し、下記のように何が何でも奈良県にしてしまっています。
そのため、所在未詳とする他なくなっています。

【故地名】明日香の真神が原
【故地名読み】あすかのまがみがはら
【現在地名】奈良県高市郡明日香村
【故地説明】明日香村飛鳥の飛鳥寺付近一帯の野｡→真神が(の)原
【故地名】東の国
【故地名読み】あずまのくに
【故地説明】東国地方の総称｡範囲は一定しないが､集中では､東海道は遠江以東､東山道は信濃以東をさし､陸奥を含む｡
【故地名】香具山の宮
【故地名読み】かぐやまのみや
【現在地名】奈良県
【故地説明】天武天皇皇子高市皇子の宮｡香具山の麓､埴安の池付近､宮址未詳｡
【故地名】城上の殯宮
【故地名読み】きのえのあらきのみや
【現在地名】奈良県北葛城郡広陵町
【故地説明】明日香皇女､高市皇子などの墓所､所在未詳｡｢三立岡墓｡高市皇子｡在二大和国広瀬郡一)(諸陵式)とあり､広陵町大字三吉字大垣内に三立山の名をのこす｡このあたり荒墳が多い｡一説に同町安部の荒木山古墳｡
【故地名】城上の宮
【故地名読み】きのえのみや
【現在地名】奈良県北葛城郡広陵町
【故地説明】城上の殯宮に同じ｡（明日香皇女､高市皇子などの墓所､所在未詳｡｢三立岡墓｡高市皇子｡在二大和国広瀬郡一)(諸陵式)とあり､広陵町大字三吉字大垣内に三立山の名をのこす｡このあたり荒墳が多い｡一説に同町安部の荒木山古墳｡）
【故地名】百済の原
【故地名読み】くだらのはら
【現在地名】奈良県北葛城郡広陵町
【故地説明】奈良県北葛城郡広陵町大字百済あたりを中心に曽我川､葛城川流域一帯の地｡一説に橿原市南殿町字東百済･西百済(藤原宮朝堂院跡あたり)付近｡
【故地名】高麗
【故地名読み】こま
【故地説明】朝鮮半島北部にあった高句麗｡
【故地名】埴安の御門
【故地名読み】はにやすのみかど
【現在地名】奈良県橿原市
【故地説明】天武天皇皇子､高市皇子の香具山の宮｡→香具山の宮
【故地名】不破山
【故地名読み】ふわやま
【現在地名】岐阜県不破郡関ヶ原町
【故地説明】不破の地の山｡不破の関西方の不破郡関ｹ原町今須にある伊増峠付近か｡一説に同郡垂井町･関ｹ原町と養老郡養老町にまたがる南宮山(美濃中山)｡
【故地名】真神が(の)原
【故地名読み】まがみがはら
【現在地名】奈良県高市郡明日香村
【故地説明】奈良県高市郡明日香村飛鳥の飛鳥寺(安居院･飛鳥大仏)を中心とした一帯の地｡甘橿丘陵の東方､飛鳥川に沿う南北にわたる平野｡地域をさらに南北にのばして橿原市見瀬町に至る地域､桧隈大内陵(天武･持統合葬陵､明日香村野口)をも含める説もある｡まがみのはらとも。
【故地名】瑞穂の国
【故地名読み】みずほのくに
【故地説明】→葦原の瑞穂の国
【故地名】和蹔が原の行宮
【故地名読み】わざみがはらのかりみや
【現在地名】岐阜県不破郡関ヶ原町
【故地説明】この地にあった行宮｡野上の行宮(関ヶ原町大字野上)をさすか｡
【故地名】渡会の斎の宮
【故地名読み】わたらいのいつきのみや
【現在地名】三重県伊勢市
【故地説明】伊勢市にある伊勢神宮｡天照大神をまつる｡
【地名】明日香：真神の原：背面の国：不破山：和射見が原：東の国：度会：瑞穂の国：埴安の御門の原：百済の原：城上の宮：香具山の宮
【現在地名】奈良県高市郡明日香村飛鳥を中心とする一帯の地：奈良県高市郡明日香村飛鳥寺の南に広がる平地：岐阜県西南部：岐阜県不破郡と滋賀県坂田郡との境の山：岐阜県不破郡関ヶ原町関ヶ原：東方諸国：三重県伊勢市および度会郡に当る：古代日本の異名：香久山の西南部にあった池の
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/detail?cls=db_manyo&pkey=199
◆

[4] mixiユーザー 05月21日 20:47

　このように、万葉一九九番歌は「高市皇子挽歌」でも、壬申の乱を歌ったものでもなく、白村江の戦いに先立つ、百済に於ける洲柔城の一大陸戦を指揮した九州王朝の明日香皇子を歌ったものです。

それが大和なる「高市皇子」に関する歌として「換骨奪胎」されていたということになります。この点、古田武彦により次のような指摘がなされています。

　
　この点、”さらにあまりにも明白な”論証を加えよう。
　それは「天武天皇挽歌、欠落の論証」である。
　この挽歌の「対象」とされてきた高市皇子は持統十年（六九六）の没である。このさいに人麿が「作った」とされてきたのだ。
　ではなぜ、「天武天皇挽歌」がないのだろう。
　（朱鳥元年〈六八六〉九月）丙午（九日）に天皇の病、遂に差(い)えずして、正宮に崩(かむあが)りましぬ。　（天武紀、下）

　高市皇子の没した、その「十年前」だ。当然、その時も人麿は ”生きて” いたはずだ。これは ”疑いない” ことだ。
　とすれば、その時なぜ、人麿は「天武天皇の挽歌」を作らなかったのだろう。「用があって」忙しかったのか。それとも「気が向かなくて」作らなかったのだろうか。いずれも、考えられないことだ。
　かりに、人麿自身については「急病」などの、止むを得ぬ理由があったとしても、ではなぜ、代わりの歌人が、その「天武天皇の挽歌」を作らなかったのだろうか。解(げ)しがたい。
　大和には、人麿以外に「人なし」、つまり「挽歌を作るような力量の歌人」がいなかったのだろうか。信じられない。
　あの万葉集中の、天智天皇・天武天皇・額田王などの「作歌力量」を見るにつけても、右のような「推定」は到底、成り立ちうるとは、わたしには思われないのである。そうではないだろうか。もちろん、人麿ほどの力量の「挽歌の作歌者」は見出しがたかったかもしれないけれど、それはそれだけのことだ。「挽歌、【不存在】」の理由にはならないのである。
　この問題は無論、前から気づかれていた。万葉集の巻一、二、三等を通観すれば、誰でも気のつくことだ。
　だが、誰にも、この「疑問」に答えることができなかった。
　「みんなんで答えられなければ、こわくない。」
　これが、すべての万葉学者の ”心中” だったのではないだろうか。少なくとも、この一点を「重大な疑問」として万葉集全体への史料批判を開始しようとした研究者を、わたしは知らない。
　だが、今は、ちがった。この「疑問」に対して、感嘆に応えることができる。いわく、
　「その『換骨奪胎』のための「人麿作歌」が存在していなかった。
からである。「盗作のため、恰好なモデル」がなかった。【ありてい】に言えば、そういいうことだ。
　実もふたもない「回答」のようだけれど、これ以上まともな答えはありえないのである。／／

　辛辣な論証ではあるが、先に当方が

柿本朝臣人麻呂の「朝臣」という称号
https://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=18000&id=101304258

で指摘の通り、人麿は「正三位」という筑紫倭国の官人であり、大和朝廷の宮廷歌人ではないということを明かしています。■

[5] mixiユーザー 05月22日 21:19

[3] で示した、地名解釈の誤りを明確にするために、先ず「万葉百科奈良県立万葉文化館」が提示す書き下しを以下に引用します。

読み下し文(題詞)
　高市皇子尊の城上の殯宮の時に、柿本朝臣人麻呂の作れる歌一首〔并せて短歌〕

読み下し文

かけまくもゆゆしきかも〔一に云ふ、ゆゆしけれども〕言はまくもあやに恐き明日香の真神が原にひさかたの天つ御門を恐くも定めたまひて神さぶと岩隠りますやすみししわご大君のきこしめす背面の国の真木立つ不破山越えて高麗剣和射見が原の行宮に天降りいまして天の下治めたまひ〔一に云ふ、掃ひたまひて〕食す国を定めたまふと鶏が鳴く東の国の御軍士を召したまひてちはやぶる人を和せとまつろはぬ国を治めと〔一に云ふ、掃へと〕皇子ながら任したまへば大御身に大刀取り佩かし大御手に弓取り持たし御軍士をあどもひたまひ整ふる鼓の音は雷の声と聞くまで吹き響せる小角の音も〔一に云ふ、笛の音は〕敵見たる虎か吼ゆると諸人のおびゆるまでに〔一に云ふ、聞き惑ふまで〕捧げたる旗のなびきは冬ごもり春さり来れば野ごとにつきてある火の〔一に云ふ、冬ごもり春野焼く火の〕風のむた靡くがごとく取り持てる弓弭の騒きみ雪降る冬の林に〔一に云ふ、木綿の林〕飄かもい巻き渡ると思ふまで聞きの恐く〔一に云ふ、諸人の見惑ふまでに〕引き放つ矢の繁けく大雪の乱れて来れ〔一に云ふ、霰なすそちより来れば〕まつろはず立ち向かひしも露霜の消なば消ぬべく行く鳥の争ふはしに〔一に云ふ、朝霜の消なば消と言ふにうつせみと争ふはしに〕渡会の斎の宮ゆ神風にい吹き惑はし天雲を日の目も見せず常闇に覆ひたまひて定めてし瑞穂の国を神ながら太敷きましてやすみししわご大君の天の下申したまへば万代に然しもあらむと〔一に云ふ、かくもあらむと〕木綿花の栄ゆる時にわご大君皇子の御門を〔一に云ふ、さす竹の皇子の御門を〕神宮に装ひまつりて使はしし御門の人も白たへの麻衣着埴安の御門の原に茜さす日のことごと鹿じものい這ひ伏しつつぬばたまの夕になれば大殿をふりさけ見つつ鶉なすい這ひもとほり侍へど侍ひ得ねば春鳥のさまよひぬれば嘆きもいまだ過ぎぬに思ひもいまだ尽きねば言さへく百済の原ゆ神葬り葬りいませてあさもよし城上の宮を常宮と高くしまつりて神ながら鎮まりましぬ然れどもわご大君の万代と思ほしめして作らしし香具山の宮万代に過ぎむと思へや天のごとふりさけ見つつ玉だすきかけて思はむ恐くありとも
◆

[6] mixiユーザー 05月23日 13:26

　最初に、長歌最終部の、

大君の万代と思ほしめして作らしし【香具山の宮】万代に過ぎむと思へや天のごとふりさけ見つつ玉だすきかけて思はむ恐くありとも

の「香具山の宮」について検討しましょう。次のように説明されています。

【故地名】香具山の宮
【故地名読み】かぐやまのみや
【現在地名】奈良県
【故地説明】天武天皇皇子高市皇子の宮｡香具山の麓､埴安の池付近､宮址未詳｡

結局、「香具山の麓､埴安の池付近､宮址未詳」となっていますが、この「香具山」という表記は〈元暦校本〉では「未」であり、後代写本である金沢本他が「来」となっているので、この後代写本を是とし、「大和の香具山」として大和内での作歌に見えるようにしています。さらに、その前の、

御門の人も白たへの麻衣着【埴安】の御門の原に

の「埴安」も〈元暦校本〉では「垣安」であり、後代写本である紀州本が「埴安」となっているのを採用し「大和の香具山のそばの埴安の池」と結び付けているに過ぎません。その結果が、説明にある

【故地説明】天武天皇皇子高市皇子の宮｡香具山の麓､埴安の池付近､【宮址未詳】｡

ということです。つまり、原表記のままでは「大和に会わない」ために、「原文改訂」を行い大和に合わせ、前詞の高市皇子に合わせ解釈するというのが、契沖以来、現在の万葉学者に続く「大和朝廷一元史観」というイデオロギー史観の手法であるということです。■

[7] mixiユーザー 05月24日 15:48

　この、万葉一九九番歌は「高市皇子挽歌」ではなく、壬申の乱を歌ったものでもなく、白村江の戦いに先立つ、百済に於ける洲柔城の一大陸戦を指揮した九州王朝の明日香皇子を歌ったものであるということを論じていますが、

＞＞読者の中には「冬こもり、み雪降る、大雪の」という句から戦闘が行われたのは冬である
などというトンデモな珍説を御披露なさっておられる御仁がいらっしゃいますが………

と、あくまで現在の万葉学の理解を根拠に反論が提起されています。しかし、その反論には何の論理性もありません。主要な論拠は、

＞＞「冬こもり、み雪降る、大雪の」という句から戦闘が行われたのは冬であるなどというトンデモな珍説　

ということであり、

＞＞これらの句や節は「旗が靡く様、弓弭の音の凄まじい様、放つ矢の数の夥しい様」を述べた、いわば戦(いくさ)のありさまを叙述、形容した句や節であって、戦闘が行われた季節を言っているものでは決してありません。

というものです。しかし、この論者自身次のように記してます。

＞＞壬申の乱は書紀に書かれているように天武元年(弘文元年)(672)の6月末～七月に日本国の滋賀県和射見ケ原(今の関ヶ原)にて起こった大海人側(天武側)と近江側(大友皇子側)の皇位を賭けた擾乱です。

つまり、壬申の乱は陰暦の「6月末～七月に」掛けた戦いであり、太陽暦では、ほぼ「七月下旬から八月下旬の初頭」に掛けた戦いです。この点、古田武彦は次のように記しています。

　壬申の乱で戦った将軍も、兵士も、流れる汗をぬぐいつつ、暑熱の中で戦ったのである。それも、軽やかなスポーツシャツなどではない。将軍も、兵士も、それぞれの「武装」をしていたであろうから、その暑さは、敵味方とも、並たいていのものではなかったであろう。
　これは現代における、わたしの想像にすぎないけれど、ほぼ狂いのない想像、そう言っていいと思う。／／

この真夏の戦いを描くのに、何故【いわば戦(いくさ)のありさまを叙述、形容した句や節」に、あえて真冬から早春めいた "比喩" や "修辞" を用いたのか】ということです。全くナンセンスであり、それを現地で描写した人麻呂にはマゾがサドの嗜好でもあるのかという他ありません。古田は次のように記しています。

　世界の詩歌の歴史の中に、そんな例があれば、出してみてほしい。あれば、ただ「奇矯を好む」愚凡人、二流、三流の詩人にすぎぬ。わたしは人麿を以て、そのような詩人とは思わない。このような明快な問題に対する、百千の弁舌は、ひっきょう自家が「御用学者の系譜」に立つ、その末流であることを見事に立証するに終わる他ないのではあるまいか。／／

もっとも、この「トンデモな珍説を御披露なさっておられる御仁」は「御用学者の系譜」に立つ、その末流の、また末流であるカルチャーセンターの講師の珍解釈を受け売りをされているに過ぎないようですが。

＞＞特に挽歌に関しては正しい歴史を踏まえたうえで正しい投稿の出来る方に後任をお任せしたいなと望

まれているようですが、先ずは正しい歴史認識を踏まえた上で歌の内容を正しく理解する基本的な読解力が問われているという他ありません。　

　昭和百年に当る現在、江戸国学以来の皇国史観を無反省に継承する後任を探し求めるなど全くのナンセンスであり、第二の敗戦に次ぐ、第三の敗戦を繰り返す他ないのは歴史が指し示すところです。

この、一九九番高市皇子挽歌の誤読については、更に詳しく論証、展開していきます。■

[8] mixiユーザー 05月24日 20:39

　この万葉一九九番歌は通説では「壬申の乱」を歌った長歌とされながら、”勝利の賛歌” にはなっていません。これは何故かを明らかにする必要があります。

　壬申の乱の場合、戦いは天武側、つまり高市皇子側の「完勝」に終っています。相手の大友の皇子（弘文天皇）が首をくくり自殺しています。しかし、この長歌には、その「勝どき」を挙げたような詞句はありません。「冬から早春」への戦の場面から、そのまま

　「百済の原ゆ　神葬り　葬りいまして」

という葬送儀礼の歌詞へと続いています。これについて、古田は次のように指摘しています。

　戦（六七二）から二十四年後の歿時（六九六）に至る間に、何一つ ”戦に完勝した、歓喜” の詩句も、”大賞美、大賞賛” の歌詞も、一切存在しないのだ。
これは変だ。従来は、
　　「人麿作歌の中に、【ない】ものは仕方がない。」
　そう言って「みんなで、がまん」してきたのではないだろうか。
　しかし、この作歌者（人麿）の【立場】に立ってみよう。
　死者が「高市皇子」であったとした場合、その「歿」にのぞんで、その「生前」の功績をしのぶ歌を作る場合、その戦闘場面にばかり、長口舌をふるいながら、肝心の「完勝のさいの輝かしい姿」には一切触れず、沈黙を守り通す。そんな「作歌者」がいるだろうか。わたしには「想像」さえできない。わたしの頭が ”おかしい" のだろうか。いくら考えてみても、わたしにはそうとしか考えられないのである。
　この長歌では
　「一大激戦のあと、当人（長歌）の対象者が消え去った」
　そういう "悲劇の様相” しか、わたしには全くうかがえない。
　これがもし、「壬申の乱」ではなく、あの「州柔城の一大陸戦」の場合なら、決して不思議ではない。新羅軍に加え、唐の大軍が "対する相手" だったのだから、この人物（明日香皇子）がこのような運命に遭遇したとしても、何一つ不思議はなかった。
　やはりこの「人麿作歌」は、もともと、高市皇子のために作られた挽歌などではなかったのである。／／
◆

[9] mixiユーザー 05月25日 00:14

　 [6]で、現在の万葉解釈原文は「元暦校本」や「西本願寺本」など、一般の古写本の「原表記」を "捨て" 後代写本の表記に「原文改訂」されていることを指摘しました。

その、目的は原表記のままでは「大和に会わない」ために、「原文改訂」を行い「大和に合わせる」ことにあります。前詞の高市皇子に合わせ解釈するというのが、契沖以来、現在の万葉学者に続く「大和朝廷一元史観」というイデオロギー史観の手法であるということです。

この原文改訂の基に、壬申の乱にはあらざる戦闘の描写を無理やり解釈しているのが現在の万葉学の実態であり、その破綻を先に指摘しましたが、では「元暦校本」に従った場合には如何に解釈されるのかを具体的に示す必要があります。それを、更に古田氏の解読、解明に従い展開したいと思います。

　第一は、「香未山之宮」ですが、これは「神山の宮」です。長歌の中にも

　　我が大君皇子の御門を [一云刺す竹の皇子の御門を] 【神宮に】装ひまつりて使はしし御門の人も白栲の麻衣着て埴安の御門の原に

と、「神（山の）宮」が謳われていますが、最後の「香未山」を「香來山」に改訂しています。
（巻十七，四〇二では「前書き」で「雄【神】川」、本文〈歌〉で「乎加【未】河」と表記されている。）
九州の筑紫（筑前）の朝倉郡には麻氐良布神社があります（朝倉市杷木町志波五四五八）。それは麻氐良布山の山頂にあります。
　注：麻氐良布神社 Materafu Jinja
　　　https://www.kyushu-jinja.com/fukuoka/materafu-jinja/

『太宰管内志（上）』には、この麻氐良布神社の祭神として、次の表記があります。

　一説に、伊弉冊尊相殿・伊弉諾尊・斉明天皇・天智天皇・【明日香皇子】。　〈「神社志」六四六ページ:画像下記〉

　「一説にと言っているのは、この前に「祭神一座」として「伊弉【諾】尊」を中心（本殿）においたものと、相対した表記のようです。「相殿（あいどの）」の中に

　「明日香皇子」

の名があって、祭神の一に加えられているのが注目されます。なお、麻氐良神社ホームページ
　https://www.kyushu-jinja.com/fukuoka/materafu-jinja/

の「由緒」では、

　一説には、伊弉冊尊（いざなみのみこと）・伊弉諾尊（いざなぎのみこと）・斉明天皇（さいめいてんのう）・天智天皇（てんぢてんのう）・明日香皇女（あすかのひめみこ）を祭神（ごさいじん）とする説もあります。

と、「明日香皇女（あすかのひめみこ）」に書き変えられています。

　古事記、日本書紀はもとより、従来の「万葉研究」にも登場していない「名」なので、書き変えられたものと推測されます。

　この地元、朝倉郡の地に、「祭神」の中に加えられるほど、“追慕”されていた人物の名であるということです。
　この麻氐良布神社は、麻氐良布山という「神山」の【山頂】に建てられています。下記、YouTubeを参照下さい。

　ここは、文字通りの
　
　「神山の宮」

です。■

[10] mixiユーザー 05月25日 01:13

　この、万葉一九九番歌は「高市皇子挽歌」ではなく、壬申の乱を歌ったものでもなく、白村江の戦いに先立つ、百済に於ける洲柔城の一大陸戦を指揮した九州王朝の明日香皇子を歌ったものであるということを論じていますが、頑なに「壬申の乱を歌ったもの」と盲心し、「壬申の乱は朝鮮半島で起こったことであるなどといった記載」などと歌の内容を無視したトンデモ説、珍説を繰り返されている方がみえますが、先ずは歌の内容を正しく理解することが第一です。

　特に初期の万葉の前書きは信用できないのですが、頭に血が昇っていては見るものも見えないことになります。■

[11] mixiユーザー 05月25日 13:31

[9]では、「香未山」→「香來山」の原文改訂を指摘しましたが、次は、「垣安」→「埴安」の原文改訂です。

　「垣安」では「大和内の地名」とはなり得ませんが、「埴安」に“変える”と、「【大和】の香具山のそばの埴安の池」と結び付けることができます。事実、「万葉百科奈良県立万葉文化館」の「関連地名」では、「香久山の西南部にあった池の」としています。すなわち、「元暦校本」や「西本願本」など、一般の諸古写本の原表記を“捨てる”その目的は、ひたすら「大和に【合わせる】」ためということです。

このようにして、「神宮に装ひまつりて使はしし御門の人も白たへの麻衣着【埴安】の御門の原に」、「大君の万代と思ほしめして作らしし香具山の宮万代に過ぎむと」という改訂原文が生み出され解釈されています。

　では、「垣安」とは何かですが、「かき（垣）」は「かみ（神）」の「か」を接頭語する“神聖な” の意です。「き」は「城・柵」。次に述べる「城邊（きのへ）」の「城」に当ります。
　従って「かき」は「神聖なる要害」の意を表します。
　「やす（安）」は夜須。夜須郡の名が著名です。
　すなわち「かきやす」は、“神聖なる夜須”を意味する言葉です。九州の筑紫の一地名の美称になります。

　さらに触れておかなければならないのは、「城上（きのへ）の宮」（長歌　一九九）です。
　原文は「木上宮」ですが、この歌の前詞にも「城上の殯宮」とあり、その原文は「城上殯宮」となっています。この歌の「核心」をなす地名であることは疑いがありません。
　ところが、これに当る「場所」が「大和の中」には、うまく見つかりません。「万葉百科奈良県立万葉文化館」の説明も、

【故地名読み】きのえのみや
【現在地名】奈良県北葛城郡広陵町
【故地説明】城上の殯宮に同じ｡（明日香皇女､高市皇子などの墓所､所在未詳｡｢三立岡墓｡高市皇子｡在二大和国広瀬郡一)(諸陵式)とあり､広陵町大字三吉字大垣内に三立山の名をのこす｡このあたり荒墳が多い｡一説に同町安部の荒木山古墳｡）
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/detail?cls=db_manyo&pkey=199

としています。結局、万葉集に明記された、「高市皇子尊の【城上】の殯宮」なるものは「存在不明」に終わっているのが実態です。この事実は極めて意味深い、真実（リアル）であるということです。

　これに対し、九州にも「城邊（きのへ）」があります。筑紫（筑前）の下座（シモツクラ）郡にあります。

　城邊　木乃倍　　（和名類聚抄）

　ここは「夜須郡」と近接しています。あの「かきやす」です。また同じく近接する上座（カムツアサクアラ）郡の把木（ハキ）には、[9]で挙げた麻氐良布神社があり、その祭神の一つに「明日香皇子」が祭られていました。この皇子の名は「大和にはありません。
　それがここ、朝倉郡「上座郡」には存在する。

　この事実を古田武彦は次のように結論づけています。

　人麿作歌の、本来の故郷、それがどこか、すでに疑うことは困難なのではあるまいか。
　今まで扱ってきた、幾多の人麿作歌(「雷山の歌」〈二三五〉や「天帰の歌」〈二四〇〉「滝の歌」〈三六〉などと同じく、ここでも「九州から大和へ」の移植が見事に行われている。そして残念ながら不細工に。

　わたしは、ことの本質をそのように見すえることとなった。やはり、いわゆる「壬申の乱の歌」〈一九九〉は“壬申の乱”とは関係がない。わたしの探求の目は、今ようやく真の対象を求めはじめたのである。

と。

注：麻氐良布神社
　　往古より鎮座にして、延喜式神名帳に上座郡麻氐良布神社小一座として載る。日本書紀斉明天皇の条に「朝倉の社の木を伐り神怒りて宮殿を壊り侍臣多く疫死、天皇また崩御し給う」とある。朝倉山の上に鬼があらわれ、大笠を着て喪の儀式を覗いていたということであるが、日本で最初に「鬼」という文字が使われたのがこの時の「鬼」である。
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