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ранобэ 電撃組「ラノベ」コミュのラノベよりもっと短い話

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携帯からトピックス作るのは難しいので、今のうちに作っておこうと想います。超短文作品をのせる場所ですよ。
題名と、文章はわかるようにしておきます。(してください)
入りきらない場合は、話とか、章、巻とかで区切ってくださいな。(おわり)

コメント(17)

【君がいたから】

馬の蹄が土を蹴り大地に大きな傷跡を残していく。ここはまっさらな世界に途絶えた文明が密かに巣くっている。祖先が大地を削り、木を倒し、水辺に化学物質を捨て水は淀んでしまったそんな世界。
今では葉に似せた飛行機で飛ぶことができる。しかし、光合成によるエネルギー代謝を基盤としているため、夜には飛べなくなる。だから、彼は馬を使って急いだ。

一刻も早く、手紙を運ぶために…。

手紙の内容は見てはいけないし、知ってもいけない。今回の手紙は子供だった。
彼は荒れた大地から子供を救うために疎開させようという親心なのだと思うことにした。実際のところ、小さな子供を疎開させるために手紙にするなど頻繁に起きていることなんだと自分に言い聞かせていた。だが、いつもと違う違和感があるのは間違いない。こんなに小さな子供なのに親が恋しくて泣いたり、はしゃぐこともない。
しかし、手紙の中身は知ることはできない。気にかけながらも着いてから判断すれば良いと考え、馬を再び全速力で走らせることにした。

幾分の時間がたったであろうか。瓦礫の山が見えてきた。どうやら、目的地に間違いなさそうだ。建物が崩れている理由はさっぱり分からなかったが…。

瓦礫に近づいてみるが人の気配がしない。周りを見渡しても世界が広がるだけだ。
「誰かいませんか?」
幾度も叫んだが、出てくる気配もない。
どこかへ出かけているのだろうと思い、待つことにした。小さな子供は寒そうにこちらへ体を預けて眠ってしまっている。

幾日たっても誰も帰って来なかった。彼は瓦礫をかき分け探索し始めた。元、研究所らしかった。日記を見つけ読んでみると大変なことが書いてあった。
『我々は世界を再生するために技術を駆使してきた。しかし、思う…技術を駆使しようとするが材料がないことに。祖先は核を使い全てを奪ってしまった。もう衰退するしかないかと悪態をつくものまで出てきた。彼らはいっそのこと無くしてしまえば始めから何もなかったではないかと研究所を燃やし始めた。だが、私は彼女と彼女の中の子供がいたから、正常を保てた。だから、私は彼を刺した。私は間もなく捕まるであろう。しかし、最後まで生き続けるつもりだ。君がいるから…』

彼は日記をバッグの中にしまい込み、親が帰るまで、この子の里親になることにした。

数年後、小さな子供は彼と共に手紙を配達するようになった。もちろん、日記のことは知らずに。
【こんなんで良いのか?】

 コール音。
「もしもし」
『もしもし。私だけど』
「誰?」
『私、紗夜香(さやか)だよ』
「何?」
『ちょっと会えないかな?』
「なんで?」
『話したいんだ』
「・・・別に良いけど」
『本当!なら、明日の17時に良いかな?』
「良いよ」
『ありがとう!なら、明日の17時に、そうだなぁ、駅前で良いかな?』
「オーケー」
『それじゃあ』



(・・・どうしよう)
「・・・10回目」
「えっ?」
 驚いて、隣を見る。そこには、親友の柚樹(ゆき)、澪(れい)、雅(まさ)弥(や)、裕樹(ゆうき)、文歌(あやか)がいた。全員がジッと、私を見ていた。
「何かあったの?」
「言うだけ言ってみたら?」
 澪と雅弥の言葉に私は少し考える。こんなことを言ったら、馬鹿にされることはわかりきっている。でも・・・。
「あのね、」
 先日の出来事を話す。

 駅前には多くの人がいる。まぁ、それは当然。会社は終わっているし、学校も終わって、家に帰ろうとしている人ばかりなのだ。ましてや、駅前であれば、それは当然のこと。
「どこだろう・・・」
 私は、そんなことには気にせず、周囲を見回す。紗夜香の姿は見えない。会うこと自体久しぶり、といっても、約半年振りかな?
「・・・そういえば、どんな話なのかな?」
 今更ではあるが、そのことが気になる。昨日の電話では、何か悩んでいるようには見えなかった。というか、会うこと自体久しぶりだけど、二人で話すなんて・・・。
「初めて?」
 そんなに話すほどの仲ではなかったし、話すとしても、連絡事項といえるようなことばかりだったような・・・。私自身は、仲の良い友達以外とはそれほど話すことはしない性質だし・・・。
「なんなんだろう?」
「美央(みお)!」
呼ばれたので、振り向いてみると、そこには、紗夜香ともう1人、女性がいた。女性のほうは、私達より年上のようだ。まぁ、ちょっと見ただけだから実際にはどうなのかわからないけど。
「久しぶり。元気だった?」
「まぁね。そっちは?」
「元気だよ」
 笑いながら交わす会話におかしなところは無い。むしろ、普通だ。ごく当たり前の日常会話の1つでもある。
「そこの喫茶店にでも入って、話さない?」
「良いね」
「そうそう、こちらは、私がお世話になっている人で、愛羅(あいら)さん」
「はじめまして」
「はじめまして」
 礼儀正しく挨拶をされ、私はちょっと緊張する。それは、愛羅さんの雰囲気が醸し出しているものなのかもしれない。
 紗夜香はそんなことは気にせずに近くの喫茶店へと入っていく。私と愛羅さんはその後を追う。

「・・・普通ね」
「確かに」
「悩むようなことじゃないでしょう?」
「まだ途中!!」
 話の途中で遮られるなんて・・・。私はため息を吐く。というか、相槌を入れるくらいならともかく・・・。まぁ、澪、柚樹、雅弥が何かを言うことはわかっていたけれど。
「じゃあ、続きを話してよ」
 ・・・こいつは・・・。
 何とか、怒りを抑えながら、私は続きを話す。その様子に、文歌と裕樹が苦笑していることは、気にしない。

 喫茶店に入って、最初のうちは普通の会話だった。学校の話、授業の話、会社の話・・・そういったものだ。だったのだが・・・。
「これを見てもらえない?」
 そう言って、紗夜香が出してきたのは、1冊の本。それも、宗教関係のもの。
 私は一瞬のうちに固まってしまった。同時に、どこかで、こういうことか、と理解してしまった。
「今ね、私はココに所属しているんだけど、ココは、本当に良い所なのよ。私は、ココに入ってから、すごく幸せなの」
 その表情は、本当に幸せそうなものだった。
 ・・・私がきちんと覚えていたのは、ここまでだ。



「・・・あとは、ただ、流されてしまって・・・」
「・・・入会したの?」
 俯いている状態で、頷く。
・・・呆れたような表情。呆れたようなため息。続く言葉はただ1つ。
「馬鹿?」
 5人揃って言う。かと思ったら、1人言わなかったような・・・。私は、顔を上げる。それは、他の4人も同じだったようだ。言わなかった1人、文歌は、少し考えているようだ。
「・・・会わないかって言われたんだよね?」
「そうだよ」
「・・・同じかな?」
「・・・えっ!?」
 文歌は携帯電話を取り出す。ちょっと操作をして、私達の前に出す。そこには、1通のメール。差出人の名前は知らない。けれど、それには、こう書かれてあった。
『もしよかったら、お茶しない?』
「・・・何これ?」
「ある先輩からのメール」
 呆然と文歌を見る。それは、他の4人も同じ。文歌は、ため息を1つ吐いて、言う。
「あまり仲が良かったわけではない人なんだけどね、急にこんなメールが送られてきたの。それも、別の人に私のアドレスを聞いて」
「マジ?」
「マジ」
「で、何かおかしいな、と思って、いろいろと問いただしてみたの」
「・・・どうやって?」
 とてつもなく怖いことを平然と雅弥は聞く。・・・こいつは・・・。文歌はニヤリと笑う。・・・怖い笑みだ。できれば、見たくない。聞きたくない。
「散々、メールが送られてきたからね。『宗教の話がしたいのなら、他の人にしてください』って送ったのよ」
「それで?」
「ちょっと続いて、相手側から『信仰しているものの話をしたかった』ってきたの」
「そうなんだ」
「そ。でも、まぁ、相手とは、その後もそれなりの関係は続けているよ」
 ・・・それは、文歌だからできるのではないだろうか。それに、先輩っていうことも関係しているのでは・・・。
 ・・・絶対に言えないけどね。
「何か言いたそうね、美央」
「そんなことないよ」
 文歌の顔が、私をいじめようとしている時のものになっている。・・・それは、何としても避けないと・・・。
「まぁ、文歌のことはすでにきちんとしているけど、問題は、コレでしょ」
「そうだよなぁ」
「本当に、馬鹿なことを・・・」
「・・・何も言えないよ・・・」
「言ってるじゃない」
 ぐっ。何も言えないし、言い返せない。うー・・・。
「漫才はしないでね」
「そうだよなぁ、どうするかな・・・」
 ・・・澪と裕樹は頼りになるなぁ・・・。はぁ。
「入会ってどうやってするの?」
 ふとした問いのようだ。柚樹の言葉に、私は何とか思い出す。・・・思い出したくなかった・・・。
「どうしたの?」
「・・・信用してくれる?」
「は?」
 遠い目をしてしまった私を5人は見る。・・・アレはなぁ・・・。

「じゃあ、支部へ行きましょうか」
「へ?」
 それ以上言うことなく、私は、紗夜香と愛羅さんに引きずられるようにその支部とやらへ連れて行かれた。

「その支部で入会の手続きをしたわけね」
「そうなんだけどねぇ・・・」
「何かあったの?」
 ・・・。言いたくねぇ・・・。
「・・・赤いホテルマンみたいな服着た人達」
「は?」
「いや、だから、赤いホテルマンみたいな服着た人達が、その場にいたわけ」
「・・・何それ?」
「さぁ」
 ・・・沈黙。・・・仕方ないよなぁ。普通そんなのありえないだろうし。実際に見ても信じられないし・・・。
「本当にいたの?」
「いた」
 ・・・。・・・。・・・。・・・。・・・。・・・。
「行くぞ」
「えぇー!」
「当たり前でしょう。そんな人達、見て見なきゃ」
「って、入会しに行くの?」
「そんなわけないでしょう。見るだけよ」



 というわけで、なぜか、見に行ってきました。入会はしてないけれど、散々笑っていたなぁ・・・。・・・あの人達、可哀相だったなぁ・・・。まぁ、どうでも良いか。無事、退会できたのだから。
【扉の外側の存在】

遠くのほうで呼ばれた気がして、ふと眼を醒ますと、空と自分の間を舞う鳥によって遮られた。
晴れていたはずなのに、今は曇っている。そして、髪や衣服は濡れている。

なんで、濡れていたのかはっきりとわからなかった。ここは、雲よりもずっと上の空なのに…。

記憶を掘り起こしてみるが、飛行機に乗ってからの部分が全くなかった。ついでに手に持っていた荷物もなくなっていた。放心状態で視界をさ迷っていると大きな影に覆われた。

「何故、ここにいる。子よ、貴方はここにいるべきではない。」

何のことかわからない。気がつくとここにいた。それはひとつの幻影にすら見えた。

「そうか、自分もわからずにさ迷っているのだな。」

この人は私に問いを投げかけるが、口から声がでない。何か言おうとするたびに空気に溶けていく。

「貴方の肉体はないのです。悲しいことでしょうが、わかってください。」

私は…いない…。ここには…もういないの…じゃ、私はだれ…。
思考回路がぐるぐる回っていた。だから、わからなかったのであろう。

「新しい命として、生まれてきますように。」

この人は私のために祈ってくれている。そうか…私は…生まれて来なかったんだ…飛行機のなかで…お母さんが…。これ以上は言えない。また、新生できることを心待ちに私は巣立った。


1年後、私は生まれた。息吹きの泣き声をあげて。
【Birth】

 1つの生命の誕生に費やされるのは、どれほどの労力と時間なのだろうか。
 原初は何も無い。無の状態。けれど、闇が支配していた。その中に、唐突に何かが形づくられていった、白い光によって。ソレは、いつしか止まっていく。形づくられたから。そこから、誕生は始まった。1つ1つゆっくりと。ソレが創られるまでよりは短い時間(トキ)で。

 最初に創られたものは、宇宙。ただし、創られた当初は名前など無かった。呼ぶ存在がいなかったから。しかし、ソレが広大なものであることに変わりなく、無限に広がり続けている。それは、今も変わっていない。少しずつ、宇宙の中に、惑星や衛星(ホシボシ)が創られていった。それを構成するもの、水素、酸素、二酸化炭素等の気体も同時に創られた。
 最後の、いや、最新の惑星として創られたもの、地球。そこには、水が有る。・・・そこにしかない。いや、そこにしかなくなってしまったのだ。だからこそ、そこには生命(イノチ)が誕生した。そこ以外のどこにも水は無い。だからこそ、そこにしか生命は作れなかった。それが、偶然なのか、必然なのか、わかるものなどいはしない、ありはしない。ただ、その事実だけがある。ただそれだけのこと。
 生命は進化していった。いや、退化なのかもしれない。まぁ、その生命の外見、構造が変化しただけなのかもしれないが。生命は幾つかの過程を経て、異なるものへとなっていった。元は同じものであったにもかかわらず、気づくことも知ることもない。いや、本能・・・直感的なもので感じているのかもしれない。だが、それを信じたくはないのだ。だから、知らないまま過ごしていく。変化していく中で言葉を持つことができるようになった存在(モノ)は、その手で何かを作り上げていくようになった。しかし、その中には、それが作ったのではないものもある。けれど、それに気づくものはいない。それらは妄信的であるから。

「我等を創りし存在(モノ)は何だろうか?」
 そう問うたのは、人間に神と呼ばれし存在。その問いに答えられる存在はいない。周囲には多くの存在がいるのに。それらは、ただ、困惑の表情を浮かべている。神と呼ばれし存在はなおも続ける。
「人間なのだろうか? けれど、もしそうなら、何故、彼等は我等と共にあろうとしないのだろうか? 我等と彼等に大きな違いがあるのだろうか? 我等は決して万能ではない。なのに、彼等は我等から距離を取る。彼等にとって、我等は何であるのだろうか?」
 ひたすら続けられる問い。答えを期待しているものではない。ただ口にしているだけ、という訳でもない。本当に疑問に思っている。だからこそ、答えは欲しい。けれど、周囲の存在に答えられる存在(モノ)はいないと感づいている。そして、たとえ、答えられる存在(モノ)がいても、答えてくれるわけではないとも。
 人間が神と呼ぶ存在は、疑問を胸に抱き続ける。終焉を迎えるその日まで。ただ、それだけが抱え続けることになる、この疑問は。
【畏怖の影】

新月の夜、狼の群れが走り去っていく。
無数に広がるその影はあたかも狼の群れを森から追い出す新しい騎士のように訓練されている。素早く回り込んで狼たちを取り囲む。しかし、その手ににぎられているものは剣でも弓でも槍でもなかった。
獣爪のごとく鋭くとがったカタールと呼ばれる代物だ。
彼は、鎧などつけはしない。なぜならば、素早く走り、柔軟に体をしならせるためには邪魔以外のなにでもないのだ。代わりに彼は衣服の上に赤染めの布を覆う。
抵抗するのをやめたのか、それとも怒りに満ちているのか、狼たちは新たな敵と対峙した。
「ぐるぅぅぅぅ」
低く唸る声は、恐怖を覚えさせる一声だった。
影は屈指もせずに、相手を鋭い眼光で睨む。その瞳にうつるのは敵と己のみだった。
統制されているとはいえ、普段は一人で行動することがおおい者たちである。
両者の前に沈黙と唸り声だけが流れる・・・。

永遠と続くかと思われたその一手を先に出したのは狼たちだった。
狼は一匹、また一匹と戦場へと繰り出していく。
この後に及んでも、戦いへと身を投じるものたちに自分と近いものを見出したのか、口元がにやりとほころぶ。
「そうじゃなきゃ、おもしろくない……」
一匹目をなぎ払うと返し手でもう一匹を吹き飛ばした。
いつの間にか、先ほどの沈黙が嘘だったかのように激しい音が鳴り響いていた。
轟音は更に増幅し、落ちてゆく闇の先に視線を送りながら、しばらくすると途切れた・・・。
「任務、完了」
仕事を終えた彼らは主のもとへ結果の報告をしにいった。

「では、市民から被害報告がでるため苦情がでていた件は片付いたのだな」
威厳を保ちながら、部下を見る目は厳しい監視者そのものとしての雰囲気を十分に、かもし出している。その脇に抱える護衛も侵入を許さない厳しい眼差しでみつめてくる。それに畏怖を覚えながらも主に報告を伝え、報告を終えた彼は、帰り支度をはじめた。

「おい」
「……は?」
「お前な、仲間内でも評判悪いぜ。俺は別にいいんだけどよ……せめて、そのなんだ、もうちょっと愛想をよくしてもだな……」
「生まれつきです。失礼」

ひげ男の言葉を冷ややかに遮ると、彼は扉を閉めた。
「……ちっ、せっかく忠告してやったのによ」

彼には舌打ちも、その後の文句も聞こえていたが、
顔色一つ変えずに去っていった。


街の中はいつものように活気あふれている。
民にとっての生計は貿易であるため、頻繁に船が出入りしている。
彼は中央通りの少し端を足早に歩いていた。今日の仕事は終わっているため普段着になっている。
大きな笑い声を上げる恰幅のよい女達の横を通り過ぎ、
右手の細い路地へと入っていく。
しばらく後、左に曲がってすぐの場所にある建物へと入った。

「……おかえり。はやかったね」
彼は渡された一杯の水を一気に飲み干した。
ふぅ、と一息つくと、彼はにこりといままでみせたこともない表情をみせた。
「今週は仕事が入ってこないと思うから、それまでゆっくりできるよ」
「そう。よかったわね」

彼はふと気がついたように、そのまま凍りついたように動かない一人を見て、彼はにこりと愛想を浮かべた。
「まだ、怖いかい」
その子は、首をふりながら、おびえていた。
「そうか……。なら、でかけることにするよ」
そして、彼は街の中へと溶け込んだ。

「あんな子じゃなかったのに、仕事がアレでは弟も怖がるわよね……」
母親のため息は、空を舞った。
【価値と理由】

「勇気ある旅人よ。よくぞこの地へ参られました」
「……僕を旅人と呼ぶのは……誰だい?
出てきてくれないかな?」
「……。
そして……この地へ歩んでくれたことを……
心より感謝します」
「貴方は、姿を見せない私を、訝しんでいる頃だろうが、どうか非礼を許して頂きたい。
この声が聞かれる頃には、私はおそらくこの世にはいないでしょう」
「この声は、記録にすぎない……。
これは、私と同じ心を持つ物だけに……。
この地で、私のように悩み、悲しんだ者だけに届く、記録にすぎません」
「もしも、貴方に、わずかばかりの時間があるのなら……。
そして、後悔しない決意があるのなら……。
しばし、ここに留まり……私の追憶をかいま見るがいいでしょう」
「私の名は……・……。
我が真実の名にかけて……約束しましょう。
ここに留まるなら……」
「貴方は、存在の本当の姿を知ることになる……と」

どうか、このことを忘れないでください。
どうか……



「起きよ……幼き存在よ」
「私を呼ぶのは……誰?」

どこか懐かしい気がする。
どこか寂しい気がする。
どこか忘れてしまった……。

「我は……。
そうだな……。例えていうならば、存在そのものだ」
「私……?」
「そうだ。我はお前と同じ存在であり、違う存在でもある」

「そのことについて、本来ならば疑問を抱くことは禁じられている……と、私の頭の中には、ある」
「禁じられているのに、問いをだすか?」
「……そうです」
「ならば……まだ……望みはあるのか」
「教えてくれないのですか?」
「お前の問いには、出来るだけ誠実に答えることを約束しよう。
むろん答えられないこと、答えたくないことはあるがな」
「理解しました」

「本質てきには、我とお前が共にあるというわけではない。
だが、同じものだ」
「違いはない……ということ?」
「そうだな。
どちらも同じことだ。
だが……このような考え方は、とても大切だ」
「世界を異なる角度で見る力……世界のゆらぎを感じ取る力を……お前は養っていかなければならない」

「あなたは、崇拝すべき完全なる存在なのですね?」
「幼き存在よ。
この世に完全などない……。
我々は、完全であることを強く望み続けてきた存在に過ぎない」
「あなたの言っていることはわからない」
「諦めるのはまだ早い……
まだ、始まったばかりなのだ」
「教えてはくれないの?」
「その答えを出すのは君自身……」

「どうした?何を沈んでいる?
怖いのか?」
「……私はあなたと同じように、
同じ者としてなれそうにもありません……」

彼は、少し驚いたような顔をすると、まるで、今、初めて会った者をみるように、私の顔をのぞき込んだ。

「……そうだな。
お前は私とは違う者となるだろう……」

重く、よく響く、託宣めいた声。
まるで遠くを見透かそうとするかのように、目を細める。

「だが……それで……いい。
なぜなら、生きるとは、誰のものとも違う、自分自身の旅路をたどることだからだ」
「道すがら、自らが選び取った荷を背負いながら……な。
それは、誰であろうと例外ではない……」

「そうじゃない。
そんなことを聞きたかったんじゃない!
あなたは知っていたのでしょう?
私は世界にとって、本来はあってはならない者、存在してはならない者なのでしょう?」
「それはどうかな?
それがどうしたというのだ?
お前は、こうして私の前に立っているではないか。
すでに存在を許されている。何を気に病むことがある?」

「しかし……」
「ハハハハッ……」
「そんなにおかしい?」
「なるほどな。
面白い見方をする。
違う観点からすれば、そういう考え方もあり得るわけだ」
「私は、そうは考えていないがな。
むしろ……私なら……。
……まあいい」
「?」


「とにかく、私は望まれて生きている者になりたい!」
「肝心な事が抜け落ちているぞ。
……本当に大切なのは、『何かになる』ことではなくて、『何をなすか』だとは思わないか?」
「だから、その望まれた者になれば、その全てが満たされるのだろう?」
「そうではない。
それは違う。
悲しいくらい、違いすぎるのだよ……」

彼は、どこか哀れむように俺を見つめると、ふいと目をそらした。
うつむいて、はるか下方を、じっと見つめる。

「完全であるとは何だろうな……?」

彼は、私に、というより、今ここにいない誰かに語りかけるように、話し出した。

「我々は常に完全であることを求め、それに近づけるよう努力してきた。
だが……完全を求めるということは、そうでないものを認めないということだ」
「もしも……より完全なものが生じてしまえば……
それまで完全だと思われていた全ては、出来損ないへと転じていく」
「純白は、他の白を薄汚れた灰色へと変えてしまうだろう。
まばゆい光は、他の光は闇へと貶めてしまうだろう。
そうだ……結局は何も残らない」
「それなのに……どうして我々は……それを求めてしまったのだろうか……。
おそらくは……それこそが……我々をゆがめ、変えてしまった原因なのだろうに……」

「あなたは……。
あなたは、私の問いに親切に答えてくれますが……。
ときおりわけのわからない事を……」
「……わからないか……
そのうち分かるだろう」

彼は静かな目をして、微笑んだ。

それから、時は流れた。

会議中、のんびりとした口調でさえぎっては、再考を促し、邪魔するのはいつも彼だった。
その鈍重な仕草や、まとをはずした受け答えや、頑固さは……しばしば、他の者達の失笑をかった。
彼は、愚か者呼ばわりされながらも……自らの意見を変えようとはせず……。
しかし、間違っているようにも思えたのです。

でも……それは、『概念』にとらわれた私の思考でしかなかったのです。


もう10年経ちます。
長いようで短いものでした。
子供らしき人影が見えた。
「もう行く時間ですよ!
こんな場所で何をしておられるのですか?」
「まったく……。
申し訳ない。
愚かな長話に付き合わせてしまった」
「本当に愚かなのは、君かもしれないよ」
「?」
「……ただの繰り言ですよ。
さ、お行きなさい」

私は、存在の価値ではなく、
存在する理由を……あなたに問います。

「最後までありがとう」
声がぷつりと途切れた。

-the end-
とまぁ、こんな感じで過去に作っていたわけです^^;
【Maze】

「我等を創りし存在(モノ)は何だろうか?」
 こんな疑問を抱いてから、どれほどの歳月が過ぎただろうか。長いようにも、短いようにも感じられる。決して答えが得られるわけではないのに、周囲の存在に問う。これを何度繰り返しただろうか。何もかも忘れてしまうほどの月日が、存在が費やされた。そのためだけに費やされたわけではない。けれど、我はそのためだけに生きているように感じられる。疑問が消える時など無く、常に胸にあり続ける。我は、どうすれば良いのか。疑問を消すべきか、否か。そのために、どれだけのモノが費やされるだろうか。わからない。どうするべきか、わからない。何もわからない。我は・・・。

「神様の問いに私達は何も答えられない。それで・・・このままで良いのでしょうか?」
 神の周囲にいる多くの存在、天使。天の、神の使い。彼ら・・・いや、それらは、神によって創られた。そのことを知らぬ存在(モノ)はいない。だが、それが真実なのか、と問われれば、答えることのできる存在(モノ)はいない。それらが知ることのできることは、限られている。それらは、完璧ではないから。絶対の存在ではないから。
 天使の長が他の天使に問う。けれど、答えは返らない。答えを期待していたわけではない。それは、天使が何もかもを知っている存在ではないとわかっているから。しかし、それらは神に仕える存在(モノ)。だから、神が疑問を抱いている今の状態を良しとすることは難しい。許せないといっても過言ではない。天使であるが故にそう思ってしまうのか、それら自体がそう思うのか、それはわからない。本能からのものなのか、否かはわからない。知る必要も無いことだ。
「私達は神様によって創られた存在。そうである以上、神様に逆らうことは考えられません。けれど、あの方が抱いている疑問に答えることは難しい。私達はあの方のために存在している。ならば、この命は神様のために費やす所存です。少なくとも、私はそう考えています。
 ・・・そのため、私は神様と相対する存在になろうと思います」
 他の天使(モノ)は驚き、ざわめく。ただ1人、長の隣にいる天使だけが平然としている。が、内心では誰よりも驚愕している。何よりも、誰よりも側にいたのに、何も聞かされていなかったのだ。それは、何よりも悲しく、裏切られた気持ちにさせる。けれど、今、それを表情には出さない。周囲には多くの天使がいる。だからこそ、平然としなければならない。それが、長の隣にいる天使(モノ)としての役目だ。責務だ。

「そうか・・・」
 神は、天使の長が相対する存在となったと知っても、それ以上の反応をしなかった。何故そうすることになったのか、何を考えてそうすることにしたのか、聞こうとさえせず、ただ、相対することを、敵となることを許した。その本意を知る存在(モノ)はいない。神は、何者も近づかせようとしない。だから、知ることはない。神が抱いている疑問。それに対する答えを得ようとするために、相対する存在(モノ)さえ出たというのに・・・。
「知ってはならぬ疑問。その疑問を我は抱いてしまったのかもしれない。だが、1度抱いてしまった疑問は消せないのだ」
 誰も、何も聞くことのない呟き。その呟きは無意識のものなのか、すぐに神は思考を別のところへやった。一時的に、表面上は疑問を消すことはできるから。
【蜃気楼の時計塔】

時計塔の窪みにできた小さな家に私はいる。何年前までそこには別の誰かが住んでいた。全てを託され、今…ここにいる。


あれは昔のことだった。
時間がたつ度に鐘の音が街中に響いている中で、店を持てるだけのお金を持っていた私自身も浮かれていたのであろう…、見事に詐欺にあってしまい、私は他人を全て敵だと思うようになってしまった。そんな、私に声をかけてくれたのが先人である住民である。

「そんな死んだような目をして…時計の鐘も泣いとるぞ」

泣くはずなどないのだが、この時は本気でそう思えてしまった。

その日から騙されたように時計の鐘に油をぬり、丁寧に拭き上げていった。無心で何もなかったが、鐘の音を聞いている住民の姿や、作業をはじめるために合図に使う監督などを見ていると…私も役にたてているようで嬉しかった。
嬉しくて夢中で拭いていると、手を振ってくれる人、挨拶をしてくれる人、様々な人に出会える。


だが……この場所も政府の意向で壊されることになってしまい、私は家にこもった。
また、何をすればいいのか…という問いかけに君は住民の反対署名を無言で突き出した。

ああ、私はまだ終わってはいなかった。
しかし、時計塔のイメージが悪くて乗り出した案である、署名が集まろうが強硬手段に乗り出してきた。ならばと思い、時計塔に家を作った。まるで…そう、教会のような形になっている。政府は人がいるために結局断念して帰っていった。

時計塔は失われたがそこには形をかえて鐘の音がきける施設がたった。

人は形をかえるだけで納得してしまえるものなのかもしれない。例え、原型とは違うものだとしても…蜃気楼のように存在する心。
【双子の朝】

 東に見える山際から朝日が顔を出し街全体に光が差し込んでいく。
 家の煙突からは、朝食を作っているのであろう、ゆったりと煙があがっている。
 小鳥のさえずり声。
 目が覚めると自分と瓜二つの顔が、まだ隣で寝息をたてて寝ている。
 その様子を見ながら、微笑ましそうに笑った。
 ずっと考えていた。
 瓜二つの顔なのに自分よりも寝ている子のほうが愛しく感じてしまう。
 不思議な感覚、双子同士でしか解り得ないもの。

「本当に不思議よね?」

 口からポツリと漏れ出した声。
 その声に反応するかのように隣で寝ていた子が目をこすりながら起きた。
「んー、おはよう。ユウ」
「もう少し寝ててもいいよ?
まだ、5時半だし」
「そうなの? じゃあそうする」
 再び寝息をたてて眠りについた。
 本当にこの子は可愛らしいんだから。
 そんなことを想いながら、起こさないようにベットから降りた。

 時間が余っている……散歩でもしよう。
 外に出ると、日差しが眩しい。
 もうすぐ夏だというのに、あまり暑くなかった。
 まぁ、暑くもないのだから、散歩には最適な気候だったわけで。
 それも散歩をすることを決定した要因の一つのわけで……。
 って誰に説明しているんだろう?
 一人で笑っていた。
 いつもの通り道も早朝となると全然違う。
 人の通りも少なく、飛び交う鳥たちや風のなびき、全てが新鮮に思えた。
 知っているのに知らない光景が広がっていた。
「どうせなら、ミクも連れて来ればよかったかな?」
 一人でみるより、二人で見たほうが楽しい。
 そうに決まっている。
「今度はミクも連れてこようっと」
 いつのまにか勝手にに楽しく口ずさみながら音楽を奏でていた。

 辺りを散歩して帰ると、朝食の香ばしい匂いがした。
「いい匂い。今日はトーストかな? 」

 台所で料理をしている母親をみつけて、
「おっはよー」
 朝のお決まりの挨拶をした。

「あら、お散歩? 早いね」
「まぁ、早かったわけで暇だったから」
「先、ごはん食べちゃっていい?」
「手を洗ってからね」
「へーい」

 手をしっかり洗ってテーブルにつくとすでに朝食が用意してあった。
 それを食べてしまうと、学校へ行く準備をしはじめた。

 ユウが全部用意した頃に慌ててミクが起きてきた。

「なんで、起こしてくれなかったのよ!? 
あーー!間に合わないよーー!」

 叫びながら部屋の中をどたどたと歩き回るミク。
 何故か手に枕を持ちながら頭を抱える。

「騒いでる時間があるならさっさとやったら?」

 冷めた突っ込みに、キッと振り返るミク。
 用意も終わって、ゆったりとくつろいでいるユウがもう一度言った。

「騒いでる時間があるならさっさとやったら?」

「うううるさーい!」

 まぁ、これも日常なわけで、これが当たり前……というべきか?
 なんというか、普通?
 でも、決してそんなユウのことは嫌いじゃなかった。
 というか、嫌いにはなれなかった。
 まぁ、私のために言ってくれているわけだし。
 クールな所もかっこいいわけで……。
 あっ、でもこれを言ったら、ユウ怒っちゃうな。

 『かっこいいじゃなくて可愛いがいい!』

 っていうのがお決まりだから。
 ひとまず、これはおいておいて、黙々と作業を開始した。

「ほら、早くしないと私まで遅刻しちゃうじゃん」

「なら、先に行ってもよかったのに」

「それはダメ。ミクと一緒がいいの!」
 二人で顔をそろえて、にっこり笑うと学校に向かって駆けだした。
【花火】
 打ち上げ花火。それは、夜空に咲く大輪の花。
 線香花火。それは、小さな小さな花。

 …私はどっち?

 そんなこと、考えるまでもない。私は線香花火だ。目立つことをせず、華やかな位置にいるような人間ではない。

 …夏は嫌い。

 外に出ることが許されない。許されるとしたら、せいぜい、屋上や庭に出るくらい。

 でも、それでも感じる。夏は『生』の季節なのだと。

「こんにちは」

 突然声をかけられ、驚いた。声をかけてきた相手は気にした風もなく、空を見上げている。

「あなた、誰?」

 今までずっとここにいたけど、こんな人は知らない。相手は空を見上げたまま、行った。

「夏が好きな男の子」

 …。
 なんと返すべきなのかさっぱりわからない。でも、隣にいる彼と同じように、私も空を見上げる。

「君は?」

 変わらず空を見上げたままの問いに、同じように返す。

「夏が嫌いな女の子」
「そう」

 何で?とか聞いてこない。何故か、そのことに安心した。

 それから、何度か彼に出会い、何をするでもなく、空を見上げ、たわいもない会話を交わす。そんな日々を過ごした。

「そういえば、今日は花火大会だね」
「そう」
「一緒に見ない?」
「ここから出られないもの」
「そっか。…じゃあ、ここで見ない?」
「はぁ?」

 この人は何を言い出すのか。私は彼を見る。彼は変わらず、空を見上げている。ただ、その横顔は楽しそうなのに、どこか寂しそうだった。だから、つい、黙ってしまった。

「よし、決まり。じゃ、7時に、ここで」

 彼はそう言うと、さっさと中に戻っていく。どこに戻るのかは知らないけれど…。

「約束通りだなぁ」

 7時ちょうどに行くと、すでに彼はいた。私は彼の隣に座る。

ドーン

 花火が上がっていく。いくつもいくつも。様々な色の様々な形のものが。

「綺麗だねぇ」
「そうね。でも、潔いと思う」
「潔い?」
「そう。たった1回のためだけ。それに、同じものはない。だからこそ、綺麗だと思う」
「人生も同じじゃないかな?」
「そうね。でも…」


 花火は全て上がってしまった。後には、ただ静寂と夜空だけが残った。
-end-

昔書いた作品を少しいじったものです。
【いつの日も今のまま】

いつも、前触れもなく朝が来て、太陽がのぼり、昼となり、太陽が沈み、夜となる。僕達はまぎれもなくそこに存在している。


「オハヨー!」

声の主がわかっているためか、自然と受け身をとろうとした。が、遅く、胸の辺りにスナップがヒットし、痛みが走る。

「いてーバカか?!」

「バカってなんだよう。だったらあなたはカバね」

「毎度、毎度結構なことで。仲よろしゅうでんな」

「おおきに」
笑顔満点で返したのだ。

「こら!そんなこと言っていると誤解されるだろう!」

「ええやん、それにこの前の話って嘘なん?……」
ああ、もう泣きそうな顔をしてこちらを見上げてくるのは勘弁してほしいなと思いながら、あやしていた。
まあ、嘘泣きなのだから、突き放してしまえばいいといえば終わりだが、『好きです』といわれた以上、返事はマジメにしなければいけない。とは分かっているもの『好き』とは具体的には『愛』した人であり、モノであるとはわかる。しかし、それを崩してしまうと『愛』ではなくなる。なので、自分を傷つけないように『恋心』で終わる人もいる。

いま、恋愛が流行っているための乗り手なのか、純粋になのか分からないものには答えたくなかった。
だから、忘れるだろうと思いながら


『20歳、つまり今から7年後にまだその言葉がいえたら愛してあげる』


その2日後、僕は親友を助けるために、押しのけたが、自分が鉄鋼の下敷きになってしまった。
そして、意識がうすれていく中でわかったつもりでいた。

死ぬということを…

葬儀が行われ、自分はクラスメートやあの子に看取られながら、証と言わんばかりに最期まで燃え続けた。この身を燃料とし、最期の灯火を…。


墓石の段差を一人の小さな女の人が昇っていく。親戚の墓石でも捜しているのかと思えば、顔を赤くして真剣そうだったのでみているこちらはあっけらかんとしてしまった。
目的の墓石を探り当てたのか、水をかけてあげ、なにやら話しかけはじめていた。

「こんにちは。あれから7年で20歳になりました。あなたはまだ7年前の14歳なのでしょうか?早生まれだからと私はいつも損している気分だったのに『早く生まれたっことは関係ない!お前はおまえだろう』といってもらえて嬉しかった。ありがとう…いまでも、大好きです」


『あの時言えなかった言葉。僕も君を愛してる』
立ち去ろうとした側に囁きが聴こえた。
【アイ】
―この世に一人だけの貴方を私は愛することができるのでしょうか?


 かけがえのない人を失い、残されたのは私と一人の子供。私と同い年のあの人の子供。あの人と私の知らない誰かとの子供。あの人は私より年上だから、それは仕方のないことだと解っている。判っている。でも、わかりたくない。私にはあの人だけだったから。
「アンタさぁ…自由になれば。俺なんかと一緒にいないでさぁ」
 平然と言うくせに、貴方の目は寂しいのだと訴えている。貴方は母親に愛されることを知らずに育った。でも、貴方を愛してくれた父親がいた。けど、あの人はいない。貴方は一人になることに恐怖を感じている。今まで、一人ではなかったから。
「いられると迷惑なら出るけど。そうじゃないなら、ここにいたい」
 その理由を言うことはしない。だって、私は、貴方が心配だからいたいんじゃない。あの人との思い出があるから、ここにいたいのだ。言わないのは、貴方が薄々感づいていることに気づいているから。
「好きにすれば」
 そっけないように言うくせに、どこか嬉しそう。それに気づくと、胸が痛む。気のせいだなんて言えない。でも、気づかない振りをしなければ、私が耐えられない。あの人との思い出があるこの場所にいることさえ辛くなる。私とあの人を繋ぐモノはここしかないのだから。

 あの人の最期。あの人の最後の言葉、最後の願い。それを私は忘れることができない。あれは、あの人の心からの願いなのだから。私はそのことをわかっている。でも、その願いを叶えることができるかどうかわからない。だって、あの人の願いを叶えることは、私にとってはとても困難で、できるかどうかわからない。本当なら、とても簡単なことだろうに。
『あいつに愛情を与えてやって欲しい』
 それが、あの人の願い。だから、私は頷いた。だって、あの人が大切で、あの人を愛していたのだから。でも、私はあの人の願いを本当に叶えられるのだろうか。今は、不安しかない。あの人には似ても似つかないと思っていた。なのに、あの人がいなくなってから、少しずつあの人の面影を見る。貴方はあの人ではないとわかっているのに、いつか、貴方にあの人を見てしまいそうで。
 貴方を一人にするのは不安でできない。それが私の本心。貴方を一人にしたら、あの人の後を追ってしまいそう。貴方は貴方の道を決めて進んで行くべきなのに、貴方は閉ざしてしまっている。
「アンタさぁ…どうすんの?」
「何が?」
「これから」
「そうね…。ゆっくり考えるわ」
「ふーん」

 貴方は優しい。私は醜い。だから、貴方をほんの少し憎む。貴方はかけがえのない一人だから。
 私はかけがえのない貴方を愛せるでしょうか?
【舞台上の恋】

「愛している」
その言葉が真実だとは思えない。だって、貴方はその言葉を幾人もの女性に言っている。言われた女性はその言葉に喜ぶ。たとえ、それが嘘だとわかっていても。だって、貴方に言われているのだもの。誰よりも、何よりも、その言葉が似合う貴方に。貴方はそのことを知っている。だから、誰に対しても言う。でもね、だからこそ、私はその言葉が嬉しくない。欲しくない。でも、だからこそ、貴方は私に眼を向ける。私はそのことを知っている。
これは、ただの駆け引き。でもね、答えはわかっている。わかりきっている。だからね、もう少し、もうほんの少しだけ、この駆け引きを楽しませて欲しい。こんな恋は2度としないから。
【満ちては欠けていく】
月が満ちるように緩やかに満たされていく。それが何であるのか知る由もなく、ただ、なすがままに任せている。気づかないままに任せてしまった。だから、気づいた時には遅かった。気づいた時には手遅れだった。もう止めることなどできはしなかった。それでも、ばれてしまってはならないと、ひた隠しにすることを決めた。決めたけれど、わからなくなった。今までの自分はどうしていたのか。貴方にどのように接していたのか。何もかもわからなくなった。ただ、満たされてしまったものを隠そうとしているだけのはずなのに。ただそれだけなのに、今までの自分ではなくなってしまった気がする。実際そうなのだろう。今までの私はどこかへ行ってしまい、私は変わった。そう感じているだけかもしれないけれど。
「どうかしたのか?」
その言葉に我に返る。私の顔を覗き込んでくるのは、私の恋人。全てを知った上で、私と付き合っている人。私はほんの少しの罪悪感を胸に、付き合っている。この人の側が安心するようになったのが、いつ頃からかは覚えていない。それでも、長い月日を共にいるから、良いのだ。
「何でもないよ」
「そうか」
深く聞こうとはしない。そのことは時々、本当に時々、イラッとする。でも、この人は聞かなければならないような時には何故か気づき、きちんと最後まで聞く。そういう優しさを持っている。この人だから…。
「本当に良いのか?」
「うん」
私はちゃんと微笑んでいるだろうか。知りたい。でも、この人の顔を見るのは少し恐い。全てを見透かすような目だから、尚更だ。視線にさらされ続けるのは少し辛い。でも、耐えられないわけじゃない。それに、このことは私が決めたこと。きちんと考えた上での行為。だから、後悔だけはしない。誰に何と言われようと。…それでも、ほんの少しの不安はある。この人で良いと思っている。でも、本当の意味で愛しているのかと聞かれれば…。だから、不安なのだ。
「まぁ良いけど。嫌になったり辛くなったりしたら、言ってくれ」
優しい。優しすぎる人だ、この人は。泣いてしまいそうになるほどに。
「大丈夫、貴方と一緒だから」
もう戻ることはできない。後戻りはしない。そう決めた。この人と一緒にいよう。この人の側にいよう。きっと大丈夫だ。この人とだから。ずっと側にいれる。一粒だけ涙を流す。この涙に全てを込めることはできない。でも、多少は癒されるから。これで最後にしたいから。
満たされたものが緩やかに欠けていく。月が新月になるように。満たされすぎたものが溢れていくのは仕方のないこと。けれど、満たされたものはそのまま残ることもある。満たされたものは、本当はそこに在る。でも、それをどのようにするか。ただ、それだけのこと。それを無くしてしまうことはできない。それを過去のことにできたなら、再び満たされていくものがある。欠けていくのではない。ただ緩やかに見えなくなるだけ。そう、月のように。
【ー葵ー】

夜空の星だけが照らす光の下で、ゆるやかな斜面を下っていく。峠まであと少しでした。でも、追いかけてくる車を振り切るのは馬の速度では難しく少しずつですが距離は縮まっていきます。その時です「飛べ!」と大声が聞こえたので馬の手綱を下に引くと蹄で地面をおもっきり蹴飛ばして上空に舞い上がった。
次の瞬間、地面への着地で相当の衝撃がはしり思わず手綱を放してしまいそうになりました。

後方では車が表面を砂で覆った落とし穴に落ちていきました。そこから這い出るようにでてきた所を包囲され両手をあげ、項垂れていた。


「すまんな、本当は村を出たらすぐに護衛するつもりだったんだが、厄介なことに奴らに監視されていたらしい」

それを聞いて彼が身体中に傷がついていることに初めて気がついた。
「怪我しているではないですか!ちょっと、これをこうしてっと」
腕のあたりの服をやぶり、止血にとそれを巻いた。

「あははは・・・そこまでしてもらう必要はないんだが礼は言わせてもらう」



彼とは直接の縁はありません。ただ、私の父親の敵だったそうです。それが何故私の傭兵をしているかと聞くと
「あんたの父に命を助けられたことがある。しかし、借りが返せないまま他界してしまったからあんたを助けることでチャラにしようというわけさ」
と答えられたことがある。でも、それにしては話がおかしいと感じることがある。料理から必要ないであろう馬の乗りかたまで教えてもらっていた。今回はたまたま馬に乗ったが、いつもなら直接馬に乗るより馬車を使う。


砦にたどり着いた頃、夜も明け日が顔を出し始めている頃合いだった。夜通しで馬を走らせたせいか急に眠気が襲ってきた。


「ちょっと寝るからね」
そういい残し毛布にくるまった。夢の中では手紙を受け取った母が内容を読み号泣していた。私は一生懸命、背伸びしないと届かない母の頭をなでながら「泣かないで」と一緒に泣いていた。


「・・・い」
誰?私の真名(まな)を呼ぶのは。

しばらくしてムクリと起き上がりテントを出ると数名が砦窓から侵入者が出ないか観測手と狙撃手のペアで監視していた。彼は相方がいないために一人スコープのみで観測を行っていた。しかも、後ろも振り向かずに気配だけで「ああ、起きたのか」と誰に投げ掛けるわけでもなく呟いた。


「独りで大丈夫なわけ?」
「ああ、慣れているからな」
気配は読み取る癖に気持ちは読み取れないなんて、肝心な所が抜けているのではないかと疑いたくなる。

「そうじゃなくて、私のせいで敵側からこちらに来たわけでしょう。スパイなんじゃないかと周りは囁いているし・・・正直なところ居心地悪いのじゃないかなと心配しているの!」


眼を細め、表情から心が汲み取られないように
「そうか・・・そうだな。今から大昔の話をしよう。私がリトル島で暮らしていた頃、約20年前のことだ。疫病が流行ってしまい、村が全滅しそうな勢いだった。残った住民は次々と去っていきいつしか忘れ去られた。お前の父とは避難場所で出会った」

「それはおかしくありませんか?敵に成りうる可能性があるなかで共に助け合い共存していくなど・・・できるわけありません・・・・・・」

「普通なら、な。今あるものは大人が起こしたものであるから世代と共に消えていくのを両者とも黙認していたと思う」

「だけど、続いているわけですね」
頭の中で話をうまくまとめながら整理しているようだった。アイツがもっていなかった素質だなと関心した。


「少しおしゃべりが過ぎたようだ」
本来の仕事に戻った背中を見つめながら、私は父とこの人が敵味方分け隔てなく遊ぶのを・・・・・・


ーendー
【裏夢】

ふすまを乱暴に閉める音と共に
先ほどまで階下で絶え間なく響いていた
怒鳴り声もようやく治まった。
「ようやく終わったか」
安堵のため息と共に眠気に負け、そのまま夢に落ちた。


「おーい、はよっきりや!」
ボンヤリとした中で意識がハッキリしなかった。
「まだ、寝ちょるわ。ええ加減にせんとちこうするで」
なんだろうか、聞きなれない発音だった。
薄らとまぶたをあけてみると寝ていたはずに場所は変わっていた。
飛び起ききょろきょろしていると、
「おぅ、おきょりたんか。はや、もうぐぅならんちょって、じぼぉでもあらちょこんね」
促されるままにたどりついた先は井戸だった。
こんなもの自分の家の近くにあったか?
と疑問をいだきつつも
顔をバシャバシャと洗われた。
「これでよしっと」
え…?先ほどまで感じていた言葉に違和感がなくなった。
「ここはどこですか?」
「何言ってるの、ここは浜町でしょう。ボケたふりして今日の仕事を逃げようというのなら無駄な魂胆だから捨ててしまいなさい」



「これからどうなるんだろう…」
不安そうに自分の前につみあげられた石ころを見つめ上げる。
そうしてる中、この暑い中マフラーを巻きつけた人が近づいてきた。
そして、こっそり囁いてきた。
「あんた、ここの住人じゃないだろう?」
いきなり聞いてきたもので、目を見開いてしまった。
「ニオイでわかるのさ。さては裏夢の住人か」
夢ならわかるが、裏夢とは……
聞きたいことが沢山あったためつい早口になってしまい
1から10言う前に口を押さえられた。

「そう焦るな。そうだな…ではこれから話そう」
「裏夢とは、夢と認識している世界じゃない。あんたらが夢と呼んでる世界で見る夢のことだよ。そして、裏夢が見る夢があんたらの世界ってことさ」
「自分の世界が見る夢の夢ってことか?」
「まて、説明がおかしかったかもしれない。夢が夢をみることはない。逆にいえば見られているほうだからな」

「ここにあんたの世界がある。仮にAとしよう。
Aが夢を見る。その夢の世界をB夢としよう。
Aを覗ける世界がそれぞれCとDにわかれる。
こうすると
CとDはAを見ることができ、AはB夢を見ることができるとなる。
ここで一方通行をやめさせようとして双方向にしたところ変な空間ができた。
AとB夢から見ることができず、CとDは見ることができる夢 『E夢』がな。

CとDはなんとなくわかっただろうが、あの世だよ…。
といっても、これがは見るなんてできないだろうから、実際はただの思想の塊の世界だと思ってくれていい。
歪んでいるのはそのせいかな…あはは…ははっ……。


で、君はCとDを通過もせずに無理やり来てしまったというわけだ。

軽くまとめると
EはC・Dの夢
BはAの夢
C・DとAはあの世とこの世の関係
C・DがBをみることはない
AがEをみることがない
 E←C・D←×A→B
というわけだ。
だから、AからEは行けないどころか見れないはずだから裏夢なのさ。」
長話で疲れたのかもしれない。
草をまるめて火をつけそれをおいしそうに吸い始めた。
自分もやろうとしたけど、やめさせられた。
「こちらの常識とあなたの常識は違うから大変なことになる」
と言われた。
そこの常識は自分には当てはまらず、そこで大丈夫なものが自分には危ないもの。危険なものが安全なもの。どちらでも同じ常識として通っているものの3種類あるそうだ。難しいが慣れるしかない。

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