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魔境の森の旅人コミュのAct06:事件勃発 (1-6(1/2))

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 俺達三人がパークガーデンに戻ったのは、もう真夜中の事だった。
 門前には既に、夜勤の見張り番が立っている。

「おお、お帰り!随分遅かったな!」
「でもまぁ、無事でよかった」

 今夜の見張り番は、俺と同期のやつらだ。
 普通は若手同士でパートナーは組まないんだけど、熟練した見張り番が減ってきているため、ここは例外なんだそうだ(そういや、俺とデュークはどうなんだ?・・・もしかすると、デュークが腕の立つ番兵だからって理由で特別扱いを受けているのかもね)。
 それに二人いるうちのひとりは、過去に父親が番兵長を勤めていたという事もあって、それなりに有望視されているらしい。

 確かデュークが前に、「『親の七光り』と『経験豊富』、どっちが上なのかこれから確かめてやる」とか何とか言ってたな。
 要するに、一方的にライバル意識を持っているんだと。
 向こうが何を思っているのかは分からないけど、多分もう気付いてると思う。
 デュークは、感情を表に出さないなんて事は絶対出来ない奴だからなぁ。

「それに・・・少年、やっぱりこの二人について行ってたんだな」
「俺達、君がいなくなって随分探したんだけど・・・・・・ビルが、『二人と一緒なんじゃないかな』って言ったから・・・・・・みんなそれを信じて、待っていたんだ」

 ビルっていうのは、隣にいる番兵の事。さっき言った、元番兵長の息子だ。
 やっぱり検討は外さない、色々と叩き込まれてたんだろうなぁ。

「それで?『特別任務』は、完遂できたのか?」
「もちろん。できねぇわけないだろ」

 ビルの質問に、デュークは不機嫌そうに答えた。やっぱりコイツは自分に正直な奴だ。

「何はともあれご苦労様。今日はもう休むといい」

 二人は俺達の背中を押してガーデンの中に迎え入れてくれた。
 確かにヘトヘトに疲れていたので、さっさと寝ることにした。

 ―――あれから、エヴァーランがたくさん出てきた。
 種類も豊富だったから、俺とデュークは戦い続けた。
 幼いハリーに負担をかけさせるわけにもいかなかったから、手早く済ませるように出来る限りの努力はしたけど。
 でもそのお陰で、ここら辺のエヴァーランは大抵覚えられた。
 ハリーがそれに詳しかったから、図解説明もしてもらったりして・・・外に出るのが初めてだった割には、かなりたくさんの知識を頭の中に入れられたと思う。

「あ・・・そうだ、君。もう一つ、伝えたい事があるんだけど」

 宿舎に戻ろうとした俺達を、ビルが引き留めた。彼は、ハリーを見て言う。

「?・・・・・・なんですか?」
「君の父さんの事なんだけどね・・・・・・一命は取り留めたんだが、昏睡状態が続いているんだ。見てやってくれないか?」

 それを聞いたハリーは、俯いた。でも、そのまま彼は、

「分かりました・・・行きます。何処にいるのか、教えてください」

 敬語でちゃんと答えた。ビルは、俺の顔を見て言う。

「ザガル。彼の父親は、医療室に居る。連れてってやってくれ」

 俺はもちろん、頷いた。そしてハリーの手を取り、呟く。

「ハリー・・・行こうか?」

 黙っていたけど、ハリーは俺の背中を押した。



 それからあっという間に、一週間が過ぎた。
 いくら特別任務があったとはいえ、当番サイクルは変わらない。
 あれから俺とデュークは、サイクル通りに二回門前番――いちばん暇な仕事――を勤めた。

 それからハリーにも、全然会ってない。
 あそこで、父親をずっと看ているんだと思う。
 俺は以来一度も医療室に入っていないから、どうなったのか分からない。
 顔を見に行けばそれで迷惑になるだろうからって、気を遣っているんだ。
 但しデュークは、頻繁にハリーに会いに行っているみたいだ。

 ――――本っ当に無神経な奴だよなぁ。仕事の時は、これでもかってほど慎重なのに。

 でも俺は、あの時からデュークともそれらしい会話を交わしていない。
 巡回の時はそれぞれ別行動取ってるし、門前番のときもあいつはちょくちょくガーデンに戻るからなぁ。
 話のタイミングが取れないまま、俺は宿舎のバルコニーで悶々と考え事をしていた。

 ――――これからどうしよう。一生話せないままだなんて、死んでも嫌だぞ。

 やっぱりデュークは、俺にとって一番の友人だからな。いや、親友と言うべきなのかもしれない。

 ――――『親友』、かぁ・・・・・・俺にそんな言葉、合ってるのかな。

 どうもしっくりこないような気がするんだよな〜。昔の事全然思い出せないって事もあるけど、そういう感じじゃない。

 ――――欲しい。『昔の記憶』が。
 ――――『それ』を、完全に取り戻したい・・・・・・!

「・・・い・・・・・・おーい!」

 あ・・・誰かが、俺を呼んでいる・・・・・・?

「―――おい、ザガル!何こんな所でボーっと突っ立ってるんだよ!」
「あれ、デューク・・・?どうした?」

 意外にも・・・デュークは、今まで通りに俺に話し掛けてきてくれた。
 それじゃ今までの何気ないシカトは、一体なんだったんだ?
 そんなことはお構い無しだぜだと言わんばかりに、奴は嬉しそうに言った。

「やったぜ。ジーンさんが・・・ハリーの親父さんが、目を覚ましたんだ!」
「・・・そ、それ本当!?」
「もちろん。
 ったく、『お前ここん所ずっと顔見せてくれないから寂しい』って、ハリーが愚痴こぼしてたぜ。
 とにかく親父さんが『お前にも会いたい』って言ってたから、探しに来たんだ」

 デュークは不機嫌そうに俺に言った。
 俺はデュークと気まずくなっているような気がして、話し掛けられずにいたんだ。
 でも向こうも、気が付いていたはず。
 それだったら、教えてくれても良かったのに・・・・・・。

「さ、早いとこ親父さんのところに行こうぜ」

 デュークは強引に、俺を連れて行く。
 それじゃ今まで、俺のやっていた事はなんだったんだ?
 ――――考えすぎ、だったのか・・・?



 医療室にはハリーと見張り番たちの怪我などを見てくれる室長、それとハリーの父親、ジーンさんがいた。

「ザガル!―――久しぶりだな」

 ハリーは今までかなり頑張っていたのか、疲れきった顔をしていた。
 ジーンさんも決して元気とはいえない状態だけど、とりあえず最悪の事態は免れたようだ。

「よく来てくださった。話はこの子から聞いております。本当に貴方とデュークさんには、なんとお礼を申し上げたらよいのか・・・」
「あなたをここまで運んだのは、オレ達じゃありませんよ」

 デュークは丁寧に返す。

「でも・・・ハリーと一緒に森の中にまで赴いてくれたのは貴方がたです。
 私の具合がもっとよくなったら、きっとこのお礼はさせて頂きますよ。
 この子も、貴方がたの事を気に入っているようですから」

 髪の色は金混じりの茶色、目は細くて黒い。まだ、三十半ばかな。

 ――――ハリーは・・・あんまり、この人には似てないなぁ?て事は・・・・・・。

「―――あなたが、ザガルさんですね」

 ジーンさんは俺を見ると、弱々しくもにっこりと笑った。その表情は・・・何かを求めているようだ。

「本当に――――てるな・・・・・・」

 ふと彼は、こんな事を呟いた。それを聞いたハリーが、それを止めた。

「父さん、やめてよ。それを言うのは・・・父さんが初めてじゃない」

 その時彼が何を言ったのか、すぐに解った。
 多分、誰もが理解しただろう。
 ・・・『俺がシェリさんに似てる』――――と、そういう事を言ったに違いない。
 ハリーも、ディーノさんも言ったんだ。
 やっぱり・・・この姿は、何か辛い事を思い出させているんじゃないかな?

 ――――やっぱり・・・俺は・・・・・・ここにいるべきじゃないんだ。

 心の奥底で・・・ちょっとだけでもそういう事を考えていたから・・・・・・きっと、何気なく『ここ』にくる事を避けていたんだろうな。

 ――――もう・・・誰の顔も見られなくなってきたよ。

 いつの間にか・・・俺は、俯いていた。どうしたらいいのか、何を言ったらいいのかも、分からなくなってしまった。

「父さん・・・ちょっと、出かけてくる」

 途端ハリーが俺の手を引いて、部屋を飛び出した。
 俺はもうどうすることもなく、ハリーに手を引かれたまま走り続けた。

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