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沢村一樹似の難波紘二氏 コミュの難波紘二:病理学者であり生命倫理学者でもある

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「瀬戸内グループ」の腎移植は生命倫理に違反するか?

難波鉱二(鹿鳴荘病理研究所所長・広島大学名誉教授)

宇和島徳洲会病院で行われた生体間腎移植に関して、

ドナーとレシピエントの間に金銭取引があった事実が報道されて以来、事態の進展に注目してきた。


 筆者の専門は人体病理学と生命倫理であり、

その視点から今回の「事件」についてコメントを述べたい。

 参考までに、筆者は国家資格である医師免許、死体解剖資格

をもち、学会資格である病理専門医、血液専門医、細胞診指導

医の資格をもっていることを述べておく。


1.今回の事件の概略

事件は10月1日愛媛県警が「臓器移植法」第11条(臓器売買等

の禁止)に違反した疑いで、腎移植を受けた男性とその内妻を

逮捕したことから、メディア報道の開始となった。

 その後、山口大学医学部卒の泌尿器科医万波誠氏を中心に、

宇和島徳洲会病院、香川労災病院、呉共済病院の泌尿器科医師

たちの間に密接な医療連携態勢があり、「瀬戸内グループ」と

呼ばれるほど活発な医療を展開していることが報道された。例

えば、05年に行われた腎移植件数では、宇和島徳洲会病院だけ

で32例と全国3位を占めており、「瀬戸内グループ」全体での

件数は、ダントツの東京女子医大の132件についで、第2位

を占めるほどである。


「中四国の田舎町でそんな医療ができるわけがない、何か裏が

あるのでは?」と疑ったのかどうか知らないが、以来このグル

ープは東京に本社があるメディアの集中的ターゲットとなり、

「疾病腎の移植」、「腎がんで摘出した腎の移植」などについ

て批判が向けられているというのが、現時点までの事件の概要

と構図である。恐らく関係病院院長と関連医師たちは、ストレ

スで疲労困憊の状況だろうと思われる。


2.疾病のある臓器は移植できないのか?

今回のケースで問題となった疾患は、腎動脈瘤、腎結石、腎が

ん、尿管がん等である。とくに腎がんなどのため摘出した腎臓

を、がん部分を摘出して移植に用いたことは、日本人の死因の

三分の一をがんが占めている現状では、「恐ろしいことをす

る」というように、世間では受けとめられたようだ。

 しかし病気の臓器を移植に用いている例は、肝臓の場合はい

くつも例がある。特に遺伝子病で起こるアミロイドーシス肝な

どは、本人には有害無益の存在だが、この遺伝子をもたない人

に移植してやれば、自然に元の健康な肝臓に戻る。いわゆるド

ミノ移植である。

 腎臓の場合も、動脈瘤、結石症は、患者の代謝の異常(最近

ではメタボリック・ディジーズとも呼ばれている)に起因して

おり、その素因や生活習慣のないレシピエントに移植してやれ

ば、肝臓と同様に正常に機能するようになる。動脈瘤は動脈硬

化症の一つのかたちだ。動脈硬化は元に戻らないと思っている

人が多いが、全身の悪液質で死亡した患者を解剖してみると、

動脈硬化がきれいに消失していることはまれでない。


 腎がんには、病理学的に主なものに3種ある。万波医師は、

「がんの直径が画像診断上で4センチメートル以上の場合は腎

摘出し、それ以下の場合は病変部のみを切除し、腎臓を残す」

と記者会見用の配布資料で説明している。これは病理学的には

「グラヴィッツ腫瘍」と呼ばれる成人や高齢者に主に発生する

腫瘍のことで、この治療法は国際的な基準にかなったものだ。

 しかし「がん」と聞いただけで、そんな腎臓とは縁を切りた

い患者もいるだろう。先日、移植のための腎臓を間違えて「ゴ

ミ箱」に捨てた病院があったが、「がんの腎臓など戻して欲し

くない」というのが多くの患者の本音だろう。それを摘出すれ

ば、普通の病院では切り取った胃や肺や子宮などと同様に、

「ゴミ箱」行きになる運命にある。

「がんのあった臓器を移植して、がんが移るのではないか?」

というのが、大方の素朴な疑問だと思うが、がんは伝染病では

ない。遺伝子病である。だから、仮にがんそのものを他人に移

植しても移植は成功しない。細胞性免疫が欠落しているヌード

マウスにさえ、人間の自然発生がんを移植するのは困難であ

る。なぜならナチュラル・キラーセルが存在していて、これが

がんをやっつけてしまうからだ。


「瀬戸内グループ」には、腎がんのあった腎臓を移植したケー

スについて、症例数とその生存率についてのデータを積極的に

公表してもらいたい。筆者の病理学的予測では、免疫抑制剤を

使用していても、レシピエントにがんの再発や転移はないはず

である。


 本人が要らないと捨てたものを、レシピエントである別の人

がもらって使って、どこが悪いのか? 要は、「瀬戸内グルー

プ」にはそうした「リサイクルの思想」があるのに対して、東

京を中心とする大都市の病院医師には、そうした「発想の転

換」がなかっただけではないのか?


3.どうして新しい発想は地方から生まれるのか?

日本で最初の心臓移植は札幌医大で行われた。この移植では、

ドナーに自発呼吸があったのに心臓を摘出しており、脳死判定

基準が確立した現在では「殺人」と見なされる。事実、札幌地

検は当時、殺人罪で捜査したが、「証拠不十分」を理由として

立件を見送った。


 日本で最初の生体肝移植は、島根大学で行われた。この手術

には、ミスがあり誤って胆道を結紮したため、レシピエントの

小児は閉塞性黄疸を起こし死亡した。しかし、この手術の挙行

が、その後の生体肝移植への道を拓いたことは疑えない。

「瀬戸内グループ」はゴミ箱行きになる廃物の腎臓を活かして

使い、多くの患者を慢性透析の苦痛と煩わしさから解放する道

を拓いた、と筆者は考える。これは「生体腎移植」ではなく、

現行法規に触れる点はまったくない。刑法の傷害罪と業務上過

失傷害罪は、「業務として人体に傷害を加える」医師には、重

大な過失がないかぎり適応されない(注)。


 医師と腎摘出される患者間にインフォームド・コンセントが

あり、医師とその腎臓を移植されるレシピエントの間に同様の

同意があるかぎり、「瀬戸内グループ」の医療行為に生命倫

理、医療倫理に反するものは何もない。


 新しい発想は、しばしばミスから、あるいは中央の画一的な

思想の「しばり」の及ばない、地方から生まれる。血液型が違

っていても臓器移植が可能であるとわかったのは、外国で血液

型の判定ミスを知らないままに肺移植がおこなわれ、それがう

まく行ったからである。これをセレンディピティという。臨床

検査部の体制が完全に管理され、検査ミスが起こらないような

高度な病院では、こういう「大発見」は起こらない。


「医者を選ぶのも寿命のうち」というのが、筆者の持論であ

り、定年後は社会奉仕として医療相談(セカンドオピニオン)

に応じている。患者はもっと賢くならなければいけない。本当

の名医と、口が上手いだけの見せかけの名医を、見分ける知識

と眼力を身につけなければいけない。世の中で100パーセント

確実なものは、人間の死亡率だけである。医療に100パーセン

トの安全を望むのは、無い物ねだりにすぎないだろう。

コメント(1)

どっかの奇麗事ばっか言っている連中に、縛り付けてでも聞かせてやりたくなりますねえ。

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