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学園退魔大戦 コミュの聖ペルガモン学園(カトリック系学園)ストーリー

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燦々と降り注ぐ陽の光に照らされて輝く校舎は、
それ自体が既に聖域と変わらぬ神々しさを感じさせる。
生徒達の憩いの場である中庭に設置された噴水は清らかな聖水を吹き上げて、
涼しげな空気と見ていて飽きない変幻自在な流水の芸術を作り出していた。
これもまた、鮮やかな芸術品と呼ぶべきか。
そして何よりその噴水の中心には、
柔らかで慈愛に満ちた微笑を浮かべる聖母の像が設置されている。
生徒達は彼女の微笑みを受けて温かい気持ちになり、
彼女のため、神と愛と正義のために生涯を捧げようと優しく逞しく、健やかに成長を――

「クソくだらねえ。うんざりだ」

俺は、窓から覗き見ていた異様な別世界から目を離す。
少しばかりの後悔が襲ってきた。やはり、見るべきではなかったと。
アレクサンドル・ヴァレンタイン。学園一男性的な魅力を誇るこの俺の、
まあそこらに居る馬鹿共よりはずっと程度が良いと思われる顔が不快な感情で歪んだ。
この劣悪なる環境を頭のスミから放り投げておけば後の待遇はいいものだから
今まで黙ってやっていたが、これはいよいよあの狸ババアの寝首を斬り飛ばす頃合いか?
気分が悪い。ムカムカする。ガラにも無く溜息なんぞ吐いてしまった。
ついでに言うと眼の辺りまで伸びているぼさぼさの白髪も鬱陶しいのだが、
切るのもおっくうなのでそのままにしている。
ふり返って部屋全体を見回す――いい感じで荒れている。
いい感じに退廃的だ。酒瓶が何本も散乱して、煙草と肉と血と精の匂いがする。
俺はずかずかと歩いていって、やけに豪華な革張りのソファに荒々しく腰をかけた。
無論、嫌になるほどお上品なこの学園の生徒会室に、こんなものがある筈も無い。
予算をちょろまかして購入したものだが、それなりには気に入っている。
あの馬鹿馬鹿しいほどおめでたい馬鹿共が集まるこの馬鹿らしい学園で、
背神者たるこの俺が唯一安らかに眠れる特等席だ。

「不敬ですよ、ヴァレンタイン隊長」
そうでもなかったか。そう言えば、こいつが居た。
こんなところにまで俺の退廃的で素晴らしい姿を拝みに来る生粋の間抜けは、一人しか居ない。
気配の主の名はモニカ。俺の優秀な部下……という事になっている、お堅い小娘だ。
まあまあの外見なんだから、大人しくしていればそれなりに可愛がってやるものを。
生憎と、この馬鹿は熱心な神論者で――つまりは、生粋の間抜けだ。
間抜けを可愛がるほど、俺は人間が出来ちゃいない。
俺は背後の間抜けを見もせずに、口を開いた。
「不敬? 大変けっこうな事だ。不敬万歳だよチキショウ」
「――相変わらず、この学園がお気に召さないようですね」
「お気に召さないな。教師も生徒も揃いも揃って馬鹿ばかりだ、反吐が出る」
ぴくり、と空気が動いた。
「彼等は皆、優秀な神の真理地上代行者、もしくは将来有望な者達です。
 貴方は仮にもこの学園に身を寄せる者として、神父としてそのような言動が恥ずかしく――」
まあ、この間抜けの前で奴等を、神を信じる聖職者の卵を罵倒すればこうなる。
ご苦労な事だ、俺のような人種は山ほど居ると言うのに、そいつら全員に一々反応するのか。
神の愛を説いて、説教して、改宗させてやればそいつを救った気になるのか。
全人類信奉者化計画を本気で遂行しそうだ、コイツは。
本当にご苦労な事だ。せいぜい頑張れアーメン、報われない努力に乾杯。
生憎と、これから先この世にどんな奇跡が降りかかろうとも俺だけは神を信じる気は無い。
奇跡などというものは必要としている馬鹿にだけ分け与えてやればいい。
神という名の他人を頼りきって、寄りかかる事しか考えていないおめでたい馬鹿共だけに。
「聞いていますか、アレクサンドル・ヴァレンタイン神父」
わざわざフルネームで呼ぶあたり、やや本気で怒り始めてきたようだ。
俺は両手を軽く挙げて降参の意を示すと、
「それで? 何の用だ。お前はこの部屋に好き好んで来たがるほど、健全な心を持ってないだろ」
「――貴方という人は」
「冗談だ、許せ。そう……聖母のように広い心でな」
おどけて言ってみせると、次の瞬間――空気の流れが不自然に捻じ曲がった。
散り散りに引き千切られていく空気の層。
ふん、怒気と殺気だけで人を殺せそうな勢いだな。
「……これを」
暫らくの後、睨み続ける事に疲れたのか、モニカはそう言って書類を差し出してきた。
肩越しにそれを受け取って、一通り目を通してみる。
知らず、感嘆にも似た呟きを漏らしてしまった。
「聖剣が人の手に渡ったか」
「はい、軽視できない事です」
「確かに、な。軽視はできんだろうよ」

俺が首から鎖に繋いでぶら下げているこれ――絶対断罪の聖十字も中々の代物だが、
今回問題になった剣は更に上を行く逸品だ。
それが何の変哲も無い一般人に渡ったとなれば、その後の展開は容易に想像がつく。
血みどろの争奪戦、実に痛快爽快な阿鼻叫喚だ。
また、多くの命が削られていく。

愉快な光景を夢想して、俺は思わず笑みを浮かべていた。
神父服の長い裾を揺らして立ち上がり、背後に降り返る。
金髪碧眼のモニカは、いつも通りの硬い表情で佇んでいた。
(こいつもまあまあ使えるようになってきた)
値踏みするように見てから、俺は視線を少女から外して歩き出した。
モニカは視線の意図が解からずにいぶかしんだ様子だったが、すぐに俺の後に続く。

聖剣の事も気になるが、
俺の勘が正しければそんなものはおまけに過ぎない。
第一、ああいうものはこの世に特別な争乱が起きる時にしか
姿を現さないものだ。
つまり、俺は匂いを嗅ぎ取ったのだ。
それも、酷く特別で濃厚で素晴らしく食欲をそそる極上の匂いを。
この機を逃せば、次に味わえるのは何十年後か。
もしかすると俺がくたばった後、何百年後かもしれない。
――冗談ではないな。
目の前にぶら下がっているご馳走を、逃がしてたまるかよ。
俺は扉を開けて、そしてとある部屋へと向かう。
向かう先に居るのは忌々しいババアだが、あれの許可が無くては何もできん。
――まあ、我慢するのは一時だけだ。

いざ高らかと鳴り響けよ、殺戮の調べ。
楽しい夜は、もうすぐそこまで迫って来ている。

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