ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

カナダの歴史と政治コミュの新民主党、閣外協力へ

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 与党自由党と野党新民主党の首脳が3月21日、閣外協力の合意に達したと複数のメディアが報じた。
 トルドー首相は21日夕刻に緊急閣議を召集し、続いて自由党幹部会を召集した。新民主党も21日夜に幹部会を召集し、閣外協力の是非について議論した。両党とも、会議の内容について詳細に話すことはできないという。

 自由党が過半数を獲得できなかった2021年9月の総選挙直後から、両党は閣外協力について協議してきた。リークされた情報によると、自由党政権は新民主党の基幹政策を取り入れるかわりに、新民主党が自由党政権を2025年まで信任する。基幹政策とは、新民主党が長年訴えてきた薬剤保険・歯科保険・住宅補助・温暖化対策・先住民への賠償のことで、その財源として自由党政権は金融機関への増税を検討しているという。
 新民主党には閣僚ポストは配分されず、これは連立政権ではない。カナダは連邦レベルでは、連立政権が成立したことはない。

 与党自由党は過半数割れのため、いつ不信任されてもおかしくはないが、最大野党保守党は党首が辞任し、幹部会によって指名された暫定党首が就いている。党員による党首選で新しい党首が選出されるのは9月になるから、それまで保守党は内閣不信任しないだろうし、与党も解散しないのが慣例である。過半数割れの自由党政権は、予算案を成立させられなければ解散・総選挙に追い込まれるが、実際にはそのような心配はないことになる。

 ブリティッシュコロンビア州では2017年、新民主党に緑の党が4年間閣外協力する政権が成立した。だが新民主党は高支持率を背景に2020年、協定を破り解散・総選挙を行い、安定多数を獲得すると緑の党との協定を破棄した。

コメント(15)

 鉄道労組「チームスターズ・カナダ鉄道会議」は、カナディアン・ナショナル鉄道(CN)とカナディアン・パシフィック・カンザスシティ鉄道(CPKC)との交渉決裂を受け、8月26日にストライキを開始すると通告した。これを受けて両鉄道会社は22日、組合員のロックアウトに着手した。政府はスト回避のため、カナダ労働関係委員会(CIRB)に仲裁手続きを進めるよう命じ、24日暫定的な合意に至った。会社はロックアウトを、組合はストを中止し、早期に解決した。
 チームスターズのポール・バウチャー会長は、懸念を表明した。
「労働関係委員会によるこの決定は、危険な前例となる。大企業が数時間操業を停止し、短期的な経済的苦痛を与えただけで、連邦政府が組合を解散させるため介入できることをカナダ企業に教える行為だ。今日、カナダの労働者の権利は著しく低下している。」
 労組の代弁者である新民主党のシン党首は、政府はあくまでも民間企業の争議には不介入であるべきだったと語った。
「反労働者としての先例を何度も作ることで、トルドー首相は企業家に明確なメッセージを送った。」
「カナダ政府は、大企業にへつらっている。それは後退だ。上層部の億万長者以外の、あらゆる人々を傷つける。」

 自由党は下院で過半数に達していないが、新民主党は自由党政権を2025年6月まで信任する協定を、22年3月に締結している。新民主党はその条件として、健康保険でカバーされなかった歯科診療の保険適用や、選挙の投票を選挙区のどの投票所でもできる改革などを要求した。要求の中には、スト期間中に非組合員を充てるのを禁ずる「反スト破り法」も含まれている。
 自由党のカリナ・グールド下院院内総務は27日、新民主党の閣外協力は25年6月まで続くと断言した。
「協定は良い協定だと、私は確信している。それは強い合意であり、6月末まで続く。」
 新民主党が協定を守るかぎり、6月まで総選挙はなさそうだ。ただし首相が解散する場合は、早期の総選挙はありえる。
 新民主党のピーター・ジュリアン下院院内総務は、協定の先行きについて懐疑的に語った。
「新民主党とシン党首にとって、協定を破る選択肢は、常にテーブルの上に乗っている。」
 保守党のポワリエーブル党首は8月29日、新民主党のシン党首に手紙を送り、自由党政権への閣外協力から手を引くよう要請した。
 手紙には、こう書かれていたという。
「カナダ人は、この高くつく連立(筆者注※厳密には連立でなく閣外協力)のさらなる一年を容認できない。誰も、トルドー氏に権力を維持させるためにあなたに投票していない。あなたには、彼にあと一年権力を与えるための国民の信任がない。」
「ジャグミート・シン、労働者を売り渡すのはやめなさい。『売り切れのシン』であることをやめなさい。あなたの年金より先に、人々を炭素税選挙に向かわせなさい。」
 議員年金の資格を得るには6年かかり、シン党首は2019年2月の補選で当選しているから、資格を得るのは2025年2月となる。ポワリエーブル党首は、新民主党が不評の自由党政権を支えているのは、シン党首が議員年金の資格を得るまで解散したくないからだと示唆している。

 このように保守党が新民主党に攻撃的なのは、9月16日に実施されるマニトバ州エルムウッド-トランスコーナ選挙区の補選を意識したゆえだろう。ここは1979年から2024年まで、2011〜15年を除き新民主党が維持して来た鉄板選挙区だが、今回は保守党との接戦になっている。また保守党は、オンタリオ北部とブリティッシュコロンビアで新民主党と激戦を繰り広げている。保守党は新民主党を、不評な自由党政権の手先と印象づけたい。また中道有権者にも、自由党が左翼の味方だと印象づけたい。
 新民主党にとって、次の総選挙で不評な自由党と抱き合って心中するのは得策ではない。そこで当初の約束にはない、自由党がとうてい飲めないような条件を課し、拒否させてそれを口実に閣外協力を取り下げるという策謀はありえる。
 この場合自由党は、常識的には解散・総選挙に追い込まれるが、ケベック連合に部分的協力を得るというウルトラCもありえる。ケベック連合は世論調査を見ながら、今解散・総選挙をすれば議席を減らしそうだと思えば自由党政権の延命に協力し、増やせそうだと思えば内閣不信任に走るだろう。
 トルドー首相の父ピエール・トルドー首相は今から50年前、少数与党政権を運営していた。彼は新民主党の協力を頼りにしていたが、支持率上昇を見るや、新民主党がとうてい飲めない予算案を作成した。新民主党はこれを不信任し、解散・総選挙をひき起こしたが、自由党は過半数を獲得した。新民主党は、31議席から16議席に半減した。
 閣外協力と引き換えに要求された条件について、自由党政権は新民主党が逃げ出さないよう、わざと先送りにしてきた。処方薬の保険適用に関するファーマケア法案は、まだ上院を通過していない。選挙法改正法案は、まだ下院で審議中だ。今解散になれば、オンライン加害防止法案・先住民居留地水質保全法案・地球温暖化対策などは廃案となる。有権者に対する何の手柄もなしに、政権の不評だけ背負って総選挙に臨むことは、新民主党にはとうていできない相談だろう。
 自由党にとっても、今解散・総選挙をすれば大敗は必至の情勢だ。できるだけ先送りし、保守党のスキャンダル発覚のチャンスを待ちたい。

 新民主党のピーター・ジュリアン下院院内総務は、ポワリエーブル党首の狙いは公共サービス削減だと断言した。
「はっきりさせようではないか。ピエール・ポワリエーブルが選挙に勝ちたがるのは、健康保険を切り捨て、年金を切り捨て、大企業により多くの利益を与えるため失業保険を切り捨てたいからだ。彼は、ファーマケアがこの秋に間に合わないようにしたいのだ。我々は基本的に、彼の削減計画に同意しない。」
 新民主党のアン・マクグラス理事長は、両党間の協定がどうなるかについてはポワリエーブル氏が指図することではないと語った。
「ピエール・ポワリエーブルは、その決定をするようにはならない。協定をどうするかは新民主党の問題であり、我々が何を得られるかにかかっている。」
「協定から手を引く選択肢は、常にテーブルの上に乗っている。だが、するべき多くの仕事が残っている。」
 新民主党は9月4日、閣外協力から離脱するとトルドー首相に通告し、ソーシャルメディアで発表した。通告は12時47分、動画投稿は12時55分だった。
 新民主党のシン党首は、動画の中で自由党を批判するととともに、これからは保守党との戦いだと語った。
「ジャスティン・トルドー氏は、何度も何度も実証した。企業の貪欲に屈するであろうことを。自由党は、人々を失望させた。彼らは、カナダ人からもう一つのチャンスを与えられるに値しない。」
 新民主党の労働問題担当マシュー・グリーン議員は3日、新民主党が関与した鉄道ストに政府が介入してから、閣外協力の見直しが議論されていると語っていた。
 政権離脱を呼びかけていた保守党のポワリエーブル党首は、シン党首の発表を評価せず「スタンドプレー」と皮肉った。
「彼は政権を離脱し、自分は間違っていた、連立は悪かった、高くついたと主張した。だが彼は、炭素税選挙のために内閣不信任するとは言わない。」
 するとシン党首は、この発言を受けて「新民主党は総選挙の準備はできており、内閣不信任はどの案件においてもテーブルの上に乗っている」と語った。

 与党は過半数割れに陥ったが、議会で内閣不信任されないかぎり、ただちに政権が倒れることを意味しない。議会は夏休みで、9月に再開されるが、自由党政権にはまだ、新民主党やケベック連合から部分的協力を取りつける余地は残っている。閣外協力と引き換えに突き付けた諸条件を、新民主党が心から大切に思うなら、それらの法案が成立するまで政権を支えるかもしれない。
 処方薬の保険適用に関するファーマケア法案は、両党で合意に至らず、新民主党は3月までに議会に提出しなければ閣外協力を取り下げるとまで色めきだった。そして2月終わりに提出され、6月に下院を通過したが、まだ上院で滞っている。法案は避妊薬と糖尿病治療にしか適用されないが、新民主党はこれを不十分だとみなしている。
 投票日を3日間とし選挙区のどの投票所でも投票可能にするC-65法案も、下院の第二読会を通過したにすぎない。次の総選挙に適用させるには、来年の夏休みまでに両院を通過しなければならない。
 ダルハウジー大学で政治学を教えるロリ・ターンブル教授は、2025年中頃の総選挙なら、新民主党が自由党政権から十分距離を置き、資金も貯まっているだろうと語った。
「もし私が賭けているなら、解散は春の予算案になると予想する。」
 338カナダ社が9月1日に発表した政党支持率調査は、保守党42%、自由党25%、新民主党17%、ケベック連合7%、緑の党4%、人民党3%という結果となった。ここから導き出される予想獲得議席は、保守党210(179〜233)、自由党81(57〜107)、ケベック連合34(28〜41)、新民主党16(10〜27)、緑の党2(1〜3)、人民党0(0〜0)(括弧内は最小〜最大、定数338議席)となり、今総選挙が実施されれば、保守党がどう転んでも過半数を獲得するのは確実な情勢となっている。
 ケベック州での世論調査は、ケベック連合31%、自由党27%、保守党24%、新民主党11%、緑の党3%となった。ここから導き出される予想獲得議席は、ケベック連合34(28〜41)、自由党29(23〜35)、保守党14(10〜16)、新民主党1(1〜3)(定数78議席)となった。

 新民主党の閣外協力引き上げは、やはり政府の鉄道スト介入が原因のようだ。総選挙が近づいており、労組のメンツを潰されてまで与党に協力するのは得策ではなかったのだろう。
 自由党もまた、総選挙に勝つより、どううまく負けるかを苦慮しているようだ。労組におもねって人気を下げるくらいなら、内閣不信任されてもかまわないと覚悟を決めたのだろう。
 日本では、政策的には隔たりのある自民党と公明党の連立が、長く続いている。これは、選挙区が小選挙区と比例代表に分かれていて、住み分けて選挙で戦わないようにできるからだ。
 だがカナダで総選挙になれば、全ての議席が小選挙区なので、全国的に、特にオンタリオとブリティッシュコロンビアにおいて、新民主党は自由党と激しく戦うことになる。連立ではなく閣外協力にしたのは、いつでも政権離脱できる余地を残したかったのだろう。
 新民主党は2年半近く自由党政権を支えてきたが、支持率上昇につながっていない。今総選挙が実施されれば、前回獲得した25議席を下回りそうだ。
 シン党首は「内閣不信任はどの案件においてもテーブルの上に乗っている」とは語ったものの、早急に不信任するとは明言しなかった。今解散に追い込めば、執拗に要求したファーマケア法案は廃案になるので、これが成立するまでは政権を支えることになるだろう。
 政府の介入により鉄道ストが頓挫して、労組を支援していた新民主党の面目は丸潰れとなった。閣外協力の先行きに不安を覚えた自由党のカリナ・グールド下院院内総務は「協定は良い協定だと、私は確信している。それは強い合意であり、6月末まで続く」と8月27日に語った。だがその同じ日、新民主党のシン党首は連邦議会議事堂の前で、自由党を非難し閣外協力を取り下げるという動画を撮影していた。
 自由党の支持率は、20%前後を行ったり来たりしている。そして新民主党の支持率は、彼らの要望を一つ一つ成就させていきながら、いっこうに上がらない。新民主党執行部は、とうの昔に政権離脱を計画していた。インサイダーは匿名を条件に、党内で進行する計画についてメディアにリークした。メディアも、情報を漏らさないと約束した。


 連邦議会が6月に中断され夏休みに入ったとき、すなわち閣外協力が失効する予定より1年早く、シン党首は政権離脱を考え始めた。党員たちは「もう十分達成した。次のステップに進もう」と言い始めた。だが議員たちは、選挙区に戻り支持者と相談したいと言った。
 執行部は8月上旬、政権離脱を決めた。あとはいつ、いかなるタイミングで発表するかだった。26日、鉄道ストが短時間で終了。27日、動画撮影。29日には、保守党のポワリエーブル党首が新民主党に政権離脱を呼びかける公開書簡を公表。政権離脱は決まっていたが、新民主党もメディアも秘密を守った。新民主党のアン・マクグラス理事長は「協定から手を引く選択肢は、常にテーブルの上に乗っている。だが、するべき多くの仕事が残っている」と語り、本心を隠していた。
 彼女は何喰わぬ顔で9月3日、オタワのレストランでケイティ・テルフォード首席補佐官の誕生パーティに出席し、飲んでいた。政権離脱の通告は、その半日後だった。
 議員たちは4日朝、電子メールを受け取った。そこには、シン党首が今日政権離脱を発表するので、13時までは口外しないようにと書かれていた。
 総理府は12時15分、政権離脱の電子メールを送られた。12時44分、新民主党議員たちに送られた電子メールが、トロント・サン紙のブライアン・リリー氏によってXに公表された。
 12時47分、新民主党は総理府に電話し、政権離脱を伝えた。だがトルドー首相は不在で、ニューファンドランド&ラブラドル州ロッキーハーバーの学校で、連邦給食計画について話し合っていた。首相は政権離脱を、メディアから知らされた。自由党のステファン・ローゾン議員は憤慨した。
「新民主党とシン党首は、無礼であろう。彼には、総理に電話で話す勇気すらなかったのか。総理は、ニュースをメディアから知らされたのだ。」
 12時55分、新民主党は動画を投稿し、国民に政権離脱を公表した。

 シン党首の側近ジェニファー・ハワード氏は、反スト破り法・デンタルケア・ファーマケアを挙げ、「協定の成功」を誇りに思うと語った。
「今こそ前に進むときだ。そして、次の総選挙が国の未来の展望を争う戦いになることは明らかだ。」
https://think-universal.org/%E3%82%AB%E3%83%8A%E3%83%80%E8%A6%AA%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E5%85%9A%E3%80%81%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BC%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%80%81%E8%87%AA%E7%94%B1%E6%94%BF%E5%BA%9C/
>ジャグミート・シン氏はソーシャルメディアに動画を公開し、今月政府に対して不信任案を提出すると述べた

そんな情報は聞いてないし、上の動画にもありません。

>ジャグミート・シン氏は今月末までに不信任案を提出すると述べた

本当ですか?
 新民主党が閣外協力を9月4日に取り下げたことで、いつ内閣不信任されてもおかしくない状況となった。ケベック連合のアラン・テリエン下院院内総務は8日、「自由党政権への要求のリストはすでに作成した」「政権支持の代償は安くはない」と語った。
「我々の目的は同じままだが、そこに至る手段はより簡単になった。」
「我々は、ケベックの利益のために交渉し、要求する。我々のパワー・バランスは向上した、それは確かだ。」

 新民主党の政権離脱により、与党自由党は過半数割れとなった。世論調査では保守党の支持率が圧倒的で、即時の解散・総選挙を求める保守党と、総選挙をできるだけ先送りしたい自由党の間で、ケベック連合はキャスティング・ボートを握っている。
 だが1年以内に行われる総選挙で、2番目に多い議席を持つケベックはキング・メーカーではない。なぜなら保守党は、ケベックを除くあらゆる地域で20%以上のリードを保っているが、ケベックでの支持率が低いため、保守党はケベックで取れる議席は少なくても全国的に圧勝すると見られているからだ。
 ケベック連合の地盤はケベックの郊外だが、都市部はリベラルな有権者が多く、ケベック連合は自由党からこれを奪いたい。いっぽう保守党は、ケベックの郊外には保守の有権者が多いため、ケベック連合からこれを奪いたい。
 保守党が過半数政権を築いてしまえば、ケベック連合はキャスティング・ボートを失う。今なら自由党少数政権なので、要求し放題だろう。総選挙はどう転んでも1年以内には実施されるが、どうせなら今のうちにケベックの利益になることをしておきたい。
 テリエン下院院内総務は、リストの一つは65歳以上74歳以下への年金支給を75歳以上と同等にすることと、もう一つはトルドー政権が制限した外国人労働者の拡大だと明かした。
「要求は容易で、可能で、明確である。」
「テーブルの上にある要求は明確だ。私には交渉する用意がある。」

 ハーパー前首相(保守党)は、第一次政権では過半数割れだったが、ケベック州を優遇する予算案を作成し、天敵ケベック連合に支持され内閣不信任を免れた。
 マニトバ州エルムウッド-トランスコーナ選挙区の補選が、9月16日に実施される。任期は最長で13か月しかなく、新民主党の政権離脱により解散・総選挙はいつ起きてもおかしくない状況だ。ここは過去20回のうち新民主党が18回勝った鉄板選挙区で、通常なら誰も気にもとめない補選だが、同党が政権離脱して最初の選挙であり、ここを落とすようなことがあれば、シン党首の指導力が問われかねない。
 新民主党のフランソワーズ・ボワバン元議員は、もし補選に負けたら、シン党首の政権離脱が遅すぎたという批判が起きると予測した。
「この選挙区を失えば、大きな痛手となり、ジャグミート(・シン党首)がリーダーシップを保つことは難しくなるだろう。」
 サスカチュワン新民主党政権で財務大臣を務めたアンドリュー・トムソン元州議は、この補選は候補者の問題というよりシン党首の問題になるかもしれないと語った。
「私が思うに、これはリーダーシップのテストであり、候補者を越えた問題だ。それは新民主党ブランドについてであり、シン党首のリーダーシップについてである。」
 シン党首は、たとえ2つの補選を落としても党首に留まると明言し、連邦保守党をマニトバ州議会選挙に負けた進歩保守党政権にたとえた。
「マニトバ州の人は最近、その選択をした。彼らは保守党を拒否し、保守党の意地悪な政策と削減を拒否した。そして今、それは彼らに再びある選択である。」

 自由党が6月、牙城トロント-セントポール選挙区の補選を落としたことは、現政権への強い批判の現れとして、トルドー党首(首相)のリーダーシップに疑問を抱かせた。9月16日には、ケベック州ラサール-エマール-べルダン選挙区でもう一つの補選がある。過去20回のうち自由党が18回勝った鉄板選挙区だが、自由党は今回人気がなく、ケベック連合・新民主党と三つ巴の激戦となっている。ここも閣外協力取り下げをめぐり、トルドー首相とシン党首にとって試練になるだろう。
 シン党首が2017年10月に就任して以降、ケベック州で2つの総選挙と4つの補選があったが、新民主党が当選させたのは一人(2度)だけだった。政治評論家のエリック・グルニエ氏は、新民主党候補がケベックで勝つようなことになれば、シン党首より大きな影響力を持つことがありえると予想した。
「そこに反自由党・反トルドーの機運があるなら、それは新民主党へ向かうだろう。新民主党はケベックでは振るわないので、もし当選することがあれば、名声は党ではなく候補に行くだろう。」
 保守党のポワリエーブル党首は9月11日、近く召集される連邦議会においてできるだけ早く内閣不信任動議を提出すると述べ、新民主党のシン党首がトルドー政権打倒に加わるか、それとも政権離脱は無意味なスタンドプレーだったか、よく見なければならないと語った。
「ジャグミート・シン氏は、閣外協力を破棄したと宣言した。それは、彼が内閣不信任に投票しなければならないことを意味する。それとも彼は、もう一度カナダ人を売り渡すのか?」
 ポワリエーブル党首は、政権離脱は2つの補選の前を狙ったと指摘した。
「補選は16日に行われる。彼はそれから手の平を返し、トルドー政権を信任することができる。」
 16日に2つの補選があり、与党自由党が不評なことから、新民主党は与党から距離を置いて戦いたい。ポワリエーブル党首は、新民主党に与党に付くのか付かないのかを迫るが、連邦議会も16日に召集されるので、補選には間に合わない。新民主党は本音では、悲願のファーマケア法案が成立するまでは政権を支えたいだろう。内閣不信任動議は否決されるだろうが、新民主党を与党の手先だと印象づければ、ポワリエーブル党首にとっては成功なのだろう。

 下院の現有議席は、自由党154(議長を含む)、保守党119(副議長を含む)、ケベック連合32、新民主党24、緑の党2、無所属3、欠員4(定数338議席)であり、トルドー内閣が下院で信任されるには過半数の168が必要で、新民主党かケベック連合いずれかの協力が欠かせない。

 シン党首は不信任動議について、動議の内容を見てから検討すると述べ、対応を明確にはしなかった。
「我々はそれを見たい。我々はそれから、国民の最高の利益にかなう決定をする。」
 彼は、ポワリエーブル党首は自分が欲しい何かを得るためにゲームをして、「売り渡しのシン」のような侮辱的な呼び名を使っていると批判した。
「彼らは、侮辱と中傷が好きなのだ。彼は、保守党がときどきすることをしている。」
 自由党のアレクサンドラ・メンデ議員は9月9日、トルドー首相に退陣を呼びかけた。
「私の選挙区の有権者はトルドー氏を、次の選挙で党を率いるべき人物とはみなしていない。これが、私が伝えるメッセージである。」
「私がそう聞いたのは、2人や3人ではない。何十人もの人々からそう聞いている。」
「彼はもはや、正しいリーダーではない。」
「彼がした多くの素晴らしいことに値する評価を、彼が与えられていないのは残念だ。だが有権者の声を聞くなら、我々は党首を変えなければならないと言わねばならない。」
 自由党が支持者に最近送った献金を募る電子メールには、児童手当、託児所の値下げ、無利子の学生ローン、住宅促進プログラム、そして議会で審議中のファーマケアとデンタルケアなどの成果について宣伝していた。メンデ議員は、カナダ人の多くは9年間のトルドー政権の成果を知らない、だから首相が辞任しないなら、それらの成果について宣伝しなければならないと述べた。
「党が次の総選挙で勝てるか、私は自信がない。」
 いっぽうジェイム・バチスト議員は、自由党にはトルドー首相への信任がまだあると語った。
「私は、3度の総選挙勝利について考える。長年のフットボール・コーチとして、私はそれをフットボールと比較する。あなたが3回続けてスーパーボウルに勝ったら、クォーターバックをベンチに下げることはない。」
 トルドー首相は、財政は赤字だがG7では最も健全だと訴え、保守党政権になれば公共サービスが削減されると警告した。
「カナダ人が頼りにしている公共サービスの削減によって成長できると保守党が信じているとき、我々は国民に投資することによって成長できると信じている。これは、人々が来たるべき補選でする選択である。これこそ、人々が来年する選択である。」
 マーカス・ポウロウスキー議員は、自由党の状況はそれほど悪くないと楽観的に述べた。
「私が思うに、人々はポワリエーブル党首の話を聞いて、結局はこう考える。『私はトルドーがあまり好きではない、だがポワリエーブルのことは心底嫌いだ』と。」
「そう、人々はトルドーに怒っている。だがほかの選択肢を見たとき、我々はそれほど悪く見えないと思う。」
 9月16日、2つの補選が行われた。与党自由党は6月の補選に続き、モントリオールのラサール-エマール-べルダン選挙区でまたも鉄板選挙区を失った。
 当選したのはケベック連合のルイ=フィリップ・ソベ候補(ケベック連合)で、8884票(得票率28.0%)だった。議席を保持していた与党自由党のローラ・パレスティニ候補は8636票(27.2%)、新民主党のクレイグ・ソベ候補は8262票(26.1%)と接戦で、1位と2位の差は248票だった。
 この補選は稀にみる接戦のうえ、史上最多の91人が立候補したため開票に手間取り、もう一つの補選にくらべ結果は遅くまで出なかった。無所属のイサック・デュポン候補とダニエル・スタックレス候補は、カナダ史上2番目の得票0を記録した。

 カナダ三大都市MTV(モントリオール・トロント・バンクーバー。なおこの表現は、モントリオールがカナダ最大都市だった時代の名残である)は、自由党の金城湯池とされてきた。だが自由党はこの選挙区で、前回総選挙より得票率を15.7ポイントも減らしている。6月のトロントの補選でも敗れており、これらの結果は自由党にとって安全な選挙区はどこにもないことを示している。もし今総選挙が実施され、自由党があらゆる選挙区で得票率を15ポイント減らすなら、オンタリオにはおびただしい数の接戦選挙区があるから、自由党はそれらをことごとく失う惨敗を喫するだろう。
 トルドー首相は事前に、たとえ何が起きても総理の職務を続け、次の総選挙で自由党を率いると明言していた。
 新民主党は本来なら、来年6月の夏休みまで自由党政権を信任するはずだった。ところが閣外協力を取り下げたため、与党は過半数割れとなり、今総理を辞任したところで、次の総理が春の予算案を乗り切れる保証がなく、こんな状況では誰も総理のなり手がいない。新民主党は8月上旬には政権離脱を決めていたが、9月上旬まで発表しなかったのは、トルドー首相に最後の辞めるチャンスを与えていたのではないだろうか。16日には連邦議会が召集されたため、彼はもう辞めたくても辞めることすらできず、次の総選挙で破滅に向かうことになるだろう。
 フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ産業大臣は、強気で語った。
「今は降りるときではない。今は倍掛けするときである。我々はエネルギーを得て、可能性について話し、この国の将来について話す必要がある。」
 マーク・ミラー移民大臣は、意味不明なコメントをした。
「日は明日また昇り、明日また沈む。そして我々は、次の勝利を目指す。」

 新民主党は唯一、2つの補選の両方を獲れそうだった。シン党首にとってこの補選は、政権離脱に対する国民の審判という側面を持っていた。モントリオールでは僅差の3位に敗れたが、もともとは自由党の鉄板選挙区である。もう一つのマニトバ州エルムウッド-トランスコーナ選挙区は、過去20回の選挙で新民主党が18回勝った鉄板選挙区で、落とすわけにはいかなかった。前回総選挙では8416票差で余裕の勝利だったが、今回は1158票差の辛勝だった。シン党首は、1勝1敗の結果に満足していた。
「ウィニペグの結果は、我々が保守党を倒せることをカナダ人に示した。」
「我々の前途には大きな戦いが待っているが、我々は保守党のカットを止めることができる。」
 だが彼は、この秋に総選挙をひき起こす考えがあるかどうかについて、答えなかった。

 自由党のイアン・マッキンタイア候補は得票率4.8%に終わり、与党候補としては史上最低レベルを記録した。トルドー首相は投票率の低さのせいにしたが、39.1%は補選としては非常に高い数字だった。ラサール-エマール-べルダン選挙区は39.7%で、これも高い方である。

 保守党は補選の両方に敗れたが、ウィニペグでは得票率を前回総選挙より15.9ポイントも上昇させた。ポワリエーブル党首は、トルドー政権は終わっていると指摘した。
「トルドーにとって破壊的な結果だ。9年間で税は上がり、物価は上がり、犯罪率は上がり、そして刻限は来ている(time's up)。」


写真:ラサール-エマール-べルダン選挙区の投票用紙。
 保守党のポワリエーブル党首は9月24日、内閣不信任動議を提出する。その内容は、非常にシンプルである。
「下院は、首相と政府を信任しない。」
 ポワリエーブル党首はたびたび「炭素税選挙」と言い、炭素税を槍玉にあげてきたが、その文言は慎重に省かれた。
 下院の現有議席は、自由党154(議長を含む)、保守党119(副議長を含む)、ケベック連合33、新民主党25、緑の党2、無所属3、欠員2(定数338議席)であり、トルドー内閣が下院で信任されるには過半数の169が必要となるが、新民主党とケベック連合は態度を鮮明にしていない。両党は与党に条件闘争を挑むと見られ、可決されないと思われるが、保守党は両党の旗幟を鮮明にさせることに意義を見出していると考えられる。

 カナダ政治の特徴として、連邦党と地方党は独立していることが挙げられる。同じ名前の党でも、協力しているとは限らず、別の党を支援していることがある。ところが新民主党は、連邦党と地方党が同一組織である。ブリティッシュコロンビアとサスカチュワンで近く総選挙が実施され、このうえ連邦でも総選挙があると、財政がパンクしてしまう。悲願のファーマケアはまだ上院で滞っており、新民主党はこの時期の総選挙を回避すると見られる。

 ケベック州には、環境問題に敏感な有権者が多い。ケベック連合のマルタン・シャンプー議員は16日、CBCの番組に出演し、内閣不信任動議が炭素税を批判したものであれば、同党は同調しないだろうと述べた。
「それは保守党の狙いにかなう行為で、それはケベック連合のものではない。」
「保守党からの炭素税に基づく動議を、ケベック連合が支持するとは私は思わない。正直に言って、彼らにはよりよい別の方法があると思う。」
 ケベック連合のブランシェ党首は、動議の文言にこだわった。
「彼らが我々に動議を最後まで読んでほしいなら、彼らは非常に狡猾になり、巧妙に書く必要がある。それはおそらく、ただのショーに過ぎないだろう。」
「私は、ジャスティン・トルドーをピエール・ポワリエーブルに入れ替えることを目的としていない。ケベックにとって、ピエール・ポワリエーブルがトルドー氏よりいいとは思わない。」
 彼は、議会の会期は長くは続かないだろうが、ハロウィン以降に内閣不信任すると、12月の総選挙になりクリスマスにかかるので好ましくないと語った。
「我々は、4台の車でチキンゲームをしている。それゆえ私は、この会期が長期に続くとは考えていない。」
「私は、10月中旬がホットスポットになると考えている。」
 ケベック連合は自由党に対し、年金改革と外国人労働者の増員についてすでに打診した。同党はあくまでも、ケベックの利益を求め条件闘争を挑むようだ。
「それがケベックに良いなら、我々はそれに賛成する。それがケベックにとって良くないなら、我々はそれに反対する。」
 新民主党のシン党首は9月19日、来週提出される内閣不信任動議に反対すると述べた。ケベック連合もすでに反対を表明しており、内閣不信任は絶望的となった。
 閣外協力取り下げを発表してから、シン党首は「自由党は終わっている」「企業の貪欲に屈した」「人々を失望させた」「カナダ人からもう一つのチャンスを与えられるに値しない」などと非難し続けてきた。だがなぜそこまで酷評する自由党政権を信任するのかと問われると、「トルドーは悪いが、ポワリエーブルはさらに悪い」と苦しい弁明をした。

 保守党のポワリエーブル党首は、シン党首は補選に勝つため、新民主党への票が変化のための票だったと有権者に信じさせたと糾弾した。
「彼は偽者の、詐欺師である。」
 そして、シン党首が自由党から距離を置くという主張は「全くの嘘」だったと非難した。

 ケベック連合のブランシェ党首は、16日の補選に勝利し「自由党政権の終わりは近い」と語った。だがそれは、ケベック連合がただちに自由党政権を打倒すことを意味しないようだ。
「我々は、ケベックのための重要な問題を進めたい。我々には今、絶好の機会がある。」
 ブランシェ党首は、これは恒久的な政権支持ではなく、それは自党が求めている酪農業者への保護と、65歳以上74歳以下への年金増額への対応しだいだと語った。
 保守党のポワリエーブル党首は9月19日、連邦議会で質問に立った。議事手続きでは、クエスチョン・ピリオドの質問は政府に対するものになるはずだが、彼は新民主党のシン党首に対し、いったん補選に勝つため自由党と手を切ったようにみせかけ、補選が終わると議員年金確保のため再び政権を支持したと、口を極めて罵った。
「彼は偽者の、詐欺師である。この売り渡しの新民主党党首が将来何を言おうと、誰か信じられるのか?」
 これを聞いたシン党首は、席を立って通路に出て「よお、俺はここにいるぜ」と徴発した。するとポワリエーブル党首は「やってみろよ」と応じた。保守党と新民主党の席は騒然となった。
 ここでグレッグ・ファーガス議長から注意が入った。
「国民は我々を見ている。」
「国と選挙区のそれぞれにふさわしいやり方でふるまおう。」
 そして議長はポワリエーブル党首に、発言が政府への質問ではないと指摘し、ほかに質問はないかと尋ねた。

 23日、今度はシン党首が質問に立つと、保守党の席から「よお」「よお」という野次が飛んだ。ファーガス議長は、質問の邪魔をしないよう要請した。
「私が前回この席にいたとき、政府に関連しない質問がいくつかあった。議会で許容できる範囲外の発言があった。そして議会慣例に外れたふるまいもあった。」
「有権者を代表するため我々をここに送った人々にふさわしいやり方でふるまうことを、私は望む。」
 ケベック連合のクロード・ドベルフェーユ議員は「暴力と脅迫は議会にあってはならない」とする動議を提出した。この動議は、満場一致で可決された。
 保守党が提出した内閣不信任動議の採決が9月25日に行われ、賛成120・反対211で否決された。賛成したのは保守党のほか無所属議員2名で、与党自由党とケベック連合・新民主党・緑の党と無所属議員2名が反対した。

 与党に優先する「野党の日」が、何日か設定されている。保守党の日はあと3日あり、保守党は26日に内閣不信任動議を再提出する。この採決は来週になると見られる。
 連邦議会がクリスマス休暇に入る前に、ケベック連合と新民主党にもそれぞれ「野党の日」が1日ずつ割り当てられる。ケベック連合のブランシェ党首は25日、乳製品・鶏肉・卵の貿易交渉からの除外と、65歳以上74歳以下への年金10%増額について、10月29日までに合意すれば、今年中は内閣を信任すると語った。
 自由党政権は、ケベック連合の言い分をきかなければ必ず不信任されるというわけではない。保守党が政権を打倒するには、ケベック連合と新民主党の両方を味方につけなければならないから、自由党はケベック連合か新民主党のどちらか都合のいい方を味方につければいい。
 今総選挙になれば、保守党はやすやすと過半数を獲得するだろう。今なら自由党は過半数割れなので、ケベック連合と新民主党にとっては要求し放題であり、弱体政権の方が交渉の余地があり彼らには都合がいい。

 マーク・ホランド厚生大臣は、ブランシェ党首が「最後通牒」と言ったことに不快感を隠さなかった。
「提案することには意味がある。最後通牒を振りかざすことは、その本質よりも政略が全てであるかのように聞こえる。『政策の話をしようではないか』と私は言いたい。」
 彼は、ケベック連合からの年金改革が考慮される前に、新民主党と合意したデンタルケアとファーマケアが先延ばしにされていると述べ、あたかも交渉相手はほかにもいると示唆した。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

カナダの歴史と政治 更新情報

カナダの歴史と政治のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。