「塔を建てようとするとき、造り上げるのに十分な費用があるかどうか、まず腰をすえて計算しない者がいるだろうか。そうでないと、土台を築いただけで完成できず、見ていた人々は皆あざけって 『あの人は建て始めたが、完成することはできなかった』と言うだろう。」
(ルカ福音書14章)
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◆「しっかりした最終回」が大切
アニメなどの子供向け番組のうちの多くは確かに「子供の役に立っている」ものです。もちろん、子供にとって害になるものが皆無ではないのですが、その代表的なものが「しっかりした最終回を持たない」子供向け番組であります。アニメの制作者には「引きずり出した禁忌の欲望」をきちんと処理する義務があると私は考えます。それを元に戻すのか、それとも発展的に解消させるのかに関しては、制作者の裁量に任せられるものであるとしても、何らかの形で子供の心に影響を残してしまうでしょう。もちろん、スポンサーや局側の都合で突然「打ち切り」を宣言される制作者の悲哀には同情を禁じえません。
しかし、少なくとも十三回やそこらは「多数の子供たちの心を引きつけた」ことに対する自負の念と責任感の存在を期待したいと思います。その責任感が欠如している制作者に「アニメーター」を名乗る資格はありません。
思えば昔のアニメや子供向けの特撮番組には、それがどんなに高視聴率を誇っていても、またその逆であっても「きっちりとした最終回」が存在していました。そしてその最終回で流した涙は、幼い視聴者にとってまさしく「心の汗」でした。(中略)
しかし優秀なアニメーターや制作者は、きちんとその深層構造の落ち着く先を最終回で表現しているのです。これらの最終回によって、私たちは「虚構の世界」と「現実の世界」をつなぐ接点を与えられます。虚構が虚構の世界内で完結することによって、子供たちは、現実と虚構の明確な境界線を感じ取ることができます。そしてそのような明確な境界線が提示されているならば、アニメトラウマ残存の可能性は著しく減弱されると言えます。
最終回で流した涙の後の清々しさは、「夢から覚めた」ときのそれに似ています。私たちは「最終回」によって現実へと戻ることができるだけでなく、アニメで得られた感動を、現実を生きていく上での糧にすることができるようになるのです。アニメや子供向け特撮番組が、子供に「夢」を与えることができるというのは、従来この基本的な認識の上に成立しているものであったはずです。子供は必ず夢から覚めるし、また、そうでなくてはなりません。一生を夢の世界で生きていくことはできないのですから……。子供に「覚めない夢」を与えることは、歪んだ精神の温床となるでしょう。
確かに最終回は悲しいものです。個人的には「それいけ! アンパンマン」や「サザエさん」は終わって欲しくないと思います。しかしNHK番組「できるかな?」の最終回には背筋が震える思いがしました。私の長年の夢の世界は、やっとそのとき完結したのです。どんなものにも必ず終わりは必要です。そしてそれが悲しいほど、視聴者のさらなる成長の契機となります。
最近は、涙できる最終回に出会うことが非常に稀になっています。単に視聴率がとれ続けているからという理由で長寿番組となっているものを見るにつけ、私のこの思いは強くなりました。視聴率がとれていないものであっても、実のところ極めて多数の視聴者が存在するわけですから、この事態を前向きに捉えることのできない制作者を無能者という汚い言葉で評することを許していただけるでしょう。
(高田明典「アニメの醒めない魔法」)
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2009年12月20日、私はこの日の思いを生涯忘れないだろう。
私は某ドラマを愛していた。にもかかわらず、作中の伏線が何ら回収されることもないまま、主人公らの今後の展望も見えないまま唐突に終了したのである。
人には「終わりのセレモニー」が必要である。単位を取得して授業を終えれば、卒業式などなくても学校生活は十分成り立つだろうが、学校を旅立つに当たって人は儀式を必要とする。
子供がこっくりさんをやって、狐につかれてしまうのも同じことだ。プロの催眠術師なら催眠術をかけ、それを解くこともできるが、自分で勝手に集団自己催眠にかかると、誰もそれを解くことができず、大変なことになる。
ドラマは所詮、虚構である。実在しない人々が、架空の世界で生き、死んでゆく。それらは、現実世界をモチーフにした寓話にすぎない。
テレビは、効果音や映像トリックを用いて人を洗脳する効果もある。しっかりとした最終回というセレモニーを行うことで、視聴者を夢の世界から連れ戻すことは、高田明典の著書を待つまでもなく、重要であろう。
本コミュニティは、過去のさまざまな名作・駄作の最終回について考察し、「理想的な最終回とは何か」というテーマを追求していくものである。
なおコミュニティのタイトルは、某ドラマ登場人物の口癖に由来している。
コミュニティのルール
連続形式で、最終回のあるものについてなら、テレビ・マンガなど何でもトピックを立て、コメントできます。1回きりのスペシャルドラマや映画などは、当コミュでは取り上げません。
いかなる作品も是々非々で臨みます。「私の愛する作品を批判するのは許せない」という「原理主義者」の方は、ご遠慮下さい。
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管理人紹介
高木喬 幸二
新潟市に生まれる。
1990〜93年、バンクーバーとトロントに滞在
1993〜94年、カナダの日本語誌で「カナダ人物列伝」を連載
ウェブサイト
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