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カナダの歴史と政治コミュの自由党奇跡の逆転勝利、世論調査またも大ハズレ

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 5月14日に行われたブリティッシュコロンビア州議会選挙は、自由党50議席(45)、新民主党33議席(36)、緑の党1議席(0)、無所属1議席(4)(定数85/カッコ内は解散時勢力)という結果となり、各種世論調査で圧倒的不利を予測された自由党が、奇跡の大逆転で4選を果たした。なおオークベイ=ゴードン・へッド選挙区のアンドリュー・ウィーバーは、全ての州において緑の党最初の州議会選挙当選者となった。

 自由党政権は、BCレイル売却にまつわる汚職疑惑、HST(統合消費税)の住民投票での否決、少数民族への票目当ての謝罪などで人気を失っていた。新民主党のエイドリアン・ディックス党首は、今こそ政権交代の時だと呼びかけ、自由党によるネガティブキャンペーンにあえて反応しなかった。
 だがクリスティ・クラーク首相は、パイプライン計画に反対するディックス党首に「ドクター・ノー」のレッテルを貼り、新民主党政権になれば住民はアルバータに流出するだろうと警告した。そして政権交代を訴える新民主党に対し、「決して変わっていない新民主党」の危険性を訴えた。新民主党が初めて政権に就いたのは1991年だが、ビンゴゲート事件などのスキャンダルを頻発させた後、党内抗争を起こして有権者を失望させ、政権を手放した。有権者はその苦い記憶をまだ忘れてはいなかったし、ディックス党首自身も抗争の当事者であった。
 いっぽうクラーク首相は、スキャンダルを克服し、党内の異論を押し切り、圧倒的不利な世論調査を覆して奇跡の勝利を起こしたものの、自身のバンクーバー=ポイントグレイ選挙区で新民主党のデビッド・エビー候補に敗れた。クラーク首相は引き続き政権を担当することになるため、自由党の若手議員が辞職して補欠選挙を行い、そこに彼女が立候補することになる。この場合、野党は選挙運動を行わないのが慣例である。

 世論調査機関は、1年前のアルバータ州議会選挙に続き、またも予想を大きく外した。各党の得票率は自由党44.4%、新民主党39.5%、緑の党8.0%、保守党4.8%だったが、事前の調査ではイプソス=リード社が自由党37%、新民主党45%、緑の党9%、保守党6%、アンガス=リード社が自由党36%、新民主党45%、緑の党9%、保守党7%、ジャスタトン・マーケット・インテリジェンス社が自由党31%、新民主党45%、緑の党14%、保守党8%であった。新民主党は自由党に対し、平均で8ポイント、最大で17ポイントもリードしていたことになる。またほとんどの世論調査機関が、緑の党と保守党の支持率を過大に評価していた。
 これについてアンガス=リード社のマリオ・カンセコ副社長は、世論調査の対象者が実際には投票に行っていない可能性を指摘し、調査方法の見直しを示唆した。彼は、新民主党支持者が18歳から34歳の年齢層に多く、この世代が何らかの理由で投票に行かなかったことが原因だと予測した。そして自由党支持者は55歳以上の年齢層に多く、この世代は投票率が高いと指摘した。

コメント(17)

>>[1]

与党がこれほどのことを仕出かしておきながら、政権交代できないという結果に愕然とさせられます。有権者はまだ、新民主党を許してはいなかったのでしょう。日本で民主党政権が信用を失くしたあと、自民党政権の景気刺激策が受け容れられていることに似ているかもしれません。自由党が過去の新民主党政権を徹底的に攻撃したのも、鳩山首相そっくりの男性が女性を口説く自民党のパロディCMを連想させます。
(http://mixi.jp/view_bbs.pl?page=1&comm_id=1611536&id=19476830 の7参照)
気難しそうな印象のディックス党首に対し、チャーミングで谷間がセクシーなクラーク首相は、かつてのバンダーザム首相を連想させます。男前だが政策の中身はなし。汚職で退陣したのち、改革党・統一党から出馬して落選し、忘れられたころに突然「市民団体代表」としてHST反対運動の中心になるところは、何やら因縁めいたものを感じます。
(http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=1611536&page=1&id=17707969 の10参照)
カナダ西部は移民の割合が多く、無党派が多いためポピュリズムに走りやすいとされており、新民主党はキャロル・ジェームズ党首なら政権奪回できたのではないでしょうか。ディックス党首はおそらく、党首の座から引きずり下ろされることでしょう。

英連邦諸国は党首討論を重んじる伝統があるので、与党と野党第一党の党首が落選したときは補選を行い、他党は選挙運動を行わないのが慣例です。しかし新民主党は自由党に徹底的にこき下ろされ敗北したため、今回はガチで戦うかもしれません。野党第一党党首になったアーサー・ミーエンが1941年、上院議員を辞職して下院補選に出馬したとき、落選しています。また2007年にケベック党党首となったマロワ氏が補選に出馬したとき、民主行動党がガチで選挙運動を行いました。
 1年前にアルバータ州で、不利な予想を覆して選挙に勝利したアリソン・レッドフォード首相は、クラーク首相が「世論調査と政治評論家の誤りを証明した」ことを祝福するメッセージを送った。去年のアルバータ州とケベック州、そして今年のブリティッシュコロンビア州で、世論調査機関各社は予想を大きく外し、その信頼性が揺らいでいる。

 世論調査には、主に次の3つの方法がある。調査員による電話世論調査、自動音声案内による電話世論調査(IVR)、あらかじめ選ばれた回答者によるインターネット世論調査である。ブリティッシュコロンビアでは、電話世論調査はインターネット世論調査より正確な結果が出た。
 選挙結果に最も近かった世論調査は、自動音声案内による電話世論調査(IVR)であった。投票の5日前に発表されたフォーラム・リサーチ社のIVR調査は、自由党が支持率で新民主党を2ポイント下回っているものの、過半数ちょうどの43議席を獲得すると予測した。
 IVR調査は速くできるが、極度にランダム化されているため、多くの世論調査機関は高い信頼を置いていない。インサイツ・ウェスト社のスティーブ・モソップ社長は、フォーラム・リサーチ社の結果について「ただの偶然だろう」と述べた。
 インターネット世論調査はおおむね、予想を大きく外した。インターネット世論調査は、対象が若年層に偏りがちなため、消費者アンケートに広く使用される。
 いっぽう電話世論調査は、対象が年輩層に偏りがちで、調査員による調査ではしばしば正直に回答されないという事態に直面する。ジャスタソン・マーケット・インテリジェンス社のバーブ・ジャスタソン代表は「我々世論調査機関は、調査方法をオンラインへと発展させることで、若年層にシフトしてきた。しかし、選挙のシステムが投票所に行って紙に記入するという手法を取ることを考えると、年輩層向けかもしれない」と語った。
 移民一世の有権者には、カナダの公用語を介さない者もいて、世論調査の実施が困難な場合も少なくない。ブリティッシュコロンビア州は移民の割合が特に多く、世論調査は彼らの民意を汲み上げられなかった可能性がある。

 予想が外れた原因の一つとして、有権者の方針未定が挙げられる。オラクルポール・リサーチ社の調査では24%、インサイツ・ウェスト社の調査では15%と、多くの世論調査が膨大な層の未定者がいることを示した。
 さらにイプソス=リード社が1400人を対象に実施した出口調査は、有権者の10人に1人が誰に投票するかを投票日当日に決めていたこと、そしてこれらの有権者の多くが自由党に投票したことを示した。また有権者の5人に1人が、誰に投票するかを選挙の最後の週に決めていたこと、そしてこれらの有権者のうち41%が自由党に、34%が新民主党に投票していたことを示した。ここから同社は、選挙戦終盤の自由党による新民主党へのネガティブ広告は、壊滅的影響力を持ったと結論づけた。
 予想が外れた原因として、自分の票が死票になるのを嫌い、本来の支持政党より有力な政党にスイッチする「戦略的投票」が挙げられる。
 アルバータとブリティッシュコロンビアの選挙には、二大政党+二小政党の組み合わせという共通点がある。アルバータ州議会選挙では、中道右派の与党進歩保守党が中道左派の自由党支持者の票を奪った。ブリティッシュコロンビア州議会選挙では、中道右派の与党自由党が右派の保守党の票を奪ったが、革新の新民主党は緑の党に票を奪われた。
 ECOSリサーチ社のフランク・グレイブ社長は、世論調査が外れたアルバータ州・ケベック州・ブリティッシュコロンビア州のそれぞれの選挙において、いずれも与党が予想以上の成績を上げたことに注目した。
「3つの与党は、選挙戦終盤に支持率を10ポイント以上上げた。明らかに、何かが作用していると見るべきだ。」
当コミュ開設して6年半になりますが、管理人以外の投稿は非常に少ないので、きのう1日で3年分くらいの投稿があったような気がします。www

ブリティッシュコロンビアでの新民主党の敗北は、連邦でもオンタリオでも衝撃的に受け止められているようです。オンタリオ新民主党政権が財政を破綻させたことは、今だに言及されているほどですが。

トルドー党首の人気の理由として、政治暦が浅いことから、過去の腐敗や抗争と無縁だということが挙げられます。国民はハーパー政権にも自由党の腐敗にも飽きているのではないでしょうか。
ハーパー政権は予想外に長期化していますが、保守党の支持率とは別に「誰が首相にふさわしいか」という調査になるとかわいそうなほど人気がありません。それにもかかわらず政権を維持できるのは、ひとえに野党党首に魅力がないからです。だから人気のあるトルドーを党首に立てれば、案外簡単に政権交代できるのかもしれません。
2年もあれば普通の人はボロを出すのですが、ブリティッシュコロンビア自由党がボロ出しまくりで政権を維持できたということの方が問題です。ハーパー首相自身は大きなボロは出しませんが、閣僚は質が悪いようで、定期的にトラブルを起こして更迭されています。オダ大臣などは議会で偽証して議会侮辱に問われ、内閣不信任されましたが総選挙で大勝しました。

左派の狭いフィールドに自由党・新民主党・ケベック連合・緑の党がひしめいていて、右派のフィールドを保守党に独り占めされています。新民主党が元自由党のマルケアを立てて、左派から中道左派へと右寄りにシフトしていますから、自由党は中道左派から中道右派へと右寄りにシフトすべきでしょう。そうすると保守党も中道右派から右派へと、改革党本来の位置に収まるかもしれません。
自由党には二つの価値軸があり、一つは右派と左派、もう一つはアングロフォンとフランコフォンです。伝統的に、右派&アングロフォンと左派&フランコフォンが交互に党首に就くというジンクスがあり、前者は短期政権、後者は長期政権になるのが常でした。前党首のイグナティエフは前者、現党首のトルドーは後者です。「左で選挙を戦い、右で統治する」と言われた自由党は、次はやはり左で選挙を戦うのでしょうか。
 ブリティッシュコロンビア州議会選挙後に実施された、イノベイティブ・リサーチグループによる世論調査は、有権者のかなり多くが政権交代の必要を感じながら、新民主党政権に不安を抱き、直前になって自由党にスイッチしたことを示した。
 回答者はまず、今回総選挙において必要と思う選択肢を、優先順位をつけずに選択した。その結果、「政権交代の時期である」の選択肢が最も多く選択された。ところが「政権交代の時期である」を選択した回答者の実に52%が、実際には与党自由党に投票した。
 そこで回答者に、選択肢について「最も重要な要因」を選択させたところ、1位が「反新民主党」で32%、2位が「経済」で26%という結果となった。ここからイノベイティブ・リサーチグループは、有権者のかなり多くが政権交代を欲していたにもかかわらず、野党第一党の新民主党とその経済政策を不安視したため、投票日直前になって自由党投票に切り替えたと判断した。

 フレイザー=ニコラ選挙区で落選した新民主党のハリー・ラリ元州会議員は、こう述べた。
「パイプラインが、私の選挙区を通ることになっている。それで人々は、パイプライン建設の仕事を当てにしていた。あるブルーカラーワーカーが、私にこう言った。『新民主党はパイプライン反対だから、私の敵だ。』」
★大手マスコミ「世論調査」の実態 なぜ内閣支持率や政党支持率に大きな差が出るのか
  デイリー新潮
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190805-00575134-shincho-pol

 最近の世論調査は、メディアによって、内閣支持率や政党支持率などでバラつきがあるため、「国民の声を本当に反映していないのではないか」「正確ではない」という声が少なくない。場合によっては、“数字の操作”があるのではないかという指摘さえある。
 なぜ、世論調査はメディアによって、かくも違う結果になるのか。今年6月に出版された『武器としての世論調査』(ちくま新書)を一部抜粋、再構築の上、この謎に迫る。
 著者は、2017年よりツイッターで「みらい選挙プロジェクト」を単独で運営し、独自の政治情勢分析を公表、無党派層として社会に対する発言も行う、三春充希氏だ。
 日本では、毎月1回の定例世論調査をNHK、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、共同通信、時事通信、ANN(テレビ朝日/報道ステーション)、日経新聞(テレビ東京と合同)、産経新聞(FNNと合同)、JNN(TBS)、NNN(日本テレビ)と、計11のメディアが個別に行っている。
 調査方法は、時事通信だけが個別面接形式で、調査員が対象者に出向いて質問し、回答を得る。複雑な質問が可能なので、意図が誤解されることが少ない。残りの10社は電話形式で、これは90年代前半に普及した調査方法だ。初期は電話帳や住民基本台帳をもとに電話をしていたが、00年以降は、ランダムな数字を組み合わせて電話番号を作り、それが実際に使われているかを判定後に電話をかける方法が採用された。
 各社とも、調査対象者は1000人程度かそれ以上。1000人を調査すると、想定最大誤差が±3・1ポイントに収まるからだ。しかし実際に発表されている各社の内閣支持率は、それを大きく超えたばらつきがあるという。
 安倍政権下で、最も多くの世論調査が同一の日程で実施されたことがあった。15年9月19日に安保法(安全保障関連法)が強行採決されたときに行われた調査だ。内閣支持率は最も低い朝日と毎日が35%、最も高いJNNが46・3%となっており、その差は10ポイントを超えたという。
 その原因を三春氏は著書の中でこう分析している。
〈実は偏りが生まれる最大の原因は、各社の内閣支持率の定義に違いがあることなのです。(中略)各社の内閣支持率の定義に違いがあるとはどういうことでしょうか。例えば朝日新聞は、世論調査の最初の質問で「あなたは安倍内閣を支持しますか。支持しませんか」と聞いています。それに答えて「支持する」を選んだ分が内閣支持率とされ、「支持しない」を選んだ分が不支持率とされます。日経新聞でも、最初の質問で「あなたは安倍内閣を支持しますか、しませんか」と聞いて「支持する」「支持しない」の回答を集めます。しかし日経はそこでは終わりません。「いえない・わからない」とした人に対して、「お気持ちに近いのはどちらですか」と回答を促し、あらためて「支持する」か「支持しない」かを選んでもらうのです。このような質問の仕方を重ね聞きと言って、態度を表明しない層を減らす効果を持っています〉
 この重ね聞きの結果、日経の内閣支持率は40%と朝日より5ポイント高くなった。
〈JNNは4択で聞き、「非常に支持できる」と「ある程度支持できる」の合計を内閣支持率に、「あまり支持できない」と「全く支持できない」の合計を不支持率とします。この方式だと態度を表明しない層が極めて少なくなるため、内閣支持率も不支持率も他社より高くなりがちです〉
●政党支持率の差は最大30ポイント超
 内閣支持率以上に、メディア各社の偏りが大きいのが政党支持率だという。13年から18年までに発表された各社の政党支持率を平均してみると、自民党は最も高いANNで平均45・38%。最も低い時事通信では25・68%と、実に20ポイント近い差がある。また、支持政党を持たない無党派層は、最も高い時事通信で59・64%。最も低いANNでは27・32%と、その差は30ポイントを超えているのだ。
 これでは、どの世論調査が正確なのか分からない。
 三春氏は、数値が大きく異なる原因を、政党名の読み上げの有無にあると分析する。
〈内閣支持率の場合は、回答は基本的に支持か不支持に集約されるわけですから、回答者にとって意志の表明が容易でした。しかし政党は数多くあるため、回答者はその中から一つを選び取る必要があります。そこで、「どの政党を支持しますか」と聞いた後で選択肢を列挙した上で回答を求めるのか、列挙せずに回答を求めるのかという違いが生じるのです。政党支持率では、調査方法の影響も内閣支持率より強く表れます。(中略)各社ごとの政党支持率の平均からは、個別面接形式を採用している時事通信の政党支持率が非常に低く出ることが読み取れます。(中略)電話形式の10社と比べ、個別面接形式の時事通信では無党派層が1・67倍となっています。無党派層は支持政党を持たない人たちのことですから、これは裏を返せば政党支持率が低く出るということにほかなりません。そこで政党支持率を見ていくと、時事通信では野党の支持率が総じて電話形式の半分程度となっています。(中略)自民党もまた0・66倍と低くなっています。その中で固い基盤を持つ公明党だけが個別面接形式でも電話形式でもほぼ同じ水準になることは興味深いですね。個別面接形式では調査員と対面して回答することになるため、顔が見えない電話形式と比べて意志の表明をためらう人が多くなるとみられますが、公明党に限っては支持者にそのような違いがないわけです〉

●“誘導”される政策や時事問題
 三春氏は、内閣支持率や政党支持率は、基本的に回答者が誘導されることはないと説明するが、政策や時事問題についての質問には、誘導される場合があるという。
 例えば、17年に国会で共謀罪が審議されていた時、メディア各社はそれに対する賛否をいっせいに調査した。その結果、各社で20から30ポイントの差が生じた。
〈最も賛成に偏っている読売新聞では、「これまで検討されていた「共謀罪」の要件を厳しくし、テロ組織や組織的な犯罪集団が、殺人などの重大犯罪を計画・準備した段階で罪に問えるようにする「テロ準備罪法案」に、賛成ですか、反対ですか」という聞き方がされています。対して賛成が低く出た共同通信では、「政府は犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を、今国会で成立させる方針です。政府はテロ対策に不可欠としていますが、人権が侵害されかねないとの懸念もでています。あなたは、この法案に賛成ですか、反対ですか」〉
 賛成に誘導するか、反対に導くか、質問ひとつで数値が大きく変動する世論調査。これでは、“世論操作”と呼ばれても仕方がないのではないか。
フジテレビと産経新聞の政治世論調査 委託先の下請けが回答2500件デッチ上げ 徹底した検証が必要だ
木村正人
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200619-00184159/

●「利益を増やしたかった」「人集めが難しかった」
 フジテレビと産経新聞は19日、内閣支持率を含む政治をテーマにした昨年5月から今年5月まで14回の電話世論調査で委託先の下請けのコールセンター責任者が架空の回答を1回につき百数十件、計2500件(総調査件数の約17%)を不正に入力していたと発表しました。
 両社は「確実な調査方法が確認できるまで」世論調査を休止し、問題の期間に行われた調査結果とそれに関する放送や記事は取り消します。コールセンター責任者はフジテレビに対し「利益を増やしたかった」「オペレーターの人集めが難しかった」と説明しているそうです。
 両社は合同でほぼ毎月、コンピューターで無作為に選ばれた全国の18歳以上の男女約1000人を対象に電話調査を実施。都内の会社に委託し、その約半分を再委託された「日本テレネット」(京都市)が500人の固定電話と携帯電話に電話をかけることになっていました。
 アナログからデジタル時代への変化に対応できず、下請け会社の採算がとれなくなったのでしょうか。それとも社内に不正を見抜く世論調査の専門家がいなかったのでしょうか。両社は安倍政権と非常に近いだけに不正の原因と影響に関する第三者機関の詳細な検証が求められます。
 政治に関する世論調査は報道や社論の方向性を決め、選挙における有権者の投票行動、時の権力者の政策決定を大きく左右します。今回の不正は看過できません。国会など公の場で政治に関する世論調査のあり方を徹底的に調査、議論すべき重大な問題です。

●「幼児にピストルを持たせるほどに危険」
 終戦後、連合国軍総司令部(GHQ)の占領下にあった昭和25(1950)年に現・公益財団法人「日本世論調査協会」が発足しました。その協会報「よろん」の巻頭言には気になるさまざまな懸念が示されています。
 「報道機関の世論調査部門に必須なのは、専門性と独立性である。まず専門性。統計学の基本と質問作りの作法を身につけている者が一人もいないような報道機関が、手軽にできるRDD(筆者注:乱数番号法、無作為抽出した電話番号へ通話する調査方法)を使って世論調査をするようなことは、さながら幼児にピストルを持たせるほどに危険なことである。次に独立性。社内に有能な専門家集団を抱えていながら、編集局(報道局)や論説委員室など『社論形成者』の圧力に耐えかねて、不本意ながら社論に寄り添う調査をしてしまうこともあると聞く。世論調査部門が独立性を保障されていないような報道機関では、世論調査は社論の従僕になってしまうのではないか」(個人会員、峰久和哲氏)
 「RDD法といってもランダム『もどき』であることは分かっていましたが、『それらしい結果になるじゃあないか』というのが結論でした。ネット調査の台頭、携帯電話調査にも手を染めるようになってきて、どこまで行くのか想像がつきません。自記式、他記式の問題はないのか、信頼性や妥当性はクリアできているのか、それらしい結果なら本当によいのかと考えてしまいます」(世論総合研究所の谷口哲一郎所長)
●「世論調査リテラシー」の教育を
 「よろん」の巻頭言は他にもこんな指摘をしています。
 「期待と予想が混ざり合い、区別がつかなくなるようなことになるといけない。(略)多様な調査手法があり誤差や偏りは避けられないとしても、サンプリング理論という基礎に支えられていること、そこからの隔たりが大きくなればなるほど調査結果は疑わしくなることをできるだけ多くの人が知っておくべきであり、そのような『世論調査リテラシー』を早い時期から身につけておくことが必要」(個人会員、村尾望氏)
 「戦後の世論調査の発展の初期には、日本の制度状況下でいかに無作為な標本を抽出できるかを、単なる理論だけでなく研究しながら進められており、対象者抽出の方法が詳しく記されている。面接調査から電話調査、それも携帯スマホ利用へ、そしてウェブ調査など新たな調査媒体が登場し、試行錯誤と理論的研究がなされているが、安易に結果だけが示されることも多い」(林文・東洋英和女学院大学名誉教授)
 「若年層の人口の少なさを実感する。60歳以上が7割の回収率であることを鑑みると、我が国の世論がどうしても人口が多い層を中心に形成されてしまう現実に(特に日本の将来を問うテーマの場合)、本当にこれでよいのかと疑念を感じることもある」(新情報センター、安藤昌代氏)
 「一種のジレンマ(有権者のジレンマ)に陥ったかのようです。A候補者に投票してもB候補者に投票しても、また、それ以外の候補者に投票しても、自分自身のためにはならず、同時に有権者全体のためにもならない、結果として何のためにもならないのではと考えすぎてしまいます」(輿論科学協会、大宮泰三氏)
 厚生労働省の毎月勤労統計を巡っては、計画では全数調査が必要だった都内の大規模事業所を2004年から一部のサンプル調査に変えていたほか、04〜11年分の元資料を廃棄していたことが明るみに出ました。
 前出の林名誉教授は「基本統計調査については、ひと昔前には、政治家はだめでも官僚がしっかりしているので、この国は大丈夫、といった見方もあったが、それがそうは言えなくなっているのだろうか」との懸念を示しています。

●英国の世論調査と日本の違い
 筆者が暮らすイギリスで最初のギャラップ世論調査が実施されたのは1930年代です。オンライン調査の全盛期を迎え、政治に関する世論調査の結果が発表されない日はないほどです。日本と大きく異なるのは世論調査のデータが全て公開され、誰でも利用できることです。
 法律で禁止されているのは投票日の出口調査の結果を投票が締め切られる前に報道したり、それに基づいて選挙結果を予測したりすることだけです。その代わり世論調査会社は2つの業界団体、英世論調査協議会と市場調査協会に属しています。
 世論調査協議会会長のジョン・カーティス英ストラスクライド大学教授は選挙や国民投票のたびにパネル・ディスカッションに参加して、世論調査の動向を丁寧に解説してくれます。筆者もカーティス教授には何度も取材したことがあります。
 イギリスでは保守党支持のメディアと労働党支持のメディアが二分しています。質問や報道に社論のバイアスがかかっていたとしても世論調査内容が公開されているので、自分で判断する時にバイアスを考慮できます。
 メディアと世論調査会社、業界団体、シンクタンク、大学がそれぞれ適度な距離を保ってオープンなプラットフォームを形成しているので意図的な情報操作や不正は行いにくい環境です。議会でも委員会レベルで世論調査に関する超党派の調査が行われ、報告書が出ています。
●大きく狂い始めた世論調査の精度
 英世論調査の業界団体は2015年の総選挙、16年の欧州連合(EU)離脱・残留の国民投票、17年の総選挙で世論調査と結果の間に大きなズレが出たことから猛省を迫られました。保守党と労働党という対立軸に加え、EU離脱・残留という新たな対立軸ができたのが主な原因でした。
 背景には新自由主義による急激な貧富や教育、医療の格差拡大があります。オンライン調査のサンプリング方法、年齢による投票率の違い、人口構成や社会経済的階級による回答傾向、標本数などを考慮して世論調査会社が新しいモデルを開発し世論調査の精度向上に努めています。
 世論調査の一部を切り取って扇情的に伝えるメディアの問題もクローズアップされています。英上院政治世論調査・デジタルメディア特別委員会は2018年の報告書で世論調査協議会がジャーナリスト向けのガイダンスや訓練を提供し、報道をレビューするよう提案しています。
 フェイスブックやツイッターなどで誤った情報が拡散していく問題も出てきています。日本のシステムはあらゆる面で制度疲労を起こし、デジタル化への対応が遅れています。情報公開と透明性の確保、オープンな議論を徹底して、まず問題の核心をあぶり出す必要があります。

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