カナダの歴史と政治コミュのイギリスで「カナダ1993」は起きるか

　1993年の下院総選挙で与党進歩保守党は、得票率16.0％で２議席（議席率0.68％）を獲得し、154議席を失う歴史的大敗を喫した。カナダの保守層は新しい保守党「改革党」を支持し、同党は野党第２党にのし上がった。同党は後に、老舗の進歩保守党を吸収し新党「カナダ保守党」を結成する。

　イギリスのリシ・スナク首相は５月22日、総選挙を７月４日に実施すると発表した。最近の政党支持率調査は、労働党43％、保守党27％、自民党10％、改革党９％、緑の党７％となり、ここから導き出される保守党の予想獲得議席は179である。ところが、労働党の得票率を１％上げて44％にした場合、保守党は20％にまで低下し、改革党は14％、自民党13％、緑の党７％となり、ここから導き出される保守党の予想獲得議席は55となる。
　２月に実施されたウェリングバラとキングスウッドの２つの補選（いずれも保守党の選挙区）で、改革党は前者で13.0％、後者で10.4％の票を獲得し、伝統的に野党第２党だった自民党を上回ったことは、注目された。だが93年のカナダと2024年のイギリスには、相違点もある。進歩保守党はケベックで圧倒的な支持を受けていて、ケベック連合結党によって打撃を受けたが、保守党はスコットランドでもともと支持率が低く、スコットランド国民党はとっくに結成されている。

　ロバート・ヘイワード卿は、保守党が100議席以下になることは考えにくいと語る。
「政治では何についてであれ、絶対ないとは絶対に言ってはならない。」
「93年のカナダが起きると思うか？答えはノーだ。」
　キングス・カレッジで政治学を教えるアナンド・メノン教授は、カナダの1993年下院総選挙との類似について調査し、論文を発表した。
「カナダで起きた保守票の分裂は、現在のイギリスよりもっと深刻なものだ。保守党が悪夢的大敗に向かっているのは疑いないが、それが党が壊滅するレベルのものだとは、私は思わない。」