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随想ジャーナリズムコミュのグリコ事件の謎

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グリコ森永事件で、全ての犯罪行為の時効が成立した。

ヨ−ロッパとは全く関係がなくて申し訳ないのだが、私は以前放送記者だった時に、この事件について長期間にわたり取材したため、時効成立には一抹の感慨がある。

そこで今回は番外編をお送りする。

昭和五十九年、私は兵庫県警察本部詰めの事件記者であった。

三月十八日(日曜日)の夜は寒さが厳しく、私は西宮の安アパ−トで炬燵に入って本を読んでいた。

そこへ会社のデスクから電話。

「西宮で拉致事件があったようだ。現場へ行ってくれ」事件記者には夜も日曜日もない。

タクシ−で現場へ駆け付けた。

主人が連れ去られたという家はかなり大きく、「江崎」という表札が出ている。

近所の人に「誰のおうちですか」と聞くと「あんた、なんも知らへんのやな、江崎グリコの社長やないか」と言われて、驚愕した。

閑静な住宅街は、県警刑事部の大型多重無線車や報道関係者の車でごった返す。

これが、日本でも例のない社長誘拐・脅迫事件の幕開けだとは、その時には夢にも思わなかった。

この日以来四年間にわたり、グリコ事件の取材に明け暮れた。

捜査一課長や刑事部長などの幹部に取材しても、重要な話は聞けないので、捜査本部の電気が消えてから、巡査部長や警部補など第一線の捜査員の家へ、夜討ち朝駆けの毎日。

彼らはたいてい、神戸や西宮の中心部からはるか離れた郊外に住んでいる。

捜査員が家に戻るのは、夜十一時から午前零時頃。

タクシ−の暗闇の中で、虫の声を友とし、二時間でも三時間でも待つ。

それなのに帰ってきた刑事さんが酔っ払っていて、話にならないこともある。

「どうしておれの家がわかった!」と怒鳴りつけられることもある。

それから社へ戻って報告書を書き、朝は午前五時に家を出て、別の捜査員が出勤する時に一緒に駅まで歩いて話を聞く。

マスコミの夜回りに対抗するために、秘密の宿舎に寝泊りして家に帰らない捜査員もいた。

私の方も事件発生から最初の三ヵ月は、一日も休みがなかった。

他社の記者で、胃潰瘍になってタクシ−の中で血を吐いた人もいた。

グリコの社員、江崎社長の家族にも直接取材した。

またアングラ情報をもとに、大阪や京都まで足を伸ばして「容疑者」と目される人について周辺取材し、おっかない思いをしたこともある。

最も興奮したのは、ハウス食品工業に対する脅迫事件で、警察が報道機関と報道協定を結んだ時だった。

誘拐事件でもないのに報道協定を結ぶのは、異例中の異例である。

マスコミはその事件について報道しないかわりに、現金授受の瞬間に至るまで、捜査内容を詳しく教えてもらう。

現金授受の日には、私も現場に展開していたが、犯人に振り回される警察と報道機関の姿が今も脳裏に焼き付いている。

この事件では、大捕り物について知らされていなかった滋賀県警の警察官が、現場近くで偶然犯人に職務質問したが、運悪く取り逃がしてしまった。

上級職ではなかった滋賀県警の本部長が、この問題を苦にして焼身自殺を遂げ、グリコ森永事件で唯一の犠牲者となったたのが、今も不憫である。

(熊谷 徹・ミュンヘン在住)

筆者ホームページ http://www.tkumagai.de

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