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蝮☆千夜一夜コミュの週刊『機動戦士ガンダム ガイスト〜鬼の啼く宇宙(そら)編〜』第40話〜I Will Survive(前編)〜(パート1)

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 壊れやすい憧れが
 人を駆り立てる

 夢から覚めて人は言う
 「あれは夢だったのか」と
 さりながら
 夢の最中にあるときに
 多くの人は夢だとは気づかない

 熱病のように我々は
 愛し、叫び、哀しみ、笑い
 そうして一人で死んでゆく

 ひっそりと、その、心の両の手の中に
 壊れやすい憧れを抱きながら



 アクシズ艦隊・・・辺境にある、アステロイドベルトに逃れたジオンの残党である。目撃されることはほとんどなかった。連邦でもその存在は確認してはいたが、そこまで攻め入る計画もなく、半ば黙殺していたといってよい。地球圏のジオン残党も、その存在は知っていたが、協力して抵抗するということはほとんどなかった。それは、アクシズの体制にも問題はあるかもしれない。
 そのアクシズからの救援隊と聴いて、メーガのブリッジでは、驚きを隠せなかった。確かに救援隊を当てにしてここまで逃走してきた。だが、実際にアクシズがそこまでして、地球圏の残党に肩入れした例は、デラーズフリートの叛乱以降皆無に等しかったからである。藁をも掴む思いでここまで逃げてきたが、よもや本当に、アクシズが救援に来てくれるなど、海千山千のジョーンズ艦長も信じてはいなかった。ただ、大佐の命令であったからこそ、それを遂行しようと踏ん張ってきたに過ぎなかった。
 そのアクシズ艦隊は、猛追してくるシュワルツェンベルグ艦長のレオニダスを含む4隻の艦隊の側方からやってきた。予定合流地点でもなく、ましてや、来航する予定の方向とも違った。
 しかし今、救援隊の存在は、メーガのクルーにとっては、一筋の光明である。少なくとも、このままいけば、アクシズ艦隊は、レオニダスの艦隊と戦闘に入るだろう。そうすれば、アクシズ艦隊がレオニダス艦隊を撃破するまで、メーガが持ちこたえるという選択肢が生まれる。もっとも、それも希望的観測に過ぎない。なぜなら、正面の敵の後方から、5隻の新手が迫っているからだ。その上、速力も、そして武装でさえも低下したメーガである。
 ジョーンズ艦長は、傷だらけの片目の男をモニター越しに見たときに、直感でこの男を信じることにした。理由はわからない。いや、『戦友』と告げたこの男の、その言葉を信じたのかもしれない。この宇宙で孤立してしまった者達に、お前達は一人ではないのだよ・・・そう教えてくれる言葉である。
 ブリッジでは、一瞬、ラディッツ・ハンマと名乗る男の通信後に歓声が起きた。死を覚悟してはいたが、誰も進んで死にたいわけではない。
 問題は、前面の艦隊・・・それをどうするかということであった。主砲が一基残された軽巡洋艦で、対抗できる相手戦力ではない。しかし、それを成し遂げなければ逃げ延びることなど出来ないのだ。そう、メーガはまだ、長いトンネルの中にいたのである。


 新たに現れたアクシズ艦隊は、3隻である。一部に被弾したような痕跡を持っていた。すべての艦が、ムサイ級軽巡洋艦の後期量産型と呼ばれるものである。個艦の戦闘力は、そういう意味では旧式に属するため、それほど強力ではない。だが、この艦隊には、新兵器が搭載されていた。
 慌ただしく、艦内放送がモビルスーツの発進を告げている。アクシズ救援隊の旗艦「マハーカルーニカ」においても、それは同じであった。
 「いいか!ガザは我が軍の秘密兵器だ。モビルスーツ形態にはけして変形はするな。現況、モビルアーマー形態のままで戦闘せよ!帰還が不可能になれば、パイロットは脱出に際し、機体を爆破することを忘れるな!!」
 指揮官のラディッツ・ハンマ中佐が命令する。
 「それから、今回は、この俺も出撃する」
 ハンマ中佐はそう言った。それを聴いた副官のポルトフが、ハンマ中佐に懇願する。
 「中佐、出撃なされるなら、ガザに搭乗してください。何もあのようなモビルスーツに搭乗されずとも、我が軍の新鋭機でよろしいでしょう?」
 ハンマ中佐はその言葉を聴くと、ぎょろりとポルトフのほうを見て言った。
 「俺にあんな中途半端な機体に乗れというのか?」
 ポルトフは、ハンマ中佐の身を案じて提案したつもりである。だが、新鋭機のガザを『中途半端な機体』と断罪してしまうハンマ中佐に対し、次の言葉が出てこない。指揮官が自らモビルスーツで前線に出撃するという習慣は、ジオン軍ではしばしばあったことである。ましてや、ハンマ中佐はもともと、モビルスーツパイロットあがりである。自分だけが、後方でぬくぬくしているのを良しとしない性質を持っていた。
 「ポルトフ、前にも言ったが、モビルアーマーの良いところと、モビルスーツの良いところを取り入れるといえば聞こえは良いが、俺の経験から言わせてもらうと、やはり、モビルスーツとして完成した機体には、ガザのようなものは勝てはしないだろう。コストだけを考えても、可変機構というものは、高コストであるし、整備も時間がかかる。お偉方の命令であるし、確かに新鋭機だから、使いはするが、俺はそもそも乗る気はないぞ」
 ハンマ中佐は、ブリッジ内を歩きながら淡々を語った。その左足が軋んでいる。
 「ハンガー!俺のゲルググ?の出撃準備をしておけ!すぐに行く」
 そういうと、ハンマ中佐はあとのことをポルトフに任せて、ブリッジを後する。その左足がまた、軋んでいた。
 マハーカルーニカのハンガーでは、整備兵達がモビルスーツの発進準備に追われていた。実質、これがこの任務で2回目の出撃になる。
 「整備班長、先ほどの連邦軍は、コロンブス級に、モビルスーツがジムばかり10機程度だったので、それほど苦戦することなく、我々は突破できましたが・・・・今回の相手はどうなんです?ハンマ中佐は、上層部の反対を押し切って、この救出作戦に出撃したとも聴きましたが・・・」
 整備兵が、班長に尋ねている。この整備兵は実戦の経験が今回初めてであった。一通り準備が終わり、一息つけそうな頃合である。
 「俺は、ハンマ中佐とは、アクシズに来てからの付き合いになる。俺が見聞きして知っていることといえば、あの人は、独立戦争のとき、モビルスーツのパイロットとして降下作戦で地球に降り、そのまま敗戦の直前まで、地球で戦い続けて、最後に仲間の犠牲で宇宙に帰れたということと、そのときに重傷を負い、片足と左目、それから左の聴力を失ったことだ。そのことがあったからかどうかはわからんが、あの人は、仲間を見捨てるということに、非常な嫌悪感を持っていて、上層部が直前で取りやめにしそうだった今回の救出作戦も、あの人が、最後まで反対し続けたことで、少数だが派遣が決定したという経緯がある」
 整備兵は班長の言っていることをじっと聴いている。
 「それから中佐は、義足を作り、聴力をサポートさせる器具を装着して、パイロットとしても戦おうとしている。何があって、あの人がそこまでして今回の救出作戦をごり押ししたのか、俺にはわからんが、ただ一ついえることは・・・俺達があの鐘鬼とかいう連中と同じ境遇になったとき、中佐のように助けに来てくれる人を、俺は無条件に信じるだろう。俺達だって、アステロイドベルトで孤立しているからな。だが、上のお偉方はあんな箱庭の中でも主導権争いをやっている。どっちについていくかと聞かれるならば、俺は間違いなく、ハンマ中佐のほうだな」
 整備班長は、独り言のように整備兵に語る。整備班長は珈琲を飲み干して、こう言った。
 「おっと、すまん。余計な話だったな。この話は内緒にな。お前にもいらぬ疑いが及ぶともかぎらないから。それから、今回の相手も同じ連邦軍だ。相手の装備、数がどうであろうと、ハンマ中佐は戦うだろう。俺もその覚悟だ」
空になった珈琲カップが置かれる。
 「そうですね。自分、今回の作戦が初めてですので、よくわからんのですが、班長の言うことなら信じましょう」
 整備班長がそれを聞いて笑った。
 「さて、無駄話はこれくらいだ。ゲルググ?のビームバズーカも調整しておけよ。なんといっても、この機体の実戦初参加だからな」
 ゲルググ?・・・この機体は、じつはグレイウルフを通じて、鐘鬼からザク?αの一部の機体設計を入手したアクシズが、ゲルググをベースに試作したものだ。鐘鬼では擬似サイコミュのようなものを搭載していたが、アクシズのそれは、一部の設計を入手したに過ぎず、また、それを次期量産機のテストヘッドと考えていたので、擬似サイコミュは搭載していない。ゲルググをベースにとはいっても、形態がゲルググを模しているだけで、別機体である。性能をそのまま拡大発展させたシンプルなコンセプトの機体であった。結果的には、可変モビルスーツという新しい概念の前に消されてしまう運命にあるが、整備環境を考えて、ガザシリーズとのパーツの共有化を図られていたので、実戦での整備コストはガザよりも低いというメリットがある。
 それを、ハンマ中佐が自艦へと配備を希望し、テストしていたものだ。


 宇宙空間に5機の機影が浮かぶ。アクシズ救援隊から発艦した、アクシズの新鋭モビルスーツ「ガザ」である。モビルアーマー形態で待機中であった。実戦でのデータ取得が目的の先行量産機だ。その5機に一機のモビルスーツが加わった。ハンマ中佐のゲルググ?である。
 「ボリック!お前はガザを率いて、鐘鬼のモビルスーツと交戦している機体を叩け!俺はその母艦を沈める。時間がないから急げよ。でなければ、あのムサイが沈められてしまう」
 ハンマ中佐は、ボリック・コバヤシ大尉に命令する。
「ああ、わかった、ラディッツ。地球での戦友の敵討ちだ」
 コバヤシ大尉は静かにそう言った。ハンマ中佐を階級ではなく、ファーストネームで呼ぶこの男と、ハンマ中佐の関係にも何かあるのだろう。
 「気合が入るのは構わないが、ボリック、お前は宇宙での実戦そのものが久しぶりだ。さっきみたいなヘマはするなよ!水の中とは違うからな。落とされるんじゃねえぞ」
 コバヤシ大尉はそれを聴いて苦笑いする。
 「そっちこそ、片目片足だからな、足手まといになるなよ」
と、それだけ言い返した。
 「全機、何があっても俺達の仲間を連れて帰るぞ!出撃!!」
 ハンマ中佐が叫ぶ。
 流星のように、高速の6機が戦場に飛び出していった。


 4対1・・・ジョン・キャメルは劣勢であった。頼みのムレノは、敵の新型と交戦中である。とてもこちらを助ける余裕などない。手馴れたジム改が相手であるが、さすがのジョンも戦闘機械ではなかった。疲労から、反応速度も遅くなっている。ほぼ、敵弾をかわす事で頭がいっぱいになっていた。ジリジリと追い詰められていることを嫌と言うほど思い知らされる。
 「ぐわ!」
 衝撃とともに機体が揺れる。被弾だ。なんとか装甲で食い止められたようだが、左足の出力も上がらないまま戦い続けているリックドム?にとっては、喜ばしいことではない。相手がビームライフルであったなら、とっくにジョンは死んでいたに違いないからだ。
 敵を捉え、射撃する。だが、当たらない。頭の反応に身体がついていけていないのだ。やがてマシンガンの残弾も尽きた。しかし、弾が尽きたことを悟られてはならなかった。知られれば、勝負は一瞬についてしまうだろう。
 (・・・大佐)
 ジョンは、ふと、ホマレ・マツナガのことを思い出した。メーガのことを託されたのに、ここでその無事を見届けられもせず、散ろうとしている。そんな己がふがいなくて仕方がなかった。
 「こうなったら・・・せめてあと一機、道連れに!!」
 ジョンはリックドム?を加速させた。どのみち長くないのなら、推進剤の切れないうちに、一機を道連れにするつもりだったのだ。
 敵も焦れていたのだろう。被弾させても手持ちのマシンガンでは、簡単に致命傷を与えられないリックドム?に対し、近距離戦を挑もうとするパイロットがいた。その機体が、マシンガンを乱射する。
 ジョンは、リックドムの左腕にマシンガンを構えたまま、その腕を盾にするようにして突き進む。正面から被弾するリックドム?・・・だが、ジョンは速度を落とさない。メインカメラにも被弾し、左腕が弾丸によって原型を留めないほど破壊される。正面装甲にも恐ろしいほどの弾を受けた。だが止らない。
 相手のジム改も、覚悟を決めたのか、マシンガンを投げ捨てて、ビームサーベルを構えた。ジョンが、右腕を後ろに回してヒートトマホークを握らせて、そしてそれを相手の死角から送り込む。一か八か、最後の賭けであった。
 「うりゃー!」
 絶叫しながら振り抜いた。しかし、その一太刀は虚空を斬る。次の瞬間、ビームサーベルにリックドム?の右腕が切り裂かれた。
 (こ、ここまでか!)
 ジョンにはもう、力は残されていない。次の一振りがリックドム?を斬り刻むであろう。
 (今回も、守れなかった・・・)
 ジョンは絶望に包まれていた。警報が鳴りっぱなしであった。しかし、もう、腕が動かない。推進剤も切れようとしていた。
 (俺にはお似合いの末路だったな)
 そんなことを考えた。
 ビームの閃光がリックドム?を照らす。疲労のあまり朦朧とした意識の中で、
 (この閃光によって、俺は斬られるのだろう・・・)
と、ジョンは思った。
 しかし、その閃光はリックドム?を包んだが、やがて過ぎ去った。そして・・・
 「パイロット、助けに来たぞ。アクシズのコバヤシ大尉だ。いまどきリックドム?に会えるとは、泣かせるな、戦友」
 ジョンは我が耳を疑った。アクシズ・・・確かにそのように聴こえた。
 「あとは任せろ!マルチン、お前は、リックドム?を回収して後退しろ。リックドム?をムサイに回収させたら、戻って来い!」
 一般回線で、コバヤシと名乗った男はそのように命令した。すると、リックドムに再び軽い衝撃があり、機体が動き出した。ガザのクローアームがリックドムを捉えていた。
 「すまない・・・」
 ジョンはそれだけを言うのが精一杯だった。己に対する無力さからなのか、安心したからなのか、無表情のまま、ジョンの頬を涙が伝う。やがて、そのまま電池の切れたロボットのように眠りに落ちた。


 斬り結ぶ2機のモビルスーツ。カノン・ライヒ大尉のアドバンスド・ブロックと、カシラッス・ムレノの操るマザ・Eである。
 マザ・Eと斬り結びながら、ライヒは悲しくなっていた。極限の疲労の中で、ムレノの戦闘力は明らかに落ちていた。その全盛期を知るものとしては、そこに淋しさも感じる。闘志はいささかも衰えてはいないようで、モビルスーツ越しにもそれは伝わってはくるが、マザ・Eが、右腕と右足を吹き飛ばされるに及んで、アドバンスド・ブロックの性能にライヒの技量が加味された、現状の戦闘力を脅かすには程遠い状態にある。
 「班長、そろそろ終わらせてもらう!」
ライヒは叫んだ。本来ならばこんな戦い方で終わらせたくはなかった。お互いが死力を尽くして悔いのない勝負がしたかった。しかし、互いの境遇がそれを許さない。
 アドバンスド・ブロックが上段から斬り込む。マザ・Eがそれを受けようとするが、アドバンスド・ブロックはそのまま機体を捻らせて、回転したかと思うと、左手に密かに逆手で握らせたビームサーベルで水平に斬り込む。
 片腕のマザ・Eは受けきれず、胴体を切り裂かれた。
 「さらばだ・・・班長・・・」
 一言だけ、ライヒが呟いた。どこか悲しそうなその顔に、通信が入ってくる。
 「大尉!敵の新手です!!うわー・・・・」
 声は、レナウンのものだ。すぐに声が途切れた。ライヒはチェンに通信を送る。チェンが答えて言う。
 「大尉、レナウンがやられました!敵は、新型の小型モビルアーマーのような機体です・・・は、早い!!」
 こうしてはいられない。ライヒはアドバンスド・ブロックをチェン達が戦っている空域に急いで向けた。その視界の外では、切り裂かれたマザ・Eが閃光とともに爆散していったが、その中から、一つのポッドが飛び出していたことに、ライヒは最後まで気づくことは無かった。


 ライヒは、ボマー機を先行させていた。そしてライヒが空域に到着したときには、残っているのは、そのボマー機とチェンの2機だけになっていた。ざっとみたところ、見慣れないモビルアーマーのような機体で、やっかいなことにビーム兵器を搭載していた。ジム改で適う相手ではない。
 ライヒはチェンとボマー機を囮にするかのようにして、一機に狙いを定めた。まだ気づかれてはいない。静かにビームライフルの閃光が吸い込まれていく。
 「まず1機!」
 正体不明機の1機が、撃墜された瞬間だった。しかし、これで相手にも、ライヒが戦場にいることに気がつかれてしまう。そのライヒの機体に、レオニダスから通信が入る。
 「大尉、通信を傍受したところ、どうやら新手は、アクシズからのもののようです!」
 ニトロン伍長がヒステリックに言う。
 「わかった。少々むしゃくしゃしているんでね、暴れさせてもらうぞ!」
 ライヒは、ニトロン伍長に答えているのか、独り言を言っているのか分からぬ物言いをしたかと思うと、アドバンスド・ブロックを加速させ、戦場の只中へと踊りださせた。ライヒにとって、相手がジオンの残党であろうと、もはや関係ない。今はこの、むしゃくしゃした気持ちをぶつけさせてもらう相手だけを欲していた。
 咆哮するアドバンスド・ブロック。真に自分に合う搭乗者を得たかのように、その本領を発揮しつつあった。



〜パート2につづく〜

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