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蝮☆千夜一夜コミュの 週刊『機動戦士ガンダム ガイスト〜鬼の啼く宇宙(そら)編〜』第29話〜血風〜

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 『靴がないからと
  私は泣いた
  足のない人に出会うまで』

 これは旧世紀の誰かの言葉

 変えることの出来ないと思われる世界があり
 それを変えようとする者たちがいる
 そしてまた
 変革を望まぬ者たちが握りつぶそうとする

 変えられないと嘆くよりも
 私にはこの腕がある
 物を動かすことで世界を変えられるかもしれない
 私にはこの足がある
 こことは違う世界を目指し歩くことで
 たどり着けるかもしれない
 手や足を失っても
 何よりも我々には
 折れぬ心がある
 蝋燭が我が身を削って世を照らすように
 その心こそが身体を失うことになっても
 こんな闇夜を照らす明かりになるだろう
 覚えておくがいい 
 絶望する若者達よ



 グラバー軍曹は、もともとティターンズだったわけではない。連邦軍本隊出身であり、その行動の過激さから上官に嫌われ、左遷されていたところを、新たな工作隊をティターンズが創設するにあたり、適当な人物であるということで引き抜かれた。一見、栄転であるように見えるが、汚れ役だったわけであり、味方であるはずのティターンズ隊員からも嫌われるような任務につくことがほとんどであった。そうやって、グラバー軍曹だけでなく、ネザル中尉もカクタス伍長もティターンズという栄光の陰で、地べたを這いずり回ってきたのであった。彼等の素行の悪さは、もとからの部分もあるとはいえ、同情すべき点がないではなかった。ある任務では、工作隊の大半を犠牲にして達成したにも関わらず、その戦果は工作隊の栄誉にはならず、ティターンズ本隊の栄誉にされたりもした。彼等は決して、日の当たる場所での活躍を与えられる事のない、明らかな捨て駒であった。
 グラバー軍曹は、この戦いが終ったら地球に降りて、行きたい店があった。一年戦争からこっち、その店には顔を出せていないが、以前にはよく通っていた。名をクラブ「ブコーヴィナ」という。そこの歌姫に彼は惚れていた。出征するまで通ったものだ。戦争中、そのクラブの地もジオンに占領されたと聞いたが、ジオンの兵士にも愛された店であり、戦時にも関わらず、両軍の兵士に愛された店として一時有名であった。戦後、どうなったか、情報はなくわからない。調べればわかるのだろうが、グラバー軍曹は調べるのが怖かった。どうせなら、自分のこの目で確かめたい、そう思っていたのだった。できればそこで、ネザル中尉やカクタス伍長と酒を飲む、そうやって生死を共にした仲間と生き抜いた喜びを分かち合いたいというのが、グラバー軍曹のささやかな願いだった。無粋な彼にしては、センチメンタルな願望である。何かと不評なネザル中尉は、グラバー軍曹とカクタス伍長にとっては、もっとも信頼するにたる上官だった。自分たちと同じ汚れ役で、しかもその先頭を切って任務に向かうネザル中尉は、素行はどうしようもなく悪いが、苦楽を共にした上官であり、その、工作隊としての苦労を一番知ってくれている人物であった。グラバー軍曹も助けられた事が1度や2度ではなかった。よく3人で酔っ払っては、いつか這い上がって自分たちを見下した連中を見返してやる、と熱く語ったものだ。
 翼をもがれて飛ぶことなど、不可能なことだと知りながら、彼等3人は、じっと天を見つめ、いつかそこに己が足で立つことを、怨念にも似た気持ちで心に刻み、生きてきた。
「よし、二手に分かれて挟撃するぞ!」
 グラバー軍曹は指示を出し、部隊を動かす。搭乗しているガルバルディβの調子はいい。こちらに向かってくる「赤いザク」を、とっとと葬って、残りのリックドム?を片付けてしまえば、こちらのものだ。
「しかし、いまさら赤いザクなんてな。」
 笑い話にもほどがある。鐘鬼という相手のモビルスーツには、おかしなのが多いぜ・・・グラバーはそう思った。
「前回のゲルググといい、旧式のクセして薄気味の悪い性能だぜ・・・亡霊みたいだな・・・」
 ポツリとそう呟いた。
 挟撃体制を取ったその時、グラバーの右翼ではなく、左翼の部隊が一瞬にして撃墜された。
「な、ななななな・・・なんだ??」
 グラバー軍曹は何が起きたのかわからない。
「クウェル三機が一瞬かよ・・・」
 グラバーの全身から汗がにじみ出る。
「どうなってやがる!」
 わけがわからない。しかし悩んでいるヒマはない。奴がこっちに来る。
「行くぞ!お前ら!!」
 グラバーは己を奮い立たせるようにそういうと、ガルバルディβで仕掛けていく。こちらに向かってくる相手の、ザクに似て、ザクならざるその機体は、禍禍しい赤色であった。
「三方から同時に行くぞ!」
 グラバーはそういうと、3機同時に攻撃を仕掛けた。普通ならば逃げられまい。普通ならば・・・
 グラバーはもっとも手薄なザクの左側から仕掛け、残りはそれぞれ、右と正面上方からである。赤いザクは、左のグラバー機には目もくれず、その巨大なビームバズーカで右側から来るクウェルを一撃で葬り去った。だが、正面上方のクウェルが迫っていて、ビームバズーカでは間に合わない。
「へ、そのまま落ちるんだな!」
 クウェルのパイロットがライフルを構えた瞬間、ザクの両肩から閃光が発射され、クウェルは消滅した。
「うぉぉぉっぉ!」
 グラバーが左から突撃していた。眼前で2機のクウェルが一瞬で葬り去られた光景を見たが、ひるんでいるヒマなどない。ビームライフルを連射する。だが、もう、目の前にザクはいなくなっていた。背後に警戒音。そして、グラバーは光に包まれた。

・・・・・私の瞳は輝いて、今夜は踊り明かすのよ・・・さあ・・・ごらん・・・欲しければくれてあげるわ・・・・歌い踊り・・・・肌を合わせて・・・・月の命が尽きるまで・・・

 消滅していくグラバー軍曹の耳に、懐かしい歌声が響いていた。


 恐慌状態のカーツーン・ブリッジ。
「艦長、迎撃に向かったモビルスーツ隊壊滅!」
 思わず、スタービレ艦長がシートから立ち上がった。6機のモビルスーツが僅か数分の交戦で・・・スタービレ艦長には信じられないことであるが、手を打たねば艦隊が壊滅する。
「ただちにネザル中尉の機体を呼び戻せ!それから、ゴッドフレイ大尉にも敵を排除しだい、急ぎ帰還せよと!」
 わずか数機のモビルスーツすら排除できず、逆に2機の敵モビルスーツにここまで追い詰められるとは・・・・スタービレ艦長もさすがに焦る。身を呈して踏みとどまったムサイといい、突撃してきたコムサイといい、相手の戦意の高さにも驚くよりほかはないが、何より、戦いを諦めない相手の粘り強さは驚嘆に値する。だが、こうまでして戦いつづけることに何の意味があるのだろう。彼等の祖国は、今はない。いや、厳密には存在するが、どちらにせよ戦いつづける理由などありはしない。投降すれば極刑が待っているからか?それならば、戦いつづけずとも、どこかのコロニーで潜伏生活をすればいよい。そのほうがまだ、死ぬ確率はずっと低いだろう。スタービレ艦長は、艦長としても有能ではあるが、その能力はどちらかといえば官僚的な部分が強く、どう考えても鐘鬼の連中の気持ちがわからない。いや、立身出世を考える人間には、鐘鬼の行動など理解できる世界ではないといったほうがいいのだろう。
 一方、ティターンズ艦隊の中で、唯一、S.O.Gから分遣隊として参加している、シュワルツェンベルグ艦長指揮する、サラミス改級軽巡洋艦「レオニダス」も、生き残りを賭けた戦いの真っ最中であった。
「いいか、被弾したライヒ機を回収する。それを優先せよ。あとは、ティターンズ艦を盾にしてもかまわん!ジオンの攻撃をかわし続けろ。S.O.Gの我々は存在を鼓舞しつづけねばならん。我々が沈めばS.O.G全体が消滅することと同義であると心得よ!!」
 声を枯らしてシュワルツェンベルグ艦長は叱咤する。同じ連邦軍であっても、上り調子のティターンズと、もはや下り坂のがけっぷちであるS.O.Gとでは、それぞれにこの戦いへの思惑がある。
 そのような中を、リックドム?と、死神のような赤いザクが跳梁跋扈し、各々の思惑ごと地獄に引きずりこまんとするかのように、蹂躙していく。


 ザクスナイパーの自爆によって、損傷を負ったゴルゴンは、鐘鬼のスカーヴァティーとメーガの息の根を止めることもできないまま、本隊に呼び戻された。損傷を受けてはいたが、速力に問題はない。ただ、左腕を失い、また、大口径メガ粒子砲が使えなくなったことから、大きく戦闘力を消耗した状態になっている。たかが旧式ザクの攻撃と侮ったことが、損傷の一因ではあるが、そのようなことを仕掛けてくるとは恐らく誰にも想像は出来なかったであろう。そういう意味では、ネザル中尉の行いは、必ずしも不適切ではない。想像を超えたザクスナイパー・パイロットの行為を、むしろ賞賛すべきであろう。捨て身というその方法論が正しいかどうかはともかくとして。
「隊長!グラバーのやつが殺られたと!!」
 カクタス伍長が後部座席で叫ぶ。
「そうか・・・・」
 ネザル中尉の反応は、カクタス伍長の思ったのと違い、静かだった。いつものネザル中尉ならば、激怒して怒鳴り散らすぐらいの反応があると思っていたのだが・・・・
「カクタス、そういやあ、グラバーのやつ、俺達三人でいつか行きたい店があるっていってたな。」
 不意にネザル中尉がカクタス伍長に話し掛けた。
「え?ええ。あれです、クラブ・ブコーヴィナとかいう店でさぁ。」
「ふっ、カクタスよ、グラバーの仇を討って、その店に俺達だけでも行かなきゃな!」
 ネザル中尉がドスのきいた声でカクタス伍長に言った。その声色から、ネザル中尉の怒りが読み取れる。カクタスは思う。やはり隊長にとって、我々は仲間なのだと。カクタスの手にも力が篭る。忘れはしない、俺達がどれだけ砂を噛み、泥をすすってまで生き延びてきたのかを。カクタス伍長の中にも、まだ見ぬ敵に対する怒りが込み上げてくる。
 手負いの猛獣と赤い死神の死闘が始まろうとしていた。


 一方、追い詰められつつある大佐達の隊は、ウェイヴェルのザクGがジムライフルを数撃食らって危険な状態になっていた。
「ムレノ、少々無理があるが、ウェイヴェルを逃がすぞ!ウェイヴェル、俺とムレノがフォーメーションで敵に向かう間に、お前は全速力で離脱しろ!」
 大佐がそう指示すると、
「大佐、自分は戻りません!このまま戦います!」
ウェイヴェルが反論した。
「馬鹿野郎!そんな手負いの旧式じゃあ、足手まといだ!言うとおりに下がれ!」
 大佐が怒鳴る。
「そうだ。いつまでもウロウロされちゃ、俺達が危ないんだ!」
 ムレノもウェイヴェルに叫ぶ。そこまで言われてはウェイヴェルも下がらざるを得ない。渋々、後退を承諾した。
「ジョナサンもジョーンズ艦長も逝ってしまった。ウェイヴェル、お前だけでも残らなきゃ、リリヤは誰が守ってやるんだ?」
 大佐がそうウェイヴェルに言った。これにはさすがのウェイヴェルも堪えた。
 そんな話をしていると、相手のティターンズの部隊から数機が離脱して戻っていく。おそらく攻め込んでいるセガール達に手を焼いて、戦力を呼び戻しているのだろう。
「しめた、今ならチャンスがある!ムレノ、覚悟はいいか?」
「ええ、地獄まで付いていきますよ!」
 大佐のゲルザクとムレノのマザ・Eは、ビームライフルを乱射しつつ突撃する。ウェイヴェルのザクGはその隙に静かに後退していった。
「大佐・・・・ムレノさん・・・・」
 後退しながら後ろ髪を引かれるように、ウェイヴェルは二人の名を呟いた。
 突撃する2機に対し、ティターンズ隊は少し距離を取った。決死の相手に、混戦に持ち込まれては何かと厄介だという、ゴッドフレイ大尉の判断である。さすがに大佐もこれには少しまいった。そこで、
「ムレノ、ティターンズ隊の交信用の周波数帯はわかるか?」
「え?いきなりどうしたんですか?大体の想像はつきますが・・・話すつもりですか?」
「ああ、あのガンダム頭にちょっとな。といってもつながるかはわからんか。」
 大佐が自嘲気味に笑う。ムレノから周波数の数字が送られてくる。大佐は戦闘の最中、その範囲を適当に徘徊しながら、相手のゴッドフレイ大尉に語りかけた。
「ガンダム頭のパイロット、聴こえるか?こちら鐘鬼のホマレ・マツナガだ。」
 いきなりこちらの大将が相手に話し掛けるというのも、無茶な話だと、大佐の横でムレノは思いながら戦う。
 ティターンズのゴッドフレイ大尉の耳にもその声は届いた。味方の回線に混じって聴こえてくるそれは、いささか現実離れした感のある現象であった。
「ホマレ・マツナガといったな?敵の御大将か?」
 ゴッドフレイは答えた。無視したってかまわないはずである。しかし、ゴッドフレイは一度、この戦いの指導者である、ホマレ・マツナガという男と話して見たいとかねがね思っていたのであった。
「そうだ。ガンダム頭のパイロット、貴官の名はなんと言う?」
「敵に名乗る名前などない、といいたいところだが、先に礼を尽くされたならば返さねばなるまい。自分はティターンズのゴッドフレイと言う。階級は大尉。一度、あなたと話がしてみたいと思っていた。光栄である。」
 ゴッドフレイという男の堂々とした対応に、大佐は少し驚いた。しかも攻撃の手はゆるめない。彼なりの騎士道精神のようなものがあるのだろう。
「こちらこそ、我々をここまで追い込んだティターンズは貴官らが初めてである。それにその、貴官の指揮ぶりは見事である。独立戦争の経験者か?」
「残念ながら一年戦争時には、自分はモビルスーツパイロットではなかった。自分のモビルスーツパイロットとしての実戦経験は、デラーズの反乱からである。マツナガ大佐、こちらこそあなた方を賞賛しよう。よくぞここまで我々を相手に生き延びられたと。そして残念なことであるが、あなた方との戦いの日々も、もやはこれまでとなるであろうことを。」
 話しながらゴッドフレイ大尉は、相手の二機のうち、どちらかにマツナガが乗っているはずであるので、見極めようとしていた。


 セガールが数分でティターンズの迎撃隊を壊滅させたあと、ジョンのリックドム?も、新たに敵艦1隻を撃沈した。3隻目である。そして、その間に、セガールのザク?αも2隻沈めていた。7隻あった敵のサラミス改級軽巡洋艦は、これで残り2隻。全艦隊でも、カーツーン、マゼラン改級、コロンブス改級を含めても、11隻あった艦隊が5隻しか残っていない。セガールのザク?のビームバズーカの威力は艦隊には絶大な破壊力を発揮していて、ジョンのリックドム?のハイパーバズーカでは比べ物にならなかった。ザク?は今度はマゼラン改を落しにかかる。付近にいたサラミス改といっしょになって、マゼラン改も決死の対空砲火を浴びせるが、ザク?を捉えられない。サラミス改にも、リックドム?が取り付いたので、対空防御が分散された。ビームバズーカの直撃を食らい、激しく損傷するマゼラン改。あと一撃でもビームバズーカを食らえば危ない状況であった。
 その絶望的な戦域に、高速で向かってくる機体があった。手負いの猛獣、モビルアーマー「ゴルゴン」である。その接近を知ったのであろう、ザク?が無言のうちにマゼラン改への攻撃を止め、ゴルゴンに向かっていく。ジョンのリックドム?は当初の予定通り、艦隊の攻撃に全力を尽くし、他の敵はセガールのザク?に任せているようだ。ただ、リックドム?のハイパーバズーカの残弾も少なくなっている。どこまで攻撃を続けられるかは、これからが勝負であった。


 ゴルゴンの主力武器であった、大口径メガ粒子砲が使えない今、右腕のクローに装備されたビーム砲2門が唯一の前方武装である。
「カクタス、奴を殺るぜ。」
 ネザル中尉は静かにそう言った。只者でなさそうなことはグラバーを一瞬で屠ったことからわかる。しかし、こちらも化け物だ。そう簡単にはやられはしない。
「最大戦速ですれ違い様にしかけるぞ!」
 ゴルゴンの速度が上がる。クローからビーム砲を放ち、けん制する。ザク?もビームバズーカを放ってくるが、お互いの相対速度が高速であるためにさすがに命中しなかった。回避力に問題のあるゴルゴンはそのままザク?をやり過ごすと、大きく旋回しながら戻ってこようとしていた。ザク?はそれに気がついたのか、回り込んでゴルゴンの背後を取る。
「隊長、奴は後ろです!」
 叫びながらカクタス伍長が後方用のビーム砲4基を撃ちまくった。ザク?もそこで撃たれるとは思っていなかったようで、射撃するヒマもなく回避を余儀なくされる。
「くそったれめ!なんて奴だ、あのザクはよぅ!!」
 ネザル中尉がいつもの怒声を上げた。モビルアーマーであるこのゴルゴンの機動力になんなくついてくる正体不明のザク。
「ケッ!カクタス、正面から行くぞ!」
「え?正面ですか、まずいでさあ、それは。」
 カクタス伍長は驚いている。
「あっちの方が悔しいが力は上だ。こうなったら、Iフィールドジェネレータを使う。」
「隊長、使えなくはないでしょうが・・・・旧ザクの野郎に損傷されられてるんで、ちゃんと起動するかどうかわかりませんぜ!」
「バカ野郎!そんなこたあわかってるわ!しかし、今使わないでいつ使う。このまま戦っても勝てるとは思えねえ。それに、グラバーの仇も討たなきゃならねえんだぞ!」
 それを聞いたカクタス伍長にも、ネザル中尉の決意が伝わった。
「わかりました、隊長!やりましょうぜ。」
 ゴルゴンは正面からザク?に向かっていく。ザク?もそれを受け止めるかのように向かい合う。ゴルゴンのビーム砲がザク?を撃つが、当然回避されている。それはいい。そして、ザク?がビームバズーカを構えた。
「チャンスは一回だ!行くぞ、カクタス!Iフィールドジェネレータ始動!!」
 唸りを上げて起動するIフィールドジェネレータ。それはビーム兵器の攻撃を無効化できる防御兵器である。その瞬間、ザク?のビームバズーカが光を放ち、ゴルゴンを捉えた。一瞬、眩しさに目を奪われたネザル中尉であったが、
「隊長、ビームの被害なし!さすがですぜ!」
とカクタス伍長が叫ぶ声が聴こえた。すかさず、ザク?にビーム砲を叩き込む。ザク?もまさかゴルゴンがビームバズーカの攻撃を弾き返すとは想像していなかったらしく、反応が遅れている。だが、ビーム砲をギリギリでかわされた。
「逃がすかよ!」
 ネザル中尉は絶叫して、横に回避してゴルゴンの突進を避けようとするザク?にすがる。右腕のクローを最大限に振り回し、すれ違い様にザク?を貫こうする。衝撃が両者の機体に走る。
「ちくしょうめ!」
 ネザル中尉が唸った。ゴルゴンが決死の覚悟で挑んだ突撃の戦果は、ザク?の機体を貫く事は出来なかったが、右腕のクローは、見事にビームバズーカを引っ掛け、切り裂いていた。爆発するビームバズーカ。とっさに離れたザク?であるようだが、コードか何かがつながっていたようで、十分な距離が取れず、爆発の影響を受けているようである。
「今だ、カクタス!もう一度やるぜ!」
 勝利を確信したネザル中尉であったが、
「隊長!・・・・・Iフィールドジェネレータが暴走してる!!」
「なんだと?」
「臨界突破!や、やばいで・・・・・」
 そこでカクタス伍長との通信が途絶えた。同時に機体に衝撃が走る。そしてゴルゴンは操縦不能に陥った。ゴルゴンは旋回することもないまま、ザク?から離れて行くように真っ直ぐに進んでいく。艦隊からも少し離れた地点まであっという間に到達する。コクピットの計器類には赤いパイロットランプが点滅しつづけており、各所の小さな誘爆も引き起こしているような振動が続いた。
「はっ・・・・どうらやらここまでみてえだな・・・」
 ネザル中尉は呟いた。艦隊に救援を求めるだけ無駄だろう。じきにこのゴルゴンは爆発するであろうことぐらいネザル中尉にもわかったからだ。その時、
「へ!無様だな。トーマスをやりやがった罰だ。その醜い機体もろとも醜く朽ち果てやがれ!」
と、まだ生きている通信機に声が入ってきた。
「てめえは、S.O.Gの。生きてやがったか。」
「当たり前だ、お前をこの手で殺るまでは死ねるかよ。」
 声の主はライヒ大尉であった。大尉のジムカスタムも損傷後、操縦不能に陥って、救出を待っていたが、艦隊がザク?とリックドム?の攻撃を受けていたので、回収されないまま、流されてきていたのであった。
「ふ。甘ちゃんめ。俺達は遊びにきてるんじゃねえ。戦争しにきてるんだ。味方の敵討ちなんて言ってたらな、俺は今頃、ティターンズを皆殺しにしてなけりゃならねえやな。」
「なんだと?」
「まあ、いい。先に地獄で待ってるぜ。時間がなさそうだ。あとのお前の恨み節はそこで・・・」
 そこまでネザル中尉の声がライヒには聴こえていたが、直後に通信は途絶えた。そして爆発、閃光。
「ああ、先に行って待ってやがれ。続きはトーマスを交えてじっくりお返ししてやらぁ。」
 映りの悪いモニター越しに、ゴルゴンが消滅してしく姿を見ながら、ライヒがポツリと呟いた。



 なあ、あんた、聴こえているかい?
 よく耳を澄ませてみな
 風の中に血の混じる音をさ
 気味が悪いって?
 馬鹿をいっちゃあいけねえや
 あんたの中にも流れてるんだぜ
 なあ、あんた、目を逸らせちゃいけねえな
 たとえそこが絶望の淵であっても
 飛び込まなくちゃならねえ時がある
 俺だって怖いさ
 だがな
 これだけは教えといてやる
 古い有名な小説の台詞だ
 耳をかっぽじって聴きな
 いいか?

 『人間は死ぬことはあるが、負けはしないんだぞ』


〜つづく〜

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