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☆小説☆SFファンタジー☆愛知コミュの「ふたつの美しい物語」

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「ふたつの美しい物語」



明治時代のお話です。

 ある寒村の沖合で、一隻の外国船が、岩に衝突し沈没しました。
 たくさんの遭難者が、村の海岸に流れ着きました。
 
 痛みにうめき、「お母さん!」と泣き叫ぶ瀕死の外国人たち。
 村の男たちも泣きながら、救護にあたりました。
 言葉はわからなくても、この人たちが、
母を呼んでいることはわかったからです。

 遠い外国から来て、見知らぬ国の海岸で、
母を呼びながら死んでいくなんて!
 村人たちは、一人でも多く救いたい思いで一杯になりました。
 しかし、海岸の遭難者の大多数は動きません。

 「息のある者がいるぞ!」
 でも触ってみると、ほとんど体温を感じません。
 村の男たちは、自分たちも裸になって、
 自分の体温で彼らを温めながら、必死で励ましました。

 「しっかりしろ!」
 「生きるんだ!」
 「死ぬな!」

 船に乗っていた人は600人余り。
 この船の名は「エルトゥール号」と言いました。

 この頃、台風で漁ができず、村人たちは自分の食べる物にも
事欠いていました。
 それなのに、村人たちは、生まれて初めて見る外国人のために、
 蓄えた食糧を全部出しました。
 乏しい村の食料は、一夜にして底をつきました。 

 「もう食ぺさせてあげられる物がない」 「どうしよう。」
 一人の婦人が言う。
 「にわとりが残っている。」
 「でも、これを食べてしまったら・・・」
 「・・・お天とうさまが、守ってくださるよ。」

 村人たちは、最後の非常食用として飼っていた鶏まで
提供しました。
 ありったけの衣類を提供し、けが人の手当てをしました。

 こうして、村の海岸に流れ着いた遭難者のうち69名は
 村人たちの献身的な救護に、命を取り留め、
 その後、明治天皇の命により、軍艦2隻で、トルコに
送り届けられました。

 別れの日。「エルトゥール号」のひとりが、
感謝の涙を流しながら、村人に聞きました。
 「何故、こんなにまでして?見ず知らずの他人である私たちを 
助けてくれたのですか?」
 村人は、こう答えました。

 「この国には、こんな言葉があります。
  『情けは人のためならず、めぐりめぐって己がため。』
  だから、気にしないで。私たちは、自分のためにしたのです。」

 この時代の日本には、こんな「情け」が、
国全体にあったようです。
 それはこの寒村も例外ではなかった。
 貧しくても、心豊かな時代だったのかもしれませんね。




 
イラン・イラク戦争の時の話です。

 1985年3月17日。イラクの独裁者サダム・フセインは、
 全世界に向かって 驚愕の通達を発信しました。

 「今から48時間たったら、イランの上空を飛ぶ飛行機は、
 国籍・軍用機・民間機を問わず、すべて撃墜する。」

 イランに住んでいた日本人は、慌ててテヘラン空港に
向かいました。
 が、どの飛行機も満席で、乗ることができません。

 世界各国は、イラン在住の自国民を救出するために、
救援機を飛ばしましたが、
 日本政府は、対応が遅れ、タイムリミットまでに、
飛行機をテヘラン空港に
 着けることができないとわかりました。

 テヘラン空港に集まっていた日本人216名は、
パニックに陥りました。

 その時、2機の飛行機が、テヘラン空港に到着しました。
 それは、トルコ航空の飛行機で、何故か「ナリタ」行きでした。

 2機のトルコ航空機が、日本人全員を乗せて、
成田空港に向かって飛び立ったのは、
 タイムリミットの、わずか1時間15分前でした。
 なぜ、トルコ航空機が来てくれたのか、そのわけは、
 日本政府もマスコミも知りませんでした。

 だから、日本の外務省が、トルコ政府に電話を入れたとき、
感謝の言葉より先に出たのは
 「いったい何故?!」という言葉でした。

 トルコ政府の説明は、驚くべきものでした。

 「1890年9月16日。トルコ皇帝ハミル2世が日本に派遣した
特使一行を乗せた軍艦が、
  帰路、暴風雨に遭い貴国の和歌山県串本町沖合で、
岩礁に衝突し
  遭難するという事故が、起きました。

  その軍船「エルトゥール号」の事故に際して、
日本の方たちがしてくださった
  献身的な救助活動を、その恩義を 今もトルコ国民は、
忘れていません。
  私も小学生の頃、歴史の教科書で学びました。つまり、
トルコでは、子どもたちでさえ、
  エルトゥール号の遭難と、助けてくれた日本の方たちの苦闘を
知っています。
  だから、テヘランで困っている日本人を助けようと、
  トルコ航空の飛行機が飛んだのです。」





                        ( 「ふたつの美しい物語」 了 )


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