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ものがたろうコミュの悪ノ姉弟 第二部 Part-B 

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ドアを少女が叩く。ドンドンッ!と強く音を立て、木で作られたそのドアは蝶番をキシキシと軋ませる。
少女は綺麗に整えられた黄色い髪を振り乱しながら、激しく叩き続けた。
少女の装いは淡い黄色が美しいドレス。ほとんど装飾品の着いていないシンプルなドレスは、鮮やかな黄色い髪を引き立てていたのだろう。
ドアを叩き疲れたのか、下を向いてハアハアと息をした。少し落ち着いたように見えた少女だったが、すぐにドアをキッと睨むとドアを叩き大声をあげる。

「開けて! 開けてよ!」

しかし、そのドアは開くことはない。そのドアの向こうには、少女と同じように黄色い髪をした少年が、ドアにもたれて立っている。

「開けるわけにはいかないよ。これだけは、君の命令は聞けない。」

少年の装いは白いシャツに黒のベストを着け、足先までの黒いズボンを履き、靴は磨きこまれた黒の革靴。
少年は召使で、少女は女王だった。

「いいから開けなさいよ!」

本当に叩きつかれてしまったのか、一度ドンッ!と強くドアを叩いたあと、黄の国の女王はもう一度大声を張り上げた。
黄の国の召使は鉄の棒てドアが開かないための栓抜きにした後、ドアに対峙した。

「・・・その通路を抜けると、僕の服の替えがある。それを着て、逃げるといい。」

「馬鹿なことを・・・。そんなこと出来るわけないじゃない!」

「君は死んではいけないんだ。」

そう言うと黄の国の召使はドアに向かって微笑みかける。

「これがきっと僕の最後の言葉だろう。

 君が悪だと言うのなら、僕も悪だ。僕らは双子なんだから。でも、君には生きていてもらいたい。
 
 僕は君の幸せを願っている。」
 
そう言うと、黄の国の召使はドアの前から離れた。黄の国の女王が一層激しくドアを叩き続けたが、彼は構わずに王座のすぐ後ろのドアを開ける。
そのドアを閉めると、もうドアを叩く音は聞こえなくなった。

「後は、僕が全てを背負うよ。」

召使は心の中でそう呟く。召使が向かう先は女王の寝室。階段を上りながら彼は女王がまだ小さき頃を思い出した。
その時の女王―王女はよく笑う子だったな、召使はフッと笑い、こう呟いた。

「また、どこかで、笑って欲しいな。」

召使は女王の寝室のドアを開けると、真っ直ぐに大きなクローゼットへ向かった。
そこには、女王のドレスが数十着入っていた。
彼は、女王の身代わりになることを決意していた。



悪ノ姉弟 Part−B  「黄の召使の希望」



バンッと言う音と共に勢いよくドアが開けられる。玉座に座っている女王の格好をした召使は、ちらりとドアの方へ目線を向けた。
そこには、紅い髪を携え紅い鎧に身を包んだ女剣士、そして青い髪で見覚えのある男、青の国の王。
それと、数名の男たち。

「やっと見つけた・・・ッ!」

紅い髪の女剣士が息を荒らしながら、召使を睨んでいる。「よかった、ばれていない」と召使は安堵した。
それから召使はキッと集団を睨み、勢いよく立ち上がった。

「この無礼者!ここがこの黄の国の女王の間と知っての狼藉かッ!?」

召使の発する言葉を聞き、女剣士の紅い目に怒気が篭る。身体を震わせ、手に力が入ってくるのが分かる。

「なんですって・・・・!?」

女剣士は右手に持っていた剣を落とすと、召使の下へ走り出した。
それを見た青の国の王は、男達に何かを指示した後すぐに女剣士を追いかけた。

何で剣を捨てるのだろう、と召使は思った。

(今、ここで殺してくれれば彼女の安全性も高まるはずなのに。)

その思いが表情に出てしまう。軽く眉間に皴がより、落胆した表情は女剣士を一層刺激した。
女剣士の右拳が正面から召使の顔にめり込む。召使が男とは言えまだ少年、相手は成人の女性、ましてや武術を生業とする者の拳は硬く、重かった。
振り抜かれるであろう拳が迫ることに恐怖を感じなかったが、痛みは感じないわけではない。打点を中心に熱と痛みが広がっていくのが分かる。
召使は意識することなく身体が中に浮いたことに驚きを感じた。
人から本気で殴られたことはない。女性の力でここまでなら、男性に殴られたら・・・
そんなことも考えたが、それならそれでいいと結論付けた。
(死ぬのが早くなるだけだ。それは好都合だ。)

しかし、この殴打一発で死ぬことはさすがにない。受身を取ることは可能だったが、あえて取ることはしなかった。
結果として激しく頭を床に打ち付けたが、その痛みは死への一歩として受け止める。
痛みはさすがに無視出来ず、少し目を閉じて痛みをやりすごした時に、目を開くと丁度女剣士は馬乗りの体勢に入った。

「貴方のせいで、貴方のセイデッ!」

そう言って女剣士は拳を振り下ろした。召使は抵抗することは止めようかと思ったが、
普通ならこれを抵抗なく受け入れることは出来ない。少しは抵抗するべきだろう、と抵抗をすることに決めた。
しかし、抵抗することは叶わなかった。女剣士は実に利に適った動きをしていた。
召使が手で顔の正面を守ろうと遮ると、女剣士は胴体や側頭部を狙ってきた。
もちろん、側頭部や身体を守ろうとしたら、顔を殴られる。
結果として顔を何発か殴られたところで、青の国の王が止めに入ってしまった。
鼻は恐らく右に曲がってしまっただろう。顔は全体的に熱く、特に鼻と唇や口の周りが熱い。
口の中にある温かい液体は血なのだろうか、飲み込んでみると血の味がした。
折角整えた髪は乱れてしまった。何よりも、止められたことでまた死の機会を逃した。それが何よりも召使を苛立たせた。

青の国の王に無理やり引き剥がされた女剣士は床を叩きながら泣き叫び始めた。ドンッ、と大きい音を何度も立て、声は人の少ない玉座の間に大きく響いた。
痛みを堪えながら召使が女剣士の方に目をやると、青の国の王が近づいてきた。

そもそも、この男も悪いのだ。召使は思う。
青の国の王が緑の国の王女の方へ視線を移してから・・・・いや、それも身勝手な思いか。悪いのは黄の国そのものだ。

しかし、黄に国の女王ならば憎んでいるはず。近づいてくる青の国の王へ何か一つ悪態でもつかなければ、と召使は痛んだ身体で立ち上がる。
腕や足に力を入れる度に身体のあちこちが痛む。顔を殴られすぎたか、視界も霞んでいる。
召使は歯を食いしばりそれでも立ち上がると、青の国の王のその血に汚れた顔や鎧を見て失笑した。
これが平和を望んだ男の姿か。平和を望む男が戦争を引き起こしていると言うのもなんと言う皮肉なんだろう。
この人もまた、被害者と言えるのかも知れないな、と召使は思った。

「似合ってないわよ、色男さん。」

青の国の王は顔色一つ変えず静かに黄の国の女王を捕らえよ、殺してはならないと命令した。
ああ、また死ぬ機会を失った、召使はそう思った。






ジャラン・・・ジャラン・・・

「ほら、さっさと歩けよ。」

手に繋がれた鎖が歩行に合わせて揺れ音を奏でる。気だるそうな足取りを、後ろにいる男が急かす。

「煩いわね、ちゃんと歩いてるじゃない。」

「・・・この状況でも変らないんだな、うちの女王様は。」

そう言うと男は召使の腕を掴み半ば引きずるように強く引っ張っていく。先ほどまでのゆっくりとしたリズムの音が狂い鳴る。

「ちょっと、痛いじゃない。」

召使の言葉に男は反応せずにそのまま召使を引っ張っていく。
引きずられながら召使は周りを眺めていた。

牢獄。何度もここへ人を見送ってきた。漂う異臭や壁や床に残るシミ、これらを見るとその後がどうなったのかが容易に想像出来る。彼らに行って来たことは全て正しいなんてことは思っていない。ただ、止めることも出来なかった。
止める気も無かったのかも知れない。

そんなことを考えていると、やがて召使を引っ張っていた力が強くなり、投げるように倒された。
身体ごと顔が地に着く。散々殴られた傷が刺激され、一瞬召使は顔を歪ませた。
地に伏す召使を見て男は「フンッ!」と一瞥した後、牢屋に鍵を掛けた。

「しばらくして、お前は死罪になるだろうさ。それまでここで悔むんだな。」

召使は地面に倒されたまま、男を見上げこう返した。

「あら。じゃあ、貴方達なんかに捕まってしまったことを悔めばいいのかしら。」

男は酷い形相をしてしばらく睨んでいたがそのまま立ち去っていった。
男が立ち去った後、召使はのそのそと身体を起こして壁にもたれかかるように座った。
どうやら、牢獄の一番多くの牢屋らしい。多少他の牢に比べて広く、幾分か匂いや汚れはましだった。
ふう、と息を吐いて天井を見上げる。彼女は・・・無事逃げ出せたんだろうか。
早く僕が刑を処させれれば、彼女が捕まる可能性も低くなるだろうに。




それから数日が経った。召使は目を閉じてうつむいていると、足音がした。
それはゆっくりとした速さで近づいてくる。
次第に音は大きく近くなり、恐らく自分のいる牢屋の手前だろう、という場所で音は止んだ。
一体誰だろう、と召使は顔を上げた。そこにいたのは青の国の王であった。
今度はなんだ?と思い召使は一笑して、身体を壁に預けた。

「・・・何の用かしら。」

青の国の王は相変わらず真剣な目で此方を見つめてくる。

「・・・女王よ、貴女がしてきたことに何も悔いはないのか?」

また同じような質問だ。僕自身が悔いが残るかと言われれば話は別だが、今これを問われれば似たような答えしか喋る気はしない。

「あるとすれば、捕まったことかしら。」

この台詞も何度目だ、と思い半分呆れ笑いを浮かべながら問いに答える。
青の国の王はまた少し黙り、少ししてまた口を開いた。

「・・・残されたものを守ることが出来ないからか?」

「!?」

背筋に冷たいものが走る。どういうことだ、どういう意味なんだ。召使は全身から汗が吹き出るような感覚を覚えた。
一瞬そう考えた後、そういう態度を取ること自体がまずいと召使は思い、何でもないように元の表情を維持した。

「・・・知らないわ。」

今更遅いだろうか。恐らく一瞬は反応してしまっている。この男が何を考えているのか。
もし彼女の存在を知っているなら・・・・。召使は女王を守るために何が出来るか思考を巡らせる。
しかし、意外な言葉が青の国の王の口から告げられた。

「ならばよい。貴方の最後の姿を、私は必ず見届けよう。」

召使は眉をひそめた。つまり、邪魔はしないということだろうか。青の国の王の表情からは決意じみたものしか読み取れなかった。
その上、青の国の王はそれだけ告げるなりさっさと牢屋から離れてしまった。
これ以上こちらから何か声を掛けてしまっては、何も知らない場合は感づかれてしまう。
青の国の王が牢獄から出て行ったあと、召使は歯がゆさに地面を叩いた。



処刑の日、いかにもないかつい男二人が牢屋へ近づいてくる。
ふと顔を上げると、顔をこわばらせたまま牢の鍵を開ける。

「あら、助けてくれるのかしら。」

「何を馬鹿なことを。」

男の内の一人が呆れたように応えた。
鍵を開け、牢屋の中へ入ると手錠に繋がれた鎖を掴む。

「これから貴女はギロチンで処刑されるのだ。早く来い。」

やっとか、と召使は思った。待ちに待った処刑の日。それまでの間に、彼女が見つからないかと心配だったが、
こうして自分が処刑されるということは、まだ見つかっていないと言うことだろう。

「・・・あの子は今何をしているのだろう。」

出口への道を歩きながらぼそりと呟いた声は、男達には聞こえず、辺りには鎖の鳴らす音と男たちの靴の音、
そして召使のヒタヒタと地面を歩く音ばかりであった。

出口のドアが開く。日の光が真っ先に召使の目に刺激を与える。
手はふさがれているので、咄嗟に目を閉じて顔を地面に反らした。
ゆっくりと目を開けると、とても眩しい太陽と青い空が見えた。晴天。
続いてとても騒がしい音に気づく。男達二人は召使を音のする方へ引っ張っていく。
騒がしい。その音は次第に近づいていく。荒れた石畳を歩いていくと、見慣れた顔が見えた。
一人はあの、赤い髪の女。もう一人は、この国の者。老人で、かつて要職に就いていて一人だけ命を奪われることがなかったもの。

「・・・確か女王になる前に隠居したんだったか。」

「何をぼさっとしている。早く歩け。」

「うるさいわね、分かってるわよ。」

男達の急かす声、それを嘲笑い紅い髪の女を視線の先に置いて歩く。
敵意剥き出しの目が召使を見る。
まるで、その赤い髪の色に目が燃えそうなほど、こちらを強く睨んでいる。
赤い髪の女は、老人に声をかけられて、召使たちの先を歩き出した。
周りは、数々の建物があるが、そのほとんどが何かしらの損傷があるのが目に付く。
焼け焦げた跡、壊れた塀、壁、外れたドア、穴の開いた屋根。
その隣を歩いて行くと、地面のあちこちにも黒っぽいシミがあることにも気が付いた。
恐らく血なのだろう。

騒がしい音が近づくに連れて、処刑が行われるだろう場所へとたどり着く。
横に階段がある簡易の舞台のようなもの。赤い髪の女と初老の男が階段を上っていく。
召使も、男と連れだって舞台に上がる。すると、一気に観衆が騒ぎ出した。
怒号とでも言うのだろうか、思い思いに口にした野次がとてつもない轟音を生み出している。
召使は薄ら笑いを浮かべて両手を観衆へと振り、火に油を注いだ。
観衆のボルテージは更に上がり、もはや何を言っているか分からない叫びまで聞こえてくる。
手を振った直後、召使は男たちに鎖を引っ張られた。急に引っ張られたので体勢を崩しながら向かった先はギロチン。
その横には二人の男が立っていた。どこかで見覚えのある顔のような気がしたが、召使は気にしないことにした。
どうせ、あと少しの命だ。思い出したところで。

召使の鎖を彼ら二人が掴んだ直後、赤い髪の女剣士が舞台の中央へ歩いた。
召使を連れてきた男達は女剣士に一礼をして、すぐに舞台を降りていった。

「静かに!」

女剣士が大きく叫んだ。辺りが徐々に静寂に包まれる。
完全に観衆が沈黙してから女剣士はこう告げたのであった。

「これより、黄の国の女王の処刑を始める。」

まるで、爆発でもしたかのように、急に観衆たちは声を上げる。その歓声と怒号は一瞬にして場を支配した。
召使も、あまりにも大きい音に眉をひそめた。

「静かに!」

赤い髪の女剣士がもう一度叫ぶ。先ほどまでの静寂には行き戻らず、少しだけざわつきが残ったが、
赤い髪の女剣士は召使の方を向き、指差した。

「黄の国の女王よ、貴女は今から死刑を執行される。何か言い残すことはあるか?」

早く殺して欲しい、なんて言うわけにもいかないよな。と失笑しながら召使は「今は何時ごろかしら?」と尋ねた。
赤い髪の女剣士は多少の苛立ちを抑えるかのように声を少しだけ震わせながら「昼過ぎの三時だ。」と応えた。
それを見て、召使は最後にこの女に恥をかかせてやろうかと思いついた。思いつくと自然に顔がにやけてしまった。
あれだけ殴られた礼はしなきゃな。

「あら、おやつの時間だわ。」

召使の言葉にすぐに反応した赤い髪の女剣士の顔は怒りの表情のまま張り付いていた。
そして召使の胸倉を掴むとギロチン台に押し付けた。
女剣士は周りの男達に「貴女がそのようなことをしてはいけません!」などと言われている。
召使いは女剣士のその悔しそうな表情をみてニヤリとしながらギロチン台の上から観衆を見渡す。
(みんな敵意剥き出し、僕に同情するような人や味方するものは、なし。)
一人だけ布を被っている人が見えるけど。

などと考えていると、すぐに姿勢を正されてギロチン台へ押し付けられた。手を横に固定され、身体も台に固定される。
視線は観衆へ向けられているため、期待の視線が見えてしまう。
こんなに憎まれているんだな、と改めて召使いは実感し、失笑した。
ふと、先ほどの布を被った人物が顔を上げたのが視界に入った。

「!!」

見間違うはずがない。彼女は・・・良かった、まだばれてないんだな。
召使は精一杯微笑んだ。大丈夫だ、ばれてない。僕が処刑されることで、君は処罰されなくて済むはずなんだ。

「執行せよ!!!」

精一杯生きてくれ、と召使は思った。

首元への鋭い痛み
同時に視界が回り
痛みすら生じる騒音
最後に見えた
誰かの泣き顔
誰かの涙

コメント(3)

投稿すると、お久しぶりですってなる。
必然のことなのでしょうか。
いえ、怠惰です。

お久しぶりです、悪ノPart-B出来たので置いておきます。
このペースだとPart-Cがあるとすれば来年ということになりますかね
ハハハ・・・
ありがとうございます!素敵っ!

そうなんだよなぁ〜(泣)

素材があり、明かしているのに、こんなに惹きつけられるのはなんだ!

表現?描写?いや熱意?きますなぁ〜。

私の勝手な好みですが召使いの心情の量がとても適切な感じがしました。(独断と偏見です笑)

cはあの方か?意表をついてあっちか?そして続きは…楽しみですわ〜。きりんのように待ちますよ。
おかんのもとさん
いやはや、素敵だなんてありがとうございます。
惹きつけられているなら嬉しい限りですが(笑)

なーんか色んなものを込めたら長々となってしまった、と個人的には思います(苦笑)
part-cは一応誰書くかは決めてます。で、多分書くなら多分cで終わりかな。
今年中、いや今年度中には書くよう頑張ります(駄

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