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ものがたろうコミュの悪ノ姉弟 第二部 Part-A

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悪ノ姉弟 第二部 Part-A  「青の王の願い」

「ギロチンしかないわ。」

赤の女剣士が静かに口を開く。
この場は、これからの黄の国の方針を決めるために、青の国の王、黄の国からの代表としての女剣士を含めた数名、
しばらくの間黄の国の内政を担当する青の国からの数名が一卓についている。
そこで、まずしばらく青の国のものが補佐と言う形で内政を行っていくことを決め、
次に黄の国の女王をどうするか、と言うところだった。そこで、女剣士の発言である。今はあの紅い鎧をつけてはいないが、
以前よりも色を増した瞳、そして変わらぬ髪。熱情の赤、それを具現化したような容姿。
発言も、すでに激化していた。

「・・・それはやりすぎではないか?」

「何を言うっ!」

青の国の王の発言に女剣士はバンッと机を叩き抗議する。

「あいつがやってきたことを見てきたでしょ!? 生半可な仕打ちなんかで満足出来るものかっ!」

「しかし・・・」

「どれだけの人があいつの勝手で苦しんできたのよっ! この国の人だけじゃないわ。緑の国だって・・・。」

(・・・それは建前だろうな。)

青の国の王は眉をひそめ、苦悩の表情を作りながら冷静に女剣士と黄の国の代表を眺める。
すでに、青の国の意見は一致していた。
『黄の国のものに処遇は任せる。』
青の国のものが手を下せば、いずれ遺恨が残る。黄の国の代表が決めたことなら、同じ国のものが決めたこと。問題は少ない。
黄の国のものが意見を出したら、先にまず否定をする。それが青の国の決めたことだった。

青の国の王が『建前』だと感じたのには理由がある。
それは、女剣士の両親は黄の国で重臣だったということ、そして、女王に処罰を受けこの世から去っているということ。

(すでに負の連鎖は起きているのだ。)

しかし、黄の国が緑の国を滅ぼしたことから、それは不自然なことではなくなっている。
これによって遺恨が残ることはないだろう。かつての重臣たちも、恐れでついていただけに過ぎない。事を起こすようなことはない。
いや、一つあるとすれば・・・・。

「・・・仮に死罪を与えるとしよう。なぜ、ギロチンでなければならないのだ?」

「・・・黄の国の民衆に見せ付けるのよ。旧体制には二度と戻らない、その可能性も残さないって。」

「なるほど、主導者さえ居なければ以前には戻らぬ、と。」

「そういうことね。」

少しではあるが、女剣士の心の内も静まったようだ。
ここまではシナリオ通りだ。死罪の行い方に関しては、想像の範囲外だが、特に反対の理由はない。

(・・・あのことに気づいているのは私だけなのだろうか・・・。)

あの可能性がある限り、それは不安要素でしかない。
あの人が一人で何かを行えるわけでもないのだが・・・。
それに、残されたものの様子。どうも本人の意思のようだ。

(・・・あるいは、この事によって変化が起きるか・・・?)

「・・・了解した。貴方たちの国のことだ。そちらの考えを優先するのは当然だ。
 しばらくの間ではあるが、政治を手伝わせてもらうこと、ありがたく思う。
 その間に、何か教えることがあれば遠慮なく聞いて欲しい。」

「いえ、こちらこそそれはありがたいことです。」

青の国の王の言葉に答えたのは、初老の男。彼は昔に学を身に着けたことがあるらしく、時期政権への大きな柱になり得る。

「ところで、誰がこの国の王になるのですか?」

「・・・しばらくは立てないでおこうと思っています。
 王という存在が必要かどうか考えていくことになるでしょう。」

「なるほど。それもいいでしょう。では、他に決めることがあれば何かおっしゃってください。」

「では、戦災復興の話を・・・」





そして月日は流れる。元女王の処刑が決まり、発表が行われた。
その日は青の国の王は「私には見届ける必要がある」と関係者として参列した。

その、処刑が行われる数時間前のこと。青の国の王は一人牢獄へ向かった。
冷たく、血の匂いのする廊下を静かに歩く。
最奥の牢屋まではしばらくの距離があった。その両脇には、多くの血の染み付いた牢屋。
今は人はいないが、何が行われてきたかある程度の想像はかきたてられる。
牢屋が小さく見えてきた。それが大きくなるとその中に更に小さな存在がいることに気づく。
手を鎖で繋がれ、白く薄汚れた衣服に身を包んだ者。頭を垂れて、じっとしている。
黄の国の女王である。
その牢屋の前で青の国の王は足を止める。下を向いていた女王は顔を上げると、静かに笑い、一つ息をついて壁にもたれ、青の国の王を見上げる。。

「・・・何の用かしら。」

「・・・女王よ、貴女がしてきたことに何も悔いはないのか?」

「あるとすれば、捕まったことかしら。」

そう言って女王はニヤリと力無く笑う。
青の国の王は少し考えて、こう言葉をかけた。

「・・・残されたものを守ることが出来ないからか?」

女王は一瞬、目を見開いた。しかし、すぐに元の冷めた視線に戻ると「知らないわ。」とだけ静かに告げた。

「ならばよい。貴方の最後の姿を、私は必ず見届けよう。」

と青の国の王は応え、踵を返してその場を後にした。



皮肉にも晴天、青き空の下で、今にも処刑が行われようとしていた。
焼け崩れた家屋の残骸をどかして急に作った広場に、さらに急ごしらえの台場。そして、ギロチン。
その脇にはクーデターで先陣を切っていた屈強の男二人。
広場には、すでに多くの人で溢れ返っていた。多くの国民が今か今かと待ち続けている。


青の国の王は、その光景に不快感を覚えたものの、表情に出すのを抑えた。
それだけ、黄の国の女王のしてきたことは許されないものだったのだろう。

やがて、赤髪の女剣士が初老の男とともに現れる。そして、黄の国の女王も二人の男に連れられて出てくる。
民衆のボルテージが跳ね上がる。もはや何を叫んでいるのか分からないが、恐ろしく熱狂的に何かを発している。
黄の国の女王はそんな民衆を見て、鼻で笑うと繋がれた両手を振り、火に油を注ぐ。
直後に男たちに引っ張られて、よろよろとしながらギロチンへと歩まされる。待っていた二人の男が引き継ぐ形で鎖を受け取り、女王を連れてきた二人の男は赤髪の女剣士に一礼して舞台を降りていった。
女剣士は舞台の一番前に立ち、「静かに!」と大きく叫んだ。
民衆の怒号はピタリと止み、静寂の時が流れる。

「これより、黄の国の女王の処刑を始める。」

更に勢いの増した民衆の怒号が場を支配した。女剣士はもう一度「静かに」と叫ぶ。先ほどよりは静かではないが、気に障る程度のざわめきだ。

「黄の国の女王よ、貴女は今から死刑を執行される。何か言い残すことはあるか?」

黄の国の女王は力無く笑みを浮かべて「今は何時ごろかしら?」と問いかけた。
赤髪の女剣士は苛立ちを抑えながら「昼過ぎの三時だ。」と応えた。それを聞いた黄の国の女王は先ほどよりもはっきりと笑みを浮かべて、こう口にした。

「あら、おやつの時間だわ。」

赤髪の女剣士の怒りが頂点に達したのが分かった。胸襟を掴むと乱暴に黄の国の女王をギロチン台へと押し付ける。男たちは慌てて女剣士を女王から引き離す。

「貴女がそのようなことをしてはいけません!」

「くっ・・・!」

女剣士は肩で息をしながら落ち着こうと必死に怒りを押さえつけた。
ここまでの一部始終を、民衆は固唾を飲んで見ていた。青の国の王は静かになった民衆をふと見渡した。
すると、一人だけ、この舞台から目を逸らしている人物を発見した。頭から布をかぶり、服装は白いシャツに膝辺りまでのズボンを履いた少年。
その少年が顔を上げて舞台を見たとき、青の国の王は気づいてしまった。彼女が少年ではないこと。そして、今舞台に上がっている少年と同じ、薄汚れてしまった黄色の髪。

(黄の国の女王・・・・!?何故戻ってきたのだ!!)

これで推測が確信に変わる。今舞台に上がっているものは、いつも隣にいた召使。。
女王の身代わりとなり、あまりにも似ているため誰も気づかなかった。
しかし、ここで民衆の中にいる女王が見つかってしまえば、全てが御終いである。

青の国の王は、静かに女王を気に掛けて舞台の進行を見守る。やがて召使は黄の国の女王として処刑される。・・・二人を除いて。
男に抑えられ、後は女剣士の合図を待つだけ。
その状況を彼女はどう見ているのか。遠くからでは判断がつかないが、涙を浮かべながらも、目を逸らさないようにしている気もする。
召使は笑みを浮かべていたが、一瞬、今までの笑みとは違う表情を浮かべた。まるで、安堵したかのような表情を。

「執行せよ!!!」

合図と共に刃が落とされる。その刃は一瞬のうちに執事を二つに分けた。頭部は落下した勢いのままに転がり、断面からは血飛沫。
舞台の一番前にいるものはその血を浴びていることだろう。しかし、それにも拘らず民衆からは熱狂的な歓声が止まなかった。
それほど、圧政は辛いものだったのだろうか。その光景は、とても直視出来るものではない。
ギロチンによる処刑という結果を持って、民衆は解き放たれたのだろう。

そこまで考えて青の国の王はもう一度、黄の国の女王を探した。
すでに、そこには姿がなかった。彼女に、彼の姿はどう映ったのだろう。
この民衆の姿が、どう映ったのだろう。


















「本当に・・・行かれるのですか?」

「これは、私の義務なのです。」

青の国の王は、黄の国の女王を探すことにした。

―彼女にもし、復讐の気持ちが生まれていたとしたら―

彼の願いが報われないのではないだろうか。
青の国の王は若い男の肩に手をかけ、言葉をかける。

「今から、貴方が青の国の王です。私は、一人の男として一人の女性を探さなければならない。」

黄の国の召使の願い、黄の国の悪しき慣習。負の連鎖を断ち切るのは、彼女だ。

「そして、私は彼女を守らなければならないのです。それが、この国を守ることと同義ですから。」

コメント(4)

お久しぶりです。もし良ければ参考までに。

悪ノ姉弟 第一部
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=44302148&comm_id=1483156
お久しぶりー


情景描写が丁寧というか、慎重になった感じ。言葉一つ一つの選び方が変わったのかな。

特に牢のシーンが、昏さと奥行きを感じられて良いです。

激情家の赤、思考に耽る青等、キャラクターの個性が強烈で、書き分けもしっかりされてて読みやすいね。
パートAってことはBもあるのかな?期待してます。
ありがとうございますっ!楽しみにしていました。

シーンがとても明確にうかんできました。民衆達や登場人物達の表情。特に処刑シーンの二人の女王にぞくぞくしました。そして、先が気になりますっ!連鎖の行方が気になってしまいますねぇ。

「続きが気になる」ってすごいなぁって思います。どんな話になるのかしら?そしてBは…ふふふ
ヨコヲさん
そうですね。色々考えて何度も書き直したからそうなったのかな。

牢のシーン・・・。そうかー。何も考えてないかも。
書き分けは上手くいって良かった。
パートbどころかcまで考えてます。
書けたらいいんですが。


おかんのもとさん
楽しみにしてくれてありがとうございます。しかし遅いですねorz
情景が浮かんでくれたみたいで嬉しいですね(笑)

続きはどうなりますかねー。うひひ

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