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人と街コミュの第二話

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  08:13

  僕は地下鉄に揺られていた。
  駅までの道の上に広がった秋晴れの空とは違う、
  どの季節にも変わらない、そんな風景がある。
  それでも多少は空気がかわったような気もする。
  地下鉄も、季節の移り変わりを感じているのだろうか。


  「次は、新宿、新宿。」


  ドアが開く。
  われ先にとそのドア口を目指し人を押しのける人々。
  それはまるで、檻から放たれた空腹の猿の群れのようだった。
  
  ヒトは、どれだけ進化したのだろうか。

  そんな皮肉を頭でつぶやきながら、
  エスカレーターに乗る。


  会社についた。

  会社は、JRの線路に平行するように並ぶビル群の一角。
  その27階である。
  自動の回転ドアを道化師になった気分で半回転し、
  人々の声と足音に満たされたホールにでる。
  
  入ってすぐ右手にある受付は、今日も相変わらずの空気をはなっている。
  3人とも、どこぞのコンテストから引っ張ってきたかのような、
  文句のつけようのないルックスだ。
  その不必要なまでにのびた背筋を支えるものには、
  いくらでも皮肉が言えそうなものだが。

  けれど、その受付の左端に座っている香川さんは、
  なぜかひとり、妙にのほほんとしたオーラを纏っている。
  いや、なぜ名前を知っているかは・・・まぁどうでもいい。
  何となく出勤するときに目がとまる、それだけの話だ。




  オフィスへ続くエレベーターは、ガラス張りだ。
  見てくれがいいからだろうか。
  モダン建築の方向性と価値観は、僕には一生分からないものだろう。
  まぁ何はともあれ、幸か不幸か、そのお陰で外がよく見える。




  上にあがればあがるほど、

  人が、街が、どんどん小さくなっていくのだ。





  けれどこの感覚にも、もう慣れた気がする。

  入社して5年が経つ。


  目まぐるしく変化する街の様相。

  何一つ変わらない、僕の日常。






  今日も、ありふれた一日をおくる。

  そんなつもりでいた。




 

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