２つの違い、説明できますか？コミュの鉄と鋼

世間一般的にはどっちを使っても差し支えないのですが、
金属学的な分類についてちょっと触れてみましょう。

【鉄】（てつ，くろがね，アイアン（Iron））
身近な金属元素のひとつ。
元素名なので、厳密には単体の純鉄を指す。

鉄は自然界では純鉄の状態では存在せず、酸化鉄の状態で
鉄鉱石に含まれる。
Fe2O3を多く含む鉄鉱石を赤鉄鉱（ヘマタイト）、Fe3O4を多く
含む鉄鉱石を磁鉄鉱（マグネタイト）という。
鉄鉱石から鉄を取り出すには、溶鉱炉（高炉）で炭素と一緒に
加熱して還元反応を起こしてやり、酸素と分離させる。
　　Fe2O3→Fe3O4→FeO→Fe
といった感じで酸素を取り除く。
酸素を奪った炭素は一酸化炭素、二酸化炭素となる。

また、鉄鉱石に含まれる不純物のシリコン酸化物等も石灰石を
一緒に加熱することで分離する。

溶鉱炉から出てくる液状の鉄は銑鉄（せんてつ）と呼ばれ、
酸素を除去するために燃料兼炭素源として使ったコークスから
入ってくる炭素を数％含んでいる。
このような工程で生産されるため、鉄は炭素を含む鉄炭素合金
として存在することになる。
銑鉄から炭素を除去せずに型に流し込んで固めたものを鋳鉄と
いい、炭素を2.14～6.67％含む。これが原料に近い方の「鉄」
である。

後述する「鋼」は炭素を2.14％以下に調整したものであるが、
723℃を中心とする高温（約600～900℃）では最大0.0218％の
炭素は純鉄に溶け込むことができる（このような状態を固溶体
という）。この固溶体を「α鉄」とか「フェライト」といい、
これも「鉄」である。

【鋼】（こう，はがね，スチール（Steel））
銑鉄・鋳鉄のように炭素が数％も含まれると、脆くて構造物に
使えない場合が多い。そこで、炭素を除去することになる。
これが「製鋼」であり、炭素を2.14％以下にしたものが「鋼」
である。語源は「刀の刃」に使う強靭な金属なので「刃金」と
呼ばれたことに由来する。
0.0218％以下の炭素なら高温ではフェライトと呼ばれる「鉄」
であるが、常温では極めて低い炭素量でなければフェライトだ
けの状態にならない。
このため、0.0218％以下の範囲である数十ppm（0.00xx％）の
炭素を含む鉄炭素合金は極低炭素「鋼」と称される。
「鉄」と「鋼」の境界は温度によって変わる、と言える。

「鋼」のなかでも鉄炭素合金を「炭素鋼」といい、これに他の
元素（マンガン、クロム、ニッケル、コバルト、モリブデン、
等）を加えたものを「合金鋼」という。

赤錆が出にくくなるように、クロムやニッケルを加えた鋼は
「ステンレス」として知られている。これは「ステンレス鋼」
であり、「合金鋼」の一種である。

「鋼」には「フェライト」を含む場合があるので、この場合は
部分的に「鉄」であるとも解釈できる。

≪ 最終的な結論 ≫
鉄：
　●鉄元素。
　●純鉄。
　●2.14～6.67％の炭素を含む鉄炭素合金、銑鉄・鋳鉄。
　●フェライト。高温では最大0.0218％の炭素を含む。

鋼：
　●0.0218～2.14％の炭素を含む鉄炭素合金、炭素鋼。
　●0～0.0218％の炭素を含む鉄炭素合金のうち、
　　フェライトのみでないもの。極低炭素鋼。
　●炭素鋼・極低炭素鋼に合金元素を添加した、ステンレス
　　などの合金鋼。

≪ 蛇足 ≫
日本古来の製鉄に、どじょうすくいで有名な島根県安来に残る
「たたら製鉄」があり、同地はアニメ「もののけ姫」の舞台に
もなった。「鉄」の「たたら製鉄」に対して「鋼」の「たたら
吹き」は砂鉄を原料とする製鋼であり、日立金属安来工場が
伝統を伝えている。

≪ 参考資料 ≫
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%89%84
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8B%BC
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E7%82%89
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BA%E6%BA%B6%E4%BD%93
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B8%8F%E9%9E%B4%E8%A3%BD%E9%89%84
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9F%E3%81%9F%E3%82%89%E5%90%B9%E3%81%8D
http://www.hitachi-metals.co.jp/corp/corp07/s_yasu.html
http://www.kobelco.co.jp/steel/products/atsuita/atsuita/process01.html