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学校評価コミュの 「特色ある大学教育支援プログラム」から「質の高い大学教育推進プログラム」へ ― 大綱化施策の大きな転換と「学士課程教育の構築に向けて」答申(2008年12月24日)の意味

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私は、昨年4月の大学設置基準の変更(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07091103.htm)は、ここ20年の大学施策の大きな転換だと考えている。

昨年12月24日の中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1217067.htm)は、昨年4月の設置基準の改正をフォローする答申だが、その中に印象的なテキストが二つある(※以後この答申を「12月答申」と略す)。

一つは、「多様性と標準性との調和」(5頁)。もう一つは「学際的な教育活動について、関連する学問の知識体系(ディシプリン)に関する基礎教育が必ずしも十分になされていない」(16頁)というものである。

前者は、「市場化の改革手法のみでは、教育の質の向上について十分な成果を期待することはできない。大学の多様化が単なる無秩序に陥り、日本の大学の国際的な信用や信頼性を失墜させるような結果を招来してはならない」(5〜6頁)という解説付きである。

後者で言う「学際的な教育活動」とは、「コミュニケーション能力」「社会人基礎力」「問題発見・解決能力」「人間力」「創造力」などいわゆる〈力〉能力開発にかかわる取組を指している。

「学際的な教育活動」とは、したがって2003年に始まった「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」に代表される取組を指している。それらのほとんどは〈力〉能力開発に関わっている。東京大学でさえ昨年の取組(質の高い大学教育推進プログラム)は「討議力」形成のための取組だった。

「多様性」、「個性」、「特長」は、1991年の「大綱化」以来の文科省大学施策のキーワード。それが10年経って「遠山プラン」の「競争化」施策で加速された。

厳密に言えば、「多様性」、「個性」、「特長」は、競争施策ではなく、共存施策だが、この20年の少子化現象が、「多様化」「個性」「特長」を競うというねじれ現象を生んだとも言える。

その代表格が「特色ある大学教育支援プログラム」だったが、昨年の「12月答申」の二つのテキスト(「標準性」と「ディシプリン」)の意味するものは、この1991年の大綱化から2007年で終了した「特色ある大学教育支援プログラム」の自己否定である。

「多様性」、「個性」、「特長」は、結局のところ、〈力〉教育主義によってローカリズムとオプショナリズムを招来しただけのこと。それらの取組は、メインカリキュラムの周辺に配置されただけのことであって、せいぜいのところ三流のマーケティング活動に留まった。

「12月答申」が「ディシプリン」を「知識体系」の英語として表記したのは、メインカリキュラムの体系性(知識体系)の中に、「特色ある大学教育支援プログラム」の各大学の取組が位置付いていなかったからである。

Inter-disciplineな(=学際的な)取組にもdisciplineがなければならない、というのは、Inter-disciplineな取組もまたメインカリキュラム(=「知識体系」=「カリキュラム」の体系性)との体系的な連関を有していなければならないということである。

平たく言えば、「特色ある大学教育支援プログラム」5年間(2003年〜2007年)の各大学に於ける「教育改革」は、各大学、各学部の理念や伝統・人材目標と大きくかけ離れたものでしかなかったということだ。

なぜ、この取組が抽象的な〈力〉能力開発に留まったのか? 誰もが文句の付けようのない抽象的な目標を掲げて、教員達の外面的な連携を体裁づけたのである。こういった連携は結局のところ、メインカリキュラムに手を付けないための連携だった。要するに教員達は自分自身の担当科目のシラバスの書き換えを拒否し続けたのである。

昨年4月(施行)の大学設置基準の改正(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07091103.htm)は、この事態を踏まえてのものだった。この改正の要点は4つある(何度も言われ続けてきたことだが)。

1)人材目標(体系的な教育課程)の学則レベルでの公表
2)成績評価基準等の明示
3)教員の組織的研修(FD)の義務付け
4)上記1)~3)にかかわる「自己点検・評価」の実施

この4つを一言で言えば、メインカリキュラムに手を付けろ、ということである。1991年の大綱化の段階でも、規制緩和(=大綱化)は4年間の学士課程全体の目標の明確化と引き替えだった。が、実情は教員達がますます勝手に自分のシラバスに閉じこもってしまった。

91年以降、シラバス改革は加速し詳細化するが、それは教員の自己告白(自己満足)が詳細化するだけのことであって、「体系的な教育課程」とはほど遠いものだった。まさに「大学の多様化が無秩序に陥った」(12月答申)のである。

昨年の大学設置基準の改正と並行して進んだのが、「特色ある大学教育支援プログラム」(2003年〜2007年)が「質の高い大学教育推進プログラム(=教育GP)」(2008年度)へと解消されたことだった。

昨年度は、「質の高い」ってどういうこと? と自問した大学関係者がたくさんいたに違いない。

この「質の高い」の意味は、この言葉だけをいくら内省してもわからない。それは、無秩序とdisciplineなき「多様性」「個性」「特長」教育を解消しなさいということを意味している。

したがって、「質の高い」ということは、「体系的」「組織的」ということと同義だ(この語法を理解するのは確かに難しい。「質の高い」という名称は、それゆえ2008年度単年度で終わり、今年2009年度は「大学教育支援推進事業」という月並みな用語に収まっている)。

昨年度の「質の高い大学教育推進プログラム」では、したがって、審査基準の中に、4月の設置基準改正を受けた先の4つの項目(人材目標の明確化、履修判定基準の明確化、教員の組織的研修、自己点検・評価)が組み込まれた。

なんと採点配分としては、取組そのものの内容と同じ採点配分がなされたのである。「特色ある大学教育支援プログラム」では取組内容だけの採点で採択の可否が決まったが、昨年度以降、大学全体、学部全体が何を目指しているのかの記述と評価なしには(原則上は)採択されなくなっている。

前半の評価(人材目標の明確化、履修判定基準の明確化、教員の組織的研修、自己点検・評価)を受けて、後半の評価(取り組みそのもの)が決まるというのが、理想的な評価モデルだ。まさに「多様性(後半)と標準性(前半)の調和」である。あるいはInter-disciplineな取組(後半)にもdiscipline(前半)が必要ということである。

昨年度の「質の高い大学教育推進プログラム」での採択は、私の考えるところ以下の3つのタイプで出来上がっている。

【タイプA】(順不同)
「PISA対応の討議力養成プログラムの開発」(東京大学)
「実践臨床医養成への問題基盤型学習の実質化」(佐賀大学)
「相互啓発による創造的学力育成カリキュラム」(同志社大学)
「知的能動性をはぐくむ理学教育プログラム」(大阪大学)
「販売現場に密着した問題発掘型スタディーズ」(大阪府立大学)
「ユビキタス社会の問題発見解決型人材育成」(慶應大学)
「実践教育による社会的問題解決能力の養成」(大阪商業大学)
「学生の学力・人間力・社会力の養成」(帝塚山大学)
「食農コープ教育による実践型人材の育成」(神戸大学)
「学士力向上を図るフィールド科学の創設」(県立広島大学)
その他

【タイプB】(順不同)
「地域密着型環境教育プログラム」(北九州大学)
「現場主義に基づく地域参画型教育」(香川大学)
「都心の文化資源等を活かした知の創造と発信」(青山学院大学)
「体験型実習を基盤とする海洋環境教育の実践」(東海大学)
「酪農場での長期実習を組み込んだ新教育方式」(酪農学園方式)
「地域交流で生活の質を学ぶ実践的保健学教育」(群馬大学)
「地域貢献活動を活用した理系女性人材育成」(奈良女子大学)
「地域再生・活性化の担い手育成教育」(東京農業大学)
「流域主義による地域貢献と環境教育」(和光大学)
「医療現場との情報双方向性を持つ保険学教育」(九州大学)
その他

【タイプC】(順不同)
「博物館を舞台とした体験型全人教育の推進」(北海道大学)
「地域に教育の場を拡大した包括的教育の取組」(奈良県立医科大学)
「一年間の留学を基軸にした高度総合英語教育」(同志社女子大学)
「地域・産学連携による自主・自立型実践教育」(明治大学)
「地域社会問題を学生想像力で解く学びの仕組み」(立命館大学)
「模擬学校による教育実践力向上モデルの開発」(琉球大学)
「海と湖を舞台とするやる気触発プログラム」(福井県立大学)
「販売現場に直結した問題発掘型スタディーズ」(大阪府立大学)
その他

相変わらず、〈力〉能力取組が幅を利かせている。昨年度の限りでは、「特色ある大学教育支援プログラム」の採択例と「質の高い大学教育推進プログラム」の採択例とはほとんど変わらない。要するに前半(標準性)と後半(多様性)とは全く結びついていない。

【タイプA】は、達成評価の難しい〈力〉教育モデル。【タイプB】は、教室外教育(遠足型教育)。【タイプC】は、タイプA+タイプBの混合型である。

これらの教育モデルは、すべてdisciplineがない。したがって、達成評価はほとんどの場合、心理主義的な学生満足度アンケートで終わっている。

要するに、タイプA~Cはすべて大学のメイン講座が成立していない、成立していないにもかかわらず、それに手を付けない徒花のような改革モデルなのである。未だに教授達は自分のシラバスを書き換えようとしてない(苦笑)。

国立、公立、私立大学の関係者のすべては「特色」から「質の高い」への転換を全く理解していない。「12月答申」は、その転換の経緯を解説するものだったのである。今年の審査(「大学教育支援推進事業」審査)はすでに始まっているが、さてどうなることやら。「12月答申」のインパクトは、今年の採択で一つの結果が出るが、1991年以降の大綱化の「無秩序」をそう簡単に払拭することはできまい。

●ブログ版→ http://www.ashida.info/blog/2009/07/_20081224.html#more 

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