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学校評価コミュの「特色ある大学教育支援プログラム(=特色GP)」「質の高い大学教育推進プログラム(=教育GP)」における高等教育の現在(その1)

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私(管理者)は昨年まで「特色ある大学教育支援プログラム」(2003年〜2007年)の審査部会委員、今年の「質の高い大学教育推進プログラム」審査部会員を務めたが、両者の取組は「自己点検・評価」以後の大学教育改革の傾向を見るのに随分勉強になった。

文部科学省は、91年の大学の「大綱化」(=規制緩和)と並行して「自己点検・評価」の努力義務を大学に課したが、20年近く経った今でもまともな「自己点検・評価」報告書は出来ていない(失礼!)。網羅主義的で学校案内パンフレットを詳細化したようなものにしかなっていない。

少子化対応の眼目はあくまでも各大学が各自のコアコンピタンスを見出し、特色ある学校体制を構築することであった。91年の「大綱化」の意味もそこにあり、「自己点検・評価」の眼目もそこにあった。

が、始まったら横並びの「自己点検・評価」ばかりが「報告」されることになった。現在の「自己点検・評価」報告書を読んで、各大学の内実ある「特色」を見出すことは神業に近い。

そういった現状を打破するために、2002年には「第3者評価」が義務化され、同時に「21世紀COE」(http://www.jsps.go.jp/j-21coe/index.html)が始まった。

「21世紀COE」は大学(の先端研究)に対する助成傾斜配分処置第一号であり(当時一般紙でも大々的に取り上げられた)、少子化下の大学競争は、緊縮財政下における助成競争でもあった。自前の「自己点検・評価」報告では見えなかった競争や特色の内容が問われたのである。その皮切りの試みが「21世紀COE」だった。

しかし先端「研究」ばかりで傾斜配分されたら「教育」に傾注しつつある多くの大学にとってはたまったものではない。先端「研究」ということになれば、結局は大きな国立大学やそれに比する私立大学の一部に予算が集中し、傾斜配分の意味が薄れてしまう。

それもあって2003年には「21世紀COE」に引き続いて「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」が始まり、その翌年の2004年には「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/needs.htm)が始まった。

前者は、実績中心の教育支援、後者は政府の施策対応やマーケットニーズ中心の教育支援である。

これら「特色GP」と「現代GP」とがここ数年の大学の「教育改革」の両輪をなして進んできた。

たしかにこれらの予算処置には批判もある。草原克豪は次のように言っている。

「各大学は無理をしてでもこれに応募して高い評価を受けようとするが、その結果、大学本来の使命である地道な教育活動の充実が二の次になってしまいかねない。採択されたプログラムに対しては使途を限定した予算が配分されるので、大学としてはつい、必要性の高い事業よりも採択されやすい、言い換えれば予算を付けてもらいやすい事業を実施するという倒錯した発想にもなってしまう。それでは学内の教育活動の優先順位という点でバランスを欠いたことにもなる」(『日本の大学制度』弘文堂)。

この草原の指摘は間違いではないが、しかし大学の自己改革(「自己点検・評価」約10年の歴史)が一旦挫折したところから、このようなプログラムが始まったことを草原の指摘は見落としている。「地道な教育活動の充実」が存在しているとすれば、このようなプログラムは最初から開始されなかっただろう。

もう一つの見落としは、この改革評価は実質的な「自己点検・評価」=「第3者評価」になったということである。特に「特色GP」では大学の教員たち自身が他大学の教育改革を公開的に評価するという審査方法をとったために、文科省主導というよりは、大学関係者たちの評価指標自体が問われる審査になっている。もしこれらの評価が陳腐なものだとすれば、それは大学の当事者たち自身が陳腐な評価指標しか有していないということになる。こういった「GP(Good Practice)」施策はマーチントロウの言う「システム」型の自己規制にあると言ってよい。草原のようにわざわざうがった見方をする必要はない。

「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」が「特色GP」と別個に存在せざるを得なかったのは、むしろ「特色GP」が文部科学省の施策趣旨とは別個に展開したからだとも言える。「特色GP」は、その意味ではいい意味でも悪い意味でも現在の大学課題の“大学的な”取組の現状を表現しているのである。

その「特色GP」「現代GP」が昨年度で終了し、今年度からは「質の高い大学教育推進プログラム」(=教育GP)に一本化された。

「特色」が「質の高い」というように「質」に変化したのはなぜか。それは、「自己点検・評価」の内実がないところで「特色」を求めても、各大学のコアコンピタンスを形成するような特色ある取組がなかなか生まれなかったことによる。

2003年〜2007年の5年間の各大学の取組の「特色」はほとんど「ローカル」と区別が付かない状態だった。

そんな反省から今年4月大学の設置基準が改正される(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07091103.htm)。私から見れば、それは3つの大きな要点を有している。

一つは、91年の大綱化の根本思想である科目主義からカリキュラム主義への転換を設置基準そのものに盛り込んだことである。「大学は、学部、学科又は課程ごとに、人材の養成に関する目的その他の教育研究上の目的を学則等に定め、公表するものとすること」(第2条の2関係)とある。「人材の養成に関する目的その他の教育研究上の目的」という言い方は抽象的で曖昧だが、この条文の附則留意事項では以下のようになっている。

「大学設置基準第2条の2の規定による目的の策定に当たっては、各大学のそれぞれの人材養成上の目的と学生に修得させるべき能力等の教育目標を明確にし、これらに即して、体系的な教育課程を提供するとともに、責任ある実践のための人的、組織的体制、物的環境を整えることに資するよう留意すること。また、組織として目的を共有するため、学則、学部規則又は学科規則などの適切な形式により定めるとともに、大学のホームページ等を活用し、これを広く社会に公表するよう留意すること」。もはや科目目標ではなく、「人材養成」を意識した「体系的な教育課程」を「人的」「組織的」「物的」に、学則レベルで提供しなさいということである。

次には、授業計画(内容と方法)の明示、および成績評価基準の明示。「大学は、学生に対して、授業の方法及び内容並びに一年間の授業の計画をあらかじめ明示するものとすること。また、学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たっては、客観性及び厳格性を確保するため、学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに、当該基準にしたがって適切に行うものとすること」(第 25条の2関係)とある。この附則「留意」事項は「大学設置基準第25条の2第2項に規定する学修の成果に係る評価等の基準については、各大学が作成するいわゆるシラバスに記載するなど、学生に対して明確に提示するよう留意すること」となっている。

特に91年の「大綱化」以来、科目シラバスは年々詳細になり分厚くなってきたが、肝心のその履修評価の厳密性は置き去りにされたままだった。

このことの意味は二つある。一つには各教員がシラバス通りには授業をやっていないこと(やっていない場合がある)。二つ目にはたとえシラバス通りにやっているとしても、その通りの実力が付いていないこと(付いていない場合がある)。この二つが日本的なシラバス主義の弱点だった。今年4月の改正は、その二つの問題を履修判定の厳密化(詳細化と公開化)によって補うというものである。このことによってシラバス主義の空回りがすべて解決するわけではないだろうが、単なるレポート提出とその印象批評で終わっていた履修評価よりははるかに前進する機会になるだろう。シラバス主義(input評価)よりは、成果評価(output=outcome評価)を重ねる方がはるかにシラバスは厳密化するに違いない。

三つ目には、FD(Faculty Development)の義務づけ。「大学は、授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとすること」(第25条の3関係)とある。この附則「留意」事項は「大学設置基準第25条の3の規定によるいわゆるファカルティ・ディベロップメント(FD)については、これまで努力義務であったものを義務化するものでるが、これは大学の各教員に対し義務付けるものではなく、各大学が組織的に実施することを義務付けるものであること。これを踏まえ、各大学においては、授 業の内容及び方法の改善につながるような内容の伴った取組を行うことが望まれること」となっている。

FD(Faculty Development)は昨今大流行だが、その起源(本来の意味)についてはここでは省こう。日本で使われているこの言葉の意味を意訳すれば、「組織的な教員教育」という感じか。現に4月の新設置基準での「FD」はその意味で使われている。

しかし最高学府の「大学教授」を教育するとは、誰が何の資格や権利でもって、と大学教授たちに怒られそうだ。このFDは、教員を教員として再教育することではなくて、一つ目の「人材育成」に関わる「教育目標」を共有化するFDのことを意味している。

※ちなみに特色GPのリーダーであった絹川正吉(前ICU学長)は以下のようにFD(FD活動)をまとめている。

1)大学の理念、目標を紹介するワークショップ
2)ベテラン教員による新任教員への指導
3)教員の教育技法(学習理論、授業法、講義法、討論法、学業評価法、教育機器利用法、メディアリテラシー習熟)を改善するための支援プログラム
4)カリキュラム開発
5)学習支援(履修指導)システムの開発
6)教育制度の理解
7)アセスメント(学生による授業評価、同僚教員による教授法評価、教員の諸活動の定期的評価)
8)優秀教員の表彰
9)教員の研究支援
10)大学の管理運営と教授会権限の関係についての理解
11)研究と教育の調和を図る学内組織の構築の研究
12)大学教員の倫理規定と社会的責任の周知
13)自己点検・評価活動とその活用


〈続く)

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