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能のボストン公演実行委員会コミュの能ワークショップ@MFA Nov 18, 2007

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場所 ボストン美術館、レクチャールーム
題名 「浮世絵と能」
日時 2007年11月18(日)、12:30pm-2:00pm
講師 清水寛二、西村高夫、浅見慈一
参加者 70名以上

落ち葉が街中を飾り少し肌寒くなったボストン。本日は晴天。空は何時もより広い感じがする。空気も澄んでおりワークショップをするには絶好の天候に恵まれた。ボストン美術館のウェストウィング側、スタッフ入り口に朝10:00時に到着。流石はガイドブックに載るほどの観光場所。入り口にはカナダから観光バスでやってきた学生で溢れていた。彼らの話すフランス語がボストン美術館に来る客の多様性を証明している。今回の能ワークショップには老若男女、異なる国の様々な方々が来てくれる事を期待させる。ワークショップメンバーは清水寛二、西村高夫、浅見慈一の能楽師3名と、通訳、現地スタッフ2名の計6名。

まずはボストン美術館担当者でコーディネイトしてくれているブルック・エバンスさんに連絡を取り、早速ワークショップ場所へ案内してもらった。開催場所であるレクチャールームには、液晶プロジェクターを映し出す大きなスクリーンを正面に、縦長の部屋に50個の席が用意されていた。その脇にスタッフが使える簡単な部屋もあった。能楽師らはスーツケースを開けて早速衣装などの準備に取り掛かる。

今回の能ワークショップのテーマは『浮世絵と能』。同時期、数ヶ月にわたりボストン美術館では浮世絵の特別展示会が催されており、まさにこの上ない絶好の機会である。美術館が所蔵している浮世絵を紹介しながら、その浮世絵の登場人物を主人公とした能を舞うというのが今回の趣向。浮世絵はあらかじめ美術館スタッフと相談の上、4枚選んでパワーポイントでプレゼンテーションできるようにしてある。マイクや囃子(はやし)の音楽が録音されたテープ、DVDの使い方をオーディオ室の機材を確認。入り口には清水寛二氏、西村高夫氏、両名が所属する“響の会”特製ポストカードをおいて準備万端。

ワークショップ開始の1時間前にも関わらずお客が入ってきた。ボストン美術館の雑誌やホームページで事前に宣伝したおかげだろう。彼女は前から3列目の席に座り、能楽師の所作を確認しながらメモを取るという、どこからどうみても日本に興味津々なアメリカ人。その後、入り口で能楽師の写真入りポストカードを配りながら参加を呼びかけていると、「浮世絵と能のワークショップはここか?」と多くの方が訪れ、開始15分前には既に満席に近い状態に。能を英語で紹介するDVDを流して本番までの時間を待ってもらう。結局、客席は50では足らず20席追加。それでもまだ部屋の後ろや入り口側の通路まで立ち見が出るほどの大盛況。子供連れの親子、学生、老人など客層も多様。

いよいよ本番。今回のワークショップ内容以下の通り。

1. ご挨拶 5分
2. 「土蜘蛛(つちぐも)」 5分
3. 「神舞(かみまい)」 5分
4. 浮世絵紹介(巴御前、能舞台)10分
5. 能衣装の着付け 30分
6. 能「巴(ともえ)」の説明 5分
7. 能「巴」後シテの舞 10分
8. 参加者と共に謡う「尽きせぬ宿こそめでたけれ〜」 5分
9. 質疑応答 10分
10.新作能・一石仙人(いっせきせんにん)の紹介 1分

計 約85分

能楽師の簡単な自己紹介後、清水・西村両名による土蜘蛛からの導入部。不思議と「スパイダーマンとサムライの戦いだ」と説明すると皆良く分かってくれる。土蜘蛛が糸を観客に向かって投げる演出に、お客様からは「おおつ〜!」という感嘆の声。サムライの刀を土蜘蛛が飛んで避ける部分では動きが面白かったようで笑っていた。能は静かで退屈なものだと思われがちだが、動的で激しい一面を持っているという事実を伝えるには土蜘蛛はうってつけの材料。舞った後には最前列に座っている女の子に蜘蛛糸をあげるというサービスもあり、観客の心を掴んだ。

その後、神舞を披露。客をその迫力で圧倒させた後、浮世絵の紹介へ移った。能が室町や江戸時代の最大の娯楽であった事、能舞台や、客層などはどうだったのかを浮世絵スライドで説明。平家物語の巴御前浮世絵の説明を加える。さていよいよ能衣装の着付けに入った。実際に着たのは浅見慈一さん。衣装をきて、長い髪の毛をつけ、面をつけ、次第に女性に変身していく姿に客は固唾を呑んで魅入っていた。

「せっかくだからこの衣装のままで舞ってみましょう!」という清水氏の掛け声の後は薙刀(なぎなた)を振り回して奮闘する浅見氏による巴の舞。橋掛かりに似せた通路を観客席の脇に設けて演舞。間近で迫力を感じてもらった。

お客に能を観ていただき、幸せな気分で帰っていただくのが能楽師の信条。観客とともに最後に祝言の謡を2回謡ってもらって帰ってもらうことに。

尽きせぬ 宿こそ めでたけれ〜
TSU-KI-SE-NU YA-DO-KO-SO ME-DE-TA-KE-RE

意外にも皆さん謡が上手。満場の拍手で終わった。最後に受けた質問は予定を大幅に超えるほどたくさん出た。以下に質疑応答の一部を紹介する。

Q1: 「浮世絵で見る限り観客は男の人ばかりだが、今も昔もそうですか?」
A1: 「昔はそうだったでしょうね。でも今は違います。昔は能楽も男だけの世界だったのですが、現在では女性の能楽師もいてだんだん増えています。」

Q2:「いつから能を始めたのですか?」
A2:「能楽師には、その一家に生まれ、3歳の頃から舞台に立つ方々もいますが、私の場合は遅く、大学卒業後に始めました。ある時、師匠の能舞を観て感動し、この世界に入ることを決めました。」

Q3 「声の発声に特別な技術が必要な気がします?どうすればそのような声が出せますか?」
A3:「誰でも練習すればできます」

Q4: 「昔から作られている能演題しかないのですか?」
A3: 「古典能に加え、現在では新作能というものがあり、現在でも新しい能劇は作られ続けています。私が実際にやっている新作能では『一石仙人(いっせきせんにん)』というのがあり、これはアインシュタインを主人公とした劇です。近い将来アメリカで公演できる機会があればと考えています。」

ワークショップが終わった後も個人的に質問する人が絶えなかった。中には、刺青を職として働いていて、浮世絵に興味を持っている男性が「女性の能面の眉毛はなんであんな高い位置にあるのか」と質問、その他「違う種類のポストカードがあったら下さい」という質問も。舞台関係者の客からは「是非私が関係している舞台にも来て下さい」という依頼もあった。

確かに600年もの歴史をもつこの古い演劇には日本人の私ですら分からないことが多い。実際に少し前まで能のことなど全く知らず、歌舞伎の舞台しか観たことが無かった(それもただ1回だけ)。能を海外に紹介することにどのような意味があるのか?

その答は単純明快。

能が難しい理屈を抜きにして誰にでも楽しめるエンターテイメントであるからである。

それではまた、近い将来どこかの能ワークショップの会場でお会いできるのを楽しみにしています。

K.K

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